SIDE アクベンス
「懐かしいな。あの時と何も変わってないな。」
俺は昔を懐かしみながらその森を歩いていた。
「………あった。ここだ。」
石で作られた粗末な墓。それは、俺にとって大切な人の墓だった。その墓の前で仮面を外して祈りをささげる。
「ゴメンな。母さん。こんなところに放って置いて。」
母さんの墓前で祈りをささげてから謝罪した。
「コラ!ケンカなんかするんじゃないの!」
近くの森から木の実等の食べれるものを取って帰る途中にちょっと、突っかかって来るから、一撃で沈めたら、それが何故かバレてしまい、母さんから怒られてしまった。
「だ、だってさ。アイツラ母さんの事を悪く言うんだもん。ついカッとなっちゃって。」
俺の言葉に母さんはフッと微笑を浮かべると頭を優しく撫でる。
「バカだね。クソガキの戯言なんかアタシは気にしないのに。」
俺は母さんの笑顔が大好きだった。側にいるだけで辛いことを忘れさせて幸せな気持ちにしてくれる、この人が大好きだった。それをアイツラが奪っていった!!
「………ゴメンね。」
母さんは血塗れの手で俺を優しく撫でる。俺はその手を払い除ける事が出来なかった。
「アタシの分も幸せに生き……て………。」
そう言いかけた母さんの手から力が抜けていった。俺はその温もりが失いつつある母さんを抱き締めて泣いた。
正直に言って、母さんをほっとけないけど、時間がない。母さんを埋めて石を置いて簡単な墓を作り、その場を後にした。
母さんを理不尽に奪った。貴族が憎くい。その感情のままに貴族を襲った。 怪我人が出るより俺が怪我人になる方が多かった。それでも。やめることが出来なかった。そう、あのときも。
「ケケケ♪襲われるためにごくろうさん♪」
俺は森の道を歩く馬車を見て嘲笑っていた。俺はルーンを唱え、
「
火の玉が馬車に着弾して派手に燃え上がり、
「楽しいの?こんなことをして?」
「ッ!!!!」
いつからいたのか、真横から声をかけられ、慌ててその場から離脱する。その場にいたのは、金色の鎧を着て金色の翼を生やした少女だった。年は、俺と同い年かちょっと下だろう。その子の緑色のツインテールが風に揺れていた。
「おっと、ここから先は立ち入り禁止だぞ?」
声をかけてきたのはやはり、金色の鎧を着た男だった。猛牛のように角を生やした兜を被り、余裕のつもりか腕を組んで、俺を見下ろしていた。
「うるせぇ!通しやがれ!」
吠えてから、ルーンを唱え、杖を突きつけようとして、
「そんな物を振り回したら危ないですよ?」
3種類目の金色の鎧を着て、仮面で顔を隠した女が俺の杖を持つ手を取り捻りあげた。
「痛い!!放せ!!放しやがれ!!」
腕から走る痛みに暴れて強引に振りほどこうとしていると、腹に重い一撃を受けて意識を手放してしまった。
「………んむ?」
呻いて意識を取り戻した。
「ここは?」
「アウストラリス子爵の、俺の父様の屋敷さ。」
呟きに外から答え先程の翡翠ような髪をした少女が入ってきた。
「ここ最近の貴族の襲撃犯だよね?俺の父様の所に来てもらう。」
現場を取り押さえられた以上言い逃れも出来ない。それに今思えば、あの馬車はゴーレムだったのだろう。ゴーレム馬車を囮に襲撃させてそこを押さえる。つまり、俺ははめられたのだ。少女の後をついていきある扉を開けた。
「父様。最近勃発している、貴族襲撃犯を連れて来ました。」
「ご苦労様。カウス。」
報告した少女をそう言って、労い俺に視線を向けた。
「君が襲撃犯か。名前は?」
その問いに明後日に視線を向けた。
「何故、貴族を襲う?」
その問いをも無視する。
「貴様!アウストラリス子爵が問うているのだぞ!答えぬか!」
「よい。スバル。」
あの場にいた唯一の男が怒りながら詰問しようとするが、その言葉に不満な顔して引き下がった。
「私の予測だが、貴族の誰かに大切な人を奪われたのだろう。」
事実を言い当てられその表情が歪む。
「フム。どうやら、図星のようだな。すまない。」
そう言って、頭を下げた。
「ふざけるな!!そんなことぐらいで俺が許してくれるとでも思ってやがるのか!!」
「まさかさ。」
俺の言葉を首を横に振り否定した。
「しかし、君を苦しめたのが、バカ貴族だと思うと、そう言わずにはいられなかった。」
ちぇ。調子が狂う。そう毒づくと別の質問してきた。
「君に仲間は?」
「そんなものはいない。俺は孤独だ。」
父親は母さんを無理やり手込めにしただけで、それで産まれてしまった娘にはなんの興味も愛着もなかったらしいし、クソオヤジの女は愛着には愛着なんて欠片もなかった。それ以前に自分に子供がいないのに、よそでこしらえたそうとうに目障りだったらしい。だからこそ、俺と母さんを殺そうとしたんだ。それまで、住んでた村の連中だっていつも虐めようとしていた。手を出そうとしても魔法の恐怖で手が出せない貴族。その貴族の血をひきながら魔法が使えない俺はかっこうの的らしい。
「そうか。では、言い残す相手も?」
「いねぇよ。というか、わざわざ塵芥に気を遣うなよ。」
「塵芥?」
俺の言葉に首を傾げる。
「あぁ。
その言葉に緑色のツインテールの女の目が悲しげに見えた。
「父様。この人の事は私にお任せください。」
「ウム。わかった。カウスに任せよう。」
「ありがとうございます。君の名前は?」
その問いに明後日の方に向いて無視する。
「じゃあ、今から君の名前は、アクベンスだ。」
「……ハ?」
唐突に言われて間の抜けた声を発した。
「そうキャンサーのアクベンス。俺の部下で私達の家族だ。家族だからアクベンスの死は皆が悲しむ。だから、自分の命を粗末に思うな。君にとって、命が塵芥かもしれないけど、真に価値を理解しようとしている人には決して塵芥なんかじゃない。」
「じゃあ、なんだって言いたいんだよ。」
その問いにツインテールの少女は天井を、その先にあるものを見据えて、答えた。
「
そのあと、スバルと一悶着があったけど、俺はカウスの部下になった。
「母さん。明日、オーク鬼達を始末しに来たんだ。しばらくはこれないけど、あの言葉は守っているから、勘弁してくれな?」
俺は仮面をかぶりなおして、その場を後にした。
『見てるよ。愛しいあなたが幸せに過ごす日々を。』
誰かのそのささやきを耳にしながら。