桜井和生と暗殺教室   作:トランサミン>ω</

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契約の時間

『その姿は…』

 

 

『ふふっ、和生に会えて嬉しいよ』

 

 

『とは言っても本物の凛香では無いけどね』

 

 

『酷いよ…』

 

 

シュンとした様子を見せる速水、しかし和生はそれを見ても全く動じない。

 

 

『でも、和生とは1回本気で戦ってみたかったんだ』

 

 

『そっか』

 

 

『だから…覚悟してね?』

 

 

そう言って速水は両手を前に出す。

そして周囲から光の粒子が収束し、彼女の両手に紛うことなき『ヴラド』が握られていた。

 

 

『へー、やっぱり使うのは自分の武器なんだね。戦うと言っても俺は丸腰だしなぁ…』

 

 

『ふふっ、ここは和生の精神世界。和生のイメージがそのまま起こるのよ?』

 

 

『そうなんだ!じゃあ…俺の武器って言ったらこれだよね?』

 

 

和生はレヴィアタンをイメージする。

すると光の粒子が収束し和生の左手に1本の刺剣が納まった。

 

 

『あれ?』

 

 

しかしその刺剣はレヴィアタンではなく、純白の刀身を携えた刺剣であった。

 

 

『おかしいなぁ…ちゃんとイメージしたのに』

 

 

『空の器…』ボソッ

 

 

『何か言った?』

 

 

『なんでもない。それじゃあ…行くよ!』

 

 

そう言って速水はヴラドのトリガーを3度引き絞る。

銃口から放たれる異形の弾丸は和生へととてつもないスピードで向かってくる。

 

 

『蒼魔凍…!』

 

 

和生は回避するために蒼魔凍を発動しようとするのだが…

 

 

『ぐふっ…な、なんで…』

 

 

蒼魔凍は発動せず3発の弾丸が和生の体を襲った。

 

 

『ふふっ、ここでは能力なんて使えないわよ?それに、体に傷が出来てないでしょ?』

 

 

『そうだね…』

 

 

和生は蹌踉めきながらも視線を逸らすまいと前を見る。

 

 

『ここで受けるダメージは体じゃなくて直接心へと襲いかかるわ』

 

 

『なるほどね…精神世界っていうだけあるよ…!』

 

 

『ふふっ、和生が私を殺すのが先か…それとも和生の心が壊れるのが先か…どっちかしら?』

 

 

『凛香の顔と声で物騒なこと言わないでよ!』

 

 

『あはは、私が全部残らず『喰らい尽くして』あげる』

 

 

『やっと吸血鬼らしいところを見せたね。じゃあこっちも行かせてもらうよ!』

 

 

和生は謎の刺剣を構えながら速水に向かって一直線に走り出す。

 

 

『(射撃線を予想して動かないとね。蒼魔凍が支えないんじゃ『ヴラド』には太刀打ち出来ない)』

 

 

『さぁ!もっと私を楽しませて!』

 

 

速水はヴラドのトリガーを連続で引き絞る。

和生は銃口の向きから弾丸の射撃線を予測し、紙一重で躱しながら速水へと近付いて行く。

 

 

『流石和生ね。だけどこれならどうかしら?』

 

 

速水の持つヴラドがガシャンという音を立てる。

 

 

『セカンドトリガー…』

 

 

『ふふっ、1回撃つだけで25発。両手で50発もある杭を避けきれるかしら?』

 

 

『あはは…捌ききれる自信はないかなぁ…!』

 

 

和生はそう言いつつも弾丸を避け続ける。

躱しきれない時は刺剣で弾くが、徐々に被弾が増えてきた。

 

 

『うっ…ぐぅぅ…がぁっ…』

 

 

『あははははは!もう終わり!?』

 

 

遂に躱しきれなくなった和生に容赦なく弾丸が襲いかかる。

何発の杭が撃ち込まれたのかわからなくなった時、速水は和生のもとへと歩いていく。

 

 

『壊れちゃった?』

 

 

『…』

 

 

速水が問いかけるが和生は返事をせず、地に倒れ伏している。

 

 

『じゃあイタダキマス♪』

 

 

速水は和生の体を起こした後、口を開いて彼の首に狙いを定める。

彼女の口には恐ろしい程に鋭利な牙が生えていた。

 

 

ガブッ!!

