ペルソナカグラ FESTIVAL VERSUS -少年少女達の真実- 作:ゆめうつつ
ということで、理たちを試験的にイチャつかせてみる。というかToLOVEらせる。(ゲス顔)
……が、書いてみて思った。この男にラキスケは似合わんッ!
それは、忍学科が理との共闘の契約を取り付け、更に細かな話し合いを始めようとした矢先の出来事であった。
「……あぅ」
「えっ? きゃあ!」
なんと、理はいきなり倒れ込むようにして、斑鳩の胸に身を預けたのである。
向かい合って座していた為に、理の顔が丁度斑鳩の双丘の谷間に挟まれるような形となり、図らずも彼を優しく受け止めていた。
そして突然の出来事に斑鳩はらしくない悲鳴を上げ、身を硬直させる。それがいけなかった。
「ええ!? なにやってるの、結城くん!」
「おおお! なんだなんだ、いきなりどうしたってんだ結城ィ! 羨ましいぞコンチキショー!」
飛鳥が戸惑いの声を上げ、葛城が面白がって囃し立てる。
柳生は無言のまま「やらかしやがった」とでも言いたげな表情を浮かべ、雲雀の目を塞いでその場面を見せない様にしていた。
一瞬にして場は混沌とした状況に包まれ、先程までの真剣な雰囲気は何処に行ったと思いたくなるような光景だ。
斑鳩もようやく再起動し、不埒な行動に出た理を張り倒そうとして、その両肩に手を添えて――――
「……ねむい」
そんな彼の呟きを聞いて、はたと己の行動を制する。
理の肩を抱いたまま時間を確認すると、既に深夜一時を過ぎ、彼らの様な学生が起きているには相応しくない時間帯となっていた。
しまったと内心思い、斑鳩は眉根を寄せる。始めの呆けていた時間が、今では余りに惜しい。
人類の敵シャドウを討伐するには、彼の力が絶対的に必要である為、今は直ぐにでも彼との契約内容を押し詰めたいのである。
しかし、流石にこうなってしまっては話し合いを続けるなど不可能であろう。
いや、それだけではない。そもそも、ついさっきまで彼はシャドウとの戦闘に身を投じ、自分たちの命を救ってくれたのだ。
理の能力とて、少なくない代償を必要とするのは斑鳩たちにに説明され済みである。
彼の説明では、能力の発動は『精神力』を対価とするという。つまり、現在の理は精神を疲弊しきっているのだ。
今回は、その疲弊が眠気となって表れているのだろう。そう気が付けば、この様な役得くらいはさせてしまってもいいのではないかと思いもする。
……するのだが――――
(は、恥ずかしすぎる――――!)
いくら何でもそうはいかない。
周りの全員が彼の疲弊を察し、無言のままに休ませるべきだという意見で一致はする。
故に、誰も手を出さない。生暖かい視線で斑鳩たちを見つめるだけだ。
約一名が剣呑な視線で見つめてくる。
約一名が好奇の視線で見つめてくる。
約一名が無表情のまま、残り一名の目を塞いだまま見つめてくる。
そんな雰囲気に、斑鳩の羞恥心が蓄積されていく――――
「ん……やわらか……、まくら…………?」
そこで斑鳩の羞恥は臨界に達し、理を思い切り突き飛ばして、この騒動は収束するのだった。
◆
「……すいませんでした、今回は此処までと致しましょう。飛鳥さん、彼の送迎を」
「はい、任せてください! えっと、結城くんは何処に住んでいるの?」
「……ん」
理はもはや意識朦朧であるのか、のろのろとした動きで懐から何かを取り出す。
どうやらそれは、彼の学生証であったらしい。実家通いにせよ寮住まいにせよ、コレに記載された住所を見てくれということだ。
しかし、その学生証を見た飛鳥が突如として顔色を変え、叫んだ。
「えっ、これってウチの学生証じゃない! 結城くん、半蔵学院に通ってたの!?」
「「「何ですって(だって)(だと)!?」」」
三者三様の叫びが木霊する。まさか今事件の渦中にいる彼自身が、我らが半蔵学院に通っていようとは想像だにしなかったからだ。彼女たちとて、このマンモス校に通う全ての生徒たちを把握しているわけではないが、理がその生徒の一人であるなどは寝耳に水もいいところである。
「そういえば、朝の登校時に結城くんみたいな人を見たような……」
飛鳥はつい朝方の登校時間帯、入学式での人混みに紛れて、『青』の存在が有ったことを思い出す。それはつまり、理はこの半蔵学院に入学してきた生徒だということであった。
しかし、其処で新たな疑問が彼女たちに生じる。即ち、彼がどうしてこの半蔵学院に入学してきたのか、ということだ。
一月前の理と飛鳥の会合では、彼女は自身が半蔵学院の生徒であることなど一言も発しておらず、彼が飛鳥と半蔵学院を結びつけることは有り得ない。
