デス・ア・ライブ   作:月牙虚閃

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更新を早くするとしながらこの始末、申し訳ありません。
この空いた期間は就活などがありまして、中々時間を作ることができませんでした。まだ就活が続いていますので、また期間が空くかもしません。
それでも、良ければこの作品の今後に期待していただければ幸いです。
では、今回もお楽しみください。


lightning speed phantom closed clock x2000

「ハァ…ハァ…ハァ」

 

 

私は一体何時から戦っていたのでしょう。外の眺めが何だったのかを忘れるぐらいには戦っている。それは1日や2日程度ではないということぐらいは分かっていますわ。1日や2日程度だったら、私たちをあと十数体というところまで減らすことは…いや、一護さんが最初からわたくしを殺す気でいたのだったら1日も掛からずに分身体を殺しきることができたのかもしれないですわ。

 

 

「それが、今の…現状ですわね」

 

 

いくら分身だといっても、それは過去の自分自身。この空間で戦闘が始まったときから無数の分身体を何度も何度も斬り斃されてしまいましたわ。それは、首から、胴体、四肢を分断されて様々なパターンで。一護さんは私自身を殺す気がないとおっしゃっていますけれども、地面の上で死屍累々と積み重なっている死体が自分の死を想起させて…

 

 

「お前の持ってた分身体も、そろそろ尽きてきたみたいだな」

 

 

「…本当にそう思いまして?」

 

 

幾度もなく繰り返してきた天使の短銃を自分の頭蓋に突きつける動作。それに込める弾は八の弾(ヘット)———ではなく、一の弾(アレフ)。一護さんの攻撃速度に反応するには精霊として持っている力だけでは足りません。それこそ、自身の速度を高める一の弾(アレフ)を五重で掛けなければ反応できない程に。だから、前に使った一の弾(アレフ)の効果が消える前に上書きをしなければなりませんわ。

 

 

私は口角を歪めて精一杯の虚勢を張って銃口に影が蟠る短銃の引き金を引こうとして―――

 

 

ギャンンンンン

 

 

「っ!?」

 

 

気が付いたら私のその手には短銃はもう既にありませんでした。何が起きたのかはわかりませんけれど、今一護さんから目を離したら確実に()られますわ。そこで、直ぐにその場から飛び退いて今度は歩兵銃を自分の頭に突きつける。飛び退いた瞬間に、一護さんはもうすでに飛び退いた場所にいらっしゃて私を目で捉えていましたわ。今、この瞬間一瞬でも迷っていたらそこで終わり。残された最後の一手として装填する弾は一の弾(アレフ)でも八の弾(ヘット)でもありませんわ。()()()()()()私たちがあってこその最後の逆転の手段。それは…

 

 

十二の弾(ユッドベート)っ!」

 

 

そう、今の私が残されている時間と私達では確実に負けますわ。あの怪物が出た時点で多少なりともその二つを失ってしまいましたから、一護さんを全部の時間と私達をぶつけるのに躊躇してしまいました。時間を消費して30年前に遡ることが難しくなってしまった今ならば、まだ戦闘を始まっていないところまで時間遡行をして最初から全力全開で弾丸を打ち込むように少し前の私に伝えなければなりませんわ。

 

 

「これで初めからやり直せますわ。あはははははははははは―――は?」

 

 

狂い笑う私は銃の引き金を押し込もうとしたところで、再び一護さんの姿が消えた。今までは動き出す瞬間は何とか辛うじでどこに踏み込む動作が見えていたのに、今の動きで踏み込む瞬間を感じとることが出来なくなってしまっているということは。

 

 

一の弾(アレフ)の効果が切れた⁉ こんな時にッ)

 

 

自らの時間を早めることは疑似的に動体視力を上げているだけでなく、わたくしの挙動自体も上げているということになりますわ。つまり、時間を早める効果が切れてしまったということは、今このときに引き金を引く動作さえも非常に緩慢な動作となってしまう。一般の人から見れば、僅かコンマ一秒にも満たない動作。しかし、時の速さでさえ遥かに凌ぐ一護さんの機動力を以ってすれば、私の歩兵銃が掴まれそのまま握り潰されしまった。

