街の広場に一人の男が倒れている、体中、土や泥まみれで顔も紫色に変色した痣(アザ)などがいくつもあった。
しかし、周りの人は駆け寄ろうとはせず、心配するどころか皆笑っている。
普通なら異常な光景であっただろうが、この街では日常的に起きていることだ、何故ならこの倒れている男「ライズ・グレース」は有名な荒くれ者で、少しでも気に食わないことがあれば直ぐに喧嘩をふっかける、
ふっかけるクセにいつもいつも負けているので周りも「そういうものだ」と解釈しているのだ。
「またかよ、いい加減にしてくれないか?・・・いつもいつも目障りだ」
小柄な男性が倒れたライズに冷ややかな視線を送り見下したような口調で言い放つ、
ライズは言い返さずにただ地面に伏していた。
ふらつきながらも家に向かっていくライズ、彼は今までの事を脳裏に浮かべていた
何故こうも毎回やられるのか、自分より小さい奴に、何故勝てない。
その事を考えては負けたことに苛立ちを覚える、ライズは大男というほどではないが身長もあり、力も普通の人よりはある方だ、なのに今回は自分より力も劣っている人に負けた。
それがライズには非常に悔しい事だった、それに今回のは相手から売ってきた喧嘩だ、確かに沸点は低く喧嘩っ早いが全く関係のない人には暴力は振るっていない。
「はぁ・・・」
溜息(ためいき)をついて家のドアを開ける。
部屋に誰かがいる。
ドアを開けて部屋に目をやった時に人の足が見えた、生憎家族等はおらず一人暮らしなので誰かが居るなんてことはありえない。
何か怯えたような様子で少し震えているようだ。
しかし、ライズには只の泥棒という認識しかないため、少し驚いたが間を置いてその足の人物であろう人を怒鳴りつけた。
「人ん家で何してやがんだてめぇ!!!」
「ひぅっ!!」
その泥棒?が体をビクんと大きく震わせた、それから直ぐに怒鳴ったライズの元に駆け寄った。
「す、すみません!先ほどのあれはわざとでは無くて!すみません!」
「あ?何言ってんだおまえ? てかなんでお前みたいなガキが盗人紛いのことしてんだ?」
その泥棒?の姿を見たときライズは少し戸惑っていた。
泥棒と言ったら髭面の男だと勝手に思い込んでいたら、こんな16、7歳くらいの少女だったとは、思ってもみなかった。
しかも、とてもそんなことをするような格好はしておらず何処かいいとこのお嬢様のような雰囲気もあった、髪は長めの綺麗な黒色で瞳は透き通ったブルーだった。
「え?あれ?私を追って来たのではなかったのですか?」
「追うもなにも、ここは俺の家だ、そしてお前は不法侵入の泥棒だ、わかるか?」
「・・・・・あ!!!」
少女はしばらく考えて、ハッとしたような顔をした。
「す、すいません・・・逃げるのに必死ですっかり・・・」
「・・・で、追われてここに逃げて来たと」
「はい・・・」
少女は申し訳なさそうに頭を下げた
「はぁ・・・まあ、いいや、しばらくここにいて追っ手ってのが消えたらさっさとここから消えてくれ」
「え、でも迷惑をかけてしまいますし、巻き込んでしまうかも」
「あぁ、争いごとならいつもの事だ、今更どうということはねえな」
「あ、ありがとうございます!!!」
少女の顔がパァっと明るくなった。