ペルソナカグラ FESTIVAL VERSUS -少年少女達の真実-   作:ゆめうつつ

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特に何の変哲も無い説明回。
早いとこストーリーを進めて理たちをイチャつかせたい。ハーレム万歳。
でもその為には信頼関係を築く展開が必要というジレンマ。
チョロインはあんまり登場させたく無いんですよね……。嫌いではないですけど。


6話 戦いのあと

 2009年 4/7 深夜―――― 

 

「…………」

「…………」

「「「……………………」」」

 

「「「(く、空気が重い……)」」」

 

沈黙が全てを支配していた。

異形の襲撃を退け、被害者を保護した後、件の少年こと結城理は半蔵学院の裏の顔、忍学科の校舎へと案内された――――であったのだが、この有様である。

忍学生の全員が、理の雰囲気に呑まれてしまい、嫌でも理解してしまう。

 

彼は、まさしく『異常』なのだと――――

 

不可思議な『能力』を持っていると言っても、彼はつい先程まで『表』の世界で生きていた人間だ。

それなのに、いきなり『忍』や『忍学科』といった半蔵学院の裏の顔を説明されても、眉ひとつ動かさず、その言葉を受け入れた。

尋常でない程に肝が据わった大物であるのか、或いはそれを理解できない馬鹿であるのか――――、彼女たちには今だ判断が付かなかった。

なお、霧夜は理に忍学科の簡単な説明を行った後、緊急の用事が入った為少しの間だけ席を外すと言い、この場に彼らを残したまま退室してしまっている。

残された面々でコミュニケーションをとってもらう目的だったのかもしれないが、明らかに失策であった。

 

「……ねぇ?」

「は、はい、なんでしょう?!」

 

そんな最中、沈黙を破ったのは理からであった。

話しかけられた飛鳥が飛び跳ねんばかりに驚き、上ずった声を上げる。彼女の奇妙な行動に僅かに眼を瞬かせるが、気を取り直して、理は問いかけた。

 

「もう帰っていい?」

「い、いやいやいや! 駄目だよ早すぎるよもう少し頑張ろうよ!」

 

そして告げられたまさかの言葉に、慌ててツッコミを入れることとなる。尤も、こうも沈黙が続いては仕方のない言葉であるだろうが。

肝心な話も無く、益体も無い時間が続く以上、理がここに留まる必要性は無いのである。

 

「ほら、やっぱり黙ってばかりじゃ駄目だよ、うん! そうだ、お話でもしよう!」

「はぁ……」

 

飛鳥は理を引き留めるため、無理やりにでもコミュニケーションを図ろうとする。

まずは何から話すべきだろうか――――と、其処まで思い到って、根本的なことを思い出した。

 

「――――っていうか、私たちまだちゃんと自己紹介すらしていないじゃん!」

「「「あっ!?」」」

 

どうやら事ここに至って、飛鳥以外の四名は挨拶の一つすら交わしていないことに気が付いたらしい。それ程までに理の纏う雰囲気が異常であったとも言えるのだが。

 

「という訳で、まずは自己紹介から行うね。じゃあ改めて私から!

 名前は、飛鳥っていいます。将来の夢は立派な忍になること。好きな食べ物はじっちゃんの太巻きだよ!」

「……結城 理です、よろしく」

 

その天真爛漫な――半ばやけっぱちだが――自己紹介に気圧されたように、理も漸くコミュニケーションを行う。

ただ簡単に挨拶した程度ではあったが、それだけでも大きな一歩だ。その事実に斑鳩たちの緊張も解れ、自己紹介を行うのだった。

 

「斑鳩です。この忍学科のクラス委員を担当しております」

「アタイは葛城だ。趣味は、女の子へのセクハラだぜ!」

「……柳生だ。雲雀は私が守る」

「えっと……、雲雀だよっ」

「……よろしく。(……なんだこれ?)」

 

理も返事を返すが、いろいろとツッコミどころの多い自己紹介である。

斑鳩と名乗った少女は良い、見た目も中身も優等生タイプの人間なのだろう。が、その後が問題であった。

女の子へのセクハラが趣味だと豪語する葛城。『雲雀を守る』と言うがその眼つきが危なっかしい柳生。警戒心を露わにする雲雀。

正直、理ですらこの様な状況でなければ関わり合いになりたくないメンツであったが、こうなった以上は腹を括るしかないであろう。

 

