こちらの小説は自宅通販で書きおろしたものになります。
時系列としては、プロポーズ後、教導官になる前となっております。
後半は18禁なのですが、登録はこちらのほうが多いため、前半部分だけこちらに載せ、後半は準備が終わり次第18禁のほうにて更新します。
前篇
――――ピピピピピピピピッ!
部屋に目覚まし代わりのアラーム音が響きわたる。
「ん。……くあぁ~、もう朝か」
ヴィータはもそもそとベッドのなかで体を動かす。
手探りで目覚ましを手に取ると、そのスイッチをオフにした。
「う~ん。今日の朝ご飯なんだろう」
確か昨日は自分が朝ご飯を作ったはずだ。なら今日はカイズの順番のはずだ。ヴィータは重い瞼を擦りながら、鼻をひくつかせる。
カイズの朝ご飯レパートリーはまだあまり多くない。それにここはアパートの一室。八神家と違い、少し鼻を動かせば、料理に大体の検討はつく。
だが今日はおかしかった。どれだけ匂いを嗅ごうとも、なにもしてこないのだ。
「あれ、カイズの奴寝てるのか? って、そんなわけないか。ベッドにいなかったんだし」
ならこれはどういうことであろうか。ヴィータは回らない頭のまま、カレンダーを見た。
「あー、そうか。カイズは教導実習に行ってるんだった。……ほんと、全然慣れないな」
カイズが教導実習にでて、これで五日目だ。
そしてこの行動をするのも、五回目だということを思い出すと深々とため息をついた。
ヴィータは冷蔵庫から牛乳を取り出すと、それをコップに注ぐ。そしてキッチンに置いてあるパンを一枚とると、それを机のトースターの中に入れた。
「一人だとなんだか料理する気にならねえんだよな。別に食べれればそれで言いわけだし」
そういえば昔はやてが言っていた気がした。みんなの食事を用意するのはもちろん大変なことだ。だけど心を込め手の込んだ分みんなが喜んでくれる。
だから自分は料理をすることが大好きで、みんなに食べてもらえるのがもっと大好きだと。
「そっかー。やっぱり誰かがいなくちゃ、腕を振るう意味ないもんなー」
ガシャン。トースターからパンが飛び出すと、それを皿に乗っける。ヴィータは無言のままそれをカジりつくと、その味気なさに複雑な気持ちになった。
「………………寂しいな」
ヴィータはさっさと食事を終えると、管理局の制服に着替えてしまうのだった。
◇◆◇◆
カイズにプロポーズされて、時間は二週間ほど流れている。ヴィータに気持ちを伝えたことにより、カイズは今までにも増し、早く一人前になろうと頑張っていた。
そしてヴィータもまた、日に日にたくましくなる彼を見てその想いをさらにつのらせていた。
そして卒業試験の前の、最後の課題がやってきた。
それが教導実習だ。
カイズは管理局員候補生が暮らしている寮に二週間滞在し、そこで教導官として局員候補生に指導をする。
カイズはまだ若いから生徒との距離感が少し大変かもしれない。だが彼が誰よりも頑張ってきたことは、ヴィータが一番理解している。
それに教導実習まで来てしまえば、試験的なものを心配する必要はない。その前までの試験が厳しい分、ここから先はしっかりとこなせば落とされることはないからだ。
だからこそヴィータはカイズのことを心配していなかった。だがそこで予想外のことが起きたのだ。
「………………寂しいな」
それは自分自身のことだ。まさか一人でいることがこんなにも寂しいとは思っていなかった。
思えば八神はやてが主になってから、いつも近くには誰かがいた。
家にははやてやヴォルケンリッターの誰かがどんな日でもいたし、機動六課解体前までの仕事ではいつも近くになのはがいた。
だがあくまで二人とも管理局に属する一職員にすぎない。いつも仲良しこよしで現場が同じなるわけもなく。
特に『ゆりかご事件』の後に起きた『ラピス事件』後には二人の職場はあまり重ならなくなってしまった。
「まあ、上のやつらの気持ちもわかるけどな」
ヴィータは事務作業をしていた手を止めると、紙パックに口を付ける。糖分で頭が回り出すと、「はぁ」とため息をついた。
「あたしだってあの実験には関わってきたわけだし、公表はされなくても、同じ枠には入れたくねえよな」
まあそうでなくても、なのははいろいろ飛び越えてすでに子持ちだ。子供のことを考えれば、可能な限り近場の教導を望んでいるのかもしれない。
どちらにしても考えて答えのでることではない。ヴィータは紙コップをコースターの上に戻すと、再び作業を始めるのだった。
◇◆◇◆
「ただいまー」
そう言っても、家から「お帰り」の声があがることはない。一人暮らしの人はよくこの空間に耐えることができると思う。
「はぁ」とため息をつくとヴィータは深く肩を落とした。
正直、はやてからは二週間家に帰ってくるかと誘われていた。だがヴィータはそれを断ってしまった。
それはもちろんはやてを避けているからではない。カイズがいないときだけ、はやてやほかのみんなに頼るのはどうしても気が引けてしまったのだ。
そうでなくても、カイズとは結婚を前提の付き合いとなった。これからカイズがいないたびに、はやての家に行くわけになどもちろんいかない。
それにカイズがいないからこそ、ヴィータが家を守らなければいけないとも思っていたのだ。
ヴィータは管理局の制服を脱ぐと、ハンガーにかけることなく床に投げ捨てた。さらにタイトスカートも脱ぐと、ワイシャツ一枚でベッドに寝転がる。
「はは。こんなだらしないところカイズには見せられないなー」
そう言いながら、ヴィータはちらりとドアの方を見る。だがそこにはカイズがいるわけもなかった。
もし彼に会えるなら、少しぐらいのハプニングも我慢できた。だが彼は教導実習中だ。そんなことは起こるわけもないのだ。
ヴィータは最近ずっと一緒に寝ているのろいうさぎをギュッと抱きしめる。そして誰にも聞こえないように、小さく弱音を吐いた。
「…………カイズに会いたいな」
そこまできてようやくヴィータは気づいた。自分は人恋しいわけではない。ただ、カイズに会いたいだけなのだと。