IS学園で、鈴と一夏のクラス対抗戦が終わった後。学園の生徒、鷹月静寐の視点から語られる物語のワンシーン。

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初投稿です。どんな感じなのか感覚が掴めないので、簡単な文を置いてみました。




第1話

「き、今日からこの部屋の同居人になる。篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

 

彼女が部屋に入ってきて最初に言ったのは、緊張気味な挨拶だった。

 

女性しか動かせないISを動かせる世界でたった一人の男性、織斑一夏くんと、中国の代表候補生の凰鈴音さんとのクラス対抗戦が終わってすぐのこと。

 

私こと、一年一組に所属する鷹月静寐の新しいルームメイトになったのが、この緑のリボンで結ったポニーテールと羨ましいくらいに大きな胸が特徴のクラスメイトの女の子。篠ノ之箒さんだ。

 

「篠ノ之さん」

 

「な、なんだ?」

 

「別にそんな肩肘張らなくていいよ? いつも教室であってるじゃない」

 

「そういうわけにはいかん。世話になる身として、礼儀は通さなくてはならない」

 

「な、なるほど。とりあえず入ってよ。ベッドは窓際のを使ってね」

 

「ああ」

 

新たな同居人さんを招き入れる。

 

「荷物は好きなところに置いてね。あ、でも自分のだってわかるようにだよ?」

 

「承知した。荷物はさほど多くはないから安心してくれ」

 

荷ほどきを始めた篠ノ之さん。

 

クラスの副担任の山田先生に、ルームメイトの変更を言い渡された時はびっくりの一言に尽きた。

 

年頃の男女が寮の同じ部屋で生活するっていうのは確かにアレだけど、まさか私に役が回ってくるなんて思いもよらなかったから。

 

(それにしても…………)

 

篠ノ之さんの顔から、視線を横に十度ずらす。

 

(おっきいなあ。何カップなんだろう……)

 

私の視線は、篠ノ之さんの豊満なバストに釘づけだった。

 

(初めて見たときから思ってたけど、何食べたらあんなふうになれるのかな……)

 

「鷹月…………その、先ほどから視線を感じるのだが」

 

「あ、ご、ごめんごめん」

 

やだ、私ったら。つい見とれちゃった。

 

「そ、そうだ! 篠ノ之さん、何か飲む? 緑茶と紅茶があるよ?」

 

「では、緑茶をもらおうかな」

 

「う、うん! すぐに用意するね!」

 

温かい緑茶を二人分、すぐに用意した。

 

「ど、どうぞ」

 

「ああ」

 

荷ほどきを終わらせた篠ノ之さんと向かい合って、テーブル越しにお茶を飲む。

 

「…………………」

 

「…………………」

 

……………どうしよう。会話がないや。

 

沈黙が気まずい。非常に気まずい。

 

(な、何か会話をしなきゃ……!)

 

「し、篠ノ之さんっ!」

 

「なんだ?」

 

目を合わせてきてくれた篠ノ之さん。

 

でもごめん。何を話していいか私もさっぱりわからないの。

 

「あっ……………い、いや、なんでも……ない、です」

 

「そうか」

 

「………………」

 

「………………」

 

篠ノ之さんは視線を下に向けてしまう。ああ、また沈黙が……!

 

「鷹月」

 

「ひ、ひゃい!?」

 

「……ありがとう」

 

急にお礼を言われて、面食らった私は目を瞬かせた。

 

「えっ、な、何が?」

 

「今、話しかけてくれただろう? 実は、私も機会をうかがっていたんだ」

 

「そ、そうなの?」

 

「実はその……慣れていないんだ。こうして、同年代の者と接することに…」

 

「篠ノ之さん………」

 

篠ノ之さんのお姉さんは、ISを発明した篠ノ之束博士。

 

というのは周知の事実なわけで、篠ノ之さんとそのご家族は政府の要人保護プログラムでいろんな土地を転々としてたらしい。

 

そこからは簡単に想像ができる。

 

きっと友達ができても、すぐにお別れ。そういうのの繰り返しだったんだ。だから、あんまり話さなくなって……。

 

「愛想がよくないのは、自分でもわかっているのだが……。どうもいかんな」

 

「大丈夫!」

 

「た、鷹月?」

 

「大丈夫。これから慣れていけばいいんだよ」

 

言葉に力が入る。篠ノ之さんは目を丸くしてたけど、穏やかな表情に変わった。

 

「そうか……。そうだな」

 

「……やっと、笑ってくれたね」

 

「ありがとう鷹月。お前とは上手くやっていけそうだ」

 

「うん!」

 

篠ノ之さんの顔から緊張が消えた。私の緊張も、いつの間にか消えていた。

 

「よし。鷹月、夕食はまだだな?」

 

「う、うん? まだだけど……」

 

藪から棒になんだろう?

