「よくぞ盗賊達を倒してくれた。」
「いえ。お、私の部下の奮闘の結果でありお、私は何もしておりません。」
ガリア国王の言葉にそう返した。
「謙遜するな。シャルルの話では大活躍だったそうではないか。」
シャルル様の兄君のジョゼフ様はそう言って、シャルル様に話を振った。
「そうだね。サジタリウスとか言っていたかな?金色の鎧を纏った時から、殆ど一人で片づけてしまいましたからね。」
あの戦闘を一から見ていたシャルル様の言葉にガリア国王の横にいた男が興味を示したのか、問いかけてきた。
「金色の鎧とは?」
「以前、
「セイント?クロス?どちらも聞いたことがない。」
俺の言葉に少々、思いだそうとする仕草をした。まあ知っていたらビックリだけどさ。
「ここより遠方の地にて伝わる伝承です。それより、失礼ですが、国王陛下。御約束の件は御承知ですよね?」
「わかっておるわ。これを向こうの院長に見せるがよい。」
国王はそう答えて一枚の手紙を渡した。
「父様。一体何のお話でしょうか?」
「シャルル様。今回の一件が片付いたらセントマルガリタ修道院を、アウストラリス領に移設して欲しいと願い出ました。」
俺の答えにシャルル様は首を傾げていた。
「何でアソコが欲しいのかな?」
「それは、今申すことはできません。」
「どうしてもかな?」
「はい。少なくとも、今は。」
俺がそう言って視線を側近の人達に視線を向けると、意味を察したジョゼフ様が人払いしてくれたので頭を下げてから答えた。
「あそこには、シャルル様の御息女がおられます。」
「?ちょっとまて、シャルルの娘とはどういう意味だ?シャルロットならここにいるはずだぞ?」
「兄さん。シャルロットには双子の妹がいるんだ。」
その言葉に、答えにたどり着いたらしい。
「そして、彼女は虚無の予備です。」
「予備って?」
「もし、今代の虚無の担い手が亡くなられたら、彼女が虚無の担い手となります。」
俺の答えにシャルル様は震える声で問いかけてきた。
「そ、その今代の虚無の担い手は?」
シャルル様の問いに一拍の間を置いて答えた。
「今代の虚無の担い手はジョゼフ様です。」
SIDE シャルル
「今代の虚無の担い手はジョゼフ様です。」
ボクはその言葉にショックを受けていた。カウス君がどんな理由で兄さんを虚無の担い手だと断定したのかはわからない。でも、それなりの確信があったのだろう。僕は兄さんの事は好きだ。しかし、それと一緒に兄さんの魔法以外の才能に嫉妬している。僕も天才といわれているけど兄さんのそれは鬼才と呼んでも差しつかえないと思うでも、僕のプライドがそれを認める事が出来ない。だからこそ、血を吐く想いで魔法を鍛えた。兄さんを負けさせるには、それしかないからだ。でも、実は魔法でさえも鬼才だった。それじゃ、僕の努力は一体何のためだった?
「………おめでとう。兄さん。」
僕は兄さんを祝福していた。でも、その言葉は半分は本当。残りの半分は嫉妬という醜い顔を隠すための言葉だった。
「…シャルル様。その言葉は嘘ですね?」
だけどカウス君はそれを見透かしたかのように、言い出した。
「何のことだい?これは本音だよ?」
嫉妬を隠した言葉だけどカウス君には通用しなかったみたいだ。
「全部ではないでしょう?シャルル様。相手の見たい顔を望むのでしたらまずは自分から素顔でぶつかるべきです。」
カウス君のその言葉に悩んだが、結局ぶつけてみた。
「………悔しいよ。兄さんを負かせるために兄さんにはない魔法の才能を磨いたのに、それですら、僕はそれですら勝てなかった。」
「俺はうらやましかった。」
僕の慟哭に兄さんが答えた。
「俺も羨ましかった。お前の魔法の才能が。だが、素直にそれを認める事が出来なかった。」
兄さんはそう呟いて、僕の肩を叩いた。
「シャルル。俺達は愚かな兄弟だったな。」
僕は見たいものが見れた喜びに震えていた。
「そうだね。お互いに素直になれば見たいものが見れたのに。」
しばらく胸の内を言い合い、父様に向う。
「父様。虚無の系統は王族の血筋にのみ発現します。故に次期ガリア国王は兄、ジョゼフがふさわしいと思います。」
「………それで良いのか?」
兄さんの問いに、迷いなく答える。
「いいんだ。兄さんを大事に思ってるのも本音だからね。」
僕はそういってからカウス君に振り向いた。
「ありがとう。カウス君。おかげで大事なものを手放さずにすんだ。たいした持て成しは出来ないが、良ければ寛いでくれ。」
SIDE カウス
寝つけなくてブラブラと出歩いていたら、中庭で青い髪の女の子がいた。青い髪の毛はガリア国の王家の証。ましてや鮮やかな青い色はガリア国王の身内だろうな。という事は彼女はイザベラかシャルロットちゃんか?彼女は杖を手にして、魔法の練習をしていたようだが、上手くいかない成果に膝をついていた。確か、イザベラは魔法が苦手だったよな?
