そういうことなので、未登場キャラが出てきます。ご了承ください。
短編として別に出そうとも思いましたが、とりあえずこっちの中で投稿させていただきました。
では、お楽しみください。
皆さんは年末年始をいかがお過ごしでしょうか。きっと師走の最後だけあって忙しくしている人もいるでしょう。そんな年末年始の五河家の様子をご覧頂こう。
「シドー、年越しそばはまだなのか?」
リビングの中心にあるこたつでテレビを見ながらゴロゴロしているのは『絶世の』という形容詞を幾つ付けても足りない美少女――――――十香だ。
「ちょっと待ってくれ。あともう少しで出来るから。とりあえず他のやつら呼んできてくれ。呼び終わったら、多分完成していると思うから。」
「もうみんないるぞ。」
「え!?」
十香の言う通り他の面々―――――四糸乃、よしのん、琴里、耶具矢、夕弦、美九、七罪、更には狂三と折紙―――――がこたつの中にもう既に入っていた。
「まだ呼んでないのに何でいるんだよ?」
「どうせ呼ぶんなら早く集めた方がいいだろ。」
士道の疑問に答えたのは一護であった。どうやら一護が先に呼びにいったらしい。こんな大人数に不法侵入されるのはたまったものではない。
「まだ出来てないなら俺が手伝ってやろうか。」
「いや大丈夫だよ。あと、蕎麦をどんぶりに入れて盛り付けるだけだから。」
士道の言う通り、1分ほどでこの家にいる人数分の年越し蕎麦が完成した。そしてそれを一護と士道がこたつで寛いでいるメンバーの元へと運ぶ。そんな二人がこたつで寛いでいるはずの面々の様子を一言で表すのならば戦争だ。
「年末の番組といえば紅白ですよー。私にもオファーが来てたんですけどぉ、だーりんとみんなで紅白を見てた方がいいですー。」
「年末はドラ○もんではないのか。大切なことを学べるぞ。」
「くくく、甘いぞ。年末といえば
「同意。年末は熱血です。」
「何を言っているのかしら。年末はガキ○の『笑って○いけないシリーズ』でしょ。そんなのこともわからないの。」
「全く分かっていない。年末は格闘技。士道と一護を寝技で…」
というように、美九、十香、八舞姉妹、琴里、折紙が(テレビの)覇権を得るためにリモコンを奪い合っていた。それに四糸乃はあたふたしていたが、よしのんは面白そうなので参入してきた。このままでは年越し蕎麦を食べる前にこたつが破壊されてしまう。とりあえず、一護はリモコン争奪戦を止めることにした。
「おい、やめろって。」
一護がそう言った瞬間、争っていた面々は一護の方を見てきた。
「「「「「なら、どの番組がいいの?」」」」」
どんな答えを言っても悲劇が待ち構えているとしか思えなかった。と、ここで助け舟的なやつを出したのはノートPCを黙々と弄っていた七罪だった。
「どちくしょおおおおおおおおおおおおう!何でわたしだけを狙ってくるのよ。お前にはゲームの中でも生きている価値がないとでも言いたいのか!あとでブログで炎上させてやるうううううううう!」
七罪の叫びで五河家は一気に静まり返った。助かったといえば助かったのだが、これからどう七罪に声を掛ければいいだろうか。ちなみに、七罪は所謂FPSというジャンルのゲームで遊んでいた。
「とりあえず、士道の作った年越し蕎麦でも食おうぜ。冷めるたり麺が伸びたりしたらもったいないし。」
これで何とか事態の収束を試みた一護であったが、聞く耳を持たずに再びリモコン争奪戦を執り行おうとしていた。そのような様子を傍観していた狂三は口元を歪めて争奪戦を繰り広げている者たちに提案した。
「ここはひとつ勝負をしてはいかが?」
「何で私まで…」
「いいでありませんの。皆でやった方が面白いですよ。」
七罪は文句を言いながらも渋々参加していた。リモコン争奪戦から端を発した闘争はついにフラクシナス協賛の忘年会風の一発ギャグ大会にまで発展した。
