ヴィータちゃんは男友達が少ない   作:白翼

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※ただいま放映中の『魔法少女リリカルなのは Reflection』のネタばれは一切ありません。そして映画を見てテンションが振り切ったため、久しぶりの更新になります。




ヴィータちゃんは男友達が少ないEX5 二人の半休と密着映画鑑賞
レンタル期間一ヶ月


 二人が結婚をしてしばらくの月日が流れる。

 

 季節はずれの新婚旅行も終わり、二人の日常は慌ただしい。だが過去の二人とは違い、お互いすれ違うことなく歩み始めていた。

 

 そんな二人のある休日の午後のことである。

 

「せっかくの休日にでかけられないってのも、どうかと思うなー」

 

 赤い髪のおさげの少女。ヴィータは不満そうに頬を膨らませる。黒髪の青年カイズは、そんな彼女をなだめるように優しく頭をなでる。

 

「ヴィータさん、夕方には宿舎のほうに移動ですからね。今年も教導官候補を探しに行くんでしたっけ?」

 

「そうみたいだな。ここ近年、即戦力、即戦力で下が育たないって上から苦情がきてるらしくてな。全く、コストカットを指示したのは自分たちだろうって言うんだ」

 

「まあそういう怠慢がすぐに見直される分、時空管理局はホワイト企業だと思いますよ」

 

「それはそうだけどよ~。でもかり出されるのはあたしとなのはばっかり。ほかの教導官だって優秀な奴いっぱいいるじゃねえか~」

 

 この場にカイズしかいないからであろう。ヴィータは子供が駄々をこねるように、ブンブンと両手を上下させる。

 

 そんな彼女を宥めるため、カイズは空いていた左手ももちいてダブルなでなでをする。

 

 そうやって甘やかされながらも、ヴィータには自身の忙しさの理由はわかっていた。それはひとえになのはの存在であろう。

 

 管理局のエースオブエース。魔法が存在しない世界に生まれながら、何度も次元の危機を救った少女。

 

 管理局の、特に若い人材ならその名を知らないものはいないだろう。

 

 若い英雄はそれだけで組織の顔になる。若手も彼女に続きたいと、訓練の向上になるだろう。

 

 そうでなくても、なのはは教導官として優れている。機動六課のメンバーを短期間であそこまで叩き上げたのだ。

 

 機動六課は組織の鼻つまみものとされていたが、これを評価しないのは愚かを通り越して、ただの無能であろう。

 

 さらにあの容姿だ。男性隊員は張り切り、女性隊員は接しやすい。これ以上の人材はいないだろう。

 

 自分はそんななのはの添え物的存在だ。絵面的に厳ついおっさんを隣に置くわけにいかない。逆に若い男をおいても男性隊員の志気によろしくない。

 

 可もなく不可もなく。それがあたし自身の自己評価だ。

 

(こっちは新婚なんだから、なのはの人気に巻き込んでほしくねえんだけどな~)

 

 と心の中でぼやいてみるが、もちろんなのはが悪いわけではない。ただただ、行き場のないため息をつく。

 

 そんな疲れた様子の彼女をみて、カイズはなでなでの手を止めた。

 

「ヴィータさんが呼ばれるのは仕方ないですよ」

 

「まあなのはの付き添いって考えると」

 

「だってヴィータさんすっごく可愛いですから。そんなヴィータさん見てたら疲れだって吹っ飛びますからね」

 

「あっ、ああぁ~~」

 

 カイズの真っ直ぐな瞳を見ると、プシューと顔が赤くなる。ヴィータは照れた顔を隠すように、彼の胸に顔を埋めた。

 

 彼と初めて出会ってから、もうかなりの年月が経っている。デートして、結婚して、一緒に暮らして、様々なイベントを過ごしてきた。

 

 だがカイズのほめ言葉には、今でも頬が赤くなってしまう。前置きなどなく、不意をつき鋭く飛んでくるそれは予測不能回避不可能だからだ。

 

 まだ顔が上げられない。ヴィータは胸に顔を押しつけたままもごもごと話す。

 

「つ、疲れが吹き飛ぶって、そ、そんなわけねえだろう」

 

「そうですかね? 少なくともヴィータさんを見て、俺は毎日元気いっぱいでしたけど?」

 

「元気いっぱいって、それはカイズだからだよ。……でもありがとうな」

 

「なにがです??」

 

 カイズはキョトントした顔をする。きっと彼にとっては当たり前のことすぎて、何に対してそう言われてるのかわからなかったのだろう。

 

「……なんでもねえよー!」

 

 ようやく顔の火照りがとれた気がする。ヴィータは顔を上げると、にししと楽しげな笑みを浮かべるのだった。 

 

 

 

「で、今日は映画を見るんでしたっけ?」

 

「一応な~。絶対面白いから見てくれってなのはの奴から言われたんだけど。……気が付いたら借りて一ヶ月経っちまったな」

 

 そして今日から合同で教導の仕事に出るのだ。返すタイミングを考えたら、今日を除いてほかにはないであろう。

 

