院長室につくと、カイズはドアを勢いよく開ける。
「ヴィータさん、ただいま戻りました! あれ、親父は?」
「ジュウゾウさんはちょっと前に検診にいったぞ。健康診断はどうだったんだ?」
「健康そのものですよ。まあ二回も精密検査したんですから、これでも安心ですね。――――それでヴィータさんのほうはどうでした?」
「大丈夫だ。ジュウゾウさんもあたしたちの結婚許してくれるって」
「ほらー、言ったとおりでしたでしょう。あの親父だったら、すぐに了承してくれるって」
「あ、あははは~」
カイズはそう無邪気な笑みを浮かべるが、そんな彼を見てヴィータは少し苦笑いをする。
そんな二人のタイミングに合わせたように、再び院長室の扉が開いた。
「客人を一人待たせてすまなかった。……戻っていたのか」
「ああ、健康そのもの問題なしだ」
「……そうか」
そう言葉にするジュウゾウの顔はどこか安心の色が見られた気がした。だがそれに気づいたのはヴィータだけのようだ。カイズはいつもの調子で、特にジュウゾウの変化を感じていないようだ。
ヴィータはそんな二人を見ると、その場から立ち上がる。
「それじゃああたしは帰るとするかな」
「…………あまりおもてなしもできなくて申し訳ない。また私が休みの時にでも改めて」
「じゃあ帰りましょうかヴィータさん」
ヴィータの後を追って、カイズも院長室から出ようとする。だがそんな彼を、ヴィータは押し戻した。
「帰るのはあたしだけだ。カイズはもう少しお父さんと話していけよ」
「えっ、で、ですけど」
「いいから、いいから。ジュウゾウさんも話したいことがあるみたいだぞ。じゃあまた家でな」
ヴィータにそう無理矢理押し切られてしまうと、パタンと部屋の扉が閉まる。
こんな密室で、寡黙な父親となにを話せばいいのだろうか。カイズはジュウゾウのほうに向き直る。
「………まあ座れ」
「お、おお。それじゃあ」
カイズはジュウゾウの対面の席に座る。すると、ジュウゾウはほんの少しだけ口元をゆるめた。
「いい人を見つけたな。……必ず幸せにしてやるんだぞ」
「――――!! お、おう、当たり前だ。ヴィータさんは俺の世界で一番大切な人だからな!!」
あの親父が人を誉めるなんて。
あまりの出来事に、勢い余って恋人自慢をしてしまった。
世界で一番大切な人。自ら放ったその言葉を聞くと、カイズの脳裏にあの言葉が蘇る。
『その、知りたいとか会ってみたいとか思わないのか』
面影すら覚えていないからか。最悪な妻だったと言われ続けていたからか。今までカイズは自身の母親について本当に知りたいとは思っていなかった。
だがいざ自分の結婚が迫ってきているからか、ヴィータの言葉が頭から離れなくなっていた。
しかし今更になってどう切り出せばいいのだろうか。カイズは検査中ずっとそのことについて考えていたが、うまい言葉が見つからなかった。
だがジュウゾウは違った。ヴィータと会話をし、そしてここに来るまでにしっかりと言葉を用意していたのだ。
「……せっかくの機会だ。話しておこうと思う。お前の母親、ユウヒのことを」
「――――えっ!? ど、どうしたんだ急に」
「間違いではあったが、後悔などなかったと教えられたからな。……とりあえずまずは中庭に向かうぞ」
ジュウゾウはソファーから立ち上がる。そんな彼の背を見て、カイズは心にこびりついていた想いを自然と声にした。
「なあ親父。俺の母親って、本当に最悪な妻だったのか」
あの口数と感情の起伏が少ない父親が、誰かの悪態をつく。自身の母親がそんな存在なのか、カイズは幼いときよりずっと思い悩んでいた。
だが振り返る父親の姿を見て、そんな疑問は一瞬にして消えていく。
こんな感情を豊かにしている父親は始めてみた。笑みを浮かべる父親の姿に、カイズは唖然としてしまう。
そんな彼に、ジュウゾウは心の底から答えた。
「そんなことあるはずがない。……ユウヒは、私にとって世界で一番大切な人だ」
カイズの言葉に習って、ジュウゾウもそう例えたのだろう。ジュウゾウは少し照れ気味にそう言うと、さっさと院長室から出てしまう。
「――――そうか。そうだよなっ!!」
