Fate/ Thunderbird   作:ジンネマン

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お久しぶりです。

待っていた人がいたか不安ですが、取り敢えず、なんとか書けたです。はい。リハビリしながらですが頑張ります。
遅くなりすいません。
ですが、完結させるきはあるので、絶対に、だから暇で暇で死にそうな時にでも、無聊の慰めとしてどうぞ。

後書きは以前に間違えて消してしまった作品を思い出しながら書いたものです。

では、親愛なる皆さま方、良き青空を

追記
あと、未だに誤解されている方が多くいらっしゃいますが、ここで弁明します。
私はシスコンでもロリコンでもショタでも男の娘でもない!
え?好きな軍艦?暁型駆逐艦雷や英国の軽空母ユニコーン、潜水艦イ401ですかね。
は?アズールレーン?艦これ?アルペジオ?そんな軍艦を擬人化したアニメ、マンガ、ゲームへと数多くのメディアミックスした作品なんか知りませんね。
最近のFGOならカーマや殺生院キアラてす。大人の女性ですね。
つまり、私は無実だ!


会談・共闘へ

 チャンポン。チャンポン。チャンポン。

 玉となり自重に耐えかねた水滴が様々な形で重力に引き寄せられる。

 落ちた水滴は床に、あるいは水面に堕ち、弾け、飛散して音を奏でる。

 

 何度も何度も何度も。

 天井から、あるいは肢体から。

 何度も何度も何度も。

 

 滴り落ちる。

 体を伝うは水滴。

 熱を発散できずにいる水滴。

 

「はぁはぁはぁ」

 

「50,49,48,47」

 

 籠る熱気。湿り気のある吐息。

 それとは別に、声は小さいが確かに、ハッキリとした声が、室内をわずかに反響するカウント。

 片や息も絶え絶え、片や泰然自若とした明瞭なる声を。

 

 淡々と減る数字を、未だか、まだかと、

 早く、速く、俊く、はやく。

 時が過ぎ去るのを懇願するが如く、待望の声が喘ぎ零れる。

 

「はぁ、はぁ。セイバー(マスター)……おれ、もう…もう………」

 

 室内に反響するカウントダウンは、呼応する嘆願の声を顧みることなく淡々と無慈悲にカウントは進む。

 だが、その苦境と終わりへと近付いていた。

 それは解放と歓喜を焦がれる希望の嘆願。今か今かと身を焦がす程の忍耐を持ち、

 

「10,9,8,7」

 

 カウントが10を切ってからソワソワウズウズとし始める。体を無意識に震わせて眦には若干の涙さ溜めて。

 (せきら)め荒げる呼吸に呼応して心拍も激しく、なお激しくなる。心音が外にまで聴こえているのではないかと思えるほどに。

 

 そして、

 

 

「3,2,1」

 

 

 

「あああぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 カウント終了よりコンマはやく、声をあげて湯船(・・)から身を出し水をかぶる衛宮士郎。

 赤く染まっていた顔は幾分引き、息を整えてカウントをしていた対象(セイバー)を凝視して声をあげる。

 

「マスター、流石に熱すぎない、むしろ熱い。低温火傷どころか普通に火傷するよこのお湯⁉」

 

「そんなことはない。私がいた頃の江戸っ子はもっと熱い湯に浸かっていた。それも鼻唄を歌いながら酒を飲み、時には喧嘩をしてそれを娯楽としていた輩もいたものだ。懐かしいものだ。

 尤も、後半については少数派であったがな」

 

「だからって75度は高すぎたよ。てか、いつの間に給湯器を改造したの! これ50度以上にはいかない仕様のはずだったよね?」

 

「士郎、私は碩学だ。この程度の機械改修するのは容易い」

 

これは改修じゃなくって、魔改造って言うんだよセイバー

 

 なお、他の二人。葛木とアーチャーはとう風呂を出ていた。特にアーチャーの去り際の顔は……

 ――思い出しただけでも腹が立つ。

 

 

 そう、穂群原学園での戦闘を終えて警察が来る前に現状確認と今後の事を話し合うため衛宮邸(我が家)に一度帰還したはいいのだが、マスターは元より遠坂と葛木も俺も御遣いの使役していた海魔の体液に大なり小なり汚れた。