(……まぁ、どうでもいいか)

 

――――その決意もまた、思考放棄という結果でしかないのであったが。

 

「ゴホン、ではいい加減に話し合いを始めましょう。よろしいですか?」

 

漸く話し合いの場が進展し、発せられた斑鳩の言葉に理は頷く。状況さえ進行すれば、彼が帰る理由が無くなるのだから。

 

「結城さん、単刀直入に言えば私たちは『情報』を求めています。

 具体的には、飛鳥さん、そして私たちが襲われた化け物――私たちは『妖魔』と呼びます――と、貴方が持つ『能力』についてです。

 既にご存知かもしれませんが、あの妖魔には私たちの攻撃が殆ど通じません。……あまつさえ殺されかけてしまいました」

 

飛鳥がびくりと身体を震わせる。彼女は忍学科メンバーの中で唯一、あの異形にただ一人で対面した経験を持つ。それ故に、あの異形に殺されかけた瞬間を思い出しているのかもしれない。

斑鳩は彼女に向け「すみません」と軽く呟いて、続きを話し始める。

 

「ですが、そこに現れたのが結城さん、貴方でした。

 貴方は妖魔に立ち向かい、私たちを救ってくれたばかりではなく、妖魔と同じような能力でもって倒しました。

 それ故に、貴方が何かしらの情報を持っていると踏み、こうしてお呼びいただいたわけです」

 

斑鳩は其処で一旦言葉を切り、理の顔を正面から見据える。

その眼には、どこまでも強い決意が揺らめいていた。

 

「厚かましいお願いかもしれませんが、それを我々に教えてほしいのです。

 勿論、それなりの謝礼をさせていただきます。……結城さん、どうか私たちに力を貸していただけないでしょうか」

 

そして斑鳩は、その場で深々と頭を下げる。

脚を正座の形に組み、三つ指を付いてのその姿勢は誰がどう見ても土下座の形であった。

 

「アタイからも頼むぜ。その妖魔の奴らはかなりヤバイみてーだからな」

「頼む。雲雀を――――もとい、人間を守るのが忍の使命なのだ」

「うんうん、ありがとう柳生ちゃん! 私もいーっぱい頑張るからねっ♪」

 

次いで、葛城、柳生、雲雀が思い思いの言葉を口にする。

葛城は先程までの砕けた態度は何処へやら、年長者としての雰囲気を纏わせ、理へと協力を乞うた。

柳生の言動は相変わらずアレだが、内容こそまともであるし、雲雀の態度もその彼女を信頼しているからこそなのだろう。

理には、彼女たちが、忍というものが、それ程までに異形の情報を欲しているのかを伺えた。

それは当然だろう。彼とて、あの異形がどれ程人間社会に多大な影響を与えるのかを気付いている。

 

「……事情は分かった」

「っ、では!」

「――――だけどそれでも、君たちの力になることは出来ない」

「そんな、どうして!?」

「飛鳥、俺は言ったよね。『話せることなんか何も無い』って」

 

理がかつて、別れ際に放った台詞を思い起こしながら、理は飛鳥に問う。

なお、彼が飛鳥を呼び捨てにするのは、単に彼女の苗字を知らない為だ。尤も、『飛鳥』という名はあくまでも忍としての偽名である為、苗字など存在しないのだが。

それでも名前を呼ばれたことに僅かに胸を高鳴らせつつ、彼の言葉に反論する。

 

「確かにそうだけど……。でも、少しくらい奴らの事を教えてくれても――」

「……? ああ、もしかして勘違いしてない?」

 

勘違いしている、だって? そう言われた忍学科メンバーが、皆一様にして首を傾げる。

そして、唯一彼の言葉を聞き、僅かに違和感を覚えていた飛鳥だけが、その答えにたどり着く。

だが、飛鳥がその回答を発する前に、当の理自身によってその答えが、そしてこの場の爆弾になりうる言葉によって紡がれるのだった。

 

「俺はあの『化け物』も、この『能力』も――――、一体何であるのか、何も知らないんだから」

「「「「「…………えええぇぇぇーーーーーーーーーーっっっ!!!???」」」」」

 

 

     ◆

 

 

「『能力』が使えるようになったのは、十年くらい前だ」

 

