一言で言うなら、白であろう。
脛まで隠れる長いスカートに、ところどころに黒のライン。そして胸につけられた赤いリボンが何とも特徴的な服だった。
ヴィータはもじもじと自身の指を絡ませてると、カイズの前に立つ。
「ほ、本当は中学生の時の制服がよかったんだけど、それじゃあ大きくてよ。だ、だから、あいつが小学生の時の服を借りたんだ。……や、やっぱり子供っぽいよな、ごめん、やっぱりなし、着替えてくる!」
自分でもどうかしていると思ってしまったのだろう。ヴィータはそのままカーテンの奥に逃げようとする。
だがカイズはそれよりも早く、ヴィータの手首を握ると、ぐっと自分の方へと近づけていった。
「そんなことないですよ。ヴィータさんはいつだって可愛いし、俺にとっては年上の女性です」
「だ、だけど、小学生の制服だぞ」
「まあそれはそうかもしれませんけど。といいますか、ヴィータさんは制服を着て何がしたかったんですか?」
何となく、学生時代のアルバムに対抗しているのは分かる。だがそれだけで制服に着替えるだろうか。
首をかしげるカイズの隣に、ヴィータはちょこんと座る。
「そ、それはそのだな。えっと、えーっと」
何か言い辛いことなのだろうか。スカートをギュッと握りしめると、困ったように下を向いてしまう。
だが視線を何度も右往左往させると、いきなり彼女は飛びついて来た。
――――チュ。
首に両手を回すと、そのままの勢いでカイズの頬にキスをする。
触れるか、触れないかのそのキスを終えると、ヴィータはプシューと頭から湯気を上げた。
「ヴィータさん?」
カイズは頬に残った僅かな感触に戸惑の声をあげる。そんな彼にわかるように、ヴィータはアルバムのとあるページを開いた。
「…………このページ。これ頬にキスさせてるだろ」
「は、はい」
「だ、だから、だからよ」
ヴィータはそこで一度言葉を止めると、プイッと視線を外す。そして呟くように口にした。
「カイズが他の女にキスされてるのが悔しいから。……だから同じところにキスしようと思ったんだ」
「…………えっ。それじゃあ、わざわざ制服に着替えたのは」
「…………ただキスするだけじゃ、何だか負けた気がして」
そうヴィータは消え入りそうな声で言うと、ギュっと目を閉じてしまう。そして照れ顔を隠すように、ベッドに顔を埋めてしまった。
行動に起こして、言葉にして、ようやく自分がどれだけ支離滅裂なことを言っているか理解してしまったのだろう。
ヴィータは自分の馬鹿らしさに顔を合わせられないと、顔をうずめたままだ。
だがそんな彼女の両肩をカイズは掴むと、そのまま彼女を抱き起こした。
「カ、カイズ?」
「ヴィータさんがそう思うんだったら、どんどんキスしてください」
「だ、だけど馬鹿みたいだろあたし…………」
「そんなことないですよ。というか、そんなふうに嫉妬してくれて俺、実はめちゃくちゃ嬉しかったりします」
「そ、そうなのか?」
「まあ、それは置いといて。……キスしてくださいよヴィータさん」
カイズはそう名言すると、じっとヴィータの瞳を覗き込む。これだけしっかりと見られると、今までなかった気恥かしさが一気にこみ上げてきた。
思えばキスをされることのほうが、圧倒的に多かった。しかも流れではなく、意識させられてするのは初めてのことかもしれない。
ヴィータはチラリとベッドの上のアルバムを見る。それは閉じられており、中の写真は見えない。だが中身は覚えている。
ヴィータは少しムッとした表情をすると、目を閉じゆっくりと唇を近付けた。
――――チュ。
先ほどのように、唇が彼へと触れる。
「ヴィータさん。そこは唇じゃないですよー」
「えっ、あれ?」
ヴィータは一度目を開けると、カイズの顔を見る。彼女はカイズの口に狙いをつけると、再び両目を閉じた。
――――チュ、チュ。
今度は二回彼に口づけをする。だが唇特有の凹凸感がどうにもない。
ヴィータは再び目を開けると、カイズと目を合わせた。
「またまた外れです。じゃあ、今度はこっちからしますね」
「お、おぅ」
それではあまり意味がないのだが。そうヴィータは思うが、二回外しているからか、あっさり彼の行動を了承する。
ヴィータは唇を少し前に出すと、再びギュッと目を閉じた。
