ヴィータちゃんは男友達が少ない   作:白翼

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いつも隣で

 お昼を少し過ぎたくらいであろうか。

 

 シグナムはベンチで横たわっているコウキに膝枕をしながら、深いため息をついた。

 

「…………はぁ、どうして私はいつも暴力でしか解決できないんだ」

 

 自分が好戦的だということは重々承知している。だがそれでもコウキのことになると、つい言葉より先に手がでてしまう。

 

 それは彼がそんな自分でも受け入れてくれるからかだろうか。

 

「いや、違うな。私はお前のことになると、頭が回らなくなるんだ。その理由は、多分。……もうわかってる」

 

 彼の前髪をそっとかき分ける。時間が経ち痛みが引いたのだろう。安心したように眠る彼を見て、シグナムはくすりと笑みをこぼした。

 

「そういえばコウキも言っていたな。自分だけが気合いを入れて馬鹿みたいだと。……あの時は言えなかったけど、私だってそうだったんだ。ああ、そうだとも」

 

 不思議なものだった。自分は精神年齢的にも大人であり、ヴォルケンリッターの将でもある。

 

 皆が慌てる状態であれど、自分だけは冷静でいなければ。ずっとそう心がけてきたし、そう行動できていたとも思う。

 

 だが彼といるときは違った。彼の一挙動に心が揺れ、彼の一言にいつも心が高鳴っていた。

 

「現金なものだな。あれだけ気落ちしていたというのに。なのにサイとの戦いの時、私の力が必要だと言われたら。それだけで心のモヤモヤが全て吹き飛んでしまった」

 

 そして今、自分の失態を見られ気絶させてしまって。それに対して、コウキが自分に愛想を尽かさないか。この一時間ほど、ずっとそればかり気にしていた。

 

 ここまでくればもうこの気持ちに悩む必要はないだろう。自分はもうこの想いの言葉をしっかりと理解できているのだから。

 

「なあ、早く起きてくれコウキ。私は、お前に言わなければいけないことがあるんだ」

 

「…………いや、だったらそれは俺が先だ。言ったよな。言いたいことがあるって」

 

「コ、コウキ、起きてたのか」

 

「いや、今目覚めたばっかりだ。――――イチチチ」

 

 コウキは頭のコブに触れると、シグナムの膝から頭を起こす。彼は手を挙げると「カアァー」と背筋を伸ばしていった。

 

「コ、コウキ、先ほどはすまなかった」

 

「ああ、それは大丈夫だ。というか、正直いろいろ考えてたんだけど、さっきので全部吹っ飛んだ。だからもうそのまま言うな」

 

 コウキはそれだけ言うと、なぜか何度も深呼吸をし始める。そして「あ、あのな」と声をあげようとするが、そのたびに口を閉じてしまう。そしてまた何度も深呼吸をした。

 

「あ、あのな。さっきの話なんだけど、その」

 

「あ、ああ」

 

 コウキが妙に緊張しているからか、その緊張がこちらにも伝わってしまう。この流れはもしかして。そうシグナムが思うと、コウキは言いよどんでいたその言葉を口にする。

 

「えっと。……さっきカートリッジシステム作るので、はやてさんを紹介してくれっていったけど、やっぱりあれはいいわ」

 

「へっ? …………ん、んん。ああ、そうか」

 

 思わず肩すかしをくらってしまう。どうして今そのことを話す必要があるのか。

 

 いや、事件が終わったからということはわかるが、それなら余計にどうしてという疑問があがった。

 

「だが先ほどはそのシステムのおかげで難を逃れたと私は思うが」

 

「ああ、確かにそうだ。やっぱりいざというときに、管理局のシステム外のパソコンがあるのはいいと思うんだ。カートリッジシステムを経由すれば、ローカルネットでも十分に戦えるしな」

 

「なら、どうして主を紹介しなくていいのだ?」

 