 いや、あれは体液なんかではなく粘着性汚液と称するべき汚濁だ。主ふ……じゃなくって家事を預かるものとして(まみ)れた衣服を諦めざるを得ないほどの汚れに絶望したほどの物。

 

 あの皮がマントル級に厚い遠坂でさえ、戦闘を終えて神父への連絡を終えた途端あまりにも汚臭に人前に見せられないほどの顔をしていた。

 その事でキャスターに『洗濯魔術とかない?』と真顔で聞く辺り胆が太い。だがキャスター『解毒治療魔術はともかく、洗濯魔術なんてのあるわけないじゃない』と、にべもなく言われ。

 

「レディファーストよ衛宮君」

 

 っと、とびっきりの笑顔で強行された。まあ、レディファーストについては文句は無いんだが長風呂だけはしてほしくはなく、自分達もいるのだから早めにと年押しした。返答は。

 

「善処するわ」

 

 あれは長風呂までいかないまでも、臭いがとれるまで、最低限ではなく最大限するまででないと言うことだと悟った。

 尤も、キャスターは葛木を優先させたく一悶着起きそうだったのだが、葛木はキャスターと遠坂を優先させた。あの遠坂の化けの皮を剥がした悪臭に顔色変えず佇んでいる様はどこか、マスターに通じるモノを感じた。かくいうマスターも泰然自若として女性二人が出るのを待っていた。

 なおその時は普通の温度、40度だった。それがものの数分には熱湯に……

 

 

 

 閑話休題

 

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「さて、私を含め三陣営がこの場集ったのは僥倖だが、事は穏やかに談笑をする暇はない。

 早速だか私が知りうる時計人間(チクタクマン)の所業とその能力を説明する」

 

 遠坂と葛木が卓に着いて間もなく敵の事を、語る。

 その内容は想像を絶するモノだった。

――いや、寒気どころか、とらえようのない何かが、何かが…

 

大機関時計(メガエンジンクロック)

≪御使い≫

≪時間牢獄≫

現象数式(クラッキング)

≪大消失≫

 

あまりに悍ましく、凄惨で惨烈な存在。

月の王、人類の規格の埒外の存在。

話を聞いただけで怒りや義憤より先に恐怖が襲うはじめての体験らセイバー(ニコラ・テスラ)が敗北きっした存在。

 

 此方の常識を逸脱した力。セイバーは語る。他にも自分が知り得ないだけで数多くの事件に暗躍していると思われる事件を次々と、その御業というにはあまりに凶悪な魔技、一流の魔術師であっても不可能な文字通り魔法に匹敵する領域。

 いや、もしかしたら魔法すら凌駕しうる脅威。

 二つの陣営、驚愕大小あれども提供された情報に各々が思考する。キャスター陣営は念話の類いで審議しているかもしれない。

 そのまま5分。いいや、10分程の時間をおいてセイバーが口を開く。

 

「各々、私の言葉で何れ程理解してもらえたかは敢えて問うまいが、一つだけ確定していることがある。

 この聖杯戦争は既に正常なモノでは無い。

 奴が関わっている、直接関節問わず、その影の片鱗がちらついた時点で少なくとも――

 

第五次聖杯は既に破綻している

 

 正常に戻すなどという希望もない。聖杯の器ないし、中身は奴の手が及んでいるとみて間違いないのだから」

 

 セイバーの話が一段落したのを見計らって遠坂が挙手する。

 

「セイバーの宿敵が今回又はそれ以前から聖杯戦争に関与しているのはわかったけど、それは逆にチャンスではないかしら? 

 聖杯戦争のサーヴァントは本来人の手に余るモノ、聖杯ですらそう易々とは召喚できないから《クラス》という型に嵌めることで7騎のサーヴァントを喚んでいる。

 でも、このクラスに嵌める行為が全盛期の能力を軽減させている場合もある。なら付け入る隙があるんじゃない? 