 

「台所を借りてもいいか? 挨拶代わりというわけではないが、今晩の食事は私が作ろう」

 

……

 

…………

 

………………

 

「わあ〜! 美味しそ〜!」

 

ややああって、テーブルの上に鶏の唐揚げが盛り付けられたお皿が置かれた。

 

「我ながら上手くできたと思う。食べてみてくれ」

 

「うんっ! いただきまーす」

 

一口食べた瞬間、私の身体に激震が走った。

 

「……………」

 

「………た、鷹月?」

 

「お………」

 

「『お』?」

 

「美味しい! 私こんなに美味しい唐揚げ初めて食べたよ! お母さんの作ったのより美味しいかも! ううん! 確実に美味しい!」

 

私が今まで食べてた唐揚げはなんだったんだろうって思えるほどの美味しさ。

 

「こんがりきつね色の衣はサクサクで、鶏肉はとってもジューシー! 下味も完璧で、何から何まで高次元な唐揚げだよ! 唐揚げ界の第三世代型ISだよ!」

 

「し…食レポができるんだな、鷹月は。言ってることはよくわからないが、喜んでもらえたなら嬉しい」

 

「篠ノ之さんって料理上手なんだね! 他にも何か作れるの?」

 

「うぐ…! わ、和食以外は鋭意練習中だ。は、はは……」

 

「篠ノ之さんも食べようよ! 早くしないとなくなっちゃうよ?」

 

「わ、わかったわかった。私も食べるとしよう」

 

篠ノ之さんも席について、行儀よく手を合わせてから箸を手に取った。

 

「うん、美味い」

 

満足げに頷く篠ノ之さんを見てると、なんだかこっちも嬉しくなる。

 

それから、どんな作り方をしたのかなどを聞きながら、二人での夕食の時間は進んでいった。

 

「しかし……」

 

「?」

 

私が最後の一口に差し掛かろうとしたところで、篠ノ之さんがおもむろに口を開いた。

 

「ずいぶんと美味そうに食べてくれたな。こちらも作った甲斐があったというものだ」

 

「……織斑くんもそうだった?」

 

いたずら心で言ってみると、篠ノ之さんはぶっとお味噌汁を吹いた。

 

「ケホッ、ケホッ! な、なぜここであいつの名前が出るのだ!」

 

「だって、織斑くんと私を比べてるような気がしたから」

 

「そんなことはない! そ、そうだっ! あんなやつ、何ともない。何ともないに決まっている!」

 

ぐいっとお味噌汁を飲み干した篠ノ之さん。

 

「あつつっ……」

 

お味噌汁の熱さに震えて悶える。コロコロと変わる篠ノ之さんの表情は、どこか可笑しくて、それでいて楽しかった。

 

でも、一つだけ問題が起きた。

 

夕飯を終えて、生徒たちがシャワーや大浴場で身体を洗う時間。

 

「一夏、シャワーが空いたぞ」

 

部屋のシャワーを使っていた篠ノ之さんが、薄桃色の浴衣を着て、ハリのある黒髪を艶やかに濡らしながら、洗面所から出てきた。

 

(ん? 『一夏』……?)

 

「一夏? どうしたいち…………あ」

 

私と視線を交えて、篠ノ之さんが凍りつく。気づいたみたい。

 

「篠ノ之さん。その、言いづらいんだけど……織斑くんはここにはいないよ?」

 

「…………………」

 

「部屋が変わったの……今、完全に忘れてたよね?」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

沈黙が続く。

 

五秒。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

十秒。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

そして十五秒目。

 

「うぅ………!」

 

篠ノ之さんの目からぶわぁっと涙が溢れた。

 

「うわああああああん!」

 

「わわっ」

 

私の胸に篠ノ之さんが飛び込んできた。

 

「なんともないわけ、ないではないか! 私は先生に大丈夫だと言ったのだっ! なのに! なのにあのバカはっ! バカ一夏はああああ!!」

 

震える声で言いながら、まるで小さな子どものように泣きじゃくる。

 

「う、うんうん。よしよし」

 

私はとりあえず慰めてみることにした。

 

部屋着は若干濡れたけど、この際気にしない。

 

「一夏の……一夏のばかあああああ!」

 

聞いた話によれば篠ノ之さんは織斑くんと幼馴染みで、どうも篠ノ之さんは織斑くんのことが気になってるらしい。

 

「何が『一人で起きれるし歯も磨く』だ! 少しは私の気持ちを察しろおおお!」

 

「あはは……」

 