彼女たちがひとしきり驚き通した後を見計らって、理は語りだした。

誰も彼もが、理が肝心な情報を持っていないことに驚愕し、放心状態のまま聞き入っている。

 

「それからあのバケモノに毎夜襲われるようになったから……、自分の周辺の奴らを『掃除』するようにしているんだ。……飛鳥と出会ったのも、その所為だね」

 

あの異形の討伐を、彼は『掃除』と表現した。彼女たちは彼が見せた流れるような戦闘から、その技量の高さを知っている。

十年近く行っているその行動は、彼にとってもはや『作業』となってしまっているのだろう。

そして、その言葉に深く納得したのは葛城であった。彼女が理の強さに違和感を感じていたのは、こういった事情が有ったのだ。

 

「だけどその十年の間、この能力に関する情報は一切手に入らなかった。

 あと、君たちみたいな組織が接触してきたり、同じような能力者も見かけなかったな」

「……じゃあ、あの妖魔の名前すらも分からないって言うのか?」

「……名前? そっか、名前も必要だよな……。…………『シャドウ』でいいんじゃない?」

「今決めたのかよ!?」

 

いち早く硬直から復活した葛城が異形について情報を聞き出すが、そもそも名前すら定まっていなかった様だ。その場のノリで名前を決めてしまった理にあきれる様に、彼女たちは天を仰ぐ。

しかし、そのネーミング自体に反論は無い。地面を這いずる黒き姿はまさしく、『(シャドウ)』というに相応しい存在であったのだから。

そして、十年近くシャドウに付き合いのある理ですらこうなのだから、彼及び彼以外の人間が、シャドウや能力の情報を持っていないのは確からしい。

かといって、彼以外にシャドウや能力に精通する人間が居ないのも、また事実であるのだ。

 

「どうすんだよ、オイ」

「想定外だ……。まさか当の本人ですら、能力の詳細を知らないとはな……」

「だけどっ! あの力が無いと、たくさんの人が困るのも事実だよっ?」

 

ひそひそと囁き合う少女たちは、無益な情報を掴まされた恨みつらみを含めた視線を理に送る。

されども、そんな姑息な真似をしたところで事態が好転する訳でもなく、当の本人もどこ吹く風であった。

完全に手詰まりとなってしまった忍メンバーは、理のその様子を見て暗い影を落とす。だからこそ、そんな最中でぽつりと呟かれた斑鳩の言葉に、その場の誰もが耳を疑ったのだ。

 

「――――結城さん、私たちの仲間になっていただけないでしょうか?」

 

飛鳥たちは、始めは斑鳩のその言葉を冗談だと受け取った。その直後に、彼女の眼を観て、その言葉が本気であることを悟った。

そもそも斑鳩が、この様な場で冗談を言うような性格ではないことを彼女たちは知っている。そのことを失念するほどに、彼女の言葉は衝撃的であったのだ。

 

「一般人である貴方に、この様な提案をするのは筋違いだと理解はしています。

 しかし、我々が妖魔――――いえ、シャドウから人々を守るためには、どうしても力が足りません。

 …………貴方の力が必要なのです。どうか、今一度お願い申し上げます」

 

そう言って、斑鳩は再び頭を下げる。当たり前だが、忍学科のクラス委員長を務める彼女の頭というのは、決して安いものではない。尤も、理が持つシャドウに対抗できる能力は、それを補う程の対価が有るのもまた事実だ。

だが、それを言われた理自身は何と――――、何時もと変わらぬ無表情であり、そうして紡がれた彼の言葉に今度こそ誰もが言葉を失った。

 

「…………分かりました」

 

あっさりと、理は死地へと足を踏み入れるに等しい言葉を答える。それこそ、斑鳩自身すら驚愕するほどに。

果たして、その眼に浮かんでいるのが驚愕なのか、納得なのか、或いは諦観であるのか。それすらも、彼女たちには判断が付かないのだった。

 




今明かされる衝撃の真実! 何とこの理は、今だにペルソナ能力に(完全には)覚醒していないのだった! ……後々ちゃんと覚醒しますのでご安心を。尚、現時点でのスキル内容は《火炎魔法(アギ)》と《回復魔法(ディア)》のみ。尤もレベル自体はそこそこなので、雑魚には負けませんが。どうしてこうなったのかは、重要な伏線になる……筈?

しかし展開上仕方ないとはいえ、無口キャラが饒舌になると違和感がパネェ……。
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