ボクはスバルさんの後ろを歩いていた。時折、ガサガサと音が鳴る度に怯えた表情でそちらをみてしまう。その茂みからリスやら兎が出てくるのを見てホッとするのを繰り返す事数回した時、スバルさんがこちらに振り向いた。
「そういえば、ハマルと二人きりで行動するのは数年ぶりか?」
「…スバルさんが母さんから引き離した時以来ですからそうなりますね。」
ボクには『親』というものを知らない。一応、母親はいるけど、あの人がボクを育てたのはボクに愛情があったからではなく、単に自身のストレスのはけ口にしていただけなのだ。食事も満足には与えられず、声をかけてくるとしたら罵倒や、殴る蹴るなどするぐらいだ。周りに頼りたくても周りは敵だらけだった。後で知ったことだけど、ボクはボクが育った村の領主の子供でメイドだった母親を手込めにされて産まれた子供だった。自分に地獄をみせた男の血を引くボクに愛情を抱けず、かといってわざわざ手に入った玩具を手放す気にはならず、それでボクをストレス発散の道具にしたわけだ。誰も味方にならず、周りは敵だらけ。そんな世界からスバルさんが引き上げてくれたのだ。
「ハマル。まだ他人が怖いのか?」
「…恐いです。カウス様もデネボラさんも優しくしてくれる。でも、顔を見るだけで母さんやボクを虐めていた人達と重なって恐いんだ。」
ボクの言葉にスバルさんはボクに近づく。ボクはそれに対して後ろに退がろうとしたが、それより早くスバルさんがボクの頭を撫でた。
「ハマル。お前のそれは不信だ。いや、お前は恐いのだろう?信頼した相手に裏切られ傷つけられるのが。」
その言葉にボクは沈黙していたが、やがて小さく頷いた。
「なら信じてみればいい。」 スバルさんは柔らかく微笑んでとんでもない事を言った。
「何もすぐに信じろとは言わない。少しだけ相手を信じて相手が信じてくれたらまた相手を少しだけ信じていけば裏切らない信頼が生まれる。だから、少しだけ信じてみないか?」
スバルさんの言葉に嬉しく思い彼に視線を向けた時、
「スバルさん!!後ろ!!」
「っ!!」
後ろを振り向いたスバルさんをオーク鬼の一撃が襲いかかった。幸いそれに反応して一撃を避けたから良かった。
「くっ!
スバルさんが
「どうしたんですか?」
問いかけるボクにスバルさんはとんでもない事を言い出した。
「ハマル。お前が行け。」
「えぇっ!?」
スバルさん!なんて事を言うんですか!?
「恐いのだろう?だからこそ、自分の中の恐怖に立ち向かってみろ。ちょっとオーク鬼から守ってくれたら、その子はお前を好いてくれる。こんな簡単な事は無いぞ?」
だから、立ち向かってみろ?言外でそう言われ、少年を見た。まったく違うのに何故だか、ボクに見えてしまった。だからだろうか?
「来て!!
「グォォッ!!」
オーク鬼はボクに棍棒を振り下ろそうとした。でも、
「クリスタル・ウォール!!」
念力の壁が棍棒の一撃を弾き飛ばした。
「グオォッ!!」
それにビックリしている間に飛びかかり繰り出した拳がオーク鬼のアゴをかすり昏倒させた。そのスキを逃さず、トドメの一撃を繰り出した。
「スターダスト………。」
ボクの言葉に反応して周囲に落ちている無数の石ころがフワリと浮かび上がった。「レボリューション!!」
浮かび上がった石が凄まじい速さでオーク鬼を貫いた。
「グハァ!!」
オーク鬼は血を吐いて倒れそれきりピクリとも動かない。
それを見ていた男の子がボクに近づく。殴られる!反射的に目を閉じるがいつになっても殴られる衝撃がこない。かわりに、ギュッと、ボクを抱きしめる感触があった。目をあけると満面の笑顔でボクに抱きつく少年がいた。
「お姉ちゃん。ありがとう♪」
ボクにはその言葉が嬉しかった。