 それは当然の疑問だ。シグナムがそう口にすると、コウキは再び言いよどみそうになる。だが両頬をパシンと叩くと何か覚悟を決めたようだった。

 

 コウキはキリッとした目をしながらも、少し視線をはずすとその答えを口にする。

 

「え、えっとだ。とりあえずカートリッジシステムはどんな型番でもいいんだ。コネクタを合わせればいいだけだし。それにカートリッジシステムって結構重いだろ」

 

「いや、待機モードにすればそれほどでは」

 

「あ、ああ、えっと、そういうことじゃなくだな。……俺がカートリッジシステムを使うような時がきたらな。その時はシグナムがいてくれたら大丈夫だと思うんだ」

 

「私がいてくれたら……? だが私がいないときもあるはずだ」

 

「だから、だな。――――いつも隣にいてほしいんだ。シグナムが隣にいるといつも楽しいし、ピンチの時もものすごい励みになる。だから、その、もしシグナムが俺の隣にいてくれるなら。カートリッジシステムを作る必要はないかな。…………なんて」

 

 コウキはそういうと、強く下唇を噛む。きっとそう遠回しに言うだけでも、人付き合いをほとんどしてこなかった彼にはいっぱいいっぱいだったのだろう。

 

 だがそれは彼女も同じだ。巡り巡ってその言葉の意味を理解すると、くしゃりと顔をほころばせた。

 

「だ、だが私は暴力的な女だぞ」

 

「そりゃ会ったときからわかってるって」

 

「戦いばかりで女性らしいところも皆無だ」

 

「それなのに俺のために頑張って服を選んでくれたんだろ」

 

「パソコンのこともよくわからないし」

 

「別に覚えたかったら教えるし、わからなくたって隣にいてくれるだけでいいんだ」

 

「それに、それに私は人間でない。……過去に大きな罪も犯している」

 

「それでも今は管理局として正義を貫こうとしてるんだろ。だったらそんなお前を俺も応援したいと思ってる」

 

「だったら、だったら」

 

 シグナムはおどおどしながらも、自分の短所を次々と口にする。だがそんなことはもうコウキには関係なかった。

 

 彼は震えていた手をギュッと握ると、今までで一番強く言葉を放った。

 

「ずっと人付き合いから逃げてきた。だからこの感情の答えがずっとわからなかったんだ。でもついさっきわかった。だから声に出して言えるんだ。――――俺はシグナムが好きなんだ。だから俺の隣で笑ったり、怒ったり、恥ずかしがったり、ずっとそうやっていてほしいと思ってる」

 

 好きだ。そうハッキリ口にされると、シグナムの言い訳がぴたりと止まる。

 

 その代わりに、彼女は泣き出しそうな顔をしながら自身の胸の内を言葉した。

 

「わ、私もそうだ。ずっと戦いばかりで、そういうことにはとことん疎くて。だからずっと考えていた。ずっと悩んでいた。この胸の想いの答えを」

 

 シグナムはベンチに置かれたコウキの握り拳を見る。彼は相当な力を持って握りしめているのだろう。

 

 だがそれはそれだけの力を込めなければ、震えで手が解けてしまうからだ。

 

 シグナムはそんな彼の手に、自分の手を添える。そうすると、彼の震えは嘘のように収まっていった。

 

「わ、わわ、私、私も、お前のことが。…………コウキのことが好きだ。だ、大好きだっ!!」

 

 難しい言葉などわからない。シグナムは勢いのまま想いを声にした。

 

(コ、コウキもこんな気持ちだったのか)

 

 好きだ。その三文字を声にした瞬間に、体中が震え出すのがわかる。だがそんな彼女の手を、今度は彼の手が包み込んでいった。

 

 自分よりも大きな手。指のタコの付き方も違うその手に包まれると、彼と同様にシグナムの震えもゆっくりと収まっていった。

 

