「…暑い。」
呟きながら辺りを見回した。砂。砂。砂。辺り一面砂だらけだ。まるで見えない灼熱の炎で素肌を焼かれているかのようだ。その暑さのせいで額に大量の汗が浮かびポタポタと汗がしたたり落ちている。
「本当に暑いね。」
額に汗を浮かべながらも必死に笑顔で対応するワルド。アンタ。大人や。今回の目的地はエルフの本拠地、サハラだ。陛下にエルフの所に文化を学ぶ為に留学させて欲しいと伺ったら、予想通り、周囲から猛反発されたが、陛下はあっさりと許可を出してくれた。どこからか俺の目的地を知ったワルドが自らを売り込んできた。理由を知っているし俺としては断る気にならず、陛下の許可のもとワルドを連れて行くことになった。
「それにしても、ロマリアの人達は耳が早かったですね。」
汗を一滴すら流さず、涼しい表情のスピカの言葉を聞きながら、陛下の許可をもらい準備に取りかかていた時にロマリアの坊主が乗り込んできたときの言葉を思い出した。
「エルフの文化を学ぶなど異端である!すぐにやめられよ!!」
来るだろう事であり予想してあったので坊主の言葉に言い返す準備も済ませてあった。
「戦争を出来るだけ安全で平和的に終わらせるにはコレがベターだと思ったわけですが、何が問題でも?」
「なっ!! エルフは始祖ブリミルの敵! それを忘れエルフと手をつなげと言うのか! 明らかな異端であるぞ!」
「その前に少し考えてみてください。
あなた方の意見はあくまでも、エルフは敵でありその敵は滅ぼすべきであり、そのエルフと手をつなごうとする私が異端であるということですよね?」
「そうだ!! 始祖ブリミルの敵と手を繋ぐなど始祖ブリミルの教えに反することである!」
叫ぶ坊主に首を横に振っていう。
「でも、戦争になれば、敵にも味方にも被害が出ます。敬遠なるブリミル教の信者を無駄に死なせる事の方が真の異端ではないでしょうか?」
俺の言葉に坊主は俺を睨んでいたが、何も言わずに去って行った。信者の命など知ったことか!などと言い出すかとひやひやしていたが、少しホッとしていた。
「…あのままで終わるとは思えないんだよな。」
あの時のことを思い出し溜息をついていた。
「ところで、スピカ。お前、なんで汗をかいてないんだ?」
砂漠はものすごく暑い。現に俺や、ワルド、スバルは汗をかきまくっているにもかきまくっているにも関わらずスピカだけは汗をかいていない。涼しい顔でケロッとしているのだ。
「風と水の精霊達が周囲を適切の気温で維持しているだけですよ。」
「スピカ君。それって明らかな異端ではないかな?」
「ズルい!! それって、スピカの周りだけ涼しいってことじゃん!!」
そう叫びながら、スピカに抱き着いた。
「にゃ、にゃにを!!」
その行動に耳まで真っ赤に染めるスピカ。
「おぉ!! 確かに涼しい!」
スピカを抱きしめその涼しさを堪能しているとワルドが止めに入った。
「カウス君。あっちの方にオアシスがあるみたいだし、あちらに行って休んでみないかな?」
ワルドに言われた方向を見てみると、確かに遠くにオアシスがあるっぽい。…ん?そのオアシスのそばに家がある。
「どうやら、もうちょっとでエルフに会えるみたい。」
「何? …確かに誰かの家があるみたいだね? この辺に人が住んでるとは考えにくいし。」
緊張しながら、家に近づいたら、ドアが開いて女性が顔を覗かせた。
「あら?なんでこんな所に野蛮人がいるのかしら?」
エルフは首を傾げ問いかける。その様子に悪意は感じられない。
「耳長の亜人に会いに来たんだが。別の質問をするが、人を野蛮人扱いするなら、そちらも、耳長の亜人呼ばわりされるのも覚悟の上?」
その言葉にしばらく、黙考して口を開いた。
「そうね。悪かったわ。私はルクシャナよ。名前を聞かせてくれるかしら?」
自分の非を認めて名前を聞いてきた。
「俺は、カウス=アウストラリスと申します。宜しくお願いします。」
「私はスピカと言います。ルクシャナさん。よろしくお願いします。」
「僕はジャン=ジャック=ド=ワルド。よろしく頼む。」
俺達の自己紹介にルクシャナさんは「こちらこそよろしく。」と返した。
「それで、ワルド達は何故ここに来たのかしら?」
「はい。カウス君の提案でエルフ達の文化を学びに来たんだ。」
ワルドの言葉にルクシャナさんはビックリしたのか、目をまん丸に見開いて俺を見詰めた。
「変わり者ね? 私達の文化を学びに来たなんて人初めて見たわ。」
俺を見つめるルクシャナさんに肩をすくめて応じた。
「まあ、俺が変わり者だという自覚は有りますけどね。
でも、戦争でブリミル信者の命を無駄に散らすよりは、手を握りあった方が被害は少ないわけです。
でも、そのためにはお互いをよく理解する事が重要です。
知ってますか? 俺達人間はエルフの事を亜人と呼び、オーク鬼と変わらない扱いでメイジはおろか平民にすら恐怖の対象になってます。」
俺の言葉にルクシャナさんは憤慨する。
「ルクシャナさん。俺に怒ってもしょうがないでしょう?
逆にエルフ達は俺達を蛮人と呼び見下しますでしょう?互いを知らないから、そんな誤解を生んでいます。
だからこそ、文化交流をして互いを良く知り、手を握りあえないかなと思いここに来ました。」
その言葉にルクシャナさんは手を差し出した。
「そういう事なら喜んで協力するわ。」
俺はその手を握り返した。