『はは、まさか管理局にあんな奴がいるなんてねー。ここ一ヶ月のデータにはいなかったはずなんだけどなー』
サイは画面共有を解除すると、バグを安全なルートへと移動させる。さすがにあの時間では全体に爆弾を置く時間はなかったようだ。
『口惜しさは残るけど、今日は管理局のサーバーにハッキングできたという事実だけで十分だ。これを餌に他の団体にウイルスを買ってもらうかな。おっと、また「1」か、どうやらもう種切れみたいだね』
サイは設置された爆弾をさらりと避けると、安全なルートからバグを逃がす。バグは地上にでると、データ上にしていた体を、デバイス上に戻す。そしてその場で翼をはためかせた。
『今日のところは引き分けだね。だけど次は』
チカッ! ドガッ!!
―――――ザアアァァァァァァァ。
一瞬、何か光があがった気がした。だがそう認識するまえに、画面が砂嵐一色になる。
『なっ、はっああぁぁ? ……バグの反応が消えた。地雷の包囲網は抜けたはずだ。どこからでてくるかわからない小さなバグをどうやってねらい打てるんだよ!!』
◇◆◇◆
「…………と、そう思っているのかもしれないな」
管理局の屋上、シュツルムファルケンを放ち終えたシグナムは目標の破壊を確認すると、ほっと一息ついた。
コウキは当初の予定通り、地雷によりバグを追い返すことに成功した。だが同時に、地雷だけではバグを破壊しきれないこともわかっていた。
だからこそ時間内でできる最前を尽くした。彼は可能な限り地雷の位置を『わかりやすく』設置し、バグの逃げる道を誘導していったのだ。
バグがサーバーから抜け出し、デバイスの復帰とともにシグナムはコウキに指定された位置からシュツルムを構える。あとは、見ての通りの結果だ。
彼女はデバイスを待機状態に戻すと、中央管理室に戻る。そこではコウキが周りの局員に囲まれている姿があった。
「さっすがコウキさんですよ」
「コウキ先輩のおかげで、本当に、本当に助かりました」
みな心の底から賞賛と感謝の意を述べる。シグナムもその輪に加わろうとしたとき、赤髪の男、ユウキは怒鳴り声をあげた。
「おいあんた、いったいどういうつもりなんだよっ!!」
「ユ、ユウキ君。コウキさんは私たちのために」
「はっ、そんなこと理由になんてならねんだよ! どうしてこんなことをしたかって聞いてるんだよ!!」
ユウキはズカズカとコウキに近づくと、その胸ぐらを掴む。そして一度思い切り彼を睨みつけると。――――大粒の涙を浮かべていった。
「な、なにやってるんだよ。そ、それは先輩の大切なものだったんじゃないのかよ。どうして、どうして俺たちなんかの為に。何でだよ」
「みんなを守れたんだ。それでいいじゃないか」
「全然よくねえよー。……どうして。どうして出ていく時に俺にも声をかけてくれなかったんですか。俺、先輩とだったらどこへだって行ったのに」
「そういうわけにもいかないだろ。……だけど、すまなかった」
ユウキはおいおいとコウキの胸で涙を流す。そんな彼の姿をシグナムは呆気にとられながら見ていると、コウキは両肩をあげた。
なっ、悪い奴じゃないだろう。
口にすることなく、シグナムにはそう言っているのが理解できた。