 

 

「もうこれ以上、狂三に時間を使わせるわけにはいかねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は狂三の短銃に突き刺さったままだった斬月を回収する。その間狂三に背中を見せていたけれど、狂三は俺に飛び掛かろうとする様子も、そこから逃げ出そうとする様子もなく、ただただ地面に両腕を着いてじっとしているだけだった。

 

 

そして、今まで俺と狂三を閉じ込めていた仄暗く地面を照らしてくれた天蓋が罅割れていく。割れ目から紅い夕日の光が漏れて()()()()()()()()()()()()()()の合間から感じ取る。久方ぶりの外であるはずなのに、俺が来る前に現れたあの人工(ホロウ)が残したつめ跡がそのまま残っている。

 

 

「クッ―――前よりも随分とマシなんだけど、この…体が元の状態に戻る痛みはやばいッ⁉」

 

 

体の節々が元の長さに縮もうとして万力を締めあげるような不快な音が体の至る所から聞こえてくる。その音が聞こえている間はずっと体全身がその場から身動きができない程の痛みに襲われている。この痛みは空間が完全に崩壊してからも30秒程続いた。これだったら、マジで痛みで気を失ってた方がマシかもな。

 

 

痛みが幾分か落ち着いてきたので、どれだけの時間が経っていたか確認するために戦闘の影響で若干斜めに傾いている時計を見た。

 

 

 

(20分…ということは、大体1か月か)

 

 

俺の感覚として戦闘が始まってから僅か20分しか経過していないというのはあり得ねぇ。なぜなら、さっきまで体の至る所が誰もが見ればわかるほどに成長していた。普通の人ならこんな状況は意味不明なんだが、俺はこうなった理由を知っている。

 

 

さっきの空間は―――死神が現世とソウル・ソサイティを行き来するのに利用する通路———断崖だ。さっき空間には拘突こそいなかったけど、紫色のドロドロとした液体の拘流は存在した。だから、俺はあの空間は断崖だと断定できた。その証拠に、さっきの時計で()()を修行した時と同じように中と外で時間の流れが2000倍も違うことがわかっちまった。

 

 

本来なら断崖はこの世界には存在し得ない空間。だから、あの空間は正確には断崖ではなく断崖のもどきのようなモンだ。実際に俺が通ってきた断崖がここに現れたんじゃなくて、新たに断崖もどきが作られた。そして、断崖もどきが出来た原因っつうのは、俺と狂三だ。戦いを始めたとき、俺と狂三はそれぞれの目的のために全力で相手を叩きのめす覚悟をして、それを()()()()()。つまり、誰にも邪魔されずに相手の心を叩き折るまで戦闘を続けたかったんだ。その俺たちの願いを崩玉は叶えた。時間を操る能力を持つ狂三、周囲の願いを問答無用で成就させてしまう崩玉を従えた俺と2人の願い。その願いを叶える最も相応しい場所として俺の記憶の中の断崖が選ばれた。

 

 

「狂三」

 

 

「…」

 

 

戦いや戦争っていうのは『正義』のぶつかり合いだって大層な言葉を使って誰かが表現してたけど、確かにそういうモンだ。俺と、剣八、白哉、グリムジョー、ノイトラ、ウルキオラ、藍染も野望とそれを為すための覚悟がぶつかり合っているからこそ戦うんだ。そして、戦いで勝ったやつは野望に近づき、敗けたやつはそこで全てを失う。そう、今の勝者()敗者(狂三)のように。

 

 

「狂三」

 

 

「…」

 

 

俺はこれまで倒してきたやつを斬ってきたことに後悔はしない。そうしなけりゃ、俺が護るべきものを全て失っちまう。だから、狂三を倒したことも後悔しない。けど、戦いが起こって勝ち負けがある以上、勝ったやつの願いの犠牲となった敗者の想いというモンがあるはずだ。

 

 