それだけで、十分過ぎるほどわかった。
カイズは扉を開けると、父親の後を追う。
これからなにを話してくれるかはわからない。だがわからないとしても、きっと幸せな話であると。
ジュウゾウの笑みを見て、カイズはそう確信するのだった。
◆◇◆◇
「お待たせしました。ケーキセットになります」
ヴィータが話を始めようとした瞬間、それを遮るように注文品が運ばれる。ケーキはレジと冷蔵庫が一体化しているものに入っており、飲み物自体もそんなに時間がかからないのだろう。
「それで、カイズ君のお父さんがどうしたんですかっ!」
サクヤはくい気味に身を寄せるが、ヴィータは「うーん」と頬を掻くとケーキを一口運んでいった。
「いや、あんまり気軽に喋ることじゃなかった」
「そんな。それじゃあ私の恥かき損じゃないですか!」
「まあ落ち着けよサクヤさん。そしたら、ここ数年であたしが人生で一番恥ずかしかったことを話すからさ」
「ここ数年で一番ですか! ですが、私はそう簡単な話じゃ納得しませんよ!」
サクヤは何かを感じ取ってくれたのか。それとも単純にそちらの話の方が気になるのか。特に追求をせずに、ヴィータの話に乗ってくれた。
さて話題を逸らすためとはいえ、ここまで言ってしまったのだ。覚悟を決めよう。
「これはカイズが教導実習に行って一週間経った時の話なんだけどな。寂しいなーって思ってるときに、電話がかかってきたんだ」
「はいっ、はいっ!」
ヴィータは周りに聞こえないように、あの時の恥ずかしい事件をゆっくり、ゆっくり語っていくのだった。
※ あとがき編集しました。7月23日23時53分
どうも、そんなわけで非常に亀更新になってしまいましたが、いかがだったでしょうか。
まさか家に帰ってきてから、仕事が残っているとは思わなかった白翼です!!
今回の話しで、よーやくカイズ君の家族が判明しましたね。
これは前の18禁の感想をいただきまして、『そうだ、この話をやるにはまずこの過去話を書かなければ!!』というわけで、書かせていただきました。
これでカイズ君のお父さんの過去が明らかになり、さらにヴィータちゃんがその話を聞いた。さらにシグナムさん、コウキが物語に加わったことにより、次に書きたかった話しがとうとう書けるようになりました!!
次の話しは、まあ一次のコミティアが終わり、リリマジに向けての原稿が終わってからなので少し遅くなるかもしれません!!
リリマジでは、ヴィータちゃんとシグナムさんが管理局上層部の嫌がらせで、チアガールをやる話しを書く予定です。そして恋人がそんな目に合う中、いよいよ二人の男が初めての邂逅を果たします!!
リリカルマジカル18
2014年11月24日(祝、月)
11:00-15:00
大田区産業プラザPiO大展示ホール
に参加予定なのでよろしくお願いします!!
そして何だかんだで、ヴィータちゃんは男友達が少ないの全年齢対象版もこれをもって
『100話にいきました!!』
うおおおおお、本当に気が付いたらですねw
感想の方も、謎の運営対応済み感想がありましたが、多分今回の話しで100個目に行くと思います!!
いやー、それもこれも皆様のお声があったおかげです。
あとは、100話超えたことだし、そろそろ読者さんにアンケートとって、これが読みたいってのを募ってみてもいいかなって思ってます!!
ですが、コミティアとリリマジの話しが書き終わった後になると思いますけどねw
これからも一次、二次とやっていくので亀更新だとは思いますがよろしくお願いします!!
そして来るべき8月31日日程:2014年8月31日(日)11:00~16:00
場所:有明・東京ビッグサイト東5・6ホールにサークル名
『イノセントウイングス』でコミティアに参戦予定です。
スペース№ て27b
作品は一次小説、『ビギナーズクリエイト 私と一緒に同人ゲームを作りましょう』
の2巻になっています。
もしお暇がございましたら、どうぞよろしくお願いします!!
それでは三ケタに乗ったところで、これからも亀更新ですけど頑張っていきますね!!
それではまた近いうちにお会いしましょう。
ではは~ ノシ