「あのさ、これって俺が作った年越し蕎麦が汁なし蕎麦になるパターンだよね。」
士道はせっかく作った年越し蕎麦が伸びてしまうことをかなり気にしていた。ウルキオラに感化されて素材とかを厳選したのに一番美味しい状態で提供できないというのは心苦しいものがある。
「安心したまえ。シンの作った年越し蕎麦は
それは安心していいことなのか。秘匿技術であるはずの|顕現装置≪リアライザ≫をこんな使い方で使っていいのか。この疑問に関しては永遠に答えが出ることはないので忘れ去るとしよう。
それで一体全体何をやるのであろうか。実際狂三が見切り発車で提案したのであったのだが、そこはラタトスクの安心のサポート力で企画が決定した。
それが『チキチキ 年末だから忘年会的なノリでいいよね、一発ギャグ大会』である。
ネタ披露の順番は令音の西部劇に出てきそうなキャラの札によって決められたのだが、何だかパッとしなかった。ともあれ順番は無事に決定した。まず、最初にネタ披露をするのは八舞姉妹だ。
2人は急造で作られたセットに登り、互いに妙にかっこいいポーズで構えた。最初に口を開いたのは耶具矢であった。
「爆ぜろリアル!弾けろシナプス!パニッシュメント・ディス・ワールド!」
耶具矢の高い声を響かせて如何にもそういう病を患っているというようなセリフを言った。すごい清々しい顔をしているが、このままでは何だかいたたまれない気持ちにこの場にいる十香を除く全員がなってしまう。そんな相方を夕弦が放置するはずもない。
「描写。ズン、ズンズンズン、ズン、ズンズンズン―――――」
夕弦の咄嗟の機転でBGMを挿入した。ただ、これは一時の救済でしかない。百戦錬磨の八舞姉妹と言えども、第三者の評価が入る戦いに関してはほとんど経験がない。はたして一体これからどう巻き返す。
「憑依。鳥よ、あいつを捕らえなさい。」
「フッ、小賢しいわ。いいだろう、我を狙う度胸だけを認めてやる。ならば、これを喰ろうてみろ。」
事前準備で左目を眼帯で隠していたのだが、耶具矢がそれを取り払う。
「我が邪王真眼の糧となるがいい。」
眼帯を取り払った左目が黄金に輝いて―――――の前に目の前に隔壁が降りた。
「え?これ、何!?」
「動揺。一体何事ですか?」
突然の事態に驚き隠せない八舞姉妹。この状況について説明したのは琴里であった。
「申し訳ないけど、これ以上は見るに堪えないから強制終了よ。」
あまりのドストレートの言い分に二人は隔壁越しからでも伝わるほど落ち込んでいるのが分かる。ついでに言うと、耶具矢の啜り泣く声が聞こえてきたので一護は琴里に謝りに行かせた。
次に舞台に立ったのは四糸乃とよしのんだ。確か四糸乃たちはリモコン争奪戦には参加していなかったはずなのだが、なぜかステージに立っていた。というよりも、よしのんが超ノリノリで参加してきているだけなのだが。
「四糸乃、準備はできたかしら。」
「!…ちょっと待ってください。」
四糸乃が琴里に頬を赤く染めながら言う。少し前までよしのんから耳打ちされていたので、先ほどの悲劇のようなことが起きそうな嫌な予感が一護と士道に走る。
少しして、四糸乃の準備というか心の準備が整った。よしのんがラタトスクの機関員に合図をすると照明が暗転した。一体何が始まるのだろうか。
次の瞬間、照明が明転した。ステージ上にいた四糸乃の出で立ちを見てその場にいる全員が目を剥いた。四糸乃の服装が胸にリボンがついてピンクの可愛らしい服―――――所謂、魔法少女スタイルだった。ただ、その魔法少女スタイルには不釣り合いなチェーンソーをよしのんがくわえていた。四糸乃の顔はもう真っ赤になっていて、恥ずかしさが最高潮に達している。無理しているのは明らかだった。そしてトドメの一言。
「私が…魔装少女ハルナちゃんだ…ッ!」
