ヴィータちゃんは男友達が少ない   作:白翼

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夢の形 あの日貴方に出会えたから  (あとがきに今後の予定あり)

 そういえば、いつからだろうか。

 

 誰かを救いたいと思うようになったのは。

 

 放課後の教室、教科書とノートを開くと明日の予習をしていた。

 

 夕暮れまで教室に残っている生徒はいない。この時間に関して言えば、ここは図書館より静かな場所だ。

 

 カイズは教科書を閉じると、背筋をぐっと延ばす。

 

 そして先ほどの疑問を口にした。

 

「……ほんといつからだったんだろうな」

 

 誰かのためになりたい。誰かを救いたい。

 

 物心ついたときから、その想いばかりが心に渦巻いていた。

 

 初めこそそれは父親の影響かと思っていた。

 

 大病院の院長を務める父は、日々仕事に追われている。

 

 そんな父親を自分は少なからず尊敬している。

 

 だが父親は極端すぎるほど口数が少なかった。そんな父親の仕事を理解するようになったのも、ここ最近のことだ。

 

 漠然とながら、しっかりと勉学はこなしきた。

 

 目標がなくとも学んだ分だけ勉強は結果が出る。しっかりと努力すれば、それだけで形には見えた。

 

 だが高等部も二年目の後半となり、本当に自分は医者になりたいのかと時々思うようになった。

 

 このまま勉強を続ければ、父親の病院を継ぐのは当然の流れだろう。

 

 そうすれば、心の中にある『誰かを救う』ということを達成することもできるはずだ。

 

「…………だけど、本当にこれでいいのか」

 

 もうすぐ進路も決めなければいけない時期だ。

 

 ただ点数を出しているだけでは許されない決断の時は迫っている。

 

 カイズは勉強道具をしまうと、席から立ち上がる。

 

 そして誰もいない教室を後にした。

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 今日はまっすぐ帰宅する気はなれなかった。

 

 いや、どちらにしても家には誰もいないんだ。どの時間に帰宅しても問題はなかった。

 

「親父は今日も泊まりか。……ほんと頭が上がらないな」

 

 父親が家にいないこと。そして母親がいないことに、寂しさを覚える時期もあった。

 

 だがその寂しさよりも、『誰かを救う』という想いの方が自分には強いようだった。

 

 努力の時間は自分から考える時間を奪い、気がついたらこの歳まで成長していた。

 

 狙っている医大は、すでにA評価をもらっている。

 

 このまま努力をし続ければ、問題はないだろう。

 

 だからこそだろう。人生において余裕いうものが初めて生まれたから、今自分はこんな今更なことを考えているのだ。

 

 カイズは繁華街のほうに足を運ぶ。すると見知った顔が目に映った。

 

「やあ、カイズ君じゃないか」

 

「……おう、サクヤか」

 

 カイズは恋人であるサクヤと顔を合わせると、居心地の悪い顔をする。サクヤは今まで付き合った年上の女性の中で一番相性がよかった。

 

 考え方も知的で、性格も大人っぽい。

 

 年上好きの自分としては、これ以上ない女性だと理解している。

 

 だがそう深く理解するとともに、何か納得のいかない感情が心の中で芽を出していた。

 

 どうして自分は年上しか好きにならないのだろうか。

 

 自分はいつからこうなったのだろうか。

 

 誰かを救うという想いと同時に、ずっと心の中に住み着く感情だ。

 

「どうしたんだこんな時間に」

 

「サクヤこそどうしたんだよこんな時間に」

 

「私はクラスの友達とお疲れさま会だ。みんな無事に第一志望に受かったからな」

 

「……あの医大学だよな。よく受かったな」

 

「なに、そのために青春のほとんどは勉学に費やしてきたからな。……動機こそ不純なものかもしれないが、今ではしっかりとした私の夢だよ」

 

「……そうか」

 

 それはどこかキツい物言いだった。

 

 だが今の自分とサクヤの関係を考えれば、それも仕方のないことかもしれない。

 

 サクヤは自分が医者を目指しているからか、近い立場にいようと医学の道を目指してくれた。

 

