怪物と戦い続けるのは間違っているだろうか   作:風剣

39 / 79

ダンまち9巻読みました。予想外の展開にびびりましたが、どうにか絡められそうです。



神会

 

 

 神会(デナトゥス)

 

 元を辿ると一部の神々が退屈しのぎに企画した一種の集会だが、多くの神々が参加する様になった現在では神々の情報共有や【ランクアップ】した上級冒険者の『命名式』などを行う重要な(もよお)しだ。

 

 会場は迷宮都市中央にそびえる摩天楼(バベル)、その三〇階。

 

 一つの階層(フロア)を丸々と使った大広間には、多くの神々が集まっていた。

 

「ロキの眷属が三人も【ランクアップ】したらしい。Lv.6だ」

 

「おい見ろよアレ……」

 

「けっ、あんの貧乳ふんぞり返りやがって……」

 

「無乳だろアレは」

 

「やめろ、殺されるぞ」

 

 広い空間の中央にぽつんとある巨大な円卓。席に着く神々の数はざっと三〇を超えた。

 

 正装を指定される『神の宴』と異なり各々が自由な服装を纏って駄弁っている中、(ゼウス)の隣に座るヘラは周囲の面々を見つめていた。

 

「今回ランクアップした子供達は多いみたいだな……おぉ!この娘可愛い!」

 

「【九魔姫(ナイン・ヘル)】……リヴェリアちゃんもLv.6になったみたいだしね。グリファスもうかうかしていられないんじゃないのかな。……ところで、ケンカ売ってるんなら買うよ?買っちゃうよ?ヤールングローヴィと霊光の宝玉どっちが良い?」

 

「ごめんなさい本当にごめんなさいどっちも勘弁してください」

 

「ふんっ」

 

 取り出された手袋と得体の知れない宝玉を前に全力の謝罪をする情けない老神。

 

 鼻を鳴らすヘラは何かを思いついたかの様にニヤリと笑った。

 

「それじゃあ……グリファスが新しい魔導具(マジックアイテム)作ったみたいだからさ。今度付き合ってよ」

 

「え、SMプレイ?」

 

「誰がするか!?」

 

 青ざめて呟いたゼウスと対照的に顔を真っ赤にして怒鳴った女神は咳払いして気を取り直す。

 

「い、痛めつける様な真似はしないわよ、何も無ければ。確かそれ、フレイヤやアフロディーテみたいな『魅了』ができるって話だったけど」

 

「おいっ、搾り尽くす気か!?」

 

「貴方の浮気の抑止力になれば良いんだけどねぇ?」

 

 妖しい笑みを向けて来るヘラにゼウスが戦々恐々する中、円卓から象の仮面を被った男神が立ち上がった。

 

「それではっ、第984回神会(デナトゥス)を始める!―――俺が、ガネーシャだ!!」

 

『『『イェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!』』』

 

 相変わらずだなぁ、と平常運転の変神(へんじん)に呆れた様な視線を送るヘラは苦笑する。

 

「ていうか何で司会ガネーシャ?」

 

「暇らしい」

 

「あ、そう。……ちゃんと話進められるんなら構わないんだけど―――」

 

『俺は、ガネーシャだ!』

 

「―――無理ね」

 

「無理だな」

 

 顔を見合わせ、息を吐く。

 

 今回の集まりは、長くなりそうだ。

 

 

 

 

「ギルドの要請により、五年後、俺の【ファミリア】主導で怪物祭(モンスターフィリア)が行われる事となった!」

 

「はいはーい、何すんのー?」

 

「超!有能な俺の眷属達がモンスターの調教(テイム)を行い、その様子を見世物にする!心配はいらない、超有能だからな!」

 

「何か腹立つなぁお前……」

 

「ガネーシャだからな!」

 

「はいはいガネーシャガネーシャ」

 

「あっそうそう。そこのゼウス、昨日ウチのホームで見かけたけど。奥さんは許可したのかい?」

 

