怪物と戦い続けるのは間違っているだろうか   作:風剣

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 文字数が少な目な事に少々悩みましたが、泣く泣く更新。キリ良くやっていきます。




作戦会議

 

 

「率直に言おう。『偵察』途中にフィオナ騎士団の助力を受ける事ができた事で効率が何倍にも跳ね上がった」

 

 地図を広げるグリファスの言葉と共に自分の顔に視線が集まるのを感じたディルムッドは苦笑する。

 

「私は『()た』だけだ」

 

「過去の『偵察』では『穴』に近づく程にモンスターの襲撃を受けた。貴方の加入で近づくモンスターの奇襲も完璧に察知できたんだ、謙遜する事は無い」

 

「……どういう事だ?」

 

 話を聞く面々の代弁をして尋ねるドワーフ、ガラン。

 

 疑問符を浮かべる屈強な戦士の問いにグリファスとディルムッドが目を合わせる。小人族(パルゥム)が頷いたのを確認してグリファスは説明した。

 

「ディルムッドは特殊な力を持っている。『千里眼』と言うらしい」

 

「せんりがん?」

 

「その名の通り、千里先まで見る能力だ。遮蔽物を無視してな。その恩恵で索敵も察知できた」

 

 その言葉を聞いて、何人かの男がピクリと震える。

 

「なあなあディル!」

 

「ディ、ディル?」

 

「その力で覗―――ごきゅっ!?」

 

 轟音。

 

 少女(エルフ)の細腕から投擲された長い杖の先端が眉間に直撃した火精霊(サラマンダー)の少年が席から転がり落ち、その場にいた女性陣に囲まれてげしげしと踏まれる。『痛い痛いっ、ぐぇっ、ちょ、ま、そこは、のぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』と悲鳴を上げる彼に男性陣の気の毒そうな視線が集中砲火し、ディルムッドも汗を流した。

 

 制裁を下した女性陣、ボロボロになって股間の辺りを手で押さえる火精霊(サラマンダー)が席に戻ると、気を取り直す王族(ハイエルフ)は続けようとして―――

 

「あー、ちょっと良い?」

 

「……ミランダ?」

 

 褐色の肌を惜しみなく晒すアマゾネス、ミランダ・ゴブホーク。

 

 怪訝な顔になりながらも先を促したグリファスは、その直後に己の浅慮を呪った。

 

「フィオナ騎士団のメンバー、喰っちゃっても―――」

 

「頼む、自重してくれ」

 

 気に入った男は容赦無く()うアマゾネスによる被害は『連合(ユニオン)』の中でも甚大だ。モンスターとの戦闘の中でどうしても後回しにせざるを得なかった問題にグリファスは頭を抱える。

 

 何を隠そう、この場にいる男性陣の半数は『喰われた』経験がある。グリファスも一度襲われかけた事があったが、目撃したレイラが主犯のアマゾネスを半殺しにしてからはだいぶ落ち着いた。

 

 むくれるミランダに構わず、咳払いをして続ける。

 

「今回の『偵察』では『穴』の規模の確認、出て来るモンスターの種類と出現頻度の調査を行なった」

 

 広げた地図につけられた黒点を指差し、グリファスは告げる。

 

 淡々と告げられる情報に円卓に着く者達は一様に真剣な表情になって話を聞いていった。

 

「まあ当然といえば当然だが……最も出現頻度の多かったのは最弱のゴブリンやコボルトだったな。時折大熊(バグベアー)のような強力なモンスターも出たが、明らかに出現数が少ない。地上のモンスターをあらかた掃討した今なら『穴』の付近に陣取っても十分に戦えるだろう」

 

「そして――問題は『穴』、その規模だ」

 

 ごくり、と。

 

 それこそ世界の命運を左右する単語に、誰もが固唾を飲む中グリファスは続けていく。

 

「約半年前発見された『穴』。ここからは北東に4(キロル)だな。その規模は直径10(ミドル)、深さはだいたい同じ位だ。ある程度力をつけた者であれば十分に進入する事ができるだろう」

 

 その言葉にジャックが頷いた。

 

「具体的にはどうする?」

 

「『穴』の封鎖方法だが――埋め立てる事は得策とは言えない。何しろ『穴』の調査もできなくなる」

 

「ここに関してはジャックの案を取り入れる。物資にも問題は無いな?」

 

「ああ。石材、食糧にも問題は無い」

 

「『穴』からあれ程のモンスターが現れている以上、その中も相当広いはずだ。一朝一夕で終わるとはとても思えない。年単位の計画で進めて行くぞ」

 

「――――『バベル』に『オラリオ』、か」

 

「穴を塔で塞ぎ、定住に必要な街を築いた上で壁を創り上げる。これ以上のモンスターの進出は絶対に抑えるぞ」

 

 グリファスの言葉に、誰もが決心したように頷く。

 

「ジャック」

 

「あ?」

 

「仮りにも団長だろう。景気付けをしてやってくれ」

 

「うぇ、面倒臭ぇ……」

 

「おいおい……」

 

 苦笑するグリファスに分かった分かったと手を上げるジャックは、円卓から立つと他の者達にも立つよう要求する。

 

 その場にいる者で円を作り、中央に拳を向け合った。

 

「出発は3日後。何としても成功させるぞ!」

 

『おう!』

 

 拳をぶつけ合う中、戦士達は笑みを浮かべ合った。

 

 

 




 どうしてだ、ネタが凄い勢いで削れていく……!?


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