ヴィータちゃんは男友達が少ない   作:白翼

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駄目です、駄目です!

「ふふーん、ふふふふーん♪」

 

 白い紙箱を片手にカイズは上機嫌で帰路に就いていた。

 

「今日は自分でもびっくりするくらい教導がうまくいって、おかげで残業もなし。何気なく寄ったケーキ屋さんでは限定のアイスケーキをゲット。そして家に帰ればヴィータさんがいる。俺はミッド一の幸せものだ~」

 

 ホップ、ステップ、ジャンプと軽快に階段を上っていく。そんな中、ケーキが崩れていないのは彼の体幹が鍛え上げられた証拠であろう。家の前につくとできる限り静かにロックを解除する。

 

「(くっくっくっ、ヴィータさんきっと驚くぞ~)」

 

 そんな確信を持って部屋の中に入る。そしてその背中を見ると彼女に声をかけた。

 

「ヴィータさんただ……い……ま??」

 

「あっ」

 

 視線が合うとピシリと時間が止まるような感覚に陥る。それからゆっくり十秒ほど経つとヴィータは気まずそうに顔を伏せる。そして恥ずかしそうにスカートの裾をギュッと握りしめた。

 

「…………ちょっと待ってください」

 

 カイズはガタガタと手を震わせながら台所に向かう。そして紙箱のケーキを些か崩しながらも冷蔵庫に閉まった。その後再びヴィータの前に戻ってくると床の座布団を自身の顔に押しつけた。

 

「何ですかその魅惑的な格好はーーーー‼」

 

 近隣住民に配慮された魂の叫びはこもりながらも部屋中に響きわたる。ヴィータは頬を赤く染めると困ったように太股を擦りあわせた。

 

「こ、これはその、なのはが戦術の幅が広がるからって、その」

 

「なんの戦術の幅が広がるんですか! あれですかヴィータさんの魅力で相手を誘惑してその隙に攻撃するとかそういうのですか! 駄目です、駄目です、駄目です!」

 

 暴走したカイズはそこまで言うとハッとした顔でヴィータを見る。

 

「ま、まさかもう誰かにその姿を見せたんですか」

「ふぇ?」

「そうですよね。ヴィータさんがそんなバリアジャケット制作する訳ないですし、高町教導官ですか、シャーリーさんですか、それとも、それとも」

 

 カイズは座布団を投げ捨てるとヴィータの前でひざまずく。そしてそのまま彼女の太股の間に顔を埋めていった。

 

「にゃ、にゃにするんだ!」

「駄目です、駄目です。この魅惑的な太股を見ていいのは俺だけです。ほかの誰かに見られたなんてあまりにも辛すぎます!」

「あっ、やっ、ちがっ、あたしは誰にも」

「うわああぁぁぁ、ヴィータさん!」

 

 カイズが声を出すたびに太股に吐息がかかる。さらに一日の終わりだからだろう。目では見えないほどの本当にうっすらと生えた無精髭の感触がヴィータの快感を刺激した。

 

「やんっ、カイズ、やっ、やっ」

「ヴィータさん、ヴィータさん、ヴィータさん!」

「カイズ、やっ、あっ、あっ、やっ……めねえかーー‼」

 

 瞬間に握られたグラーフアイゼンがカイズの頭に振り下ろされる。それは一際鈍い音を立てながらカイズの頭にめり込んでいくのだった。

 

「つまりヴィータさんのその姿を見たのは俺だけと」

「だから何度もそう言ってるだろ。……だけどな、なのはの言うことも全く見当違いってわけでもねえから家に帰って着替えてたんだよ。……カイズが連絡もなしにこんな早く帰ってくるとは思ってなかったけどな」

「それは……すみません! こちら貢ぎ物の限定アイスケーキとなります‼」

「ふんっ!」

 

 ヴィータは頬を膨らませながらテーブルに置かれたアイスケーキを頬張る。すると目を大きく見開き正座で反省しているカイズの方を見た。

 

 口の中で溶けるアイスとケーキの生地の具合が絶妙と有名な店だ。その限定品にヴィータはご満悦のようだ。二つ目のケーキに手を伸ばすと膨れていた頬は徐々に萎んでいった。

 

「…………んっ!」

 

 ヴィータは大きくケーキをとるとカイズの前に突き出す。カイズは目を輝かせながらそれを一口で飲み込んでいった。これでお互い手打ちだとヴィータは改めて状況を説明した。

 

「まあ何度か説明した通りなのはの考えもあながち間違ってねえなーって話なんだよな」

「まあそれは確かにそうですね。実際ヴィータさん以外は皆さん動きやすそうな格好ですし。それにいくつかのモードチェンジもありますしね」

 

