このお話を読んでくださる皆様ありがとうございます。
このお話に残虐な場面があります。それで不愉快になられましたら申し訳ないです。
「カウス様。ありがとうございます。」
橋が完成したので帰る事になり、村の入り口に皆が出迎えてくれた。
「スバル兄ちゃんありがとう!」
「デネボラお姉ちゃん。ありがとう!」
「こちらも楽しかったぞ。皆これからも元気でな。」
俺とハマルが橋を造っている間、スバルとデネボラは子供達と遊んでいたらしく、子供達が二人に抱きついていた。それを離れたところで二人が見ていた。その二人にも子供達がきた。
「ハマル姉ちゃん!ありがとう!」
「アクベンス姉ちゃん!ありがとう!」
「う、うん!」
「あ、あぁ。」
あ。2人とも緊張している。
「おい。緊張してないで、早く乗ってくれ。」
「だ、誰が緊張しているだ!」
「は、はい!」
返事を返しながら乗り込み走り出した馬車を村の皆が見送ってくれた。
「鬱陶しいのがいなくなってせいせいするぜ。」
口ではそう言っているが、アクペンスは村の入り口を向いている。仮面で表情はわからないが、その顔には笑みが浮かんでいるのだろう。こうして、橋作りは終わったのだが、その帰り道であんな事を見つけるなんて、誰が予想したのだろうか?
○ ○ ○
「…デネボラ。止めて。」
「わ、わかった。」
スピカの指示に慌てて馬車を止める。
「シエスタちゃん!アンドロメダの
その横で、シエスタちゃんに
「カウス様!終わりました!」
シエスタちゃんのその言葉に馬車から飛び出た。その俺の背後からみんなが追いかけた。走りながらみんなが自分たちの
SIDE ?
…どうしてこんなことになったのだろう?私は燃え盛る炎を見て自問していた。小さな領土だったけど私を愛してくれた、父様に母様に姉様、私を大切にしてくださった使用人の皆、私達に従ってくれる領民の人達と狭い世界だったけど、私の世界は満たされていた。だけど、突如としてその世界は終わりを迎えた。私達を襲撃しようとする人がいた。その人達に攻撃は通じなく、圧倒的な攻撃力に歯が立たなかった。私と姉様と使用人を逃がすだけが精一杯なのだ。だけど、
「どこへ行く?敵に背中を見せないのが貴族ではないのか?」
追いつかれ恐ろしい物を投げつける。それは、
「…あ、ああ…。父様…母様…。」
それは、首から下を失い変わり果てた両親の姿だった。
「皆の者!カマリ様とジュバ様を御守りするのじゃ!」
私の家に古くから仕えるおじいちゃんの命令に皆が弾かれたように黒光りする鎧を着た人達と私達の間に割ってはいる。だけど、
「邪魔だ!!」 男が投げつけた鉄球が使用人たちの体を潰した。
「か、カマリ様、ジュバ様…。お逃げくだされ。」
おじいちゃんも下半身を失いそれでも私達を心配してくれる。
「これ以上旦那様に、カマリ様、ジュバ様にお仕え出来ぬ不忠をお許し下され。しかしながら、旦那様や、カマリ様、ジュバ様にお仕え出来て儂は幸せ…。」
おじいちゃんはそれ以上言う事が出来なかった。男がおじいちゃんの頭に足を乗せて―
「ふん。ゴミクズに尻尾を振る愚犬など要らぬ。」
おじいちゃんをゴミでもみるかのような目に何かが切れたような音が聞こえた気がする。
「あ、ああああああああああああああああああああ!!!!」
喉から絞るかのような叫びに呼応したかのように今まで出したことのなかった勢いで炎が放たれた。しかし見えない壁のようなものが炎を防いでしまった。私の魔法ではあの壁は砕けない。だから姉様に視線を向けるけど、姉様も首を横に振るだけだった。悔しそうに呻く私に男は笑みを浮かべて、それに対して、私はきつく目を閉ざすだけだったが、襲いくるであろう激痛も死の気配もなかった。そっと目を開けると、黄金の翼を生やし金色の鎧を着た男の子が私達を護る騎士かのように立ちはだかっていたからだ。
「カウス…。」
私は思わず、隣の領地に住む領主の子供の名前を呟いていた。
side カウス
………何でコイツらがここに?予想外な展開に硬直していると、
「カウス様!危ない!」
シエスタちゃんがとっさに、俺と『黒光する鎧』を纏った男の間に入りローリングディフェンスで俺を護ろうとした。しかし、
「キャアアァァッ!!!!」
男の攻撃が鎖ごと、アンドロメダの青銅聖衣を破壊した。
「よっと。」
その悲鳴に我にかえり、シエスタちゃんを抱き留める。
「若。大丈夫ですか?」
追いついたスバルが声をかけた。
「ああ。俺は大丈夫。立てる?シエスタちゃん?」
「は、はい!」
俺が下ろしながら問いかけると顔を赤くして答えた。怒らせたかな?その思考は男の声に遮られた。
