「カウス。久しぶりだな。」
「はい。陛下。」
早急に報告したい事があるという書状を陛下の本に送ったのだ。もちろん、検閲される事を考え、詳しい内容は控え、内容を『ヴァリエール公爵の2人と内密に直接御報告したい事がございますので御時間を頂けますでしょうか?』と書いただけなのだが、わかってくれたらしく、時間を指定する手紙が送られて来たのでその日に王宮に着いたら、人払いしていたらしく、陛下とヴァリエール公爵の2人だけだった。
「カウス君。レサト領の件は大変だったな。」
「陛下。ヴァリエール公爵。その事で報告があります。」
その言葉に2人とも静かに耳を傾けていた。
「レサト領で襲撃者達を撃退したのですが、彼等の纏っていた鎧が異質でした。」
「異質とは?」
「見た感じ聖闘士と呼ばれる人達の敵、冥界の神ハーデスに仕える闘士達が纏う鎧、
「この状況は君はどう考えているのかな?」
陛下の問いに少し間を置いて答えた。
「私以外にも転生者がいるのだと思います。」
他にもたまたまこの世界にも冥界の神とそれに仕える闘士達の話がありそれを知った誰かが俺と同様、模倣したと考えてみたけど、転生者の仕業と考えた方がしっくりするのだ。スピカが倒した男言っていた永遠の闇が死後の世界と考えた方が自然だと思うのだ。
「やはりそう思うか。」
陛下はそう言いながら眉間を揉みほぐしていた。この世界の事を限定的とはいえ、未来、過去を知っているということかなり厄介な事である。
「カウス。君が知っている物語を教えてくれないか?」
陛下の言葉に首を縦にふり、『ゼロの使い魔』の物語を口にした。
「…話の前半部分を折っているのだな。」
「…まあ、そうですね。」
レコンキスタの一件は、ジョゼフ殿下の乱心が切っ掛けだし、それもタバサちゃんのお父さんが殺害された不仲でタバサちゃんのお父さんを負かしたと思ったら、その相手から祝福されたのが切っ掛けだ。
そう考えると物語の大半をぶち折っているんだよな。
…考えてみろ。敵が貴族社会潰したいとしたいならどう動く? 待てよ? 確か原作じゃ、陛下が亡くなった後、トリスティンは傾いていった。女王陛下は陛下の死後喪に服すとか言って政治を取ることはなかった。そして、アンリエッタ王女は、玉座に座るには幼すぎた。結果としては空席の玉座を支えるロマリア人のマザリーニ枢機卿が一生懸命に支えるというものだった。そのため、国を食いつぶす人が増え、国を裏切る人までてえてしまうという結果になってしまった。…! だとしたら陛下の命が危ない!!そんな俺の思考を遮るかのように陛下の咳払いが響いた。
「陛下。お身体が?」
「ウム。この所、薬が手放せぬ。」
「陛下。失礼を。誰か。薬師を呼んでくれ。」
陛下に許可を取り、外で待機している衛兵に声をかけるヴァリエール公爵の姿にあることが閃いた。しばらくしてやってきた薬師とその弟子という二人の男がその想像が正解だと告げていたように思えた。
「ど、どうぞ。陛下。」
陛下は薬を受け取ろうとした所で、俺が待ったをかけた。
「陛下。お待ちください。その薬、毒入りかもしれません。」
「な!? なんだと!!」
俺の言葉にヴァリエール公爵は薬師と陛下を見ていた。
「も、申し訳ありません!!」
薬師が土下座して謝罪した。
「どうしたのだろうか?」
薬師の態度に陛下はあくまで穏やかに問いかける。
「じ、実は、娘を人質にとられまして、返し欲しければ陛下を毒殺しろという指示がありましたしだいでございます!! ホントに申し訳ありません!!」
薬師は、床に額をこすりつけながら謝っていた。それに対して、陛下は柔らかく微笑んでいた。
「…そうか…。そなたの行いは不問に処す。」
その言葉に薬師は涙を浮かべていた。しかし、
「だあぁ!! まどろっこしい! だいだい、俺はこういった事は性に合わんのだ!」
KYな叫びを発した馬鹿が本性を露わにした。
「来い!
その叫びに巨大な矢と熊の黒光りするオブジェが現れた。
「来い!
俺の叫びに翼を生やした黄金の人馬が現れた。3つのオブジェはパーツごとに分解され俺達を護る鎧になった。
「ゴミクズの親玉なぞ、
向こうが名乗りをあげたし、こちらも返すべきか?
「
俺の名乗りにメリクが突進してくる。
「インフィニティー・ブレイク!!」
俺が放った数多の風の矢が
「ガ八!! …お、俺は囮よ…。」
崩れ落ちるメリクの陰から矢座の男が飛び出した。しまった! 慌てて行動に移ろうとしても遅過ぎた。
「ハンティングアロー・エクスプレス!!」
男が俺の脇をすり抜け、矢を陛下目掛け放ったからだ。その矢はまっすぐ陛下の方へと伸びて
「…ご、ご無事ですか? 陛下?」
薬師が間に入ってその実で矢を受け止めた。
「クッ!!もう一度、ハンティング…「ライトニング・プラズマ!!」」
男がもう一度矢を放つより早く、雷の牙が男を貫いた。
「大丈夫ですか!!」
倒れた薬師のもとに駆け寄り、傷を確認した。…心臓などの重要な臓器に損傷はないけど、傷が多すぎる!
「わ、私の事より娘のことをお願いします。彼女は私の家にいるはずです。」
そう言った薬師は目を閉じた。…息はある。どうやら気絶しているだけのようだ。でも、このままなら、
「死なせるもんか!!」
そう言って、ルーンを口にした。
○ ○ ○
…結論から言うと薬師はきわどいところだったけど助かった。そして、娘さんも無事に救出出来た。
「ありがとう。君のおかげで死なずにすんだ。」
「いえ、お礼は不要です。ご自分の運の良さと生命力に感謝してください。あとちょっと遅かったら危なかったです。」
自身に泣きつく娘さんをあやしながらお礼を述べる薬師に首を横に振って否定した。
「それでもだよ。もし、回復魔法を使ってくれなかったら私は死んでいた。ありがとう。」
薬師の言葉に恥ずかしそうに頬を掻いた。
「君。すまないが娘を、アルレシャを預かってもらえないか?」
「? えっと、何故でしょうか?」
「私は運悪く魔法の才に恵まれず、薬の知識を詰め込むことしか出来なかった。だが、彼女は水の才を持っているからそれを磨けば私以上に多くの命を救えるはず。…それにアルレシャは君の事を気に入っているようだしね。」
「お、お父様!」
薬師の言葉にアルレシャちゃんは真っ赤になって怒った。なかなか元気娘だな。俺はアルレシャちゃんの頭を撫でて答えた。
「わかりました。アルレシャちゃんさえ良ければ構いません。」
その言葉にアルレシャちゃんは激しく首を縦に振った。