 なのははエクシード、フェイトはソニック、はやてに関して言えばリインとのユニゾンが存在する。だがその状態もただただ強化されたかと言われればそう言えないのが現状だ。

 

 能力底上げのエクシードは体に負荷が増え、ソニックは防御力をほぼ0にする。そしてユニゾンに関して言えばそもそもリインがいなければ選択に入れることすらできない。どれも一長一短、しかしその決断が事件結果を最良の導いたことは少なくはないだろう。ヴィータははぁとため息をつく。

 

「なのはの奴も出来るだけ深刻にならないようにってあんな感じだったんだろうな。……いや結構楽しんでたなやっぱり」

「うーん、可能性が広がるのはいいですけど。それはヴィータさんのスタイルに合いますかね?」

「だよなー。まあだからこそ今まで誰も口出しせず、言う必要もないと思ったんじゃねえかな」

 

 そしてそれがわかっていても口出し出来るのはきっとなのは以外存在しないだろう。ヴィータは内心感謝しつつ、きっとそれを言葉にすることはないだろうと思った。

 

「カイズはどう思う?」

「大きな事件がないうちに可能性を模索するのは、俺としてはいいとは思いますよ。…………ただえっとその、うーん」

「うん? 何か言いたいことがあるならはっきり言えよな」

「いやほんと個人的なことで。こんなくだらないこと口にするのもはばかられるというか、俺がゴミクズなだけなんで気にしないでください」

「余計に気になるだろ! あたしとお前の仲だぞ、今更何を気にすることがあるんだよ‼」

 

 ヴィータはカイズの肩に掴みかかるとガクガクと揺らしていく。カイズはスンとした目で天井を見つめる。そして本当に申し訳なさそうに小さな声を上げた。

 

「……新妻の肌をあまり他人に見せたくないです」

「……………へっ??」

「……すみません忘れてください。ヴィータさんは真面目な話をしているのにこんなのばっかりで。ほんと自分が嫌になります」

 

 カイズは自己嫌悪を覚えながら頭を抱える。

 

 結局初めからカイズの意見は変わっていなかった。ギャグでも冗談でもなくヴィータの肌を晒したくない。その一点だったのだ。

 

「(ああ、こいつは本当に……)」

 

 ヴィータは心の中でそう思うとスッと立ち上がる。そして正座で俯いたままのカイズの前に立った。

 

「カイズ、こっち向けよ」

 

「ヴィータさん?」

 

 カイズが顔を上げたのがわかると、丈の短いスカートをキュッと掴む。

 

「………………んっ」

 

 そのまま少しずつ少しずつスカートをつまみ上げる。するとその短さからすぐに彼女の下着がチラリと顔をのぞかせた。

 

「ヴィ、ヴィータさん⁉」

 

 カイズの声が上ずる。だが声では困惑していてもその熱い視線が下着に向けられている。その事実はヴィータにビシビシ伝わってきていた。

 

自分の痴態を見てカイズが興奮している。息を荒くしている彼の姿を見ているだけで、体の奥が熱くなるのを感じた。

 

「も、もうおしまいだ!」

 

 このままではカイズの目線で感じていることがバレてしまう。ヴィータはギュッとスカートを下に抑えつけた。

 

「そ、そんなー」

「終わりったら終わりだ。明日も仕事早いんだからな!」

「そ、それはそうですけど」

「それに………だけだから安心しろ」

「えっ?」

 

 スカートを抑えながらもじもじとカイズを見る。そして絞り出すように声を上げた。

 

「こうやってあたしの恥ずかしいところを自分から見せるのはカイズだけだから安心しろって……そう言ってるんだよ!」

「でもそれじゃあヴィータさんの可能性が……」

「それだってすぐにどうこうって話じゃねえしよ。……それにあたしだってあたしの恥ずかしいところはカイズにしか見せたくねえしな」

「ヴィータさん!」

 

 カイズは弾かれるようにその場から飛び出す。だがその行動を予測していたヴィータはササッと横に避けた。

 

 ガンッと机に頭をぶつけるとカイズは目に涙を浮かべた。

 

「ヴィータさ~ん」

「明日早いって言ってるだろ。それにまだ夕飯も風呂もすませてねえんだぞ。ほら解散解散」

 

 シッシとカイズを追い払う。そんなヴィータを見てカイズはびしっと人差し指を立てた。

 

「でしたら一つだけ叶えてください。絶対に指一本触れないので」

「ほんとか~?」

「はい、一瞬で終わりますから!」

 

 カイズにそう言われるとヴィータはやれやれと彼の前に立つ。カイズはその前で正座をすると上目遣いに彼女を見た。

 

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