もしくは、表向きは普通の進学校である半蔵学院に編入してきた可能性もある。
だが、かつて彼らが遭遇した地から遠く離れた、ここ以外にも進学校が多数あるこの東京の半蔵学院にピンポイントで編入してくる可能性など限りなく低いだろう。
結局、彼女たちがどう頭を捻っても納得の行く回答が出ず、当の理自身は既に寝息を立て始めている始末だ。
斑鳩は一旦思考を打ち切り、この後で学院の資料を徹底的にかき集めて彼の履歴を調べることに決める。恐らく、今夜は完徹になることだろう。
そんな人の気も知らずに、ぐーすかと惰眠を貪っている理に僅かな苛立ちを感じつつ、この場を収めることにするのだった。
「はぁ……、もういいです。飛鳥さん、お願いします」
飛鳥は夢うつつな理の手を取って外へと引っ張り出していき、暫くすると「おおっ」という理の短い困惑の声が全員に届き、そして聞こえなくなる。
忍学科の校舎の窓からは、理を所謂お姫様抱っこの形に抱えた飛鳥が、忍の跳躍力を以て、月明かりの指す街へと彼を運んで行った。
なお、その役目に飛鳥を指名したのは、彼女の理に対する思いを汲んでのことである。
しかし、斑鳩たちは一度彼と相対して、色々と思うことが出来てしまった。
「……どう思います、彼を?」
何処か遠くを見つめる様にして、斑鳩は仲間たちに問いかける。だが、その答えなど解りきっているも同然だ。
「あー……、何て言えばいいのか……」
「直接顔を合わせて思ったが……」
「悪い人じゃないようだけど……」
葛城、柳生、雲雀の三人は言葉を濁しつつも、斑鳩の問いに答える。即ち――――
「「「分かり辛い」」」
――――人物評価としては、余りにも程遠い答えを。
ハッキリ言って理は、どう考えても『怪しい』に分類されるべき人物であるだろう。
だが、それは必ずしも彼が『悪』という存在であることの証明にはなり得ず、逆に『善』であることの証明も出来ない。
飛鳥や自分たちの命を救った――、だがそれは単なる作業の一環であった。
『シャドウ』や『能力』の詳細を教えてくれなかった――、だがそれは彼自身も与り知らぬ事であった。
そして何よりも、彼の『眼』は彼女たちを恐怖させた。その『眼』には、余りにも何も浮かんでいないからだ。
分からない、分からない、分からない――――。結城理が一体何を考えているのか、斑鳩はまるで分からなかった。
決定的であったのが、斑鳩たちがシャドウに襲われて理に救援を申し出た際、彼が何の躊躇いもなくそれを受け入れたことだった。
あれではまるで、ただ指示に従うだけの『
(危なかった――もし、私たち『
『悪忍』、それは彼女たち『善忍』と対を成す、己の欲望を最優先とする者たち。
もしもこの世に混沌を望む者たちが彼を先に確保していたのならば――、理は文字通りにその者の傀儡となっていただろう。
それこそが『善』でも『悪』でもない、『
「――い、おい、斑鳩! 何時までボーっとしてるんだよ!」
「っ、すいません。少し考え込んでいたようです」
「……やはり、アイツは危険か?」
其処で葛城に声掛けされ、思考の渦へと沈んでいた斑鳩を現実へと引き戻す。
そして、深刻な表情で思い悩んでいた彼女に絡んできたのは、彼をどこか危険視する様子の柳生であった。
「いえ、少なくとも今の状態ならば危険は無いでしょう。……我々が、彼の手綱を握っている限りは。
……これからは、交代制で彼の監視を続けることにします。間違っても、悪忍などに彼の存在を漏らす訳にはいきません」
斑鳩は重々しい口調で宣言するが、内心で我ながら酷い話もあったものだと思う。仮にも命を救ってもらった相手だというのに、まるで信用できないとは。
尤もそれは程度の差はあれど、この場に居る誰もが抱いている思いでもある。例外は、自分たちよりも先に命を助けられた飛鳥ぐらいのものだ。
斑鳩は、そんな風に人を信用できる飛鳥を少しだけ羨ましく思うのであった。
◆
「……すまない、遅くなってしまった」
斑鳩が理の資料を纏めるために、移動を開始しようとしたところで、それに待ったをかける声が聞こえた。
虚空から煙幕をまき散らし、悲痛な顔をして現れたのは、緊急の用事で席を外したはずの霧夜である。
「霧夜先生、お疲れ様です。緊急の用事とは、一体何が有ったのですか?」
「ああ、件の妖魔に関しての被害報告なのだが……。想像以上に厄介なことになっている様だ」
霧夜はそう言って一度目を伏せ、苦虫を噛み潰したような顔をしたまま言葉を紡ぐ。
