黄金の闘技を模倣する者   作:0・The Fool

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感想、及び誤字報告してくださいました月乃杜様、並びにこのお話を呼んでくださる皆様ありがとうございます。


紙の中の世界じゃないんだ。

 

 

 

「カトレアッ!!!!」

 

 いきなり倒れてしまったカトレアを慌てて抱き上げる。その顔色も悪い。

 

「私は主人を呼んで来ますから、皆はここで待ってください。」

 

 ヴァリエール公爵夫人はカトレア並みに血の気の引いた顔で屋敷に戻っていった。

 

 

 

SIDE アクベンス

 

 カトレアが気になり寝付けず、ブラブラと廊下を歩いていたら、双月を眺めているデネボラを見つけた。その表情はいつもと違い、何処か陰を纏っているかのように暗かった。

 

「どうした?デネボラ?」

 

「?アクベンス?どうして?」

 

「寝つけないから出歩いていたら、お前を見つけてな。」

 

 俺が答えると、デネボラは真っ黒いオーラのようなものを発しながら呟いた。

 

「…私は自己嫌悪中というべきでしょうか?」

 

「は?」

 

 意味が分からず、問いかけると、デネボラのオーラはさらに黒くなった。

 

「カウス様が、誰とお付き合いなされようと文句の言えない立場ですのに、カトレアさんが倒れた時、嫉妬と安堵してしまった自分が心底イヤになりました。」

 

 好きな人が別の人を気にする嫉妬に、その人がいなくなるかもしれない安堵、しかも、その人の体の不調を喜んでいた自分を恥じていたのだろう。

 

「それも仕方ないのでは?」

 

 俺達の会話を聞いていたらしいヴァリエールが口を挟んだ。

 

「人を愛したら、その人を独占したいという想いを抱いてしまうのも当然だ。」

 

「ですが、」

 

 言いかけるデネボラを手で制し、ヴァリエールが提案した。

 

「なら、カトレアや、カウス君とよく話し合ってみればいいと思う。」

 

 

 

SIDE スピカ

 

「………スピカ。起きてる?」

 

 ベッドで横になり、目を閉じていた私に声がかかったため、起き上がり声の主の方に振り向いた。

 

「起きてるよ。何?エレン?」

 

 エレンはどこか重く固い声音で呟いていた。

 

「カトレア様。大丈夫かな?」

 

「心配?」

 

 私の問いに、エレンはうなずいていたらしい。

 

「うん。カトレア様もそうだけど、カウス様にも笑って欲しいから。」

 

 心の内でエレンの言葉に同意していた。普段は穏やかなカウス様の心音()があの時は焦りと不安で乱れていた。

 

「それに、カリーヌ様や、エレオノール様や、ルイズ様も泣きそうな顔をしてました。」

 

 ………カトレア様。元気になってください。私とエレンはそう祈っていた。

 

 

 

SIDE カウス

 

 カトレア様が心配で、彼女の部屋の前で待っていたら、ヴァリエール公爵夫人が出てきた。

 

「カリーヌ様。カトレア様の様子はどうですか?」

 

「落ち着きなさい。カトレアなら先ほど目を覚ましました。」

 

 その言葉にほっと息を吐く。

 

「フフフ。カトレアも幸せ者ですね。貴方に愛されて。」

 

「ニャ!何言ってるんですか!カトレア様にいい迷惑でしょう!!そもそもそのセリフは、カトレア様の思い人に行ってあげてください!」

 

 俺のその言葉にヴァリエール夫人は呆れたような表情になった。

 

「カウス君鈍感なのも考えものですね。」

 

 ?意味がよくわからない。

 

「カウス君。カトレアの様子を見ますか?」

 

「よろしいのですか?」

 

 俺の問いにヴァリエール公爵夫人は首を縦に振り釘を刺した。

 

「ただし、余り、カトレアに負担をかけないように。」

 

 その言葉に、感謝して入室した。

 

「カウス君。」

 

 部屋の主は俺に微笑んでいた。

 

「大丈夫でしょうか?カトレア様?」

 

「大丈夫。心配してくれてありがとう。」

 

とてもそうには見えない。しかし、倒れた時よりは大丈夫そうに見えた。

 

「しかし、改めて見るとすごいですね。」

 

 犬や猫だけに限らず、熊等の猛獣までもがここにいてカトレア様を心配していた。

 

「ウフフ。動物が好きなのよ。」

 

 カトレア様はそう答えてから、俺をジッと見た。

 

「カウス君。もっとしゃべりやすい話し方で話して。」

 

「は?しかし、カトレア様?」

 

「カトレア。」

 

 様付けもするなと言いたいらしい。

 

「しかし、カトレア様?ヴァリエール公爵の次女に」

 

「そう。私はヴァリエールの次女。それに何の地位もないわ。」

 

 カトレア様の言葉にグゥの音も出なかった。

 

「で、ですが、外にはヴァリエール公爵夫人が、」

 

「アラアラ。年のせいかしら耳が遠くて聞き取りにくいですね。」

 

 しっかり聞こえているじゃないですか。わざとらしく声をあげるヴァリエール公爵夫人に心の内で苦情を言いつつ、溜め息をはいた。

 

「では、誰もいない時でいいでしょうか?」

 

「それだと私達もひっかかるから、私達いがいに誰もいない時という事にして。」

 

 ちぇっ。鋭い。その表情が顔に出ていたのか、クスクスと笑うカトレアを見て目の前の彼女は小説の登場人物などではなく、一人の意思と生を持った少女なのだと改めて認識した。

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