ヴィータちゃんは男友達が少ない   作:白翼

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※もしかしたら、次か次の更新で気分の高鳴り次第で18禁のほうに移動してるかもしれません。


ヴィータちゃんとシグナムさんは男友達少ない 時間+状況=恋心?
無垢な相談


 相談があるんだ。

 

 そう切り出されたのは、ヴィータの仕事が終わった直後のことだ。教導も滞りなく終わり、今日は早めの帰宅ができると思った矢先の出来事。

 

 ヴィータは顎に手を添えると、「ん?」と小首を傾げる。そしてピンク色のポニーテールが特徴の彼女に話しかけた。

 

「あれ。そういえばシグナムは今日休みだったんじゃないのか? 確か電話ではやてが言ってた気がしたけど……」

 

「ああ、そうだ。今日は休日だったのだが、どうしてもヴィータに相談したいことがあってな。……ここで待たせてもらった」

 

「待たせてもらったって、何時からここにいたんだよ」

 

「かれこれ、三時間ほど前だが」

 

 よく見ると、シグナムの額からほんのり汗がでているのがわかる。まさかこの時間までずっと外で待っていたのだろうか。

 

「だったら連絡でも何でもそればよかっただろう」

 

「それはそうなのだが。…………その、ギリギリまで本当に相談するか悩んでいてな。実を言うと、入り口から離れたり近づいていたりを繰り返していたんだ」

 

 だから汗をかいていたのか。ヴィータはそれを納得すると、「うーん」と後頭部を掻いた。

 

「それで相談って何なんだ。ってか、どうしてあたしに相談なんだ?」

 

「そ、それはそのだな。…………どこか場所を移さないか」

 

 シグナムはどこかぎこちなくそういうと、あたりをキョロキョロと見渡す。それは誰かに見つからないようにそうしているのか。いや、どちらかと言えば見つかりたくない誰かを捜しているように見えた。

 

 そんなシグナムらしくない行動を見ると、ヴィータにはすぐに思い当たる節ができてしまう。

 

 分かってしまえば、断る理由などヴィータにはなかった。

 

(あたしだって、随分いろんな人に助けられてきたからな)

 

 ヴィータはデバイスを取り出すと、愛しの旦那に通話を繋げた。

 

「あっ、カイズかー。ちょっと用事ができちまってよ。今日は外で夕飯食べてくるなー」

 

『――――? ――――!!』

 

「いやいや、浮気じゃねえって。シグナムの奴が相談があるらしくてよ。それで夕飯食べがてらってことで」

 

『――――? ―――――――』

 

「大丈夫だって。こっちはオーバーAクラスが二人いるんだぞ。それこそロストロギアクラスじゃなくちゃ、どうにもならねえって」

 

『―――――。――――――――!!』

 

「わかってるって。あたしも、えっと」

 

 ヴィータはちらりとシグナムのほうを見ると、少し居心地の悪い顔をする。そんな少しの間があくと、デバイス越しのカイズは大声をあげた。

 

『―――――――――!!』

 

「だから違うって。…………あたしも愛してるよ」

 

 ちゅ。っと唇をならすと、ヴィータは持っていたデバイスをスーツにしまう。あっけにとられているシグナムと目が合うと、ヴィータはプイっと視線を逸らしてしまった。

 

「わ、悪かったな。変なところ見せちまって」

 

「いや、こちらこそ悪かったな。せっかくの早帰りだったのに。…………その、仲がいいんだな」

 

「そりゃ何だかんだでもう夫婦で新婚だからな。さすがに外だと恥ずかしいけど、恥ずかしいって思うくらいには慣れたというか。……シグナムの相談もそんなところなんだろ」

 

「――――! あ、ああ」

 

 ヴィータがそう指摘すると、シグナムの顔がボッと赤くなる。ヴィータ自身体験はしているが、やはり『恋』というものは、人を大きく変えるものだ。

 

 あの男よりも男らしく、騎士道精神の固まりのようなシグナムのこんな顔を見る日が来ようとは。

 

 ヴィータは「あっ」と声を上げると、もう一度デバイスを取り出す。そしてサクヤの旦那さんの番号を表示すると、席の空き具合を訪ねるのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 食べながら話もどうかと思い、軽いコース料理を堪能する。最後に食後のコーヒーが出されると、ヴィータのほうから切り出すのだった。

 

「それであたしにどんな相談なんだ。経験はカイズしかないから、そんなに答えてはやれねえかもしれねえけど」

 

「―――――なっ!? ど、どうしてコウキのことだとわかったんだ!!」

 

「…………あー、あたしも周りから見たらこんな感じだったのかな。まあ周りのことは盲目になるよな。うん」

 

「何を一人で納得してるんだヴィータ!」

 

「いや、こっちの話だよ。ほら、それよりもコウキさんのことで話があるんだろ。ちゃんと聞くから、話してくれよ」

 

「ん、んん。……そ、そうだな」

 

 ヴィータの指摘に明らかな動揺を隠せずにいた。シグナムはコーヒーを一口運ぶと、わざとらしく何度かせき込んだ。

 

「まずはヴィータに伝えなければいけないことがあるんだ。そ、そのだな。す、少し前になるのだが、コ、ココ、コウキと出かけた時にだな。その、こ、告白をされたんだ」

 

「それで両想いになったんだな」

 

「――――なぜ結果を知ってるんだ! まだ私は何も言っていないぞ!!」

 

「あ、あははは」

 

 ヴィータは後頭部が痒くなるのを感じると、昔の自分にふつふつと羞恥心が沸いてきた。

 

「まあそれならあたしとサクヤさんで服を選びに行ったかいがあったってもんだな。ん、だけど両想いになってそれで何の相談があるんだ?」

 