 元々成績は優秀ではあったが、一般の高等部から目指すのはかなり大変だったろう。

 

 だがそんな大変さとは裏腹に、彼女が大学に合格する頃にはどこか疎遠になってしまっていた。

 

「…………サクヤ」

 

 そういえば自分は彼女の大学祝いを何もしていない。

 

 きっと彼女のことだ。ここで誘いをかければ、二つ返事で付き合ってくれるだろう。

 

 それはわかっていた。だけど……

 

「……あんまり友達を待たせてもあれだな。俺はもう行くな」

 

「……………ああ、わかった」

 

 少し寂しそうに背を向ける彼女を見て、これが本当の別れであることを心のどこかで実感した。

 

 多分このまま二人の関係は自然消滅だろう。

 

 カイズはそんな彼女の背中を追うことなく人混みに紛れていった。

 

 何もすることがない。ゲームセンターなどにもほとんど足を運んだことのない自分は、結局本屋に寄ることしかできなかった。

 

「おっ、そういえば今日発売か」

 

 平台に積み重ねられているのは、『月刊 時空管理局』という雑誌だ。少しでも未来の局員を増やすため。そして管理局への印象をよくするために発行されている本だ。

 

 昔からなぜかこの本には心引かれるものがあった。

 

 それは正義の心や公務員への憧れからきているものではない。

 

「――――やっぱり俺って制服フェチなのかな」

 

 パラパラとページをめくるり、局員の特集ページを見る。前号の紹介通り、今月は『高町なのは』教導官の特集だった。

 

 やはり美人というものはそれだけで華があるものだ。実際年上が好きな自分も多聞に漏れず彼女のファンである。

 

 そして何よりこの制服に変な思い入れがあるのだ。これもまた理由はわからずじまいだ。

 

 同級生にこの話をしたことがあるが、特殊な性癖とバカにされて以来相談することもなくなった。

 

「なんか変な感じだよな。……はぁ、自分のことながらわからないことだらけだ」

 

 パラパラとページをめくると、次々となのはのスナップショットが映し出される。

 

「今日も今日とて、高町なのはさんは綺麗だな。……帰るか」

 

 そう一気に心が冷めるとカイズはページを閉じようとする。だがそのときだ。何か。赤い何かが彼の目に映り込んだ。

 

――――ドクンッ。

 

 まるで初恋をしたかのように、胸が高鳴る。

 

 だからこそおかしかった。自分は初めて付き合った女性に対しても、こんなに緊張はしなかったはずだ。

 

 いったい彼女の何が自分の心を引きつけるのか。

 

「だって高町なのはさんの特集なんて、今まで何度も見てきたぞ」

 

 今度は念入りに、ページの隅から隅までのぞき込む。

 

 だが先ほどのような胸の高鳴りはない。

 

 気のせいなのか。そう思い最後のページを見たときだ。

 

 彼女の写真の隅っこに写っているその少女を発見した。

 

 その初等部くらいの赤い髪の少女は、写真に写るつもりはなかったのだろう。

 

 全くカメラを意識することなく、真剣な眼差しで教導にあたっているようだ。

 

――――ドクンッ、ドクンッ。

 

「えっ、うわぁ」

 

 その彼女の横顔を見ると、心臓の高鳴りが収まらなかった。彼女の何が自分をここまで引きつけるのか。自分は年上好きのはずなのに。

 

「俺は誰かを救える人になりたかった。……それは彼女のように。――――ッ!?」

 

 まるで箱の中に閉じこめていた何かが飛び出すように、記憶にない記録が一気に飛び出す。

 

 それはまだ自分が本当に幼いときのことだ。

 

 あの時自分はトンネルで生き埋めになった。

 

 そして、そのとき、そのとき彼女が。

 

 記録が確かな記憶として自分の中でかみ砕かれていく。

 

 カイズはその雑誌をギュッと握ると、迷うことなくレジへ持っていった。

 

 まるで初めてエロ本を買う中等部の学生のように高揚した。彼は店から出ると、すぐに本を取り出す。

 

