「ふうぅ〜…だいぶ体が動くようになってきた」
「ひぃぃ…」
烏間が見張りの首を絞めて落とすところを見て、茅野はすこしびびっている。
「まだ力半分ってところだがな」
「力半分ですでに俺らの倍強ぇ…」
「あの人ひとりで侵入った方が良かったんじゃ」
木村と片岡も烏間のあまりの強さに若干引いている。
生徒たちが進んでいると律から情報が入った。
「最上階部屋のパソコンカメラに侵入しました、上の様子が観察できます」
そういって律はそれぞれの携帯に映像を送る。
「確認する限り残るのは…この男ただひとりだけです」
「「「(こいつが…黒幕か)」」」
生徒たちは黒幕を確認し憤りを感じる。
「テレビに映ってんのウィルスにかかった皆じゃねーかよ。とられてたのか」
「楽しんでみてやがるのが伝わってきやがる。のらさ野郎が」
吉田と寺坂が怒りを言葉にする。
「あのボスについて、わかってきたことがあります」
殺せんせーが説明をはじめた。
「黒幕の彼は殺し屋ではない、殺し屋の使い方を間違えています。もともとは先生を殺すために雇った殺し屋、ですが先生はこんな姿になり…警戒の必要が薄れたので見張りと防衛に回したのでしょう。…ですがそれは殺し屋本来の仕事ではない、彼等の能力はフルに発揮すれば恐ろしいものです」
「…確かにさっきの銃撃戦も戦術で勝ったけど、あいつ…狙った的は1センチたりとも外さなかった」
「カルマ君もそう、敵が正面から現れず忍びよられたら、瞬殺されていたでしょう」
「…そりゃね」
敵は殺し屋ではない、見張りの姿をみて烏間はまさかと思う。
「烏間先生?」
片岡が心配そうに問いかけるが
「いや…。さぁ時間が無い、こいつは我々がエレベーターで来ると思っているはずだが。交渉期限まで動きが無ければ流石に警戒を強めるだろう。ここに役割を……」
烏間がこれからの作戦を支持する中、寺坂の様子がおかしいことに渚が気づいた。
「寺坂くん、まさかウィルス…んっ!?」
「黙ってろ渚、俺は体力だけはあんだからよ。こんなもん放っときゃ治んだよ」
「そんな…無茶だよ」
「烏間の先公がガス浴びちまったのは…俺が下手に前に出たからだ。それ以前に俺のせいでクラスの奴らを殺しかけたこともある。こんなとこで脱落してこれ以上足引っ張れるわけねーだろ」
「寺坂くん…」
「それによぉ渚、もっとやべぇ状況で闘ってやつがいんだろうが」
寺坂の視線の先には磯貝に支えられながら歩くカズキの姿があった。
「桜井くん…」
「あんなの見せられちまったら、やるしかねーだろ」
「悠馬わるいな…」
「気にすんなって、それより傷は大丈夫なのか…?」
「血は止まったし大丈夫じゃないかな」
「それにしてもカズキは無茶するよな」
「あ、あはは…」
「ちゃんと後で説明してもらうからな?親友に隠し事はなしだ」
「あとでちゃんと皆に説明するよ、それにしても悠馬はやっぱイケメンだな」
「傷だらけでクラスメイトを助けるやつの方がよっぽどかっこいいさ」
「そういってくれると…救われるよ」
最上階
生徒たちは9階の見張りが持っていたカードを使って部屋に侵入した。
部屋は広いが遮蔽物も多く最大限に姿を消せばかなり近くまで忍び寄れる。
生徒たちはナンバと呼ばれる歩行法を用いて黒幕の男に近づいていった。
だが後少しというとき
「かゆい」
男の声に生徒たちは動きを止めた。
「思い出す度にかゆくなる。でもそのせいかな、いつも傷口が空気に触れるから…感覚が鋭敏になってるんだ」
その男の声は生徒たちにとって聞き覚えのある声だった。
しかも前よりももっと邪気を孕んで。
「連絡がつかなくなったのは……三人の殺し屋のほかに身内にもいる。防衛省の機密費を盗み俺の同僚が姿を消した。…どういうつもりだ」
烏間の言葉とともに男は振り返った。
「鷹岡ア!!!!」
「悪い子達だ…恩師に会うのに裏口からくる。父ちゃんはそんな子に教えたつもりはないぞ」
生徒たちの表情が引き攣る。
「仕方ない、夏休みの補修をしてやろう」