「お前たちが保護した妖魔の被害者を検査したところ、彼は『無気力症』と診断された。
恐らく、ここ最近の無気力症の原因は、ヤツらにある」
「なんですって!?」
その言葉を聞いた斑鳩たちは顔を青ざめる。
『無気力症』――――、それは最近流行し初めている疾患である。患者はある日突然、何事にも無気力となってしまう様子からこの名が付けられた。
だがその実態は、患者は介護なしでは生きられなくなってしまう程の恐ろしい病だ。巷では既に衰弱死、孤独死による死亡者が多数出ており、深刻な社会問題となっている。
一月前に飛鳥が保護した男性も無気力症と診断されていたが、発見された時点で発症していた為に、無気力症とシャドウとの因果関係が成立しなかった。
しかし今回、健常者であった筈の男性が彼女たちの目の前でシャドウに襲われ、保護した直後に無気力症を発症していた為に、原因がシャドウだと特定することが出来たのだ。
「もはや、我々に残された手段は無い。一刻も早く彼との協力を取り付け、妖魔討伐に繰り出さなければ――」
「……結城さんとの協力は既に取り付けました。後は、細かい契約内容を押し詰めるだけです」
「何? ……いや、そうか」
霧夜は理解したとばかりに溜息を吐く。霧夜は理とはまだ面識は少ないが、彼もまた、理の意志薄弱ぶりに危ういものを感じていたのだ。
それでも、共に戦ってくれることとなった理に感謝と、申し訳なさを募らせていた。
最上忍という高い実力と地位を有する霧夜であるが、彼は基本的に生徒たちに手を貸す等という直接的な行動をとることは出来ない。
今回の妖魔襲撃という場合であっても、その掟が覆ることはなかった。故に、どうすることも出来ない自身に歯噛みをしている。
(すまない、皆。そして結城くん……。君たちに重い役目を負わせることになってしまって……)
それでも、彼は信じている。飛鳥たちが、結城 理が、この悪意に満ちた現状を打破してくれることを。
だが、窓から見た外の町は夜の闇に染まり、暗澹とした彼の心情を表しているようでもあった――――
◆
――――時間を少し遡る。
理を抱きかかえた飛鳥が向かった先は、半蔵学院高等科の男子寮であった。学院付属の寮である為、大した時間もかからずに到着したのだが、ここからが大変である。
深夜一時を過ぎているとは言えども、巡回中の警備員が居り、今だ起きている生徒も少なくは無いだろう。飛鳥はそんな寮内を、理を抱えたまま、高度な隠密行動をとる羽目になっていた。
しかし、飛鳥とて忍である。この程度の潜入任務ならば幾度もこなしており、ましてや忍などでない寮内の人間に、彼女が後れを取る筈が無かった。
尤も、色々な意味で気になっている男性を抱えているという状況に飛鳥は、心臓の鼓動を高鳴らせっぱなしであった。その音が誰かに聞こえやしないだろうと、内心ビクビクとしていた程である。
兎にも角にもそんな障害を乗り越えて、漸く理の部屋の前まで到達し扉を開けようとするが、その時になって飛鳥はあることに気付く。
「おっと、鍵を開けないと。……結城くーん、起きてー?」
「……すー」
当然と言えば当然だが、部屋の扉には鍵がかかっている。理を起こして開錠を頼もうとしたのだが、完全に熟睡している為それも叶わない。仕方なく飛鳥は理の懐を探り、鍵を探し始める。だが、真っ先に眼についたあるモノが、彼女を捉えて離さなかった。
「これって……、『鍵』だよね?」
それは、彼の首から細いチェーンで下げられていた『鍵』であった。
青一色の本体に、柄に彫られた仮面の彫刻が高級感を漂わせる、アンティークな逸品だ。しかし、見た目からしてとてもこの部屋のモノとは思えないし、実際に違うのだろう。
好奇心から手に取ってみると、硬い質感と冷たい温度がぼんやりと伝わってくる。この不思議な感覚をどう表せばいいのか、飛鳥には分からなかった。
「……うぅん」
「ひゃっ!?」
突如響いた声に、飛鳥は飛び上がらんばかりに驚いて、思わず辺りを見回してしまう。
それは単に理が寝ぼけた声を出しただけだったが、彼女を正気に戻らせるには十分だ。どうやら、たかが鍵一つに気を取られすぎていたようである。
気を取り直して飛鳥は再び理の懐を探るが、依然として部屋の鍵は発見できない。ならば、ズボンのポケットに仕舞われているということだと気付き、ズボンへと手を伸ばすがふとそれが止まる。
……流石に、男性の股間に近い部位を探る勇気は出なかった様だ。その為飛鳥は、ピッキングによる開錠を行ったのであった。
「そういえば、父さんやじっちゃん以外の男の人の部屋に入るのって初めてかな?
