若葉パークの手伝いをしていたE組の生徒たちと怪我とエネルギー不足でテストに惨敗した和生はトボトボと下校していた。
そこに如何にも不快感を覚える声が聞こえてくる。
「拍子抜けだったなぁ」
「やっぱり前回のはマグレだったようだね〜」
「棒倒しで倒すまでもなかったな」
「ぐ…」
現れたのは五英傑、総合点数493点、学年1位の浅野を筆頭に上位を占めていた者達だ。
そんな彼らに惨敗したE組の生徒たちは言葉も出ない。
「言葉も出ないねぇ?まぁ、当然か」
「この学校では成績がすべて、下のものは上に対して発言権はないからね」
E組の生徒たちを蔑む五英傑、そこにある人物が現れる。
「へーえ。じゃ、あんたらは俺になんにも言えないわけね?」
赤羽業総合点数492点、学年2位。
「まーどうせうちの担任は『1位じゃないからダメですねぇ』とかぬかすだろーけど」
「…カルマくん」
「気づいてないの?今回本気でやったのは俺だけ。他の皆は手加減してた、おまえらが負けっぱなしじゃ立場がないだろーからってね」
「なにぃ〜!」
カルマは挑発的に言葉を紡ぐ。
「でも、次は全員容赦しない。三学期になれば内部進学組と俺らのテストは違うんだ。2ヶ月後の二学期期末、そこで全ての決着をつけようよ」
「…チ…上等だ」
「皆、いこーぜー」
仲間を気遣うカルマの言葉、早い段階で敗者の気持ちを知ったからこそできることだ。
失敗も挫折も成長の源、今回の事件が更にみんなを強くする。
翌日学校にいった生徒たちは烏間に謝罪しに行った。
「烏間先生、ご迷惑をおかけしました」
「これも仕事だ、気にしなくていい。君らはどうだ?今回のことは暗殺にも勉強にも大きなロスになったと思うが、そこから何か学べたか?」
烏間の問いに渚が答える。
「…強くなるのは自分のためだと思ってました。殺す力は名誉とお金のため、学力をつけるのは成績のため。でも身につけた力は他人のためにも使えるんだって思い出しました。殺す力を身につければ地球を救える、学力を身につければ…誰かを助けられる」
渚はチラリとカルマを見る、しかしカルマは知らん顔だ。
「もう下手な使い方しないっす、多分」
「気をつけるよ、いろいろ」
岡島と前原の言葉を聞いた烏間が顔を上げる。
「考えはよく分かった。だが今の君らでは高度な訓練は再開できんな、何せこの有様だ」
烏間が取り出したのはボロボロのジャージ、日々の訓練で傷だらけになってしまったのだろう。
「ハードな訓練にはもはや学校のジャージでは耐えられない。ボロボロになれば親御さんにも怪しまれるしな、第一君らの安全を守れない」
烏間がそう言うと廊下から段ボール箱を抱えた大人が入ってくる。
「防衛省からのプレゼントだ、本日から体育はそれを着て行うものとする。先に言っておくぞ、それより強い体育着は地球上に存在しない」
烏間から生徒たちにプレゼントされたのは新たな体育着、耐火性、切断耐性、衝撃耐性など様々な機能が付いており、全てが世界トップクラスの代物だ。
特殊迷彩も備えており、どんな場所にでも紛れることが出来る優れものだ。
生徒たちはこの体育着を真っ先に殺せんせーに見せに行った。
そして誓った、自分たちが身につけた力は誰かを守るためにしか使わないと。
放課後、裏山で拳銃を右手に刺剣を左手にもった少年が訓練をしている。
そこに殺せんせーがやって来た。
「和生君、調子はどうですか?」
「決して良くはないかな?すっごい悔しいし」
桜井和生総合点数356点学年58位。
「まさかテスト中に腕が上がらなくなるとは驚きです」
「ほんとにねー。痛み止めが切れちゃったみたいでさ?英語の答案白紙で出しちゃったよw」