 ヴィータはディスクケースを取り出す。カイズは「ああ」と声を漏らした。

 

「それ、かなり有名な作品ですよ。パッケージからして、子供向けかと思ったら戦闘シーンがめちゃくちゃ派手で。と思ったら、かなりの感動路線らしいですね。製作費もかなりかかってるとか」

 

「カイズはこの映画見た事あるのか?」

 

「いえ、名前に聞いただけですね。この映画がやってた頃って、管理局に入るために勉強漬けでしたし」

 

 そこまで言うと、カイズは少し困ったような顔をする。

 

「うーん、しかし映画ですか。出かけるほどの時間がないにしても、映画はなー」

 

「あんまり好きじゃないのか?」

 

「いえ。映画って結構長い時間拘束されるじゃないですか。そうすると、ヴィータさんとあまり触れ合えないなーって。短い時間と言えど、休日が重なりましたし、それが些か不満で」

 

「うーん。でも今日中に見ないと返せないしな。……それにどうだったってなのはに聞かれて、一ヶ月ずっと置きっぱなしだったとも言えねえしな」

 

「それはそうなんですけど。……あっ、そしたらこうしましょう」

 

「おっ、おおっ!?」

 

 カイズはポンと手をたたくと、ヴィータを持ち上げる。そしてカイズはベッドに座ると、その膝に彼女を乗せた。

 

 あまりにもスムーズな動作に、思わず反応が遅れてしまう。カイズはヴィータを包み込むように、そのまま両腕で優しく拘束する。

 

「これなら映画を見ながら、ヴィータさんの体温を感じられますね」

 

「か、感じられますねじゃねえだろう! こんな体勢、あたしは子供か!!」

 

「ヴィータさんは俺の嫁です!!」

 

「知ってるよ!!」

 

 そういう意味で言ったわけではない。だがまるで子供にしてあげるような姿勢は、それなりに人生経験を積んできた彼女には恥ずかしいものだった。

 

「べ、別に隣同士で手でも繋げばいいじゃねえか」

 

「それだけと片手でしかヴィータさんの体温を感じられないじゃないですか。そうでなくても、これからしばらく会えないんですから、ヴィータさん分を補充しておきたいんですよ」

 

「そ、そんなこと言ったってよ。昔ならいざ知らず、この歳になってこれは……」

 

 どこか懐かしいこの体勢。まだ自分が地球で暮らしていたころ、よくはやてにしてもらっていた体勢だ。

 

 あの頃は人に優しく扱ってもらえることが初めてで、そんなはやてに随分と甘やかしてもらったものだ。

 

 だが歳を重ねるごとに、その回数も減っていったのも確かだ。今ではなのはやフェイトはもちろんのこと、ヴォルケンリッターやリィン、アギトの前ですらこんなことはしていない。

 

(いや、その考えで言うならここにはあたしとカイズしかいないわけで。まあ結婚もしてるわけだしこれくらい。……えっ、顔怖っ!?)

 

 色々と考え込んでいるうちに、カイズの顔がものすごく不機嫌になっているのがわかる。だが何が彼の逆鱗の触れたのかヴィータにはわからなかった。

 

 言葉の代わりに、カイズの抱きしめる力が強くなる。ヴィータは「ストップ、ストップ」と声を上げた。

 

「お、おい、いきなりどうしたんだよ」

 

「別になんでもないですよ~」

 

「いや、なんでもあるだろう。すっげえ顔に出てるぞ」

 

「いえ、ほんとなんでも~。ただこの歳になってこんな体勢って、俺以外の誰かとしてたんだって~、ちょっと疑問に思っただけで~す」

 

「カイズ以外の誰かって。えっ、へっ?」

 

「他の誰かとしてて、俺とは嫌なのかなって、ちょっと思っただけで~す」

 

「べ、別に嫌とかそういう話じゃねえよ。それにはやてとこうしてたのだって、もうかなり昔のことだし」

 

 はやて。その名前を出すと、不機嫌の極みだったカイズの顔が一瞬にして晴れやかになる。

 

 何だ早く言ってくださいよ。と言わんばかりの顔になると、拘束している腕の力が少し弱くなった気がした。

 

「でもはやてさんとやってたってことは、俺も負けてられませんね」

 

「いやいや、勝ち負けとかじゃねえだろう」

 

「いえいえ。俺は今日からヴィータさん後ろから抱きしめ部門のレコードホルダーを狙っていきますよ!」

 

「そんな記録ねえだろう! ……はぁ、まあいいか。それじゃあちゃっちゃと映画見ちまおうぜ」

 

 こうなったカイズはてこでも動かないだろう。彼のことを一番知っているヴィータだからこそ、これ以上の抵抗はしようとしなかった。

 

 ヴィータは映画のディスクをレコーダーに差し込むと、再び彼の膝の上に収まる。

 

 気分はジェットコースターの座席のようだ。安全バーという名の、カイズの腕がヴィータを抱きしめる。

 

 ヴィータはリモコンを手に取ると、映画を再生していった。

 

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