「ゴミクズの分際で、耐えるとはなかなかやるな!」
「少なくとも、そこの少女達の親などよりは出来るようですね?」
男達は全部で5人。『黒光する鎧』を着ている以外、共通点は殆ど無い。鎧もカラーこそが黒であるが、その形状は全部バラバラ。唯一の共通点は男達が下卑た笑みを浮かべているくらいだ。
「…貴方達ですか?この残虐行為をしたのは?」
血まみれの鎧を見て、既にわかっているようだが、確認の為にデネボラが問いかける。
「ああ!そうだ!」
「一体、何故このような事を?」
「ククク。死に行く貴様等に教えて教えても意味はない。しかし、理由も無く死に行くのは不憫。教えよう。貴様等、貴族共を皆殺しにして虐待されている平民達を解放する事よ!」
「なら、この惨状はどういう気だ?」
スバルは怒りの表情でこの惨劇の舞台を見回した。四肢のどれかを欠損しただけならまだいい。上半身を失った者、下半身を失った者、身体を左右に引き裂かれた者などが転がっていて、生存している者はほんの数名の女の子だけだ。
「彼等は平民で貴様等が解放すると宣言した者達ではないか!この事はどうする!」
「ふん!ゴミクズに尻尾を振る愚犬など要らぬ!目障りな愚犬をはらってやっただけのことよ!いちいち気にする事ではないわ!」
スバルの詰問を嘲るかのような笑みを浮かべて男は返した。男の言葉に皆が不愉快そうに眉をしかめた。
「俺の名は「要らん。」あ?」
男の名乗りをスバルが遮った。
「喋るな。耳が腐る。」
「な!貴様!」
スバルの発言に男達は激昂する。
「喋るなと言ったはずだ。それに息もするな。空気が汚れる。」
スバルの言葉に男達の顔が赤く染まってゆく。
「何が、貴族達を滅ぼして、平民達を解放するだ?それなら、使用人まで殺害する必要などなかったはずだ!貴様等は平民達を解放したいのではない!!人を殺したいだけだ!!手に入れたその力で暴れまわりたいだけだ!!そこに平民達を想う気持ちなど欠片も含まれていない!!」
その言葉に男たちは小刻みに震える。
「次のおまえのセリフは『言わせておけば!貴族のゴミくず如きが!』」
「言わせておけば!貴族のゴミくず如きが!ハッ!!」
俺に予言され、驚きに硬直する。
「くっくっく。図星を指された人のセリフなど皆同じだな。」
スバルのその言葉に男達は顔を赤くする。
「次のお前のセリフは『それがどうした!!このゴミくずども!!!!』」
「それがどうした!!このゴミくずども!!!!」
俺にセリフを予言されながらも突っ込んでくる。
「シエスタちゃんはジュバちゃん達を連れてこの場を離れて!」
「…ハイ。申し訳ありません。」
「シエスタちゃん。助けてくれて助かった。ありがとう。」
「…ハイ!」
その言葉に喜色満面の笑みを浮かべた。
SIDE スバル
「くらえ!!」
男は叫びながら、鉄球を投げつけるが、
「セイッ!!」
俺の拳が鉄球を粉々に粉砕した。
「な、何ぃっ!!ば、バカな!!貴族のゴミくず如きが俺の鉄球を止められるわけが、」
「簡単な事だ、貴様の力は無目的に暴れ回りたいだけの暴力だ。そんなものでは紛い物とはいえ黄金の野牛の突進は止められない。ましてや、」
言いながら腕を組みルーンを唱える。その行為を余裕ととったのか、
「クソ!ふざけやがって!!」
激昂しながら鉄球を投げつける。
「グレートホーンには通じん!!」
俺が放った風の槌が鉄球を粉砕して男の体を粉砕した。
SIDE デネボラ
「くっくっく。その金色の鎧を貴様の血で汚してくれるそうだ。我が仔達がな。」
その言葉に壁の穴から飛来してきたのは、真っ黒な烏だった。
「大変ですね?ここまで子宝に恵まれるというのも。」
「く!!ふざけやがって!!やれ!!」
男性は怒りながら、烏達をけしかける。
「あなたも罪な人ですね?」
私はそう言ってからルーンを唱え、烏達を迎撃する。そして、
「ライトニング・ボルト!!」
雷の矢が烏達を貫いていく。
「愛しの我が仔達とやらを獅子の餌にするなんて。」
そう言いながらルーンを口にする。
「くっ!!おのれ!!」
叫んでから、烏達を呼び寄せるが、烏達が集まるより、
「ライトニング・プラズマァ!!」
雷の牙が男の体を貫く方が速かった。
「グギャァァァッ!!!!」
悲鳴を上げながら男は倒れた。
「わ、我が仔達よ。俺の無念をはらしてくれ…。」
そう言い残して男の体は動かなくなった。
「カァ!」
烏達が襲撃するかと思いきや、その一鳴きで蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。アラアラ。人望がないですわね?