 そして彼女の名前を口にした。

 

「……ヴィータさん。そう、そうだ。ヴィータさん、ヴィータさんだ!!」

 

 ずっと欠けていたパズルのピースがはまるように、記憶がドンドンと蘇っていく。

 

 人を救いたいと思った理由も。

 

 年上好きになった理由も。

 

 管理局の制服が好きな理由も。

 

 全部、全部が繋がっていった。

 

 どうしてこんな大切なことを忘れていたのだろうか。

 

 カイズは時計を見ると、今日の日付と時間を確認する。

 

 そうすると、今まであった余裕が一切なくなったことを確信した。

 

「勉強の方は問題ない。とにかくこれから体を鍛えて、魔力量を上げないとな。――――1秒だって無駄にできないな」

 

 カイズは今後のスケジュールを頭の中で構築していく。だがその前に、自分にはしなければいけないことがあった。

 

「サクヤの奴に言わないとな。……俺は自分が本当に好きな人を思いだしたって」

 

 本当に自分が好きな人。そう言葉にすると、心の中にこそばゆいものが生まれる。

 

 こんな感覚になったのはいったいいつぶりであろうか。

 

 いや、そんなのは決まっている。初めて彼女に会ったとき以来だ。

 

 カイズはサクヤにメールを送ると、待ち合わせ場所を決める。そして沈んでいた気持ちと視線を上に向けると、改めて目標を口にした。

 

「待っていてくださいね、ヴィータさん!!」

 

 カイズはギュッと手を握りしめると、それを天へと掲げていくのだった。

 









そんなわけで大変お久しぶりになります。白翼です。

ヴィータちゃんの小説も、いやはいや、そろそろ懐かしい域でしたね。

そんなわけで、リリマジなどで番外編は書いているのですが、そろそろ定期的に書くのがネタ的にきつくなってきました。

というのが、半分。最近白翼、クトゥルフ神話TRPGにはまってしまい、それのシナリオを考えたり、ビルドファイターズにはまってガンプラ魂が燃え上がったりしていました。

そんなわけで、またヴィータちゃんのほうはしばらくお休みして、多分来週の白翼の休み(火曜日)かその次の日(水曜日)に新しい小説の更新をすると思います。

更新する小説はビルドファイターズトライの小説で


『フミナ先輩は部活仲間が少ない』です!

何かもうこのていのタイトルに拘る必要もないかなーと思いつつも、それが白翼の代名詞っぽいかなとも思いまして、このタイトルにさせてもらいました。

またしばらくしたらニコニコ動画で初制作動画

『ゆっくり実況動画 クトゥルフ朝日を見に行こう(仮)』

をあげたいと思いますのでもしヴィータちゃん以外でも付き合ってもいいよーというかたがいましたらよろしくお願いします。

……というか、フミナ先輩が可愛すぎて。生きるのが、辛い。

またヴィータちゃんはリリマジでは番外編をのせますし、何かネタができたら投稿しようとは思いますのでそのまま残しておく感じにしますね。

とりあえず今年は

・ビルドファイターズの二次小説
・TRPGのリプレイ動画
・リリマジでヴィータちゃん番外編入りの文庫制作
・初のコミケに出てみたいな!! 夏の申し込みします!!

などそれこそいろいろやろうと思ってますので、どうぞよろしくお願いします!!

それではまた次はビルドファイターズの二次小説でお会いしましょう。

今後はいろいろやっていくので、もしよろしかったらツイッターあたりを登録していただけると楽になるかと思われます。

@hakuyoku123

の登録をしてもらえると嬉しいですー。

もしくはハーメルンさんで、作者登録をしてもらえると楽だと思います。

あとDLsite様でただいま小説の半額セールをやっています。

http://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ113661.html

いくつかの小説が半額になっていますので、気になった方はよろしくお願いします!

またヴィータちゃんの番外編は3のほうからはじまってますので、揃えるぜーという方ではない場合は、注意してくださーい。

それでは来週の火曜日か、水曜日にお会いしましょう。

ではは~ ノシ
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