この幼い少女の頑張りにこの場にいる者たちは途轍もない衝撃を受けた。一護には色々と突っ込みたいところあるのだが、とりあえず最初に突っ込むべきことがあった。
「お前はロリコンかっ!っていうか、それ怖えええよ!」
士道は魔法少女もとい魔装少女スタイルの猟奇的な四糸乃の容姿に対して『俺の四糸乃が…四糸乃が…』というような絶望感を味わっていた。そのような反応を見れば、誰もが一護ような突っ込みをしてしまうだろう。
「年越し蕎麦を贈呈だ。」
「はい…ありがとうございます。」
『やっはー、やったね四糸乃。』
「え、そういうシステムなのかよ。」
この衝撃的なステージに対してのご褒美に令音から年越し蕎麦が贈呈された。元々リモコン争奪戦の為の一発ギャグ大会のはずなのだが、そのご褒美が年越し蕎麦になってしまっている。もはや何のためにやっているのか解らない。
続いて誰がやるのか…四糸乃の衝撃的なステージの後は誰もやりたくないはずである。そんな中元気よくを手を挙げたのは十香だった。
「ちょっと待ちなさい。今はその時じゃないわ。」
「む?そうなのか?」
その十香を止めたのは意外にも琴里であった。どうやら十香と琴里は協力関係を結んでいたらしい。2人ともリモコン争奪戦に参加していたはずでは。
「ちょっと待ってくださいまし。これでは勝負が成り立ちませんわ。」
「その通り、こんな勝負は無効。夜刀神十香と五河琴里は協力したことにより失格。時崎狂三はそもそもこの戦いに参加していない。他の者たちは取るに足らない。これらのことから私が士道と一護と格闘技番組を見る権利がある。」
「それはおかしいんじゃないですかぁ。私がダーリンと一緒に見るんですう。」
「応戦。それは私たちの権利です。」
「我と夕弦を差し置いて士道と一護と共に過ごすなど万死に値する。者共退くがよい。」
「私がシドーとイチゴと見るのだ!絶対に譲らんぞ!」
「ずるいじゃない…私だっておにーちゃんたちとテレビを見たいのに。」
結局何も決まらなかった一発ギャグ大会、一体何であったであろうか。四糸乃はまた争い始めた皆を治めようと魔装少女スタイルのまま必死に奮闘している。
「結局何だっただろう、これ。」
四糸乃ショックから抜け出した士道の第一声がこれだ。それを同意するように一護も頷く。
「でも、なんだかんだいっても楽しかったけどな、俺は。」
一護は苦笑しながらも言う。実際に一発ギャグ大会を行ってみて、もう年を超える10分前である。そう考えると、やっぱり皆楽しんでいたのである。
と、ここで――――ズルズルズルズル――――という麺を啜るような音が聞こえてきた。
「士道が作っただけあって、この年越し蕎麦美味いわね。」
「七罪、お前先に食ってたのか。」
一護が七罪に尋ねると、食べている途中だからか口の中に麺を詰め込んだまま答えた。
「ふぉくししょばなんばかふぁふぇんふぁいにふぁべるのふぁふぉうぜんでふぉ。」
「うん、何を言っているのか全くわかんねえ。」
そんな何を言っているのかわからない言葉に対して意外な才能を見せたのは士道だった。
「多分だけど、『年越し蕎麦なんだから年内に食べるのは当然でしょ。』っていっているんじゃないかな。」
「すげえな。何でわかるんだよ。」
一護は士道の意外な才能に驚いた。それと同時に確かに年越し蕎麦は年内に食べるものだという七罪の意見も理解した。ということなので、一護は争っている皆に呼びかけた。
「おーい、今のうちに蕎麦を食べないと年越し蕎麦をじゃなくなるぞ。」
「「「「「「「はーい!」」」」」」」
さっきまで争っていたとは思えない程の声の揃い具合だった。でも、年末は皆で揃って年越し蕎麦を食べるものである。皆がどんぶりを持ったところで、一護が号令を掛ける。
「いただきます。」
「「「「「「「「「「いただきます。」」」」」」」」」