生徒たちは5階の展望フロアにいた。
その廊下の途中に佇む男がひとり。
「……お、おいおい。メチャクチャ堂々とたってやがる」
「…あの雰囲気」
「…ああ、いい加減見分けがつくようになったわ。どう見ても『殺る』側の人間だ」
ここは狭くて見通しの良い展望通路。奇襲もできず数の利も活かせない。
烏間はこの島で実弾の銃が欲しくなるとは思ってもいなかった。
すると突然男が寄りかかっていた窓ガラスに亀裂が走った。
生徒たちは驚きの色を隠せない。
目の前で起きたことが理解出来ないのだ。
男は素手でガラスを割ったのだから。
「…つまらぬ、足音を聞く限り…『手強い』と思えるものが一人も居らぬ。精鋭部隊出身の引率の教師もいるはずなのぬ…だ。どうやら…スモッグのガスにやられたようだぬ。半ば相討ちぬと言ったところか。でてこい」
先ほどのガス使いはスモッグと言うらしい。
生徒たちは恐る恐る素手でガラスを割った男の前に姿を現す。
だが生徒たちは全く別のことを考えていた。
恐怖から誰も言い出すことは出来ていないが…そのなんだ
「『ぬ』多くねおじさん?」
いった!!カルマがいてよかった!そう生徒たちは心の中で叫んだ。
どうやらサムライのような口調にしたいと思っていたらしいが失敗したようだ。
「素手…それがあなたの暗殺道具ですか」
殺せんせーが問いかける。
「こう見えて需要があるぬ。身体検査に引っかからぬ利点は大きい。近づきざま頸椎をひとひねり、その気になれば頭蓋骨も握りつぶせるが」
その光景を想像してしまった岡野は身震いした。
「だが面白いものでぬ。人殺しの為の力を鍛えるほど、暗殺以外にも試してみたくなるぬ。即ち闘い、強い敵との殺し合いだ。だががっかりぬ、お目当てがこのザマでは試す気も失せた。ボスと仲間を呼んで皆殺しぬ」
そういって男が携帯に手をかけた瞬間カルマが造木を使って携帯をガラスごと破壊した。
「プロって意外とフツーなんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ。ていうか、ソッコー仲間呼んじゃうあたり、中坊ともタイマン張るの怖い人?」
カルマは男を挑発している。
「よせ!無謀…「大丈夫だよ烏間先生」
烏間がカルマを止めようとするがカズキが遮った。
「そうです烏間先生、カズキ君の言う通りです」
殺せんせーもカズキと同意見のようだ。
「なぜそういえる…?」
「アゴが引けている」
「うん、これまでのカルマと違って油断なんてないし、ちゃんと相手を見てる」
カルマはテストでの敗北でしっかりと学んだようだ。
「さぁ、カルマ君。存分にぶつけない。高い大人の壁を相手に!!」