拙い文ではありますが、読んでいただけるとありがたい限りです(〃・д・) -д-))ペコリン
烏間は死神を拘束して空中に身を投げた後、地面ギリギリのところで拘束を解き受身をとった。
その様子に生徒たちも声を上げる。
「烏間先生!」
「…死神も!」
しかし生徒たちの言葉に烏間が応えることはなく、彼は死神に話しかけていた。
「受身のスキルは流石だな。一つ一つのスキルの凄さで強引に結果は出せるだろうが…生徒たちには踊らされ、イリーナには騙された。ツメも脇も甘すぎる、ブランクでもあったのか?」
烏間がそう言うと死神が立ち上がる。
そして死神の脇には顔の皮と思わしきものが浮かんでいた。
「黙って聞いてりゃ言ってくれるね?」
とてつもない殺気を放っている死神の顔はとても人間のものとは思えないものだった。
「お前…なんだその顔は!?」
「顔の皮は剥いで捨てたよ。変装のスキルを極める上で邪魔でしかない。全てを犠牲に磨き上げた『死神』のスキル!!お前も殺して顔の皮を頂こうか!!」
「この教室から退出願おう。お前は生徒の教育には悪すぎる」
飛び掛かる死神と迎え撃つ烏間。
2人の戦いの火蓋が切って落とされた。
それぞれの攻撃を全て受け止め、躱す烏間と死神。
死神がナイフとワイヤーで襲いかかれば、烏間が躱し肘でカウンターを放つ。
それに死神も反応し、ナイフを盾に蹴りを放つ。
「なんか…なんか凄い戦いだー!!」
「何言ってるかさっぱりだよ!殺せんせー!」
「分かるように説明しろよ!」
「にゅやっ!?」
生徒たちは烏間の事が心配なのか殺せんせーに実況を求めたのだが、殺せんせーのあまりの下手さにキレかけていた。
しかし殺せんせーもちゃんと考えているようで生徒たちに心配しなくてないい旨を伝える。
「心配せずとも大丈夫ですよ。烏間先生はそう簡単には殺られません。『死神』の持つスキルは確かに多彩。しかも全てが世界最高レベルです、いくら警戒していても彼の前では裏をかかれる。だから烏間先生は敢えて接近戦に持ち込んだ。場所も…水とコンクリートだけのシンプルな舞台、罠を仕込むヒマもない通常戦闘なら烏間先生のスキルは死神以上です。烏間先生やイリーナ先生のようなエキスパートが君たちを教えているからこそ…先生も退屈せずに殺される日々を送れるのです。…ただ、一つ心配なのは『死神』はこんな状況でも秘密兵器を隠し持っているだろうこと」
殺せんせーが話しているあいだも2人の死闘は続いている。
しかし、烏間との戦闘を長引かせたくなかった死神が行動に出た。
「真実を言うよ、烏間先生。僕は実は大金持ちの何の不自由も無い家庭に生まれたんだ。悲惨な境遇で育ったなんて嘘っぱちさ。あの女を引き入れるためのトークスキルさ」
「お前…」
烏間の声に怒気が孕む。
「だが、僕の親は殺し屋に殺された。いろいろ恨まれる商売をやっていたし、家でも理不尽だったから死んでもなんとも思わなかったよ。そのかわり…目の前で親を瞬殺した殺し屋の動きを見てこう思った。『なんて美しいスキルだろうか』とね。目の前で見るプロ野球選手の華麗なキャッチは少年の夢をそれだけで変えるインパクトがある、僕の場合はそれが暗殺だった。その場で僕は殺し屋になることを決めたよ。殺傷法、知識、対人術。暗殺とはそれらの美しいスキルの集合体だ。人を殺せばスキルが身につき、殺して得た『死神』の名声は更なる仕事とスキルをもたらす」
死神は話し終えるとコートの内側から1輪の赤い薔薇を取り出し空中に投げた。
烏間の意識が一瞬薔薇に向いた瞬間、右手を銃の形にした死神が手で作った銃を放った。
「…なんだ?」
『死神のスキル』、''死神の見えない鎌''僅か十口径、極小サイズの仕込み銃から放たれる弾丸は普通に撃っても殺傷能力は0に等しいが『死神』の射撃スキルは不可能を可能にする!!