 

 例えば槍が得意な英雄がいたとして魔術が使えるからと言って、キャスターで召喚されれば明らかな弱体化みたいな例が過去にもあったしいし、今回の例で言えばアインツベルンのバーサーカー、《ヘラクレス》は理性を失っている代わりにステータスを向上してる代償、でもセイバーなら《マルミアドワーズ》っていう強力な神剣を、アーチャーなら《ナインライブズ》を持って今以上に厄介な上に厄介な相手になっていた可能性があった。

 貴方の世界のエジソンが現界していたとしてもサーヴァントのクラスに嵌められいるならまだ勝機はあるんじゃない?」

 

 遠坂の話は初耳で、その話が本当なら、自分が喚んだセイバー《ニコラ・テスラ》は――

 ふと、頭に、誰かの手が置かれた。

 

「士郎は気にする必要はない。例え私がセイバー以外のクラスで喚ばれようとも、輝きがひとつでも、あるならば――

 

私は、負けない

 

 確固たる意思。

 揺るがぬ決意。

 果てることなき思い。

 

 頼もしい、誇らしい、憧憬を抱くのと同時に――

 ――俺は

 

「ふ、随分な大言壮語を吐くが結局は負けたのだろセイバー。その尋常ならざるエジソンに、ならば今回も負けるのではないか? 

 尤も、弱体化している可能性を頼みにしているなら楽観的というか、随分な能天気としか言いようがないがな」

 

アーチャー!! 

 

 アーチャーがセイバーを謗る。親の仇を見るように睨むが、当の本人はどこ吹く風、全く意に介していない。

 腕組み、壁に背を預け、目を閉じ、こちらを見ようともしない(・・・・・・・・・・・・)

 

「アーチャー、その辺りにしておいて」

 

 遠坂の制止、一瞬自身のマスターを見て、再度目を閉じ霊体化をして静観の意を示した。

 

「面倒な駆け引きはなしにするわ。私たちは今回の聖杯戦争を通常のものではなく、明らかなる異常事態として捉え、事態の解決を方針とします。

 その間、他の陣営に敵対行為を故意にとることはしない。

 ただし、障害となるなら、その限りじゃない――

 

 葛木先生はどうしますか?」

 

 遠坂が葛木に視線を向ける。返答の如何によってはこの場で戦闘が開始されてもおかしくない重圧を込めて。

 葛木はセイバーと同じ体制、腕組み瞑目(めいもく)して僅かばかりの間をおき、言の葉を吐く。

 

「協力しよう」

 

 キャスターとセイバーこれと言った反応もなく、霊体化しているアーチャーの気配はわからないが遠坂は「ふーん」っと、若干訝しんでいる。

 訝しむと言うよりは疑っている。セイバーや遠坂から事前にキャスターのクラスは権謀術数、譎詐百端*1の限りを尽くす。善良な魔術師は極少なく一例としてマーリン・パラケルスス・テュルパン大司教等が該当すると推測していた。

 

「葛木先生。確認しますけど、停戦ではなく共闘(・・)でいいんですよね? 

 理由、聞いてもいいですか?」

 

「未知の敵、未知の力、行動指針不明。

 不確定要素に対して最善最良の選択をしたまでだか、何か疑問はあるか遠坂」

 

「……いいえ、なにも問題ありません。

 ただ、それは聖杯戦争のマスターとしての意見ですよね? 問題なければ葛木先生本人(・・・・・・)の言葉「いい加減にしない小娘」」

 

 遠坂の言葉に割り込むキャスター、現代魔術師には不可能な魔力を鳴動させ即時戦闘に入らんばかりの敵意に呼応するアーチャーの両の腕には陰陽夫婦剣。

 わずからなる睨み合い、空気が圧倒的な密度をもって軋み、悲鳴をあげる最中、咄嗟どう行動するかを考えているなか――気が付く。

 

 セイバー

 遠坂

 葛木

 

 この三名は一切の動揺もなく、セイバーと葛木は例外としても火付け役の遠坂はゆるりとお茶をすすってさえいる。そんな遠坂に普段なら毒気を抜かれへたれるのだが、キャスターは更に魔力を躍動させようとさせ、アーチャーが踏み込まんとする。

