デス・ア・ライブ   作:月牙虚閃

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更新遅れてすみませんでしたッorz

今回はあのおにーちゃん大好きな人が出てきます。では、どうぞ。


clear shadows

「ここは…」

 

 

一護は瞼を開けたとき、見知らぬベットの上で寝かされていた。周りの状況を把握するため上体を起こしてみるが、やはり見覚えのない部屋にいた。なんだか体が重いような気がしたので原因を探ってみることにした、横で先ほど出会ったばかりの少年の士道が一護の腕を掴んでいた。

 

 

そんな姿を見て微笑ましいなと思う一護だが、士道には少し申し訳ないが腕から引きはがした。ベットから抜け出し外の様子を見ようとドアノブに手を掛けようとしたところで、かなりの勢いで扉が開けられた。

 

 

「~ッ!」

 

 

それによってドアが顔に強打してその場で床に転がりながら悶絶した。一護の痛覚に深刻な被害をもたらした闖入者はとても活発そうな可愛らしい幼い少女だった。

 

 

「あ…起きたよ~、お父さんお母さん、倒れてた人が起きたよ!」

 

 

少女はこのことを両親に伝えようと慌てて部屋から飛び出した。

 

 

「一体、何だったんだ?」

 

 

あまりに急だったので少し茫然としていたのだが、嵐の如く去って行った少女から察するに一護と士道は行き倒れていたところを拾われたらしい。さっきの少女が両親を呼んでくれるような様子だったのでここで大人しく待つことにした。

 

 

少女が出て行ってから数分も経たないうちに、父親らしき男性が部屋に入ってきた。その男性はこちらの世界に来る前の一護の年齢より少し上くらいの見た目だった。

 

 

「おはよう、体は大丈夫かい?」

 

 

「はい、大丈夫です。いきなりで申し訳ないですけど、俺は何でここにいるのですか?それとここはどこなんですか?」

 

 

男性は少し驚いたようなリアクションをとったが、ここまでの経緯を簡潔に話した。その内容をまとめてみると、一護と士道の2人はこの家、五河家の近くの道で倒れていたのを先ほどの少女の五河琴里が見つけて2人を連れてきたということである。

 

「今度はこっちから質問するけど、君たちは何であんなところで倒れてしまうまでになってしまったんだい?少し言いにくいこともあるかもしれないけど、わたしは琴里が放っておけないって思う君たちを手助けしたいんだ。」

 

 

(俺についてのことは出来るだけこっちでの情報がほしいから、いつかは誰かに俺の事情を言わないといけないけど、士道はそう簡単にはいかないよな…っていうか、俺は会ったばかりだから士道の事情について知らないし。)

 

 

一護は自分の身の上のことについて伝えた。自分は確かな証拠というものは無いが恐らく異世界からワームホールを通ってこちらの世界に来てしまったことと、こちらの世界に来た途端に体が縮んで小学生のような体になってしまったことを伝えた。これを聞いたこの家の主は終始驚きっぱなしだったが、子供の戯言とは思わず真剣に聞いていた。

 

 

「ということは、君は異世界に飛ばされた無一文で大学生の19才ということ?」

 

 

「そうっすね。」

 

 

「それで、君と一緒にいた男の子は弟?」

 

 

背中に背負ったまま行き倒れていたのを見られたのだからそう思われるのは当たり前だが、実際は捨てられていたのを見つけただけなのでどうしようとも話せない。そういう風に一護は伝えるしかなかった。

 

 

それを聞いて家の主は迷いなく決断した。

 

 

「今から君とあの子は俺の家族だ。」

 

 

「はい?」

 

 

いきなりの衝撃発言に一護は耳を疑った。もう一度聞いてみたら単なる聞き間違いではなく本気で言ってるらしい。

 

 

「君たち2人は行くあてがないのだろう?それなら俺の養子になってほしいんだ。もちろんちゃんと自立するまで育てるつもりだ。絶対に君たちに路上の上で死なせる前にはいかない。」

 

 

「でも、悪いです。この子、士道って言うんですけど養子になるのは士道だけでいいです。俺までも厄介になることはできません。」

 

 

一護は立ち上がって出て行こうとした。しかし、それは腕を掴まれて止められた。そのときの顔はまるで本当の親と違わないほどに子供のことを思っていてくれてる表情だった。

 

 

 

「君もだよ。異世界から来たのなら君はこの世界での記録がないはずだ。このまま出て行っても今の君は10歳ぐらいの体で、きっと誰も雇ってはくれないし、これからの生活に困るに違いない。俺はちょっと顔が利くから戸籍だってつくることができる。」

 

 

「気持ちは有難いですけど…」

 

 

偽の戸籍も作れるとか何者だよって突っ込みたくなるが、今の立場上言うことができない。しかしそれを受け入れれば、一護は食事と風雨を防げる家を手に入れられるだけではなくこの世界の情報を得ることができる。だが、そうしてしまうと多大な負担を掛けてしまうことは避けられない。やはり迷惑はかけられない。一護が思い悩む中、五河家の主はさっきの少女の気持ちを代弁した。

 

 

「さっき君が起きたって俺の娘の琴里が俺に伝えてくれたんだ。琴里は一人っ子で俺と奥さんがいないときはいつも寂しい思いをさせてしまっている。琴里も君たちが来てくれてとても喜んでいるんだ。実の兄妹みたいに。」

 

 

「でも、俺たちは今さっきここに来た身元不明な人間ですよ。」

 

 

なかなか首を縦に振らない一護に痺れを切らしたのか、琴里の父は最後の訴えに出た。

 

 

「君たちは家の琴里を泣かせるつもりか?せっかく出会えた兄妹と思えるような人は君たちにしかいない。琴里のためにも一緒に暮らしてもらえないかい?」

 

 

琴里の父は必死懇願して土下座までして頼み込んだ。目上の人からこんなにされたらさすがに断るわけにもいかなかった。しかし、一護がそれを受け入れたのは頼み込まれた以外にも理由があった。

 

 

(妹か…)

 

 

一護の暮らしていた世界では2人の妹がいた。母親が死んでから妹たちを護れるように力を手に入れてきた。それでここまでやってきた。まさか異世界に飛ばされるとは思わなかったが、自分を兄だと思ってくれる妹がいるならやることは元いた世界にいたことと変わらない。

 

 

「わかりました。俺、黒崎一護と士道は養子になります。護れる人がいるのなら俺はその人を護るために一緒にいまグボァ」

 

 

一護のその宣言を外で聞いていたのか、閉まっていた扉が開け放たれ一護の腹部に強烈な衝撃が走った。腹部の衝撃の元凶は件の琴里だった。

 

 

「おにーちゃん、これからよろしくね。」

 

 

一護には琴里のタックルに色々と言いたいことがあったが、琴里の笑顔を見ているとそんなことは吹っ飛んでどうでもよくなってしまった。

 

 

一護は心の中でこう誓った。絶対にこの笑顔を失わないようにこの世界で護っていこうと。

 

 

「なんだ?」

 

 

一護は一瞬だけ感じ慣れている力、霊圧を感じていたが、こちらの世界には虚や死神がいるはずがないので、また自分の霊力探査は苦手な方なのできっと気のせいだと思った。だが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しみだよ。君たち2人は僕の為に利用させてもらうよ。でも、残りの一人が僕の存在に気づくなんてね。君が一体何者なのか気になっちゃったよ。」

 

 

そう言い残して謎の影は面白いおもちゃを見つけたというような表情で一護・士道・琴里のいる家を外で見つめながら闇へと消えて行った。


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