けど、これで決まりかな。

 

(やっぱり篠ノ之さんは、織斑くんのことが…………)

 

きっと、そう考えて間違いはないよね。

 

「うわあああああん! 一夏ああああ!」

 

そ、そんなに織斑くんとの相部屋が良かったんだ。

 

(……新しいルームメイトとしては、ちょっと複雑だな)

 

そんなこんなで、あっという間に消灯時間になった。

 

「落ち着いた?」

 

隣のベッドで横になって、寝る体勢の篠ノ之さんに声をかけた。

 

「ぐすん………ああ。もう大丈夫だ」

 

そう言う篠ノ之さんの鼻の先はちょっと赤くなってた。何も言わないであげよう。

 

「鷹月……すまなかった。来て早々、見苦しいところを見せてしまって」

 

こっちに向けてる瞳が、憂んだように揺れた。

 

「ううん。私は嬉しかったよ」

 

「嬉しかった? 何がだ?」

 

「篠ノ之さん、学校じゃムスッとした顔してることが多いからちょっと怖かったんだ。でも、話してみて、篠ノ之さんって可愛い人だなって思えたから」

 

「か、かわっ!? 可愛くなど……ない………」

 

「あ、照れた? やっぱり可愛いなあ」

 

「だから可愛くなどない! ええい! 寝るぞ! 明かりを消してくれ!」

 

背中を向けてぼふっと布団を頭まで被った篠ノ之さん。ちょっとからかい過ぎたかな?

 

「はーい。消すよー?」

 

リモコンで部屋の照明を消した。部屋はパタリと静かになる。

 

「………おやすみ、一夏………」

 

隣のベッドから、小さいけど、確かにそう聞こえる声がした。

 

(おやすみなさい、篠ノ之さん)

 

心の中で言って、私も、目を閉じた。

……

 

…………

 

………………

 

………………………

 

「ね………………ずね…………しずね……静寐!」

 

「へっ?」

 

「どうしたのだ? 今日は駅前に買い物に行くと約束しただろう?」

 

「篠ノ之さん……?」

 

篠ノ之さんが私の顔を覗き込んでる。

 

「あれ? 私、寝ちゃってた?」

 

「ああ。ぐっすりとな。疲れてるのか?」

 

「ううん。 そんなことないよ。全然元気」

 

「そうか。ならばいいのだが」

 

ぐいーっと背中を伸ばしながら夢の内容を思い出す。

 

(なんだか、懐かしい夢だったな……)

 

篠ノ之さんが引っ越してきた日から、三ヶ月くらい経った。

 

今じゃ篠ノ之さんは私のことを名前で呼んでくれるし、一緒に買い物に行くくらいの仲になっている。

 

(時間が経つのは早いなあ……)

 

って、なんか年寄りじみてるかな。

 

「そういえば、静寐はその出版社から出ているファッション誌をいつも読んでるな」

 

篠ノ之さんが机の上に置いてある雑誌を目に留めた。

 

「うん。学園に入学する前からのお気に入りなの」

 

「そういうことか。少し読んでもいいか?」

 

「いいよ。はい」

 

「悪いな」

 

ファッション誌をパラパラと流し読む篠ノ之さん。

 

その姿を、いつかも見た覚えが………。

 

「………ふふっ」

 

いけない。笑っちゃった。

 

「静寐? 何がおかしい?」

 

「いつだったか、私が読む前に篠ノ之さんが雑誌をまっぷたつにしたことがあったよね」

 

「んなっ!?」

 

「それを思い出して、つい……」

 

「あ、あれは、その、あの……!」

 

しどろもどろになって、ポニーテールを揺らしながら弁明の言葉を探してる。

 

「………すまなかった」

 

けどうまく見つけられなくてシュンと肩を落とす。やっぱり可愛い。

 

「いいよいいよ。気にしてないし。むしろ楽しい思い出かな」

 

「そ、そう言われると、幾分か気が楽だ」

 

「うん。じゃあ、行こっか」

 

「あ、ああ。そうだな!」

 

椅子から立ち上がって、部屋の扉へ向かって歩く。

 

これからも、このいろいろ不器用な同居人との生活は続いていく。

 

彼女の周りではいろんなことが起きたし、これからも起こるはず。

 

私が篠ノ之さんのために出来ることは少ないと思う。

 

それでも、篠ノ之さんのために出来ることがあるのなら、私はそれをしてあげたい。

 

だって私は、鷹月静寐は、篠ノ之箒さんのルームメイトで、友達だから。

 

ガチャ。

 

「ん? よう、箒」

 

廊下に出ると、織斑くんがいた。

 