 

「悪ふざけはそこまでだ」

 

 停めたのはセイバー、ニコラ・テスラだ。

 

「同盟とは一時的に背中を預け合う関係だ。本来なら事前に相手の経歴やパーソナルデータ、動機(・・)を精査した上で結ぶものだ。特に動機は重要だ。事と次第によっては最悪のタイミングで裏切られることさえあり得、敵対者と通じて貶められる可能性さえある。

 だが、この男なら、葛木なら大丈夫だ

 

 私が保証する」

 

 ニコラ・テスラ(セイバー)の言に遠坂は表面上は目立った反応を見せずに、普段は選択肢を委ねてくれる筈のニコラ・テスラ(サーヴァント)の豹変ぶりに困惑を隠せない士郎。

 アーチャーとキャスターは臨戦態勢を解いて静観の姿勢に。

 

 逆に言えば、遠坂と葛木は途中でこの話し合いの結末を確信したのだろう。未だに動揺を必死に隠そうとする士郎を、ほんの僅か、針の穴程の疑心と揺らいだ信頼を(むね)に秘め。

 アーチャーとキャスターは自分達のマスターの思惑とは別にニコラ・テスラ(セイバー)を心底信用していない。

 それは、英雄としての半生か、己が心情か、単純な好悪か趣味趣向。それらを差し置いても《御使い》の脅威を肌て感じ、それがあと六柱、奇しくも聖杯戦争と同じ七柱。更にその御使いを創造した首魁。

 遠坂凛は以前に文献にあった一文、ある条件下において聖杯が行うカウンター、聖杯大戦の様相になりつつある事。

 

 現時点で敵対した《御使い》の強さ三騎士クラス、それも条件次第では下手をしたらトップサーヴァントに匹敵するかも知れないレベルだった。更に今回の《御使い》はセイバーの曰く、サーヴァントに《チクタクマン》が以前に作ったモノ(・・)を融合させた状態であり、元々の《御使い》の能力は知っていてもそれがサーヴァントと融合した場合どのようなモノになるかは想像もできないという。

 そのような反則状態にも関わらず、ルーラーが聖杯により召喚されない不可解さに聖杯どころか、聖杯そのものが改編……いや、改悪されている可能性も否定できない。

 

 畢竟、冬木の管理者とはいえ、個人どころかセイバー陣営のと共闘で対応できる範疇を越えたと判断した。

 故にキャスター陣営の勧誘と探りをし、ことのほかあっさりと承諾されたことに内心驚いていたが、よくよく思い出せば葛木という男は合理性突き詰めたきらい(・・・)があり納得する。

 

 そして、僅かな沈黙を各員の一応の了承ととらえたセイバーは立ち上がり告げる。

 

「では、行こうか」

 

 どこえ? っと、士郎が内心首を傾げる。

 

「聖杯戦争における始まりにして、もっとも深奥にあらねばならない者達。

アインツベルンへ

*1
嘘や裏切りが非常に多いこと




此処は過去。
今を置き去りにした過去。
遠い、果て。

時は十年前、場所は日本より海を越えた先の常冬の昏い森(シュバルツバルト)より深き森、ラインの黄金による永久の富を約束された錬金術の大家アインツベルンの居城(工房)が座す。
この時、此所には数多の歯車たるホムンクルスと、一体の中枢制御用ホムンクルスと、一組の夫婦と、一人の幼き少女がいた。

時に第五次聖杯戦争十年前、第四次聖杯戦争を間近に控えていた頃の一時。嵐の前の静けさ、決戦前の張り詰めた空気が城を支配する中で一組の夫婦と幼き娘たちだけが違った。
いや、正確には娘を前にすると違ったのだ。

夫婦は両者共に無償の愛を娘に注ぐ。母『アイリスフィール・フォン・アインツベルン』はもとより、外の世界では《魔術師殺し》悪名轟かせていた父『衛宮切嗣』さえ娘の前では一人の、それこそ娘の態度行動に一喜一憂する平凡な父親でしかなかった。