 

 

『やっぱり王族の地は格べ…うっ!?』

 

 

『まだ…負けてないんだけど?』

 

 

和生は首に喰らい付いた速水を無理矢理引き剥がすと、

彼女の体を思い切り抱きしめた。

 

 

『な、何をする!?』

 

 

『あはは、口調がヴラドに戻ってるよ?まぁ、その質問に答えるとしたら…お前が2つ目にした質問が答えだよ。自分の命を守るために大切なものを捨てられるかだったね?俺は言ったよ、本当に大切なものなら失うよりも大切なものを優先するってね。だから例え違う存在だとしても…凛香を傷付けたくはないし、それに契約する存在であるお前も傷付けるつもりは無いよ』

 

 

『何故そこまで拘る!?』

 

 

『好きだからに決まってるだろ?皆も、ルウシェもそして今お前が化けてる凛香もだよ。全部大切で全部守りたい』

 

 

『ふん、強欲な奴よ。だがその心意気も良い気高さだ』

 

 

『ははっ、ありがと』

 

 

『良いだろう、余のチカラを汝に全て預けようぞ。だがその前に早く余を離せ、気色が悪いぞ』

 

 

『あはは、ごめんごめん』

 

 

そう言って和生は速水の姿をしたヴラドを解放した。

するとヴラドは元の姿に戻った。

 

 

『しかし、汝のその手に握られている剣は…』

 

 

『俺もわからないんだよね。これは何なの?』

 

 

和生は左手に握っている真っ白な刺剣を見て首を傾げる。

 

 

『それは『空の器』だ。王の霊が宿っていない血属器と言えばわかるか?』

 

 

『空の器かぁ…でもこんな刺剣現実世界では見たことないよ?』

 

 

『そうか。まぁよい、まずは余との契を交わすとしようぞ』

 

 

『うん』

 

 

『では汝の腕をその剣で切り裂くのだ』

 

 

『えぇ!?でも俺の心にダメージが来るんじゃ?』

 

 

『案ずるな、戦いは既に終わっている』

 

 

『そう…?ならやるけど』

 

 

そう言って和生が右手に刺剣を突き刺すと鮮血が噴き出した。

 

 

『痛くないけど見るだけで辛いよこれ!』

 

 

『ふん、少しくらいは耐えて見せよ。そうやって腑抜けているからあの小娘にもやられるのだ』

 

 

『あの小娘ってルウシェの事でしょ!』

 

 

『ふん、余興はここまでだ。では頂くぞ』

 

 

『はい?ってうわぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 

和生が自分で作り出した傷口にヴラドが咬み付いた。

 

 

『騒々しい…だがこれで契約は完了だ』

 

 

『あぁ…吸血鬼に咬まれたら吸血鬼になるっていうのに…』

 

 

『それならば先程既に咬み付いていたであろう!』

 

 

『あ、そっか』

 

 

『まったく…』

 

 

『あはは…ごめん。それで契約をしたら何か出来ることが増えるの?』

 

 

『余のチカラを最大限に引き出すことが出来ようぞ。余のトリガーは五段階まで存在する』

 

 

『そうなんだ』

 

 

『とは言ってもファイナルトリガーを発動させるには条件があるがな。それについてはおいおい説明するとしよう。そして汝の血の力を最大限に生かす事が出来る。あの小娘の百鬼夜行のようにな』

 

 

『へー!それは楽しみだな!』

 

 

『ふん、せいぜい楽しみにしているがいい』

 

 

和生につられてヴラドも少し笑った。

 

 

『じゃあこれから宜しくね、ヴラド』

 

 

『あぁ、我が主よ』

 

 

その言葉を最後に和生の目の前は再び血のような赤に塗り潰された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…」

 

 

「お兄様!」

 

 

和生が再び目を覚ますとそこは最初に居た祭壇の中であった。

和生の目覚めを確認したルウシェが駆け寄って来る。

 

 

「ルウシェ、どれくらい時間がかかった?」

 

 

「現在が夜の7時ですから…3時間程でしょうか?」

 

 

「そ、そんなにかかったの?」

 

 

「何を言っているんですか!私の時はお兄様の倍はかかりましたよ?」

 

 

「えぇー…」

 

 

倍という言葉に和生は苦笑する。

 

 

「もう遅いですから帰りましょう?汗も凄いですしお風呂に入って疲れを癒してください」

 

 

「そうだね、そうしようか」

 

 

和生は祭壇に置いてあるヴラドをホルスターに戻すとルウシェの手をとって歩き出す。

 

 

「お兄様から手を握って頂けるなんて嬉しいです♪」

 

 

「こっちにいる間はお兄ちゃんらしい事をしてあげたいからさ」

 

 

「じゃあ沢山ワガママを言ってもいいのですか?」

 

 

「訊いてあげられる範囲ならね」

 

 

「やりました!じゃあ早く帰って日本でのお話を沢山聞かせてくださいね!」

 

 

そう言ってルウシェは走り出した。

 

 

「ま、待ってよ〜!俺は疲れてるんだけど…」

 

 

和生も手を引かれるままにルウシェに付いていった。




契約編終了です!
今回も最後まで読んでくださってありがとうございます。
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