「狂三」

 

 

「…ぁ」

 

 

「ようやく反応しやがったか」

 

 

こんなものは俺の自分の勝手なエゴだ。けど、俺の『世界中の人たちを出来る限り多く救いたい』っていう願いを叶えるためには、ただ戦った相手をぶちのめすだけじゃダメだ。それじゃ今の願いを打ち砕かれてふらついた足取りの狂三のように死人を増やしちまう。背負っているモンが大きければ大きい程、それを失った時の喪失感というのも大きい。自分の想いに意味を無くしたときには、人っていうのは本当に何をしちまうのか全くわかんねぇ。だから、俺は今これ以上この世から心が離れないように狂三の手を握る。

 

 

「狂三っ!」

 

 

「ぁぁぁ…あああああああああぁぁぁ」

 

 

「手を離すな! 今、この手を離しちまえばお前は…」

 

 

俺の言葉など耳には入ってない様子で言葉にならない声を上げながら乱暴に手を振り解く。その強く俺の手を強く振り解いた反動でバランスを崩した狂三は後ろによろよろと歩が出て、足を段差に引っ掛けてそのまま上空へ身を投げた。そして、己の死期を悟ったかのようにゆっくりと目を閉ざした。精霊ならこの程度の高さから地面に叩きつけられても平気だろうけど、今は違う。今の狂三は霊装も解かれて精霊ではなくなっている。今の狂三は普通の()()の少女でこのまま地面に叩きつけられてしまえば、確実に死ぬ。そんなことには、絶対にはさせない。士道と琴里を救うのも勿論、狂三も救う。絶対に誰も死なせない。

 

 

「狂三ぃぃいいいいいいいいいいいいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぃ…ちご…さん」

 

 

「ったく、諦めようとしてんだよ」

 

 

俺は頭から真っ逆さまに落ちる狂三を追いかかけて空中で肢体を抱えて地面に降り立った。まあ、その結果として所謂お姫様抱っこみたいな形になってまったが。これは不可抗力だと思ってほしい。

 

 

「…私の…天使…霊装…時間…の全てを…失いましたわ。例え、私が精霊の力を取り戻しても…あなたがいる限り…私の生きる目的は未来永劫叶いません。なら…私に…生きる価値など」

 

 

狂三が弱弱しく掠れた声で自分の内心を吐露する。1か月間ずっと狂三と戦い、分身を斬り続けてきた俺にはわかる。分身を作り出す度にどれほどの世界に否定されるのか。狂三は本来四糸乃と同じように人を傷つけることが嫌いだと思う。繰り返しになるけど、自分にとって大切なモノ―――信念であったり人だったり―――を失えば、そいつはどんなことをするのか分からない。それこそ、十香の目の前で士道を殺されて折紙に怒り狂ったように。そう、だから狂三は何かきっかけが今の世界をやり直そうとした。だから、今ここで死のうとした。けど、それは絶対に止めないといけなねぇ。

 

 

「本当に生きる価値なんてないって思ってんのか」

 

 

「…どういう…こと…ですの?」

 

 

「お前がいなくなれば誰かが悲しむ。精霊がどうやって生まれてきたのかまだあんまり詳しくはわかんねぇけど、ここに狂三がいるっていうことは、少なくともお前を生んだ人がいるはずだ。お前が過去をやり直そうと思っているのなら、その原因となった人達がいるはずだ。だから、生きる価値がないって自分から死のうすんな」

 

 

「それを、あなたは否定したッ! 真っ正面から叩き潰されて、私の過去に往く力を消したッ! そんなあなたが私に新たに生きる価値を見つけろ、っておっしゃいますのッ!」

 

 

狂三がそう言うのも当然だ。過去の繋がりを断ち切った相手がそんなことを言えば、ただの無神経な人間って思われる。別に、俺はそういうふうに思って言ったわけじゃない。

 

 