そんな二人の寵子(ちょうじ)イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは幸せだった。二人の愛を一身に受けて、寵愛を感受していた。
だからか、故にか、ある夜に事件は起こった。

いつもなら大きなベットに川の字(・・・)に三人で眠るのに、時折り順番を変えつつ就寝する三人。
そんなある夜のこと、深夜にもよおしたイリヤスフィールは寝惚けまなこでベットを降りる。
ふと、両隣にいた父母がいないのに気付いた。この時はまだ意識が半分寝ていたのもあって二人ともトイレに行ったのかと思い自分も向かう。

帰り際に合流したらまた三人で寝ればいいと、また少し楽しみに向かう。だか、行き道はもとよりトイレですら二人とは会えなかった。
これは流石におかしいと頭をひねり、道中に見落としがなかったか慎重に戻ると寝室の近く、少し離れた脇道の奥から僅かな光と音が聞こえてきた。

イリヤスフィールほ抜き足忍び足と部屋の扉に近づき耳をたてる。
すると中からアイリスフィールと衛宮切嗣の声が聞こえた。

「さあ、アイリ。早く■■■■■くれ。もう我慢できないんだ」

「もー切嗣ったら、そんなに私の■■が我慢できないの?」

「そうなんだ。こればっかりは、これだけは、イリヤに渡したくないんだ」

「うふふ。もう私の愛しの旦那様は甘えん坊さんね」

聞こえてた。聴こえた。きこえてしまった。
あんなに自分を愛していくれた父母が、
あれほど愛を注いでくれた大好きな父と母が、
二人だけで自分を除け者にして密会していた。

その事実に幼いイリヤスフィールは言いようもないショックを受ける。後ろに一歩二歩と後退り振り返って寝室に走った。幸か不幸か部屋の二人にはイリヤスフィールの走り去る音は聞こえなかったし、肝心の部分は一切理解できていなかった。
寝室に戻ったイリヤスフィールは余りにもの寂しさと悲しみに涙を流して幾分かして疲れて寝てしまった。その後寝室に戻った衛宮切嗣とアイリスフィールは涙で頬を濡らした娘に見て、深夜に突然父母がいなくなって寂しさのあまりに泣いてしまったと勘違いして二人で抱き締めるように寝た。

それから数日、イリヤスフィールは不機嫌であった。
森でクルミの新芽を探す恒例の競技もイリヤスフィール(チャンピオン)がやる気が起きないので無効試合。いつもなら一晩、長くても一日もすれば機嫌がなおる愛娘が今日もまだ悪い。
普段なら『怒っているイリヤも可愛いな』なんて能天気に親バカを炸裂させる衛宮切嗣も今回は困り顔だ。

――どうしたんだイリヤは、ここ数日僕はおろかアイリにまで不機嫌さを隠さない。
衛宮切嗣は苦悩する。目に入れても痛くないほど大好きな愛しの愛娘(親バカ)が数日も不機嫌なのは看過できない。故に、ここ数日で両手両足で足りないほど愛娘にした質問をする。

「イリヤ、どうしたら機嫌をなおしてくれるんだ? お父さんなにか悪いことしたかな? なにかあったら謝るからさ〜〜」

語尾になるにつれて弱々しくなっていく言葉、流石に問われたイリヤスフィールも罪悪感を募らせていたのかブス(・・)っと、頬を膨らませながら初めて答えた。

「………ふーんだ。キリツグとお母様たって秘密かあるんだからイリヤだってヒミツがあってもいいんだもん!」

「秘密? 何のことだいイリヤ?」

「とぼけてもムダだだもん。知ってるんだからね。キリツグとお母様が夜遅くにイリヤにヒミツがあるのを!」

――っな!! なんでイリヤがその事を!
――今までアハト翁ことアインツベルン当主『ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルン』と一部のメイドを覗き秘匿していたアレをイリヤに知られた!
衛宮切嗣は戦慄する。衛宮切嗣にとってそれは愛娘ことイリヤスフィールには絶対に知られたくはない情報だった。

――どうする。どうすればいいんだ! 内容をイリヤに教えるか? 否だ! アレがどれ程危険を説いても嘘と断じられれば証明するために摂食するしかなく、それは絶対に回避すべき結末だ。
――ならば断固として秘匿ないし嘘を教えるか? これも否だ! イリヤは好奇心旺盛だからアレに辿り着く可能性は否定できない。例えダミーを配置してもアイリの所に答え合わせしに行ったら元も子もない。
この時衛宮切嗣は今までにない程に脳を回転させている。それこそ《固有時制御》を使ってもいないのに、それを上回るほどの速度でだ。

――そう。アイリの■■(劣化ウラン)に辿り着かせてはいけない!