「い、一夏っ!? な、な、何用だ!? なぜ部屋の前にいる!?」

 

「何用って……たまたま通りかかったら、お前が出てきたんだろ? なんでそんな身構えるんだよ」

 

「お前が突然現れるからだろうが!」

 

「突然現れたのはお前………ん? 出かけるのか?」

 

「そ、そうだ。これから駅前のショッピングモールに静寐と行ってくる」

 

「へえ。鷹月さんも一緒なんだ」

 

織斑くんが私のことを見てきた。学園に一人しかいない男の子、しかもイケメンからの視線に思わずドキッとしちゃう。

 

「鷹月さん、見ての通りのやつだからいろいろ大変だとは思うけど、箒のこと、よろしく頼むよ」

 

私が答えるよりも先に、篠ノ之さんが反応していた。

 

「どういう意味だそれは! 何がどう『見ての通り』なのだっ!?」

 

「そういうとこだよ」

 

「ば、バカにしおって〜……! 静寐も何か言ってやれ!」

 

話を振られ、私はニコリと笑ってみせる。

 

「うん。織斑くん、篠ノ之さんのことは任せてよ」

 

「そうだそうだ。任せて………って、静寐!?」

 

「あっはははは! よかったな、箒。楽しくやれてるみたいじゃんか」

 

「静寐っ! 違う! 私が求めたのはそういうのではないのだ!」

 

「あ! いたいた!」

 

「探しましたわよ、一夏さん!」

 

「ん? 鈴? セシリア?」

 

「これからISの特訓するわよ。ついて来なさい! あ、セシリアはオマケね」

 

「オマケとはなんですの! 鈴さんこそオマケでしょう!?」

 

「待て。嫁は今日、私と訓練をするのだ」

 

「ら、ラウラ? いつの間にっ?」

 

「ごめんね、一夏。ラウラがどうしてもって聞かなくて…」

 

「お、おお。シャルもいたか」

 

「でね、よかったら、その、僕も一夏と訓練を━━━━」

 

「そこ! ちゃっかり話進めてんじゃないわよっ!」

 

織斑くんの周りには、いつも女の子がいる。しかも専用機持ちの代表候補生。

 

みんながみんな、織斑くんのことが好きで、でも織斑くんは全然そのことに気づいてない。

 

「み、みんな落ち着けよ……。箒、助けてくれ」

 

助け船を求められた篠ノ之さん。

 

「知らん。自分で蒔いた種だろう。自分でどうにかしろ」

 

だけど、そっけない感じで一蹴した。

 

「俺、蒔いた覚えないんだけど!?」

 

「……! ふんっ! 知らんと言ったら知らん。行くぞ静寐」

 

「あ、う、うん。じゃあね、織斑くん」

 

「箒!? 無慈悲か! 無慈悲なのか!」

 

後ろの喧騒を聞き流しながら、私は廊下を進む篠ノ之さんに尋ねた。

 

「よかったの?」

 

「あいつの唐変木にいちいち付き合ってはいられん」

 

「でも、本当は篠ノ之さんも……」

 

「静寐、確かにあいつも大事だが、私はお前のことも同じくらい大事だと思っている。だから気にするな」

 

「篠ノ之さん……」

 

その言葉に、ちょっとジーンと来ちゃった。

 

「め、面と向かってこういうことを言うのは気恥ずかしいな。い、急ぐか。目当てのものが売れて━━━━」

 

「きゃあ!? 一夏さん! どこを触ってますの!?」

 

「す、すまんっ! わざとじゃないんだ!」

 

「い〜ち〜か〜…! そんなにおっきいのがいいワケ!?」

 

「り、鈴! 落ち着け! な!? おわあっ!?」

 

「ひゃん!? い、一夏のえっち!」

 

「なああ!? シャル!?」

 

「ほう……一夏よ、これは相当なシゴきが必要と見たぞ」

 

後ろから、何やら修羅場な空気が。

 

「……………静寐」

 

「え?」

 

「すまないが、荷物を頼めるか。すぐに済む」

 

「へっ!? し、篠ノ之さん!?」

 

投げ渡されたカバンを受け取った時には、篠ノ之さんは助走をつけていた。

 

「一夏あああああっ! 貴様というやつはあああああ!!」

 

メキャアッ!!

 

「ぎゃああああああ!?」

 

篠ノ之さんの鮮やかなドロップキックが、織斑くんの顔面に直撃した。

 

「………あーあ」

 

こっちの方は、私にできることはなさそうかも。




とまあ、そんなわけで、初投稿は静寐視点の短いストーリーでした。

感想や文章の『ここがダメ。ここをこうしたら良くなる』等のご指摘がありましたら、遠慮なくどうぞ。

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