初めて
「………で、父さん。何で自分は馬車に揺らされているのでしょうか?」
いつも通り、何らかの理由で王宮に向うのだろうと思い。行ってらっしゃいと馬車に乗り込もうとする父に言ったら、お前も来るんだ。と言われキョトンとする俺と、俺の従者を乗せて王都へ向かってしまったのだ。
「イヤ、私の意思ではなく、アンリエッタ王女様のご指示によるものだ。」
………へ?そ、それって、お、俺の人生終わった?
「若。王女様とお友達になれると考えるのがいいかと思いますが?」
「お友達に死地に飛び込めと言われそうで恐いんだが?」
俺の言葉にスバルは苦笑するのみだ。確かに原作のアンリエッタ王女は美人だと思う。王女という立場なら、お友達になることのメリットがあってもデメリットを見つける事は難しいだろう。だけどさ、頭の中がお花畑というか脳足りんというか、序盤とはいえ奇行が目立つと言うべきだろうか?
まず、最初の奇行は身勝手にウェールズ陛下に恋文を送った事だ。『恋愛は自由』そう言われると成る程納得だが、事、王族に限ってはそれは通用しない。王族って、いうのは民から権力を認められる代わりに民の事を第一に考えなければならない。たとえ大嫌いな人だとしても民のためならと笑顔で握手しなければならない。だからこそ、勝手に恋文など渡しちゃダメなんだ。次の奇行はやはり、友達のルイズちゃんを勝手に死地に送り込んだことだ。運良く戻って来たから良かったとはいえ、下手したらケガを、いや、最悪死んでいたかもしれない。そうなると、ヴァリエール公爵に報告しなければならず、『事前相談もなく戦場に大切な娘を送り込むとは何事だ』と反旗を翻していたかもしれない。次の奇行は、私怨に囚われてたくさんの人達を殺して事だ。確かにレコン・キスタの行動を考えると、いつかは攻め入らなければならなかったかもしれない。だが、私怨で兵士を戦場に送り込んだのは事実だ。そういった奇行があるからお友達になることがいやなんだよね。
王宮についた俺達は案内役の人の後をついていき、玉座の間には国王陛下とマリアンヌ皇后、アンリエッタ王女にヴァリエール公爵とルイズちゃんがいた。
「トリスティン国王陛下。御初御目にかかります。」
膝まついで述べる俺に国王陛下は
「ウム。顔をあげよ。」
その言葉に、顔をあげる。
「カウスよ。君の話は君の父君から聞いている。
これからも、トリスティンの発展に尽力を尽くしてくれ。」
「はい。」
「時に、カウスよ。」
「はい?」
何だろうと、首をかしげたら、とんでもない事を言ってきた。
「我が娘アンリエッタの遊び相手になっておくれ。」
「は?」
思わず間の抜けた声を上げた時には、すでにアンリエッタ王女に引っ張られていた。
「中々楽しいお嬢さん達ではないですか。若。」
「………これを見て本気でそう思うなら、大したたまだよ。スバル。」
俺は目の前のオーク鬼の群に目をそらさず、本気とも冗談ともつかぬ笑みを浮かべるスバルにそう言った。………最初のうちはまだ良かったが、何故か王都の外まで連れ出されてしまった。というか、何故にアンリエッタ王女が城の秘密の脱出路を把握している?まさか、ルイズちゃんとかくれんぼでコレを使っているとか?しかも、森の中を探検ゴッコしだしたのでかなり焦った。そして、その探検ゴッコの結果がコレである。俺は怯えるアンリエッタ王女とルイズちゃんに目を向け深々と溜め息をはいた。
「ハァ。戻り次第、陛下にお話ししますから反省してくださいね?」
アンリエッタ王女とルイズちゃんの頭を撫でオーク鬼に向う。
「来い!
俺の言葉に下半身が馬、上半身が翼を生やした人が弓矢で射ろうとするオブジェが現れた。
「来い!
スバルの呼び声に猛る牡牛のオブジェが現れた。人馬と黄牛。二つの黄金のオブジェはパーツ毎に分解され俺達を護る鎧となった。
俺達は体を軽く動かし不備がないかを確認してからオーク鬼の群に飛び込んだ。
「ガアアッ!!!!」
オーク鬼達はその俺達に鉄の棒を振り下ろそうとする。
ガキィッ!!
俺はその一撃を左手でガードする。さすがに
「セイッ!!」
驚いたオーク鬼の腹にその一撃をお見舞いした。
「ヌオオォォッ!!!!」
スバルの方はもっと単純だ。なんと、オーク鬼の手を取り押し合いっこしてるしかも勝ってるし。なんというか凄まじい腕力だ。
「スバル!仕留めるよ!」
そう言ってから魔法を放つ為のルーンを唱える。
「はっ!」
俺の声を聞いたスバルはオーク鬼をオーク鬼の群に向かって投げつける。そのまま腕組みしながら、後ろに下がる。
「インフィニティブレイク!!」
風の矢が無数に現れ、オーク鬼達を粉砕した。俺の力量不足故か、それとも、後方にいたせいでダメージを受けなかったのか、倒しきれなかったのがいたが、
「グレートホーン!!」
スバルの一撃がオーク鬼達を粉砕した。
「大丈夫ですか?」
俺はアンリエッタ王女とルイズちゃんを安心させるため微笑みながら近寄るのだが、近寄った分下がられてしまう。怖がられてしまったのかな?なんかすごいショックだ。
「若は女心というものを良く理解してくださいな。」
スバルは苦笑して忠告するがその意味が良くわからない。
「アンリエッタ!何を考えているのだ!」
城に戻り国王陛下に事情を話した直後、アンリエッタ王女は陛下に怒られた。隣ではルイズちゃんも同様だった。さすがに親バカと言えど、許せる範囲を越えていたのだろう。
ひとしきり説教が終わった陛下は俺に向き直る。
「ありがとう。カウス。君がいなかったらアンリエッタがどうなっていたか。想像することさえ恐い。」
陛下の言葉に俺は首を横にふった。
「いえ。たいしたことしてません。
それより陛下。ひとつお願いが。」
「分かった。………しばらくは退出してて。」
俺が言いづらそうなことをお願いすると察したのか陛下は家臣達を下がらせた。
「陛下。御厚意感謝します。
ヴァリエール公爵。今から話す事は普通なら信じてもらえないかもしれません。」
俺はそう前置きしてから語り出した。