ヴィータちゃんは男友達が少ない   作:白翼

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17:37分 コピペの間違いを修正しました。


夢の守り人

 届かせる。白いバリアジャケットを着た少女は、デバイスの先端をその黒い翼の女性に向ける。

 

「アクセルチャージャー起動。ストライクフレーム。エクセリオンバスターACS――――ドライブ!」

 

 砲撃を主軸とした高町なのはの新たな力。なのははピンクの刃を携えると、闇の書に向けて突撃を仕掛けた。

 

 闇の書は左手を構えると、その攻撃を受け止める。削れ火花をあげる互いの攻防。だが二人の魔力量は歴然だった。

 

「届いて!」

 

 しかし少女は諦めていない。力が届かないからと。勝ち目がないからと。そんな理由で泣いている子を見放すことなどできなかった。

 

「ブレイクシュート!」

 

 槍の先端が相手のフィールドを貫通する。そのわずかな隙から放たれた一撃は、AAAクラスのそれを遙かに量がする一撃だ。

 

 この攻撃で駄目なら。

 

 少女は全身を疲労に襲われながら、煙の晴れた先を見つめる。そこにはほぼ無傷に近い、闇の書の姿があった。

 

『マスター』

 

「……もう少し頑張らないとね」

 

 折れかけた心を再度立て直す。なのはは再びデバイスを構えると、闇の書に接敵した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『……さて、それでは目的を達するとするか』

 

 海上から離れたビル群の中。二人の戦いを遠目から見ていた黒い霧は、その姿を形作っていく。デスイーターは口を醜く歪ませると、巨大な爪を構えた。

 

 これがデスイーターの狙いだ。未完成の自分ではヴィータに勝てるかどうかは五分五分だ。それに彼女は常に仲間と繋がっている。ヴォルケンリッターが二人になれば、こちらの勝率は0といっても過言ではない。

 

 だからこそこの瞬間しかないのだ。仮面の者に存在を消されヴィータが闇の書の一部と化したこの瞬間に、高町なのはを殺す。そうすれば闇の書から八神はやてを含めヴォルケンリッターが救出されるチャンスは永遠に失われる。

 

 しかしヴィータの観測なしでは高町なのはに干渉はできないはずだ。だがこの記憶が再現されているのが確かな証拠だ。闇の書と一体化している今の状態であっても、ヴィータは意識的、無意識に関係なく闇の書を通してこの戦闘を観測している。

 

 それはつまり、ヴィータと戦うことなく決着がつくということ。弱りきった今のなのはをこの爪で貫けば、それでヴィータは死を認めざるを得ないのだ。

 

「まあ、そんなところだよな」

 

『タイミング的には完璧です。その考えで間違いないようですね』

 

 一人と一つの声がデスイーターの後方から聞こえる。デスイーターはゆっくりと振り返ると、黒いジャケットを着たカイズの姿を見た。

 

 

◆◆◆

 

 デスイーターと視線が合う。カイズは黒刀を二本構えると、臨戦態勢に入った。

 

『がっはっは、誰かと思えば勘違い男じゃないか。……邪魔をするなよ。あまり時間がないんだ』

 

「時間がないね。ああ、そうだな。だからこそ、俺はお前を止めてみせる」

 

『私を止めるだと。お前がぁ? がっはっはっは、Bクラスの貴様程度が私に勝てると思っているのか。――――時間の無駄だ。さっさとくたばってもらうぞ!』

 

 デスイーターが地面を蹴る。コンクリートにヒビが入るほどの跳躍は、一気にカイズとの距離を詰めた。

 

 両手の三本の爪が交互に襲いかかる。カイズはプロテクションを張ることなく、それを二刀の黒刀で捌いていった。

 

『ほら、逃げ出していいんだぞ。あれだけ死を刻み込まれて、恐れ慄いているんだろ!』

 

「――――――!」

 

『弱い貴様に何ができる? 自身をヒーローと勘違いしていたお前にはなにもできはしない。さっさと私に殺されてしまうんだな!』

 

「――――えか?」

 

『何だと? ――――ぐっ!』

 

 カイズは小さく何かをつぶやくと、デスイーターの爪をはじきとばす。その力に一瞬驚きを見せるが、デスイーターは、すぐに気味の悪い笑みで彼を見た。

 

『虚勢か? ハッタリか? お前は何もできない。死という感情の強さの前に、貴様は無力でしかないのだ』

 

「――――それは上か」

 

『さっきからボソボソと。さっさと潰れろ!』

 

 もて遊ぶ気などない。一撃で殺すと、全力で振り降ろされる爪。AAAクラス以上のその攻撃を、カイズは真正面から受け止める。

 

 フィールドも展開せず受け止めたカイズは、その一撃で膝を突く。

 

 そうなるはずだった。もしこれが現実なら、ここまでの力の差は簡単には埋まらない。

 

 だがここはどこだ。この世界での強いということはなんだ。

 

 カイズと彼の相棒はようやくその答えに気づいた。

 

 だからこそ、もうデスイーターを恐れることはなかった。

 

 前回とは違う。カイズを馬鹿にしていたデスイーターの顔が初めて困惑の色を見せる。

 