うわ、ちょっとどきどきして来た。それじゃあ、お邪魔しまー……、す…………?」
飛鳥は理の部屋の様子を見て――最早何度目になるのだろう――言葉を失う。
理の部屋は、テレビや冷蔵庫といった家電に始まり、巨大なベッドに衣装棚、簡素なキッチンが備え付けられているという、一学生に与えられる部屋としては相当に上等な代物である。今飛鳥たちが居るこの場所も、男子寮の最上階なのだ。
しかし、飛鳥が驚愕したのは、それらに何の変わりも無い――――、変わりが無さ過ぎる、人間が住むには余りにも生活感が無い内装であった。
部屋の内装というものは、純和風であったり、ぬいぐるみ塗れの可愛らしい部屋であったり等、多かれ少なかれ人間性が出るものだ。
だが、この部屋はそんな人間性が全く感じられない無味乾燥な内装である。そこで飛鳥は、この部屋の違和感の大本に気付く。
(この部屋……、結城くんのモノが殆ど無いんだ)
例えば漫画や小説などの蔵書、或いはゲームといった娯楽品。そういった彼特有の物品がこの部屋には存在しないのだ。
精々が最低限度の衣服や制服、参考書、机の上に置かれた学業用と思われるノートパソコンといった程度だった。
果たして理は、一体どのような人生を歩んできたというのだろう。飛鳥は熟睡している理を、そっとベッドに寝かせ、その顔を見つめた。
「ん……」
ベッドに横たわり、月明かりに照らされ微睡む理の姿は、男とは思えない程の色気を発している。
収まったはずの飛鳥の鼓動が、再び早くなる。もう何度も味わった、不思議な感覚だ。それが良いモノなのか悪いモノであるのか、飛鳥には今だ判断が出来ない。
だが、ただ一つだけ確実な事が有るとすれば――――
(――――私は、結城くんを■■たいと思っている)
そんな、内に秘める欲望だ。
どれぐらいそうしていたのだろう。飛鳥はふと我に返ると、そんな感情を抱いた自分を信じられないでいた。
それはまるで“もう一人の自分”が存在するかのように、有り得ない妄想であったのだ。
(な、何を考えてるの! 結城くんはそんなんじゃないんだから!)
一体誰に言い訳しているのか。飛鳥は頭を振り払うようにして、そんな感情を追い払ってしまう。
暫くそうして頭を冷やしていると、時刻は午前二時過ぎとなってしまっていた。いい加減飛鳥も休息を取らなければ、明日へと響いてしまう。
「じゃあ、私も帰るから。おやすみなさい、結城くん」
既に寝入っている為、理には聞こえないだろうが、飛鳥は別れの挨拶を伝える。それが微妙に気恥ずかしかったりするのだが。
これで全ての用を済ませた飛鳥は部屋の窓に足を掛けると、其処から一気に跳躍し、彼女自身の寮へと戻っていくのであった。
◆
暗い部屋の中で、少年は薄目を開け、窓の方に顔を向ける。
そして、誰に聞かせる訳でもなく呟いた。
「…………………………………………おやすみ」
やはりその呟きは誰にも届くことなく、夜の闇夜に溶けていくのだった――――
現状での斑鳩たちの理への好感度はほぼ0です(飛鳥はコミュランク1~2くらい?)。怪し過ぎるから仕方ないねッ!
ペルソナ3序盤でもこんなふうにギスギスしていたけど、最終的には4みたいに仲良しこよしにさせますから。ええ、させますとも!