 だがコウキもまだ緊張がほぐれないのだろう。唇を震わせていた。

 

「こ、ここ、これからも、よ、よよよよ、よろしく頼むな」

 

「あ、ああ、あああ、こちらこそ、た、たた、頼む」

 

 お互いに深々と頭を下げると、『ドゴンッ!!』とかわいげの皆無な衝突音があがる。

 

 コウキはちょうどコブのあたりにぶつかったのだろう。痛みで顔をしかめる。だがそんな状態が本当に面白かったのだろう。

 

 コブを撫でながらも、盛大に笑いだした。

 

 そんな彼を見ると、シグナムもまた口元を緩める。自分のせいで負った怪我だ。笑ってはいけない。

 

「ふっ、ふふふ。あっはっはっは」

 

 そうは思いながらも、やはり耐えることができず、彼女もまた笑い声を漏らした。

 

 二人の笑い声はしばらくの間終わることはなく。そうでありながらも、握りあったその手を離すことはなく。

 

 固く、固く結びあっていくのだった。

 




あとがき

そんなわけで、気が付いたら結構な量になっていましたねw

今回のシグナムさんはいかがだったでしょうか。よーやくお互いの気持ちを伝えられた二人、しかし手を握るだけでこの照れっぷり。


ヴィータちゃんの時では考えられないほどスロースペースですね!!



いやー、今回のカップルは不器用×不器用なのでヴィータちゃんとは違った楽しさが書いててありました(笑)

二人の付き合い初めは、また後日ということで。

さてそんなわけで、何度かあとがきでも書いたのですが、DLサイト様でうちのサークル(イノセントウイングス)の作品がいくつか販売になりました。

あっと、その前に、言わなくちゃいけないことが!

コミティアに来てくれた読者様ありがとうございましたああああ!! ほんとーに、真面目に、すごく嬉しかったです!!



と、そんな嬉しいことがあったのですが、やはり白翼の作品は小説。で、小説はデータよりも本のほうがいい。というのが本音のようで。


そんなわけで、ちょっと決心しました。やろうと思います。自宅通販!!


あと、それに付随してもう一つ。


いまデータ本で、ヴィータちゃんは男友達が少ないをあげているのは周知の事実です。

で、データ本ように新しい話もプラスして、データ販売をしようと思っていました。


ですが、もし新しい話を読んでみたい。もしくは白翼の小説を本として持っておきたい。

そんなありがたやありがたやな読者様がいましたら、こちらも本にしたいと思います。

どちらにしても、WEBように原稿は作るので、あとはそれを印刷所に送るだけなので、そこまで手間ではないので。


えっと、要点をまとめて付随します。

・今までの本を自宅通販する。これはまず何の本があるとかもあるので、15日を目安にしてホームページに自宅通販専用スペースを作りたいと思います。

・ヴィータちゃんのWEB用の原稿を、実際の本にする。これは10人くらい欲しいかなって人がいたら、やってみようと思います。




どちらもハーメルンの『活動報告』『白翼のツイッター』『ホームページ』などで、15日前後を目安に宣伝したいと思います。

なので、ヴィータちゃんの文庫化計画も、活動報告、メッセージボックス、ツイッター、ホームページのWEB拍手などで、希望の方は著名でいいので何かメッセージを残してくれるとありがたいです。


今の段階ではまだ自宅通販方法も定めていないので、もちろん住所などは書く必要は全くないです。

ただある程度の指針として聞きたいだけですので。


HP イノセントウイングス  http://sky.geocities.jp/hakuyoku123/

白翼ツイッター  @hakuyoku123

メールアドレス [email protected]




さって、そんな感じで今日はこのへんで。あっと、最後に一つ。


前回書いたリアル事件ほうは決着付きました。

やばそうなのは弁償もしてもらえて、被害品も全部買い取ってもらえたので大丈夫です。


それでは今日はこんなところで~


ではは~ ノシ
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