筋肉と骨の間をすり抜けた弾丸は大動脈に亀裂を入れる。
1箇所裂けた大動脈は自らの血流圧で裂け目を広げ…血が吹き出し、大量出血で死に至る。
次の瞬間、烏間の胸から赤い液体が噴き出し、烏間は崩れ落ちた。
「極小の弾丸は血流に流され体の奥へ、銃声もしないから凶器すらわからない。標的の体と精神の波長を見極め、鍛え抜かれた動体視力で急所を撃ち抜く。『死神』にしか出来ない総合芸術さ」
烏間を仕留めたと確信した死神は烏間に近づきながら得意気にそう語った。
しかし…
「(ん?なんだこれは皮膚と同じ色のチューブが血を噴いている?)」
死神がチューブの存在に気付き、繋がっている先に視線を向けると…殺せんせーがトマトジュースを飲んでいた。
それを見ている生徒たちも微妙な顔をしている。
「(これは…タコの触手!?)」
「この短時間で脱出するのは難しいですが、触手1本位ならギリギリ出せます」
苦しげな顔でトマトジュースを飲む殺せんせーに不破が問いかける。
「殺せんせーってトマトジュース飲むっけ?」
「いえ、あまり好きじゃないですが…2人とここに来るまでに買いました。必要になると思いましてね」
死神が呆気に取られていると…
ドゴッ!!
「!?!?!?…うぐおぉぉぉぉ!?」
烏間の全力の拳が死神の股間を直撃した。
「やっと決定的な隙を見せたな。死神でも急所が同じでホッとしたぞ」
そこで死神は理解した。
殺せんせーが烏間の血管の位置に触手を貼り、それで弾丸を受け止めた上にジュースで出血に見せかけていたことを。
「あのタコの頭の回転は尋常ではない。お前に殺られた殺し屋の様子を話したら瞬時にスキルの正体を見破ったぞ。『私と一緒の空間にいるなら必ず守れる』と言っていた、狙う標的に守られるのは癪だがな。…覚悟はいいな?死神。俺の大事な生徒と同僚に手を出したんだ」
烏間が怒気を孕んだ声でそう言うと、降りてきているイリーナがその声に気付き微笑んだ。
「ま、待てっ!!僕以外に誰がアイツを殺れると…!」
「スキルならうち全部揃っている!」
烏間はその言葉と共に怯える『死神』の顔面を殴りつけた。
死神はそこで気を失い、烏間の戦いに決着がついた。
烏間が死神と戦っている頃、別の場所でも戦いが繰り広げられていた。
「貴様をこの鎌の錆にしてくれる」
ハダルの鋭い斬撃が和生を襲っている。
彼の細身の体と巨大な鎌からは想像出来ないほどの速度で振り抜かれる鎌を持ち前の動体視力で辛うじて躱す和生だが、反撃の好奇を見失っていた。
「(くっ…近づけない…)」
開いていく傷口をレヴィアタンの冷気で無理矢理止血しながら戦う和生。
「貴様もマユ・サクライと同じだな」
「…なんだと?」ピクッ
「遅いのだ、貴様らはな。戦っていて不快だ、さっさと散れ」
ハダルは鎌の刃とは逆側の部分で和生の体を吹き飛ばした。
「ぐぁっ…」
和生は激痛に顔を歪め、片膝を付いた。
「次で終わりだ。なぶり殺しにするのも悪くは無いが、一思いに母親のもとへ送ってやろう。安心しろ、お前を殺した後にお前の仲間も、家族も、全員後を追わせてやる」
ハダルは跪く和生の首を掴み、烏間たちが落ちていった場所に彼を投げ捨てた。
ハダルの攻撃で超体育着も最早効果をなさない状況で下に落ちれば確実に死に至るだろう。
和生は薄れゆく意識の中で左腰に下げられた『ヴラド』に手を伸ばした。
その時…
ドクン
和生の中に流れる血が波打った。
そして和生の脳内に声が聞こえてくる。
『汝か…余を呼び覚ます主は』
『お前は?』
『我が名はヴラド、血を喰らうものだ』
『あぁ、ヴラドか。初めましてだね、俺に何のよう?』
『余は汝の血の呼びかけに応じ、馳せ参じた。汝の望みはなんだ?』
『俺の望み?そうだな…俺は…みんなを守りたい。例え自分を失ってでもだ。約束した、大切な人たちを、俺を待っているまだ見ぬ家族を、そして愛する人…凛香を守るって』
『汝の望み、良きの気高さだ。なかなかに響いたぞ!カズキ・エルレンシア!汝を我が主として認めようぞ!』
『あぁ…よろしく頼む。ヴラド』
和生は脳内でいつの間にか握っていたヴラドのトリガーを引き絞った。
バシャーン!!
