ヴィータちゃんは男友達が少ない   作:白翼

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※この小説は2022年に頒布した本『ヴィータちゃんは男友達が少ない<海鳴市視察編>』の書き下ろし小説三つのうちの一つになっています。
まるまる二年が経ったということで、本編のエピローグにあたるこの作品を公開させていただきました。楽しんでいただけたら幸いです。


ボーナスステージ 力の代償と最後の一日(前編)

 ヴィータとカイズが巻き込まれた『シード事故』

 

 真実としてシードはヴィータの体に取り込まれている。だがどれだけ精密検査を重ねてもヴィータの体に異常がないこと。また事の真相を知るものがヴィータしかおらず、彼女の報告によりシードは自己矛盾を起こし消滅したということで決着がついている。

 

 シードは本当に大切な小さな願いを叶えてくれると言っていた。その言葉通り、あちらの世界の物を無事持ち運ぶことができた。きっと彼女はその願いを叶えそのままとけ込むように消えてしまったのだろう。

 

 そんな二人の本来の海鳴市視察期間はもう終わっている。だが寝込んでいた期間の分しっかり視察をしたい。それがヴィータとカイズの願いだった。

 

 二人はロストロギア事故を未然に防いだことも評価され視察の再開を許された。その間にヴィータとカイズは、はやてとなのはを加えて様々な場所へと向かった。石田先生との会食、翠屋に行きなのはの里帰り、その他にも行ける限りいろんな場所にだ。

 

 二人が目覚めてから今日で三日目。明日には八神家からミッドチルダへと帰る予定になっている。なのはとはやては上への報告も兼ねて先に戻っている。そしてすでに帰りの身支度は完璧に終わっていた。

 

 あとは寝て明日を迎えるだけ。だけなのだがヴィータは両腕を組み「う~~~ん」と唸り声を上げていた。

 

「……カイズの奴、ずっと怒ってるよな」

 

 いや怒っていると言うよりは、拗ねているという方が正しいかもしれない。この三日間、傍目から見れば彼は終始笑顔で機嫌が良さそうに見えただろう。

 

 だがヴィータにははっきりわかってしまった。

 

 それは結婚して誰よりも彼のことを知っていると言うことはもちろんあるだろう。しかしそうなってしまった原因に心当たりがあるのだ。

 

「勝手に真ソニックになったのがまずかったよなー」

 

 そう言葉にするとベッドに大の字で倒れる。このベッドとも今日でお別れかと思うと少し寂しいが、今はそれどころではなかった。

 

 海鳴市に視察に来る前に、新しいバリアジャケットの話があがった。その時はミニスカジャケット姿をカイズに見られ、いろいろとあった。

 

 結局カイズの新妻の肌をあまり他人に見せたくないと言う願いをくみ、バリアジャケットの話はいったん保留となっていた。だがお別れ会での小ヴィータとの戦い。そこでヴィータは一方的にその約束を破ってしまったのだ。

 

 スカートではないので下着などを見せたわけではない。しかしある意味それ以上に性的な姿を大観衆の前にさらしてしまったのだ。

 

 ヴィータは「はあぁ~~~」と小さくも長いため息を漏らす。

 

「いやあの時はしかたねえよな。たまたまアインスがカードを手に入れてくれて、それしか勝ち筋がなかった訳だし。それにあの戦いの姿はあくまでVRが作り出した姿、さらに大人バージョン自体魔法で作り出した姿だしな~~」

 

 そしてそれがわかっているからこそ、カイズは何も言ってこないのだろう。そんな彼は今、ヴィータと交代でお風呂に入っている。あとは本当に眠りにつくだけでこの海鳴市ともお別れだ。

 

 ヴィータは寝るために大人化の魔法を解いた自身の体を見る。そこにはこの数ヶ月間ずっと視界にあったたわわな胸も、くびれた腰も、張りのあるお尻も存在しない。嘘偽りのない子供体型の自分の姿があった。真逆の姿、だがこれが本当の自分の姿だ。

 

「…………………よしっ!」

 

 ヴィータはベッドから飛び起きると机に置いておいたそれに手を伸ばした。

 

 

 

 八神家の浴室。カイズは壁に頭の側面を当て自己嫌悪に陥っていた。

 

「はああぁぁ、絶対バレてるよな~~。うまく隠せてると思ってたんだけどな~~」

 

 なのはとはやてと一緒に行動している時は隠し通せている自信があった。しかしいざヴィータと二人きりになると、彼女が時々申し訳なさそうな顔をしていることにすぐ気づいた。

 

 自分のつまらない独占欲がそうさせてしまっているのだろう。カイズはヴィータと小ヴィータとの戦いを思い出すと、さらに深いため息をつく。

 

「まあぶっちゃけ俺が悪いんだよなー。ヴィータさんはヴィータさんで八神堂のためにヴィータちゃんを鍛えようとしてた。それを俺が先回りしていろいろと戦術を授けちゃったんだからなー」

 

 そのせいでヴィータは思いも寄らぬ劣勢を強いられた。そしてその劣性を覆すには、イレギュラーな力に頼るしかなかったのだ。その時のヴィータの姿、さらにボンキュボンと突き出たボディーラインを思い出すと、頭の中がモヤモヤする。

 

「テスタロッサさんには悪いけど、あの格好は正直目に毒だよなー。あの戦闘で目覚めた人もきっと少なくないんだろうなー」

 

 そしてその目覚めた人たちは何度もヴィータのことを思い出すのだろう。そう思うと頭の中のもやもやがさらに色濃くなっていく。カイズは両目をつぶり後頭部を掻いた。

 

「はぁ~~、本当に俺は器の小さな男だな。いろんなことがあったけど、この海鳴市の視察は本当に楽しいことばかりだった。その最後にこんな感情を持ち込んでしまうなんて。…………あー、駄目だ駄目だ!」

 

 カイズは冷水のシャワーで頭を冷やしていく。そして心のぐちゃぐちゃを無理矢理抑え込んでいった。

 

「とにかくお風呂から出たらヴィータさんに謝ろう。そして明日は明るい気持ちで海鳴市に別れを告げるんだ!」

 

 冷水でシャッキリするとお風呂からでる。そして寝巻きに着替え、彼女の待つはやての部屋に向かっていった。

 

 







※18禁版の後編に続きます。
https://syosetu.org/novel/5616/47.html
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