「いいか?エレン。この世の全ての物質は原子と呼ばれる最小限のブロック体よりなり、3つの状態に分かれる。言ってみろ。」
「は、はい!水と、氷と、………」
俺の問いにエレンは一生懸命に考えていたが、
「最後はわかりません。」
とそう答えた。
「じゃ、少し実験してみようか?」
俺はそう言って厨房に連れていった。鍋に凝縮で水を張り、火にかける。しばらくすると、ぐつぐついい始め、時間をかけると、鍋の中の水は全て蒸発してしまった。
「さて、エレン。この中の水はどうなったと思う?」
「消えちゃった。」
「それはない。消えたように見えただけだ。」
俺の答えにエレンはちょっと考えて、勢いよく手を上げた。
「羽が生えて逃げちゃった!!」
あまりにファンシーな答えに苦笑してしまう。
「気体になったんだ。つまり気体を冷やすと液体になり、液体を冷やすと固体になり固体を温めると液体になり、液体を温めると気体になる。」
俺の解説に、理解したのか、エレンはウンウンとうなずいた。
「
「ハイ!」
俺の言葉にエレンは力強くうなずいた。エレンとスピカ。二人に
「ッ!!!!止めろ!」
「ハイ!」
微かに悲鳴が聞こえたため、御者に止めさせ、聞こえた方に向かって走る俺とスピカ。………間に合ってくれ!
SIDE シエスタ
「イヤアァァァァーーーー!!!!」
私は悲鳴をあげながら、オーク鬼達から逃げていた。タルブの近くの森に用があり、その森の自生している薬草を取った直後、オーク鬼達に見つかってしまった。オーク鬼達が、気色を浮かべて顔を見合わせている。
オーク鬼達が棍棒を振り上げるのを見て、私は慌てて逃げ出そうとしていた。
「はあ、はあ、」
何分も、走り続ける。息が続かない。足が重い。それでも捕まったら終わりだから、必死に走る。だが、
「あ、」
目の前にオーク鬼がいるのを見て、足を止めた。
「イヤアァァァァーーーー!!!!」
私を見下ろす視線に恐怖の悲鳴を上げた。その時にはオーク鬼達が、集まっていた。振り上げた棍棒が振り下ろされる恐怖に目を固く閉じる。しかし、いつまでたっても襲い来るであろう苦痛はやってこない。
「間に合ったみたいだね?」
唐突にそんな声が聞こえた。?そっと目を開けると緑色のツインテールの少女がそこにいた。って、これって抱っこされている?
「は、ハイ!そ、その、ありがとうございます!」
その人にお礼を言うと、笑顔を浮かべて私を下ろした。
「スピカ!この子を頼む!!」
「はい。お任せください。」
スピカと呼ばれた少女は目を閉ざしたまま緑色の少女に視線を向けて答えた。
「来い!サジタリアス!!」
少女の言葉に翼を生やした金色の人馬のオブジェが現れ、分解され少女を護る鎧となった。
「グォォッ!!」
いきり立ったオーク鬼が、棍棒を振りおろそうとする。
「エクスカリバー!!」
振り上げた手刀が、オーク鬼の腕を斬り裂いた。その光景にオーク鬼達が少女に向かって襲い掛かる。しかし、
「インフィニティ―ブレイク!!!!」
少女が放つ風の矢が、オーク鬼達を撃ち抜いていく。あっという間に、オーク鬼たちが動かなくなった。
「大丈夫?」
そう言って少女は、ニコリと微笑んだ。その笑顔を見ると、なぜか、ドキドキと高鳴っていた。
「は、はい!助けていただいてありがとうございます。」
その言葉に笑みを浮かべる。
「それはよかった。ところで、ここは?俺は、カウス=アウストラリスだ。」
「ここは、タルブ村のそばの森です。私はシエスタと申します。」
「………それマジ?」
その言葉に、カウス様は私をジッと見て問いかけた。
「え、えっと、本当ですが、何か?」
「あ、あぁ。悪い。俺達、タルブ村にようがあって来たんだ。」
「なら、私が案内します!」
「じゃ、この森を抜けた先に馬車を待たせているから。」
カウス様の案内で馬車に乗り込んだ。
SIDE カウス
馬車から降りた俺達を村人の動揺が迎えた。
「き、貴族様、ど、どうして、村の娘を連れていらっしゃるのでしょうか?」
「森の中でちょっとした事があって、目的地が一緒だから、連れて来たんだ。」
「オーク鬼に襲われたところをカウス様が助けてくださいました。」
村長らしきおじいさんは俺とシエスタちゃんを見比べて安堵の息を吐いた。
「それは、それは、危ないところをありがとうございます。」
「いえいえ。お互い怪我がなくて何よりだ。」
感謝の言葉を口にする村長に俺はそう返して本題を口にする。
「俺達はまだ、宿を決めてないんだけど、宿屋ってあるかな?」
「それなら、うちに来てください!」
宿の事を話しているとシエスタちゃんがそう提案した。
「それは構わないけど、大丈夫なの?5人も一緒なんだが?」
その指摘にシエスタちゃんは一瞬、硬直して馬車の中にいるデネボラたちを見てから答えた。
「た、たぶん、大丈夫です。」
さては自信がないな?
「さてと、こうしていても仕方がない。シエスタちゃん。案内してくれないかな?」
「ヨシェナベも美味しかったな。」
俺は目の前にある、竜の羽衣を眺めて呟いていた。これが空を飛べるなんてすごいな。
シエスタちゃんの家族は恩人という事で俺達を温かく迎えてくれた。夕食のヨシェナベに舌鼓を打っていると、横からスピカが、
「カウス様。ちょっとお聞きしたいことがあります。」
とささやいた。どうにも重要な話らしいので、竜の羽衣が奉納されている寺院で話をすることになった。
「カウス様。お待たせして申し訳ありません。」
白のブラウス、青のスカートをはいたスピカが金色の髪を揺らしながらこちらに歩み寄る。
「イヤ、別に構わないけど、どうした?」
「カウス様。貴方は何者ですか?」
「………は?」
唐突に出た問いの意味を理解出来ず、間の抜けた声を発してしまった。
「カウス様とタケオ翁だけです。あの食卓でハシという物を使って、ヨシェナベを食べていてのは。」
なるほど。食事にしろ、なんにしろ道具を使うには、ある程度の経験が必要だ。使った事のない道具を使おうとしても、ドコかぎこちなくなってしまう。つまり、スピカは使った事のないはずの箸を何故、使えるのか?
そう問いかけているのだ。
「スピカ。輪廻転生って信じるか?」
「死んだ魂が別の命に宿るというものですか?」
「俺は別の世界で死を体験して、今の俺になったんだ。」
その答えにスピカは驚いた表情で俺を見つめた。
「カウス様。どうしてそれを言わなかったんですか?」
「何故、何もわざわざ言うことか?前世の俺が何者だろうと、今の俺はカウス=アウストラリスだ。」
その言葉に、スピカは微笑んでいた。