怪物と戦い続けるのは間違っているだろうか   作:風剣

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『古代』
プロローグ


『オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 度重なる咆哮が轟いた。

 

 荒野に築き上げられた陣営。

 

 その前方で争うのは、多くもの亜人(デミ・ヒューマン)の集団と異形のモンスター達だった。

 

「えぇい、くそ! よりにもよって大将がいない間に大所帯で来たか!」

「前衛、大型は死んでも抑えろ!突破されたら一気に潰されるぞ!?」

「アイツ等が戻るまで死守しろ!」

「魔導師達は詠唱急げ!」

「ええい、私に指示を出すな!」

「とっとと口を動かせやぁ!?」

 

 罵声と怒号の飛び交う戦場。多種多様のモンスターを前に奮戦していく集団は、徐々に怪物たちを押し返していく。

 

「シルバ、左翼支援!崩れるぞ!?」

 

「なにぃ!?」

 

「ぐぉお、危ねぇえええ!?」

 

 猛牛(ミノタウロス)の剛腕を大盾で受け止めた大柄なドワーフが危うく吹き飛ばされかける。角を振るって追撃しようとした猛牛を黒髪の獣人が長剣で仕留め――真上から放たれた爪を必死に弾いた。

 

「くそったれ、怪鳥(ハービィ)まで群れやがって…!?」

 

「弓兵部隊、撃て!」

 

『ギャア!?』

 

 指揮を執るヒューマンの指示と同時、放たれた矢が次々と半人半鳥のモンスターを射抜いていく中。

 

 付近のモンスターまで巻き込んで放たれた炎弾が、前衛の一角を吹き飛ばした。

 

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』

 

「不味い!?『飛竜』だ!」

 

「嘘だろ…!?」

 

「ぐぁああああああああああああああ!?」

 

『アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 動揺が広がる中、大きい翼を広げるイル・ワイヴァーンは次々と獲物を襲う。

 

 かろうじて致命傷を避けていくが、その凄まじい猛攻に総崩れを起こしかけたその時。

 

『――ガッッ!?』

 

 10(ミドル)上空に君臨していた飛竜の側頭部に飛び蹴りが炸裂し、その首をへし折った。

 

『―――――――』

 

 息絶える直前、竜の瞳が捉えたのは――可視化できる程に凄まじい紅い魔力と、それを(まと)う黒髪のエルフ。黒髪を揺らす青年は、鋭い眼光でもって息も絶え絶えのモンスターを射抜いた。

 

「――――くたばれ、怪物が」

 

 今もその身体にめり込ませている右足を振るい、真下のモンスター達を竜の巨体でもって叩き潰した。

 

『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?』

 

 細身のエルフが実行した力技にその場の誰もが顔をひきつらせる中。

 

「あまり独り占めすんな、グリファス!」

 

「本来魔力はあんな使い方をしないはずなんですがねぇ…」

 

「グリファス様ですから」

 

「ははっ、頼もしい物だ」

 

 彼に続いて現れたヒューマンの戦士が、美しい精霊とエルフの少女が、小人族(パルゥム)の騎士が次々と怪物を(ほふ)った。

 

「ジャック! 遅っっせぇんだよ!」

 

「うるっせえなあクレス! 1週間凌ぐ事もできなかったのか!?」

 

「あぁ!?全軍の武器を用意すんのにどんだけ俺が魔力使ってると思ってんだ!埋めてやろうか!?」

 

 駆けつけて来たヒューマンと指揮を()っていた土精霊(ノーム)の男が言い合う中、士気を取り戻した戦士達がモンスターを押し返していく。

 

「前衛引けぇ!?でかいの来るぞぉ!」

 

 後方で奏でられ続けて来た詠唱がとうとう完成する。先頭で戦い続けていた者達が瞬く間に散った、その直後。

 

 炎、吹雪、雷―――多種多様でありながら確かな威力を秘める無数の魔法が、残存するモンスターを消し飛ばした。

 

「……」

 

 瞑目した王族(ハイエルフ)の青年は、後方で沸きに沸く仲間の元に向かう。

 

 ヒューマンの戦友(とも)に背を叩かれ、笑い合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は古代。後に降臨する事になる神も、その恩恵も、今は存在しない。

 

 ただの人間が、己を()し、道を切り開く。

 

 後に、誰もが憧れる英雄となって名を轟かせる事となる戦士達は、戦い続ける。

 

 今、ここで紐解かれる――『迷宮神聖碑(ダンジョン・オラトリア)』。

 

 

 

 




 毎日のように作品を更新する猛者は本当に憧れます。


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