5階の展望フロアを通過した生徒たちは、6階のバーフロアに到達した。
この階の階段は店の内側にあるらしく店内に潜入して裏口の鍵を開けなければならない。
「先生たちはここで待ってて!私たちが潜入して鍵を開けるから」
「そうそう、こういうところは女子だけの方が怪しまれないもんね」
片岡と矢田の提案に烏間は
「女子だけでは危険だ…」
そういったのだが、カルマが手を振るポンと叩き
「じゃあ渚くんいってみよーか」
「な、なんで僕を見るのさ」
「確かに渚なら大丈夫だよ、女装すれば」
「女装がやだよ!それに大丈夫ってなに?」
カズキの言葉に反抗する渚だが
「クラスのみんなの為だって、お願いだよ」
「うぅ…わかったよ」
6階の店内は宿泊客たちが音楽に合わせて踊ったりなど非常に五月蝿い場所だった。
「ほら渚くん、男でしょ!ちゃんと前に立って守らないと」
「無理だよ…前に立つとか絶対無理…」
「諦めなって、男では欲しいけど男にはチェック厳しいんだもん」
「自然すぎて新鮮味がない」
「そんな新鮮さいらないよっ!!」
女装させられている渚は嫌そうだが、女子たちは案外楽しそうだ。
すると渚の方に野球帽をかけた見知らぬ少年が手をかけた。
「ね、君らどっからきたの?そっちで俺と酒飲まねー?金あるから何でもおごってやんよ」
女子たちは冷たい目を少年に向けながら
「渚お願い、相手しといて」
「え、ええ?」
片岡に押しやられ渚は少年に連れていかれてしまった。
一方その頃そとの男子たちは
「なー磯貝?」
「どうしたんだ菅谷?」
「やっぱ渚だけじゃ心配だって」
「でも、俺らの中に潜入できそうなやつは…」
磯貝がそう言い淀むと殺せんせーが口を挟んだ。
「カズキ君、君ならいけますね?その鞄のなかのものを使って」
「あ、やっぱりバレてた?」
「どういうことだ」
殺せんせーの言葉を不審に思い、烏間は問い返す。
「見ていればわかりますよ、磯貝君。」
「はい、なんですか」
「カズキ君が今から着替えますので盾になってあげてください」
「??わかりました」
そう言って着替えるカズキ、そして盾になる磯貝、さらにしれっと携帯を構えるカルマに誰もツッコムことはなくカズキは着替えを終えた。
「そこまで動きづらいものでもないんだね、スーツって」
全員がカズキの姿に驚愕した。
「桜井君それはどこで」
「烏間先生の同僚の人から借りました。潜入っていったら変装も必要かなーって」
「カズキ似合ってるねー」
「写真撮るのやめてよカルマ」
「高く売れそうじゃん」
カルマの言葉にも頷ける、それほどまでにカズキのスーツ姿はかっこよかった。
「それではカズキ君、潜入し女子を助けてきてください」
「わかったよ殺せんせー」
「しかし厳重なチェックがあるぞ?」
烏間の言う通り男には厳重なチェックが入る。
するとカズキは
「ビッチ先生の言ってたことわかるかもしれない。そのまま普通に行けばいいんだよね」
「はい、カズキ君。普通に行きましょう」
そういってカズキは店内にいとも容易く侵入していった。
警備員に気づかれることもなく
「「「えッ!?」」」
生徒たちは驚きの声を上げる、烏間もどういうことかわからないというような顔つきだ。
「ヌルフフフ、彼は気配を消すことに長けています。黒いスーツが暗さ紛れ一層気づかれないんですよ。」
カズキが店内に侵入して数分後女子たちに他の男が言い寄っていた。
「よう、お嬢たち女だけ?今夜俺らとどーよ」
「はぁ…次から次へと」
片岡も呆れてため息をついている。
「お兄さん達カッコイイから遊びたいけど、あいにく今日はパパと来てるの。うちのパパちょっと怖いからやめとこ?」
「ひゃひゃひゃパパが怖くてナンパができっか…」
「じゃあパパに紹介する?」
矢田がそう言って見せたのはヤクザのエンブレム普通ならこれで引くはずだが
「どうせそれ偽モンだろ、もしそうなら護衛のひとりやふたりつけるはずだ」
男たちは全く引く気配がない。