「なんで………何でアタシには魔法が上手くいかない?」
「こんばんは。」
声をかけたら、ビックリして俺を見た。
「だ、誰だい?………あぁ。トリスティンからの客人ってアンタかい?」
「はい。お、私はカウス・ド・アウストラリスと申します。」
「アタシはイザベラだよ。
………ところで、アンタ猫被ってるだろ?」
「わかります?」
俺の問いにイザベラ様は胸を張り答えた。
「まぁね。俺と言いかけて、私に言い直したからね。大方家名の恥になるのを恐れたんだろう?」
流石、頭脳チートのジョゼフ様の娘さんだ。
「その通りですイザベラ様。」
「イザベラで良いよ。でも、女に俺は似合わないと思うよ?」
「失礼ですが、イザベラ。俺は男です。」
「ウソ!それホント!」
俺の言葉に思わず叫んで、俺を凝視する。そして、ごまかすように話を変える。
「ところで、アンタは何でここに来たんだい?」
「コレは内密にしてください。」
話そうとするのをイザベラが止めた。
「ついでに、敬語も止めてくれないかい?ここにはアタシとアンタしかいないんだし。」
思いもよらない言葉だが、それに乗っかる事にした。
「シャルロットちゃんには双子の妹がいるんだ。」
「………ガリアには双子は忌み子。もし産まれたら片方はいなかったことにしなければならない。」
「そういう事。でも、産まれてきた我が子を消すことは出来ずその子を修道院に渡した。」
俺の言葉にイザベラは睨むように俺を見つめた。
「アンタの狙いはその子か。まさか、その子を利用してガリアを利用する気なの?」
「まさか。だったらジョゼフ様の娘のイザベラに話さないよ。その子を利用する輩から守るためだな。
ところで、イザベラ。さっき魔法の練習してたみたいだけど、魔法が苦手なのか?」
俺の言葉にイザベラは気まずそうに目を伏せる。
「あぁ。そうさ。全く使えない訳じゃないけど、殆ど魔法が使えないんだ。」
その言葉には苦味が混じっていた。
「良いんじゃないか?人間、得意なものも有れば苦手なものもあるし。」
「でも、ハルケギニアは魔法が使えと無能扱い。だから、早く魔法が使えるようになりたい。」
そうか、イザベラは魔法が使え無いためにいろいろ苦労してたんだろうな。
「なら、焦るな。焦りは余計な力みを生み余計な力みは物事の失敗を導く。」
「それは、カウスみたいに使えるから言えるのさ。」
ム。確かに。魔法が使えない者からしたら嫌味かもしれない。
「じゃ、イザベラ。俺が魔法を教えるのはどうだろうか?」
「ハ?カウスが魔法を?」
俺の提案にすっとんきょうな声をあげ、俺を見ていた。
「俺のせいでイザベラに不愉快な想いをさせたんだから何かしらのお詫びしなければいけないんだし。これぐらいしか思いつかないから。それに今までの勉強方法でだめなら、別の勉強方法でならより良い成果が出る場合もあるし。」
「それなら、教えてもらおうじゃないか。」
イザベラの言葉に笑みを浮かべる。
「自分の勉強方法は、それぞれの現象を理解してイメージすることから始まります。」
「現象?」
「ええ。例えば、雷が光った後に、音が鳴るのはなぜか?そういったことを理解することです。例えば、凝縮ですが、なぜ、水が発生するのか?」
「魔法で水を生んでいるからじゃないか?」
俺の問いにイザベラが何を馬鹿な事と言った感じで問いかけてきた。
「ちょっと違いますね。空気中にも、水は含まれています。微細すぎまして、目視することはできませんが。お風呂にお湯を張ると白っぽい靄が上がりますが、それが気化した水分です。凝縮はその名の通り、空気中の水分を集めて水を発生させているのです。」
「分かった。お風呂のあの靄の逆回しをイメージすればいいんだね?」
イザベラの問いに首を縦に振り答えた。
「わかった。やってみる。」
可愛らしく力こぶを作って宣言する。そして、ルーンを詠唱して杖を振り下ろした。
「凝縮!!」
しかし、そこに水滴の一滴すらも生まれない。
「上手くいかないじゃないさ!!」
その様を見て、怒りながら俺に詰め寄る。
「イザベラ。魔法を成功させる最大のコツがあります。」
「何だい?それは?」
「自信を持つことです。木の棒をべぎぃとへし折ることができて当然だと同じ事と思うことです。今まで苦手だと思いながらやっているでしょう?」
その言葉に首を縦に振る。
そして、再びルーンを唱える。そして、
「凝縮!!」
振り下ろした杖の先に水球が生まれた。確かにコップの半分しかないが、間違いなく彼女の力で発生させたものだ。
「で……出来た?」
「おめでとうございます。イザベラ。やればできるじゃないですか。」
「や。」
「や?」
「やったあぁぁぁぁぁ!!!!」
イザベラはうれしさのあまり満面の笑顔で俺に抱き着いていた。