「貴方方が与え苦しみを万分の一でも理解して逝きなさい。」
倒れた男に向かってそう吐き捨てた。
SIDE アクベンス
「ハッ!!ヤッ!!」
「ソラ!!セイッ!!」
俺と男は互いに拳と拳、脚に蹴りをぶつけあっている。
「中々やるな。だからこそ、惜しい。貴様がゴミくずに尻尾を振っているのが。」
「なにが言いてぇ?」
言葉の意味がわからず問いかけるとニヤリと笑い誘いをかける。
「目を見ればわかる。貴様も誰か大切な人をゴミくずに奪われたな?我が主の元につけ。貴様の復讐に手を貸そう。」
その言葉に脳裏に、温もりを失っていく母さんの姿がよぎった。
「確かに魅力的な提案かもしれねぇな。」
俺の呟きに男はほくそ笑んでいた。しかし、次の瞬間男の顔面に俺の拳がめり込んでいた。
「だけど、そんなことしても亡くなった人は喜ばねェ!!だったらやるだけ無駄だ!!」
男は俺が殴った側の頬をぬぐい鬼のような形相で俺を睨んでいた。
「かったりいこと抜かしてんじゃねェぞ!!この尻軽女がぁ!!」
次の瞬間男の体から火柱が立ち上った。
「消し炭にでもなってしまえ!!」
その言葉に火柱は俺に襲いかかる。だが、それより早く俺が放った蒼炎が火柱を包んで爆発した。
「な!なんと!」
男が驚いている間にルーンを唱え、そして、
「
俺が放った青い焔が男の体を燃やし始める。
「な、なんだ!ち、力が抜ける!」
「コイツはテメェの精神力を糧に燃える鬼火だ。」
「ば…バカな…そんな焔があると…。」
そう言い残して男は倒れた。
SIDE ハマル
ボクは男の攻撃を防いだり、かわしたりしていた。
「攻めないのか?まあ、仕方あるまい。貴様は5人の中では最弱だろう?」
その言葉にボクは一瞬硬直する。
「やはり図星か。貴様は5人の中で最も小柄でウェイトが軽い分威力は低い。だからこそ弱い。」
その通りだ。単純な力勝負ならボクが一番弱い。
「それだけではない。貴様には覚悟がない。」
その発言に何も言えず硬直する。
「貴様は常に怯えている。身を守るのは傷つくのが怖いからだ。」
ボクがなにも言わないでいると、それに気をよくしたのか、さらに続ける。
「力もなく、覚悟さえもない。そんな砂粒ような拳は通用しない。ここでくたばれ!」
男は拳を握り、ボクに襲いかかる。それに対しボクがとった行動は避ける事でも、防ぐ事でもない。
「な、なにぃ!!」
「スターダスト・レヴォリューション!!」
がら空きの所にスターダスト・レヴォリューションを打ち込む事だった。
「グハァッ!!ば、バカな…。か、カウンターを決めるとは…。」
「…確かにボクは力もないし、覚悟もない。でもね、決意ならあるよ。ボクを家族にしてくれたスバルさん、ボクを受け入れてくれた、あの子達を守る為に戦う!」
たとえ、ボクの命をかける事になったとしても厭わない!