「俺は一言もお前の願いを否定してる、って言った覚えはないぜ。過去に戻ってやり直したいっていうのは誰だってそう思うし、俺もやり直したい過去があったしな。まあ、それは最近吹っ切れたけど。それに最初に言ったろ、『お前の抱えているモノを俺にも分けてくれねぇか』って」

 

 

「それならば…過去へと遡る手段を失った私の何を背負ってくれるのですか?」

 

 

「狂三のその願い、その願いの為に代償にしてきたモン、そして罪、の全部だ」

 

 

一瞬、狂三の目が見開いた気がしたが、すぐに俺を疑うような目で見てきた。信用してもらうのは難しいかもしんないけど、やるしかない。それは狂三を助けることにもなるから。

 

 

「俺はお前の積み上げた来た時間と目的を斬り捨てた。狂三は他人の命を奪い取るってやり方は、俺にとって許せなねぇ。俺はそれを正しいと思ってる。けれど、俺だってそれは同じだ。俺は狂三を犠牲にして、士道たちを護った。なら、俺には狂三にやってきたことの責任がある」

 

 

「責任感だけで、時間を遡ることができるんですのッ!」

 

 

怒気を孕んだ声を俺に向ける。勿論、責任感だけで時間を遡ることもできないし、どちらかというと狂三は望みを叶えてほしいって思ってる。だから、力が必要なんだ。

 

 

「これが責任感でどうにかなるってぐらいの綺麗事で済むって思ってねぇよ。俺も出来ればお前の願いが叶ってほしいって思ってる。でも、どう考えても、最終的には力が必要なんだ、世界の理(ルール)を覆すほどの力が。狂三、お前がお前自身の願いを叶えるためには、やっぱりお前の能力(チカラ)が必要だ。だからって、さっき言った通り人殺しはさせねぇ」

 

 

「力を蓄える行為が許されないのなら、私はどうやって過去に飛べばいいんですの?」

 

 

俺はその疑問を答えるために天高く天鎖斬月を掲げる。体に青白い霊圧が迸り斬月を伝い天を衝き、世界は軋み揺れ動く。次に、俺自身の霊圧で悲鳴を上げる空間に気を配りながら斬月の鋩を狂三の胸に向けて水平に構える。自分でもかなり頭のわりぃ方法だと思ってるけど、俺にはこの方法しか思い浮かばない。

 

 

「狂三、俺はこれからお前に刀を突き刺してそこから死神の力を渡す」

 

 

「!? そんなことが…できるのですの…」

 

 

「ああ、今、俺が遣ってる死神の力も元々は貰った力がきっかけだ」

 

 

そう、この死神の力は1度目はルキアに、2度目は護廷十三隊の隊長格に譲り受けて俺自身の死神の力が目覚めたモンだ。ルキアが家族を護る力を欲していた俺にそうしてくれたように、白哉とか剣八が仲間を取り戻し護りたかった俺にそうしてくれたように、今度は俺が狂三に力を渡すときだ。

 

 

「詳しい説明は時間は無えから端折るけど、俺たちの死神の戦い方は自分たちで霊力を生み出してそれを遣って戦ってるんだ。その俺の力をそのまんま狂三に渡したら、多分体と魂魄が俺の力に耐えられないと思う。だから、死神の力だけを渡して自分自身だけで新しい霊力を生み出せるようにして、過去へ渡るための時間を蓄える。これが3つ目の選択肢だ」

 

 

「もし、それが可能だったら私は…」

 

 

「けど、これは一種の賭けだ。この方法で上手くやれる確率は半々。失敗したら、俺たちの霊力は暴走してお互いに死ぬ。それでも、やれるか? 命を懸けてでも力を取り戻す覚悟はあるか?」

 

 

「…」

 

 

これは俺の選択じゃなくて、狂三の選択だ。狂三がどうしたいのか、俺は見守らねぇといけねえ。俺は狂三の問題に関しては全く知らない。碌に狂三が抱えているモノを知らない俺が口出しする問題じゃない。もし、狂三が俺の提案を蹴って今を生きる価値を見つけようとするなら、それはそれでいい。提案を受け入れるんだったら、俺も命を懸けて力を渡してやる。ここは虚園(ウェコムンド)のような生存競争による殺し合いが蔓延るような世界じゃねぇ。だったら、誰だって幸せを願う権利がある。それこそ、時間を遡って過去をやり直したくなるぐらいに。だけど、これを反対に言えば幸せを叶えるために他人を犠牲にしていはいけないということだ。