「そ、それはだな。…………もうすぐ付き合って一ヶ月になる。コウキと出会った頃から数えると、二ヶ月ほどの時間が経つんだ」

 

「それで、それで」

 

「それで。それでだな」

 

 シグナムはそこで押し黙ってしまうと、唇をギュッと閉じてしまう。きっと次に言うべき言葉を、どう伝えていいか考えているのだろう。

 

 だがその気持ちはヴィータには痛いほどわかった。いや、自分たちがそこに行くまでには随分と遠回りをしたものだが、二ヶ月。普通のカップルはそんなものかもしれない。

 

 ヴィータは焦らすことなく、ゆっくりとシグナムの言葉を待つ。彼女は何度も何度も深呼吸を繰り返すと、消え入りそうな声で話してくれた。

 

「付き合ってしばらく経つのだが。…………キ、キ、キキ」

 

「き??」

 

「…………キスはどのくらいのタイミングでしたらいいんだ」

 

「ブウッフウウゥゥゥゥッ!!」

 

「だ、大丈夫かヴィータ。すまない、いきなりこんな話をしてしまって」

 

「い、いや、違う。そうじゃなくて。えっ、お、おお。すまねえシグナム。もう一度言ってくれねえか」

 

「う、うう。だ、だからな…………」

 

 シグナムは太股に置いている手をギュッと握りしめる。そして絞り出すように、再び口にした。

 

「付き合って一ヶ月でキスをしたいと思うのは、その、破廉恥なことなのだろうか」

 

「は、はあぁぁぁっ!!」

 

 店のなかと言うことを忘れて、ヴィータは思わず大きな声をあげてしまう。

 

 シグナムはそれを咎められていると思ったのだろう。申し訳ないような顔をしながらも、言葉を続けた。

 

「ここ最近は平日も休日もコウキと会うようにしているんだ。と言っても、特別なにかをするわけでもなくてだな。一緒にパソコンのゲームをしたり、電気街に出かけたりとそんな感じなんだ」

 

「お、おお」

 

「そ、それでだな。たまに距離が近くなると、そ、その、こ、コウキの唇を見ることが多くなって。……だがもしことに及んで、節操のない女だと思われるわけにはいかなくてな。…………その、ヴィータはどのくらい経ってから、キスをしたんだ。ヴィータ、おいヴィータ」

 

「――――はっ!? お、おお、えっと、そうだな。キス、はは、キスの話。だよ、な……」

 

 ヴィータは突然挙動不審になると、視線が定まらなくなってしまう。そしてそこまできて、ようやく『なのは』は本当に口が固い人間なのだと改めて認識することができた。

 

 そうなると、その真実を知るのはヴィータ、カイズ、なのはの三人だけと言うことになる。

 

「ヴィータが始めてキスをしたときは、どのくらい経ってからだったんだ。それと、もしよかったらどんな状態だったかも聞きたいのだが」

 

「えー、あー、あははははー」

 

 ヴィータは遠い空を見るような目をすると、苦笑いを浮かべる。

 

(あたしとカイズは出会って四日で付き合ってー。その勢いですぐにキスしましたー。どういう状況だ~? シャワー室でお互い裸で抱き合ってー)

 

「って、言えるかあぁぁぁぁあぁああああぁぁぁっ!!」

 

 思わず席から立ち上がると、思い切り吼えてしまう。付き合って二ヶ月で、いつキスをしたらいいか困っている。そんなシグナムに、自分のことなど話せるはずがないのだ。

 

「す、すまない。そうだな。いくらなんでも不躾な質問だったな。…………配慮が足らなかった」

 

「い、いや、そういうんじゃなくてだな。えーっとな。そういうのは場の空気とかもあるわけだし、明確にいつとかそういうのはないというか」

 

「だがあまり早すぎたら、相手に失礼じゃないだろうか。一緒に出かけたのもまだ四度ほどしかないわけだし」

 

――――グサッ!!

 

(あたしは一度目のデート中に、観覧車でえらいことしたぞ!!)

 

 そう叫びそうになって、何とか口の中で押しとどめる。

 

 ヴィータは椅子に座り直すと、落ち着いた顔でコーヒーを飲む。だが腰から下は戸惑いでガタガタに震えていた。

 

(あ、あれ。あたし、あたしがおかしいのか。で、でもキスはカイズからしてくれたし、あたしだって嬉しかったし。で、でも観覧車でのことはあたしからしたわけで。けどカイズは嫌な顔しなかったし、だけど、よく考えたらあんな場所ですることじゃないわけで。えっ、ええぇっ)

 

 ヴィータはコトンとコーヒーを受け皿に戻す。そして全てを悟ったような顔で、こう口にした。

 

「………………お互い好きになって結ばれたんだろう。だったらどっちが先とか、どのくらいでとか関係ないんだよ。シグナムがキスをしたいと思ったらしてやればきっと相手だって喜んでくれるはずだぞ」

 

「そ、そうなのだろうか」

 

「あたりめえだろ。いいかもう一度言うぞ。『出会ってからの月日』とか『どういう状況』とか付き合っている二人の間には些細なことなんだよ。…………ってか、そうじゃないとあたしが困る」

 

「ん、最後のほうが聞こえなかったのだが」

 

「い、いや、なんでもねえよ。とにかくもっと自信を持てよ。大丈夫、シグナムならできる、ガッツだ!!」

 

 ヴィータはシグナムの両肩にガッと両手をおくと、気合いを込める。人妻として何とも的外れなエールではあるが、初々しすぎる二人にヴィータが送れる言葉はなかった。

 

「そ、そうか。…………そうだな。わかった!」

 

 だがバトルマニアのシグナムには逆にこういった形のほうが気合いが入ったようだ。

 

 グッと拳を握りしめるシグナムを見ると、ヴィータは心の中でため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

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