とてつもない音と共にカズキが上から降ってくる。
そして彼の死を確認するためにハダルも飛び降りてきた。
「桜井君!」
「和生くん!大丈夫ですかっ!?」
烏間が落ちてきたカズキを心配して駆け寄ろうとすると…
バァンッ!!
杭のような形をした異形の弾丸が烏間の足もとに突き刺さっていた。
弾丸が飛んできた方向を全員が見ると、そこにはこれまでとは比べ物に習いほどの覇気を纏ったカズキが立っていた。
「おかしいですね…」
「殺せんせー…?桜井くんはどうしたの?」
岡野が殺せんせーの言葉に反応し疑問をぶつける。
「和生君の瞳は…沖縄の時のように冷たい金色になっています。ですが…彼には殺意がない…」
「「「えぇっ!?」」」
「あぁ、今の桜井君には殺気が微塵も感じられない」
烏間が殺せんせーの言葉に付け加えるとカズキが反応した。
「桜井って誰ですか?俺はカズキ・エルレンシアですよ」
「桜井君…君は…」
「フハハハハハハッ!やっと認めたか。だが、その体ではもう命が尽きるのも近いだろう。わざわざ立ち上がらず逝けば良かったものを」
烏間の言葉を遮るようにハダルの笑い声が響く。
そんな中生徒たちは困惑していた…カズキが桜井という名前を否定したことにだ。
「和生!どうしたっていうの!」
速水がカズキに向けて声を発する。
「凛香ごめん…すぐに終わらせる」ニコッ
カズキは1度だけ笑顔を速水に向ける。
しかしそれはこれまでの和生の温かみのある笑顔ではなく、冷たく、それでいて凛とした笑顔だった。
「ハダル…このカズキ・エルレンシアが息子として、そして英国王子として貴様を倒すっ!」
「ふっ、殺れるものなら殺ってみるがいい!」
カズキの言葉を聞いた途端、ハダルは再びカズキに斬り掛かる。
「行くぞヴラド…蒼魔凍…」
そうカズキが呟くと、カズキの目の前に広がる世界が凍り付いた。
彼の脳の処理速度が…血液の流れが…世界を上回ったのだ。
「貫けっ…!!」
カズキは凍り付いた世界でハダルの左に回り込むと右手に握ったヴラドのトリガーを2度引き絞る。
するとヴラドの銃身に赤いラインが入り、真紅の杭が放たれた。
杭の1発はハダルの鎌を弾き飛ばし、もう1発は鎌を持っていた右手に直撃した。
しかしこれは凍り付いた世界での出来事…カズキが蒼魔凍を解除すると世界が再び動き出した。
「ぐふっ…な、何が起こった…!?」
その場にいた全員が今起こった事を理解することが出来なかった。
「速く…もっと速く…速く…速ク…速ク…はヤク…はヤク…ハヤク…ハヤク…セカイヲオキザリニシロ」
カズキは再び蒼魔凍を発動。
絶対零度の世界で、光をも置き去りにするスピードでヴラドのトリガーを何度も引き絞り、ハダルの急所を外して真紅の杭を撃ち込んだ。
そして…再び世界がふたたび温度を取り戻す。
「ぐがぁ…っ!?き、貴様…ぁ!!」
ハダルが全身を走る激痛に悶えながらカズキの方を振り向く、すると…
カチャリ
ヴラドのトリガーに指をかけ、冷たい笑みで自分を見下ろすカズキの姿がハダルの瞳に映った。
「カズキ・エルレンシア…!貴様は一体何をしたぁ!」
「遺言はソレダケかい?じゃあ…サヨナラだ」
カズキがトリガーを引き絞ろうとする。
「何故だ!殺気は無いはずだぞ!」
「烏間先生!彼を止めなければ!和生君!やめなさい!」
「和生!ダメッ!命はダメよっ!」
しかし…烏間の声は…殺せんせーの声は…そして…彼の最愛の人の声は…
届かない
彼の世界は凍り付いていた。
「これで…終わりだ」
蒼魔凍によって凍り付いた世界の中、カズキはヴラドのトリガーを引いた。
しかし…
「お兄様。間に合ったようで良かったです」
放たれた杭は、1人の少女。
ルウシェ・エルレンシアによって弾かれた。
「君は…?」
「私はルウシェ・エルレンシア!お兄様の妹です!私が貴方の世界に温度を取り戻してみせるますっ!!」
「ヴラド…やるぞ」
『御意』
カズキがそう言うと彼の脳内でヴラドが返事をする。
すると今度はルウシェが呟く。
「『紅桜』私の血に応じ…咲き誇れ!」
『参りましょう…主』
凍り付いた世界の中で…2人の戦いが始まろうとしていた。
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