「ヌルフフフ、英語を白紙で出してこの点数なら悪くは無いですよ。ですが君は気に入らないのでしょう?」ニヤニヤ
「もちろんだよ殺せんせー!さっきまでずっと刺剣振り回してたからさ、痛みになれちゃったんだよ!これならもう大丈夫かもしれない!」
「大丈夫じゃありませんよっ!?君はいつも無茶しすぎですっ!」
あはは、と乾いた笑いを漏らす和生に殺せんせーはビックリしている。
「俺さ?あの時思ったんだ。落ちたのが俺でよかったって。確かに病院は甘いものもないし凛香もいないし地獄のような場所だったけど、おかげで銃は相当上手くなったしさ?それになにより……皆が怪我しなくてよかったかな」ニコッ
「そうですかそうですか。素晴らしい答えです」
殺せんせーの顔に二重丸が浮かび上がっている、満足のいく答えだったようだ。
「では私は邪魔になりますのでそろそろ行きますね」
「ん?わかった。ありがとね、殺せんせー」
和生のお礼を聞くと同時に殺せんせーは飛び去っていった。
そして入れ替わるように速水が和生の元へやってくる。
「和生、帰らないの?」
「あ、ごめん!待っててくれたんだ」
「当たり前でしょ?バレてるわよ?強がってるの」
「な、なんのこと?」
「テストの時何度もペンを持ち直そうとしてたじゃない。ペンを落とす音で皆分かってたわよ」
「うん…まぁ…そう…だね」
和生が俯きながらそう言うと、速水が和生を抱きしめた。
「悔しいなら泣いていいのよ?今は私以外に誰もいないはずだし、いつも全部一人で背負って。辛い時くらいは頼ってよ。私はあなたの恋人なんだから」
「凛…香っ。うん…悔しい…悔しいよっ!うぅっ…だって…俺の2本目の刃が少しも通じなかった…確かに勉強は出来てなかったし…甘いもの食べてなかったから頭が働かなかったのもあるよ…でも…でも…それでも!俺は悔しいよっ…!これまで頑張って磨いてきたのに…うわぁぁぁぁぁぁぁ…」ポロポロ
「うん…和生は頑張ってる。私は知ってるからね?だから安心して、今は全部吐き出して」
速水に抱きしめられながら胸の内を吐露していく和生の表情は涙でぐしゃぐしゃだ。
速水の背中に回した腕は力強く彼女を抱きしめている。
速水も和生の頭を撫でながら優しく言葉をかけ続けている。
「…っぐ…ひぐっ…うぅ…俺はなんでこんなに弱いんだ…こんなんじゃ凛香を守れないよぉ…」ポロポロ
「ううん、和生は強いよ。皆をいつも守ってくれる、それに私は和生がいなきゃここにはいないの。だから和生は凄く強い。涙を堪えるだけが強さじゃないの…だから今は…今だけは私にもあなたの辛さを背負わせて?」
「うん…うん…ありがとう…俺はやっぱり凛香がいなきゃ生きていけないよ…好きだ…大好きだ…愛してる」
「ふふっ私も」
涙ながらも笑顔を見せる和生と微笑む速水。
強く抱きしめあいながらお互いの気持ちを確認している。
そんな彼らを陰から見ているものたちが数人。
「桜井くん…あんなになるまで…」
「メグ、俺たちは邪魔だよ。帰ろう?」
「そうだね、悠馬くん」
「渚、私達も」
「うん…」
見ていたのは磯貝、渚、片岡、茅野の4人であった。
4人は和生の弱い部分をみて思っていた。
「「「「(彼1人に頼ってばかり入られない、自分たちも頑張らないと!!)」」」」
感想などお待ちしております!
甘々な話を連想していた皆様!少し甘さ控えめ、そして優しさ多めの話だったかと思います。
ひとりで溜め込んでしまって押しつぶされてしまいそうな時、誰しも必ずあると思うんです。
だからこそ今回はこのような文にさせて頂きました。
次回からは死神編へと入っていきます。
オリキャラ等も登場しますのでお楽しみに!