「急げ。カウス。」
父のその言葉に、自分で作ったプレゼントと招待状を持ち馬車にのりこんだ。
「………スゴイ………。」
目の前のどでかい豪邸を見上げて呟いていた。いったい、我が家が何軒入るのだろう?
「こうしていても始まらない。早く行くぞ。」
父さんはそう言って、中に入って行った。
執事の人に招待状を見せて、案内された先も広いダンスホールだった。………維持費だけでもシャレにならないような額がかかりそう。
「………貴族って、ホントに面倒くさいな。外に舐められない為とはいえ、平民(自分達の宝)を苦しめなければいけないんだから。」
俺がそう呟いた時、奥の方から、モノクルをかけた金髪の男性と桃色髪の女性が現れた。おそらくはヴァリエール公爵とその奥さんだろうな。そのヴァリエール公爵達の後ろから3人の女の子がやって来た。
「皆様。この度は私の娘の誕生日に来てくださり、ありがとうございます。大したおもてなしは出来ませんがごゆるりとお楽しみください。」
その言葉にパーティーが開催となった。始まった途端、砂糖に群がる蟻の如くミス・カトレアに集まって来る。アレを通り抜けて渡しに行くのも大変だ。そう思ってたら、
「楽しんで頂けただろうか?アウストラリス子爵?」
ヴァリエール公爵夫妻がこちらに話しかけて来た。
「これは、ヴァリエール公爵。ご挨拶もなく申し訳ありません。本日はお招きいただきありがとうございます。」
「いや。行き違い事はよくある。目くじらたてることではない。」
慌てて頭を下げる父さんにヴァリエール公爵は何て事はないと応じる。
「は、はじめまして。ヴァリエール公爵。お、私はカウス=ド=アウストラリスと申します。この度はご招待いただきありがとうございます。」
「これはご丁寧にありがとう。」
頭を下げる俺にヴァリエール公爵は微笑んで応じてくれた。
「ところで、何を困った顔をしていたのかな?」
「えっと、アレなんですが、」
と蟻の如く群がる貴族達を指さし、
「アレを押し退けて、カトレア様に渡しに行くのも大変だなと思いまして。」
「なるほど。」
そう呟いて、カトレア様に声をかけていた。
「カトレア。来なさい。」
その言葉にカトレア様は周囲の貴族達に何かを言ってこちらに来た。
「お父様如何なさられました?」
「ウム。コチラはアウストラリス子爵のご子息でカウス君という。」
「はじめまして。お誕生日おめでとうございます。
お、私はカウス=ド=アウストラリスと申します。
この度はご招待いただきありがとうございます。」
「はじめまして。ミスターカウス。私はカトレア=イヴェット=ラ=ボーム=ル=ブラン=ド=ラ=ヴァリエールです。今日は私の為に来ていただきありがとうございます。」
俺の挨拶に微笑んで応じてくれるカトレア様。
「こ、これをどうぞ。」
カトレア様の笑顔に一瞬どきりとしながら、今まで苦労して作ったそれを渡した。
「フム、カウス君。念のためにディてぃくとマジックをかけさせてもらうよ?」
「構いませんよ?」
その言葉にヴァりエール伯爵はそれにディティクトマジックをかけてから、カトレア様に渡した。
「カウス君。ありがとう。それで、これはどう使うの?」
「これは複数、全部合わせて一つのマジックアイテムです。」
そう言って、手元からカトレア様に渡したものと同じものを取り出した。
「コール。カトレアへ。」
俺の言葉にカトレア様に渡したそれが震ええる。カトレア様は俺の指示で、操作すると耳にあてる。
「カトレア様。聞こえますでしょうか?これは遠くまで、声を飛ばせるマジックアイテムです。」
俺のささやきにカトレア様はビックリした表情になった。これは携帯電話をマジックアイテムで再現したものだ。
「さて、アウストラリス子爵。我々は退散するとしようではないか?」
「そうですな。若い者は若い者同士で積る話も有りますでしょうから。」
「あ、ちょっと!」
父さんもヴァリエール公爵も公爵夫人も俺の制止を無視して去ってしまった。
「………。」
カトレア様は何が楽しいのか、ニコニコとコチラを見ている。オマケに周囲の貴族の子供達から嫉妬の視線で見られているし。
「少しお付き合いしていただけるかしら?カウス君。」
「は、ハイ。」
カトレア様の問いに首を縦に振った。しばらく歩いて、二人の少女達の前に連れてきた。
「カウス君。私のこちらが私の姉妹でエレオノールお姉様と妹のルイズよ。」
「はじめまして。私はカウス=ド=アウストラリスと申します。」
「はじめまして。私の妹の為に来てくださりありがとうございます。
私はエレオノール=アルベルティーヌ=ル=ブラン=ド=ラ=ブロワ=ド=ラ=ヴァリエールといいます。ホラ。おチビ。あなたも挨拶しなさい。」
「は、はい!私はルイズ=フランソワーズ=ル=ブラン=ド=ラ=ヴァリエールといいます。本日は私の姉の為に来てくださり、ありがとうございます。」
カトレア様の言葉に自己紹介する俺とエレオノール様にルイズちゃん。
「よろしくお願いします。エレオノール様にカトレア様にルイズちゃん。」
あ。ヤバ。
「ん?」
「アラ?」
「ちゃん?」
ちゃんつけした事に気づいて反応する3人。
「すみません。お、私は小さな子を見るとついちゃんつけしてしまうクセがあるみたいでして。」
この辺は本当。前世から小さな子にちゃんつけしてしまうクセがあり、別に直す必要もなく、生涯を終えて今に至るというわけだ。
「まぁ、そういう訳でしたら。」
ルイズちゃんは俺の言葉に納得してくれた。そんな俺達をカトレア様は柔らかく微笑んでいた。その笑顔を見ながら、俺はこの笑顔を曇らせたくないな。そう思った。