「他にはここにいないんだろ?だったら遊ぼーぜ?」
そういって矢田と速水の腕を掴む男たち
「や、やめてください」
「さわらないでよ」
いくら訓練をしていても女子中学生、大人の男に力で勝てるはずがない。
女子たちがやばいと思ったその時
「「ぐえっ!?」」
ひとりの男性が、二人の腕をつかんでいた男たちの手を捻りその場に倒れさせた。
その男性はスーツを身にまとっていて、後ろ姿はどことなくクラスメイトに似ていた。
「てめぇ、何しやがる!!」
「邪魔すんじゃねぇ!」
男たちは激昴して殴りかかってくる。
「お頭の娘さんたちに手を出したんだ、それなりに覚悟はできてるんだろ?」
そういって男性は男達の拳を受け流し再び転ばせた。
「お頭は利益のない争いは好まない、立ち去るなら今のうちだ」
「し、失礼しました…!」
男性の怒気をはらんだ声に、怯えた男たちは足早に退散していった。
「あ、あの。助けて頂いてありがとうございます」
「おかげで助かりました」
矢田と片岡が続けてお礼をいうと
「桃花お嬢様と凛香お嬢様に何もなくて良かったです」
「あ、あのどちら様ですか?」
茅野が問いかけると
「だからあれほど女子だけでは危ないといったんです、でも…何もなくて本当に良かった」
そう言って男性が振り向くと女子たちは驚いた。
「「「さ、桜井くん!?」」」
「うん、ほんとなにもなくてよかったよ。矢田さんのあれで普通なら逃げる筈なんだけどね、彼らはちょっと肝が据わって見たいだから」
「どうしてここに?」
「皆が心配だっていうから殺せんせーに頼まれて来たんだよ、ちょうどスーツも持ってたから」
「で、でもどうやってはいってきたの?」
「え、普通に」
「警備員は?」
「きづかなかったよ?」
「はぁ!?」
カズキの言葉に女子たちはまた驚かされる。
「でも桜井くんスーツにあってるねー」
不破はそこまで驚いていないのかカズキの見た目を褒めている。
「まぁ、ちょっと恥ずかしいけど。ふたりが腕を掴まれた瞬間いてもたってもいられなくなってさ」
「その…ありがとうね」
「いいのいいの、俺の任務はこれだから。じゃあ俺はまたこのフロアに紛れてるから任務遂行よろしくね」
「ええ、ありがとう桜井くん」
「うん、ところで渚は?」
「まぁいろいろあってね」
「そ、そっか…」
そう言ってカズキは苦笑いしつつバーの闇に紛れていった。
「桜井くんかっこよかったねー」
茅野がそういうと
「そうだね、助けてもらった時ちょっとドキドキしたよ」
矢田も照れくさそうに返した。
「凛香ちゃんもそうでしょ?」
片岡がそういうと速水は顔を真っ赤にして
「別に、そんなこと思ってないっ!」
全否定しているが他の女子たちは
「「「(かわいい…)」」」
とても失礼なことを考えていた。
しばらくして女子たちはフロア奥の階段の前までたどり着いた。
茅野が渚を呼びに行き、全員合流したのは良いのだが…
「待てって彼女等、大サービスだ俺の十八番のダンスを見せてやるよ」
そう言って野球帽の少年に引き止められてしまった。
正直邪魔以外の何者でもない。
さらに少年は近くにいた他の客にぶつかり服を汚してしまった。
「おいガキちょっとこいよ」
「あ、あの…今のはわざとじゃ…」
そういって男性に絡まれている。
「ひなたちゃん助けてあげて」
「もー、しょうがないなー」
そういって岡野は男性にハイキックを御見舞する。
それを上手く利用して階段の前の店員を移動させた。
その後裏口の鍵を開け、待っている男子と合流した。
腰を抜かしている少年に渚は
「女子の方があっさりかっこいいことしちゃっても、それでもかっこつけなきゃいけないから、辛いよね男子は」
そういって少年にほほ笑みかける。
合流した渚は
「僕がこんな恰好した意味って…」
「面白いからにきまったんじゃん」
「撮らないでよカルマくん!」
そんな渚に茅野は
「そんなことないと思うよ、きっと誰かのためになってる」
そう優しい言葉をかけてあげた。