「―――アン?」

 

「んなっ、イシュタル!?」

 

「それじゃぁ―――」

 

『『『死刑確定』』』

 

「ぎゃぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」

 

「止めろ止めろ」

 

「折角だ、殺させてやれよ」

 

「……ふんっ、いい気味や」

 

「ふふっ、貴方はいつもゼウスと言い合っているわよね?」

 

「けっ、無乳無乳うるっさいんや、あの好色魔め……」

 

 話題が二転三転、女神による暴力沙汰もあってより騒がしくなる中。

 

「それじゃあ次行くぞ―――命名式だ!」

 

 空気が、変わった。

 

 新参者の神々が青ざめ、古参がニヤリと笑う。

 

 ズタボロにした夫を抱きかかえていたヘラが死んだ目で見つめる中、『祭り』が始まった。

 

「それじゃあ最初は―――バッカスの子だな!」

 

「っ!」

 

「名前は、ロード・レイドル、ヒューマンか……」

 

「ど、どうなんだ!?できるだけ無難に……!」

 

「よっしゃ!【新月の申し子(ルナティック・ノヴァ)】!」

 

「!?」

 

「【白の聖剣使い(ホワイティ・ナイト)】www」

 

「ktkr!【混沌の闇(カオス・アンド・ダークネス)】!」

 

「てめぇらぁぁあああああ!!??(ひと)の苦しむ顔を見るのがそんなに楽しいかぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

「ひゃっはー!楽しいぜ、楽しくなきゃやってねーよーん!」

 

 醜い。

 

 下衆な神々に常識神(じょうしきじん)と新参者が目を背ける。

 

「―――それじゃあ冒険者ロード・レイドル、二つ名は【黒い聖域(ブラック・サンクチュアリ)】」

 

「う、うわぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」

 

 男神が絶叫を轟かせたその後も、地獄の様な光景が続いた。

 

 新参者が一通り終わると、中堅派閥や【ゼウス・ファミリア】、【フレイヤ・ファミリア】などの大派閥に所属する冒険者達の名前が列挙される。こちらは比較的マシな物だった。

 

「おっ、次は……【ロキ・ファミリア】の三人だな」

 

「ふふん!ウチの自慢の眷属や!」

 

「ちっ、もう手が出せなくなっちまった……」

 

「リヴェリア・リヨス・アールヴ……【妖精王(オベイロン)】の、孫?」

 

「曾々孫だとさ」

 

「はー」

 

王族(ハイエルフ)チート過ぎワロタ」

 

「【勇者(ブレイバー)】【重傑(エルガレム)】は勿論、【九魔姫(ナイン・ヘル)】もそのまんまで良いよな?」

 

「当然」

 

「敢えて言えば……【妖精女王(ティターニア)】とか?」

 

「えー」

 

「それはレイラたんの独占で良いだろ」

 

「俺天界に戻ったら絶対あの子の魂探す」

 

「やめとけ、グリファスに殺されるぞ」

 

「あんな良い子、天界(うえ)の連中がとっくに転生させてるって」

 

「そんじゃまぁ、こんな感じで」

 

「さて、これでお開きだな!」

 

 その時だった。

 

 特に言葉も発さなかったヘラが手を挙げる。

 

「ん?」

 

「どーしたの、ヘラ様」

 

「あー、うん」

 

 言葉を促す神々に、あっさりと。

 

 どこまでもあっけらかんと、彼女は告げた。

 

 

「一ヶ月後、ゼウスの【ファミリア】と合同で三大冒険者依頼(クエスト)挑戦するから」

 

 

 時が。

 

 止まった。

 

『『『………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………』』』

 

 その言葉の意味を理解した神々は、一気に目を見開く。

 

『『『えぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!??』』』

 

 迷宮都市最大派閥の爆弾発言に、バベルが、オラリオが、世界が揺れた。

 

 





閲覧、ありがとうございました!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。