「…………………?」
だがいくら待っても唇の感触がこなかった。自分のように外しているわけでもない。何も感じなかったのだ。
いったいどうしたのだろうか。ヴィータは目を開けると、その瞬間鼻がくっつくほどに近い彼と目を合わせた。
「えっ!? あっ、ん、んん――――!!」
わざと焦らした唇が、ヴィータの唇に覆いかぶさる。カイズは唇を重ねては離し、重ねては離し。何度も何度もキスをしていった。
「カ、カイズ、ずるい。っていうか、さっきわざと外させただろう」
「あれ、ばれちゃいましたか。いやー、ヴィータさんがあまりにも可愛すぎて、ついイタズラ心が」
「そ、そんなにあたしをからかって面白いかよ」
「いえいえ、面白くなんてないですよ。――――だけど、何よりも愛おしいと思います」
「愛おしいって、あ、んん、あむっ」
先ほどの重ねるだけの口づけとは違う。カイズは深く、深く唇を重ねていくと、そのまま想いを伝えた。
「そうやって嫉妬してくれる姿も。俺のために何かしてくれようとしてくれる姿も。全部、全部本当に愛おしく思ってます。――――確かに俺は昔いろいろな女性と付き合ってました。だけど、これだけは信じてください」
カイズは一度唇を離すと、ヴィータと真っ直ぐ視線を合わせる。そして嘘偽りのない思いのまま、その言葉を口にした。
「俺が本当に初めて好きになったのはヴィータさんです。そして、これからずっと愛し続けるのもヴィータさんだけです。だから、その。…………過去(アルバム)の俺じゃなくて、今の俺を見てくれると、その。……ありがたいです」
最後の方は自信がなかったのだろう。少し口調が弱くなっていた。
ヴィータはそんな彼の姿を見ると、胸につかえていたものがスッと取れていくのを感じた。彼にここまで口にしてもらって。彼にここまで愛してもらって。
そこまでされて何を不安に思うことがあるであろうか。
少し恥ずかしかったが、ヴィータは目を開けたままそっと唇を近付ける。そして「んっ」と彼の唇に触れると、照れたように笑みを浮かべた。
「ごめんな、カイズ」
「ヴィータさん」
「それとな。あたしが初めて好きになったのも、これからずっと愛し続けるのもカイズだけだ。だからそんな顔するなよ」
「…………ヴィータさん」
そう彼女を呼ぶ声は、どこか感極まっていた。ヴィータはそんな彼の代わりに、再び口づけをしていく。
――――チュ、チュ、チュー。
何度も、何度も二人は口づけを交わしていくと、そのたびに幸せを感じ。
二人の営みはそれから一時間以上、終わることはなかった。
5月23日
午後10時
ツイッターを見ていたら、様々な絵があがっていまして、その日がキスの日だということを知る。
「そうかー、キスの日かー、へぇー」
今日が終わるまであと二時間。そして思い立った。
「2~3000字の短い奴ならいける!」
そう思い立って、いざ終わってみれば七千字オーバー、余裕でキスの日に間に合いませんでした!!
そんなわけで、お久しぶりの白翼です。
キスの日突発話いかがだったでしょうか。間に合いませんでしたけど!!
今回の話しは、結婚前のカイズ君の教導実習後の話しです。
ヴィータちゃんの本編最終回のあとがきで、実は書こうと思っていたネタの2つのうちの1つの半分です。
ものすごい分かり辛い言い方ですけど、白翼が書きたかったほうは、『教導実習が始まって1週間後』のヴィータちゃん話しでしたので。
あ、多分何人かの人は知っているかと思いますが、その話しがいま自宅通販をしております特典小説
『ヴィータちゃんは男友達が少ない 貴方がいない 一人の部屋で』
となっています。
一番早い人だと、明日くらいいは届くのではないでしょうか。
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そして今回の話しでちょろっとでてきましたが、近いうちに書きたかったもう一つの話し、カイズ君のお父さんの話しもどこかでやりたいと思います。
親に挨拶に行くのは、何もカイズ君だけではない。彼が緊張した分、ヴィータちゃんも彼の親とはいろいろあったので。
そんな感じで、1日遅れのキスの日小説でした。
また近いうちにどうぞよろしくお願いしまーす。
ではは~ ノシ