「…ふ。わ、笑わせてくれる。」
体中を穴だらけにされながらも必死に笑みを浮かべる。
「き、貴様のそれは決意ではなく、覚悟だ。」
男はそう言い残して2度と動かなかった。
SIDE カウス
俺と男は静かににらみ合っていたが、ふと視線をずらし、スバル達の方に向けた。
「雑魚共めが。ゴミクズを潰すつもりが逆に倒されるとは。」
「…おまえ達は何者で、主は誰なんだ?」
俺の問いに男は笑みを浮かべる。
「これから死に行く者に話しても言っても意味が無かろう?」
拒否の言葉に戦う事を決めた。
「…なら叩きのめして強引に聞き出すしかないか。」
そう呟いてルーンを唱える。
「ふ。ゴミクズ如きにそんな大それた事が出来るかな?」
その問いに攻撃魔法を答えにした。
「インフィニティー・ブレイク!」
俺が放った風の矢は周囲を破砕するがそれだけだった。見えない壁のようなものが風の矢を防いでいた。
「ほら、無理だっただろ?これでもくらえ!マーブル・トリパー!!」
渦のようなものが俺に迫り、俺は吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。
「ククク。どんな気分だ?そちらの攻撃は一切通用せず、逆にこちらの攻撃で面白いように傷ついていくのは?」
「…気流操作か。」
「あん?」
俺の呟きの意味が理解出来なかったのか戸惑った顔をする。
「お前の鎧は気流を操作する魔法具だな?」
だから空気の壁で風の矢を防いだ。そう分析しながら、ルーンを口にする。
「き、貴様!!誰か余計な事を口にしろと言った!!」
激昂して男がマーブル・トリパーを放つがこちらも攻撃の準備が終わった。
「ケイロンズライト・インパルス!!」
風の矢が渦を貫いて男に迫るが、間一髪で避けた。だけど、それだけで十分だった。男が避けた隙にルーンを唱え近づいて顔面を殴りつけ、
「スカーレット・ニードル!!」
がら空きの体に真紅の毒針を突き刺した。
「グアァァ!!」
毒が体内を暴れその激痛に呻いていた。
「おまえ達の主は誰だ?」
「だ、誰が言う…「スカーレット・ニードル!!」ガァァッ!!」
俺の質問を拒否しようとする男の体に2発目の毒針を打ち込んだ。
「スカーレット・ニードルは1発2発打ち込んだくらいでは死なない。15発打ち込んで命を刈り取れる。慈悲深いものだ。」
そこまで言って男の顔は青ざめた。15発打ち込まなかったら死なないなら、14発分の苦痛は味わうのだ。苦痛か話すか、好きな方を選べ。その選択肢に青ざめ、目は必死に止めてくれと訴える。しかし、3発目、4発目と打ち込んでいくと観念の悲鳴を上げた。
「わかった!!話す!!話すからもう止めてくれ!!」
「おまえ達の主は誰だ?」
「そ、その方は、「そこまでです。」グエッ!」
制止の言葉と共に飛来してきた円盤が男の首を斬り落とした。
「なんと嘆かわしい。一時の安心のために主を裏切るとは。」
男の首を斬り落とした男はゴミでも見るかのように冷めた表情で自分が斬り落とした首を見ていた。
「…酷いことをするんだな?仲間じゃないのか?」
その言葉を首を横に振って否定した。
「いえいえ。仲間故に我々の主を裏切らないようにしたまでです。」
大したことはないという態度にみんなが不機嫌になってゆく。
「カウス様。ここは、私にお任せを。」
スピカが片手で俺達を遮るようにして言った。
「わかった。行ってこい。」
その答えに頷いてから男に視線を向ける。
「まずは、貴女を血まみれにして差し上げましょう。」
男はそう言って円盤を投げつける。その円盤は複数に分裂してスピカに襲いかかるが、
「天魔降伏!!」
スピカが放った衝撃波が円盤と男が纏った黒光りする鎧を砕いて男にダメージを負わせた。
「あなたに問います。あなた達の主は何者ですか?」
スピカの問いに何故かニヤリと笑みを浮かべた。
「こ、この程度で勝った。そう思っているのでしたら、一つ言いましょう。貴女達は詰めが甘い!」
その言葉と共に天井に隠した円盤が襲撃しようとする。しかし、スピカもその事には気づいている。風の壁を張っている。結論から言って俺もスピカも詰めが甘かった。男の狙いは俺達の誰かでもなく自分自身だったからだ。
「何故自身を?」
「さ、さすがに先ほどの拷問には耐えられません。ですが、あ、主に関する情報を奪われ、主に失望させる事は私には耐えられません。」
死にゆく中でも笑みを浮かべながら答える。
「それほどまでにあなたの主のことを?」
「あ、当たり前です。我々は、ゴミクズの手で永遠の闇の中に眠らされたのを主が目覚めさせてくれたのです。だからこそ、主の不利益は避けたいのです。」
男はそう言ってピクリとも動かなくなった。
「しかし、なんでこいつらが?」
俺は倒れた男の鎧の破片を手にしながらつぶやいていた。円盤の男が言っていた永遠の闇、この意味は死の世界という意味だろう。だとしたら、こいつらは