 カイズはベルカ式の黒刀をデスイーターに突きつけると、その決意を口にした。

 

「やっとわかったんだよ。勘違いしているのがお前で、俺は何も勘違いしてなかったってことにな」

 

『な、何を言ってる』

 

「言ったよな。お前は夢物語の主人公に俺がなったつもりかって。ああ、そうだよ。俺はこのヴィータさんの夢の中で主人公になりにきたんだ。眠っているお姫様を助けるのは、ヒーローの役目だろ」

 

『がっはっは、それが勘違いだと言っているんだ。たかがBクラスの人間になにができ――――』

 

「できるさ!」

 

 迷いなどない。カイズは声を張り上げると、その願いを叫んでいく。

 

「この夢の世界では想いが力になる。だからこそ、俺は絶対に負けない」

 

『はっ、だったら貴様は私には勝てないさ。死より強い想いがこの世界にあるとでも』

 

「ああ、あるさ!」

 

『くだらん時間稼ぎだ!』

 

 再度一直線にデスイーターは攻撃を仕掛ける。だがカイズは黒刀を横凪ぎに放つと、その攻撃を一蹴した。

 

「だからその死の想いは上かって聞いてるんだよ」

 

『な、何とだ』

 

「そんなの決まってるだろ。――――俺がヴィータさんを想う気持ちより上かって聞いてるんだよ! いくぞ、イノセントハート!!」

 

『オーケー、マイマスター!』

 

 ヴィータの想いを絶対に穢させない。

 

 その想いから穢れなき心と名付けられた彼の相棒は、肯定の電子音を高らかにあげる。

 

 どうして今まで忘れていたのだろうか。出発前にシャマルが言っていたはずだ。このヴィータの記憶の世界では、想いが力になると。

 

 ヴィータに強く想われ、ヴィータを強く想う自分なら誰よりも強い力を発揮できると。

 

 その言葉は先ほどの相対で証明された。

 

 なら後は戦うだけだ。ヴィータの想いを傷つけさせたりはしない。ヴィータの記憶を破壊させたりしないために。

 

「ウオォォォォォォォッ!」

 

『グオォォォォォォォッ!』

 

 カイズは刀を。デスイーターは両手の爪を。二人はそれぞれ二本の武器を構えると、互いの刃を交えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 白いまばゆい光とともに消えたはずの四人は姿を現す。

 

「我ら。夜天の主の元に集いし騎士」

 

「主ある限り。我ら魂尽きることなし」

 

「この身に命ある限り、我らは御身の元にあり」

 

「我らが主。夜天の王八神はやての名の下に」

 

 闇の書の復活のために犠牲になった四人は、白いベルカの魔法陣を囲むように立つ。

 

 そして四人が守護する夜天の主がその真ん中に姿を現した。

 

 八神はやては白き光に包まれると、バリアジャケットを、そしてデバイスを手に構えた。

 

 今まではやてに黙って魔力の収集をしていたヴォルケンリッター達は、皆顔を伏せてしまう。

 

 だがそんな彼女たちに、はやては優しく微笑みかけた。

 

「みんな。お帰り」

 

「はやて。はやてっ!」

 

 話すことはいくらでもある。償わなければいけないこともたくさんある。だが今は再びはやてと出会えたことを素直に喜びたかった。

 

 ヴィータははやての元に駆け寄ると、その胸で涙を流した。

 

 だがその中でも、何か言いようのない違和感を感じていた。

 

「ヴィータちゃん」

 

「シグナム」

 

 闇の書との戦いでボロボロになった、なのはとフェイトが彼女たちの元に近寄る。

 

 それに何度か接敵した薄茶色の髪の毛の少年と、バリアブレイクを使う獣耳の生えた女性。

 

 さらに執務官であるクロノが現れると、今の状況と今後の対策を二パターン提示した。

 

 皆が真剣にクロノの話を聞くなか、ヴィータの違和感は徐々に膨らんでいく。

 

「な、なぁ、はやて。あたし達ってこれで全員だったっけ」

 

「私の知ってる範囲ではそうだと思うけど。あっ、でもヴィータ達しか知らない人やったら、わからんと思うよ」

 

「いや、そうじゃなくて。……何だろう。何か、何か大切な人のことを忘れている気がするんだ。ずっとあたしの側にいたはずなのに。…………あたしって、どうして一週間ぐらい前に大泣きしたんだっけ?」

 

「んん? ヴィータが私の前で最近泣いたことあったかな。ヴィータはいつも笑顔やったで」

 

 そう言葉にするはやてに嘘偽りは見えない。いや、はやてが自分に嘘をつくメリットがないのだから、それは当たり前だ。

 

「そ、そうだよな。それより今はあれを何とかしないとな」

 

 闇の書の意志を前に、何をいま考える必要がある。はやて以上に大切な人など、自分にいるはずがない。

 

 それは今も昔も、そしてこの先の未来もきっと変わらないはずだ。

 

「あたしにとって一番大切なのははやてだ。はやてだけのはずなのに…………」

 

 そう口にしても胸のもやもやは晴れない。だが今は余計なことを考えている時間はない。

 

 クロノの作戦と指示を聞くと、ヴィータは皆と共に闇の書の意志に向かっていくのだった。

 

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