その魔術師殺し(親バカ)が導きだした答えが――

「なななな、なんてことだ、ついにイリヤにバレてしまった〜〜」

ひどい棒読みの告白。一般人が百人聞けば九割以上がツッコム程の棒読み。コレが『指先を心と切り離したまま動かす』 ことを行使できる冷徹にして冷酷、非情にして残忍とも称された魔術師殺し衛宮切嗣と同一人物とは思えない。
そんなわざとらしく、棒読みな犯人の告白にイリヤスフィールは満面の笑みで追求する。さながら事件解明する名探偵の如く。

「ふ ふ ふ ん。ついにバケノカワがハゲタだなワトソン君!」

父も父なら娘も娘である。衛宮切嗣は内心刎頸(ふんけい)の交わりと言っても過言ではない名探偵(相棒)に犯人扱いされた助手(被害者)に哀悼の念を抱くも一瞬。今は愛しの愛娘との関係修復が第一と切り替える。

「どうか、どうかこの事は、アイリには」

「さてさて、それはエチゴヤしだいかの?」

次は探偵から某時代劇の商屋に早変わりでどう対応したものかと困惑するも、突発的なトラブルは戦場にはつきもの、咄嗟に最適解(?)の対応をする。

「お代官様、お一つ提案がございます」

「ほお、何かなワトソンくん?」

もはや何てもありである。
そして、愛娘が怒りをおほえている箇所に特効のある言葉(魔法)を放つ。

「僕たち二人だけの秘密(魔法の言葉)を共有しないか?」

「……二人だけの秘密?」

「そう。二人だけのヒ・ミ・ツ」

顔の高さを合わせ
人差し指一本を口の前に立てて
『しー』っと、秘密を強調するように

みるみる内に愛娘、イリヤスフィール顔を赤く高揚させて抑えることのできない歓喜を滲ませながら冷静(本人にとっては)な態度で尊大に振る舞う。

「ふ、ふーん。臣下のフテイをゆるすのも貴族のつとめ、いいわよキリツグ! 特別にゆるしてあげる!
その代わり早くお母様に秘密を作るの!」

もはや文法が無茶苦茶だが、愛娘が喜んでくれるならそんなものは些事だ。
その後二人でキッチンに潜入、有り合わせの材料(超高級)でハンバーグ擬きを作った。キッチンにはケチャップやピクルス等はなく、あってもマスタードがギリギリ、そこでハンバーグを焼いた後の肉汁に塩と赤ワイン加えて煮詰めたなんちゃってグレイビーソース。
ちょっと煮詰めすぎて苦く、塩を入れすぎてしょっぱい、娘とのはじめての共同作業。

無性に楽しかった。今までも外でクルミの新芽を探したり、鬼ごっこやかくれんぼ、雪合戦と二人きりで過ごす時間はあったがどれとも違う。けれどもかけがいのない時間。
普段ならとても美味しいとは言えないひどい味だったが、今まで食べたどんな高級料理よりも

心が満たされる

涙止まらない

ソースとは別のしょっぱさが染みる

極上の味だった











閑話休題

後日の父親(衛宮切継)――

「ガフ!ゴホ!グハ!」

「も~切継ったら、そんな美味しそうに(切継は真っ青な顔で、鉄の心と鋼の精神で笑顔を作り、必死に箸を進めている)慌てなくってもまだまだ料理(殺人遅れて兵器)はまだありますよ♥️」

(ほんと、イリヤにバレなっくて良かった。
でも、僕は、もしかしたら、聖杯戦争が始まる前に死んでしまうかもしれない……)
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