 

 

「なあ、一つ聞いていいか?」

 

 

「…いいですわよ」

 

 

「俺はあんまり回りくどい聞き方をするのは苦手だから、単刀直入で聞くぜ。お前は過去に行って何をやり直したいんだ?」

 

 

俺は狂三の口から直接聞きたかった、過去の世界で何をしたいのかを。力は使い方次第で結末は幾らでも変えられる。もうそれは『全知全能(オールマイティ)』なんて力があるぐらいには最高にも最悪にもできる。俺が力を貸す以上は何をしたいのか見定めていく必要がある。

 

 

俺の質問を受けて、狂三は少しだけ俺から顔を逸らした。狂三の頭の中で何を考えているのか俺には分からないけど、俺にとっちゃ都合の悪いモンも含まれてるのかもしんねえ。それを見透かれていることも分かって、狂三があえて答えた。

 

 

「私は…それを…一護さんにお答えすることは出来ませんわ。ですけれど、一護さんには死神の力を渡してもらいますわ」

 

 

俺の腕に支えられていた体を振り解いて、目の前で両腕を開いて斬月の刃を受け入れる体勢を取った。それを見た俺は思い出していた、数々の戦いを。どの戦いもギリギリでとにかく必死にルキア、井上、あとチャドとあのメガネ野郎もただただ助けたかった。ただ一途に助けたかった俺に似ていて、もしも俺が今のように力が無くてそれに打ちひしがれ続けたら、きっと狂三より酷い(ホロウ)と同じ化け物に成っていたのかもしれない。今まで辿ってきた軌跡の何処かで狂ってしまえば、俺は狂三と同じ立場になっていたと思う。だから、時崎狂三(狂った俺)黒崎一護()でしか真正面からぶつかれない。

 

 

「…いくぜ」

 

 

一護さんから手向けられた言葉とともに、黒光りする刀の鋩が私の胸に吸い込まれる。それはほんの一瞬の出来事。それなのに、刻々帝(ザフキエル)の能力を使用していないはずなのに、時間がゆっくりと引き延ばされるような感覚に陥ってしまいますわ。目の前にあるのは凶刃であり、転生の刃。それを向けられた私、そこにあったのは抗えない力に対して芽生えた恐怖なのかもしれない。…そうですわね、私も分かっていたつもりのだけなのかもしれない。命を失うということは、これほどまでにも…冷たいのですね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人の周囲には爆発によって蒼の霊子を撒き散らさせられた。その霊子が雪降るように舞って、幻想的な空間を演出する。その中、俺が握る斬月はもう既に狂三の胸を貫いている。そして、狂三の意識は完全にはっきりとしている。これは…

 

 

「成功だ」

 

 

斬月が突き刺さっている狂三の胸から、狂三自身から生み出された紅い霊子が噴き出し、舞い散る蒼の霊子を絡めとる。そして、その混ぜ合わさった霊子が新たに霊装が足元から形成される。そして、胸元まで霊装が形成されると斬月を引き抜き、その全身の姿を目にした。今までの鮮血を表しているかのような紅と黒のゴスロリの霊装から全身真っ黒なゴスロリへと霊装が変化した。また、再構築された歩兵銃は黒い帯のようなモノが巻かれと短銃には短い鎖が付加されている。

 

 

 

「話したくないのなら、そのまま話してもらわなくてもいいぜ。力を手に入れた狂三が何をするのか見守るだけだ。そして何度でもいうぜ、お前が助けを欲しているなら、何度でも手を貸してやる。世界でも何でも相手にしてやる。だから、これ以上誰からも何も奪わないでほしい」

 

 

「私がしてきたことは…そうなのですね。一護さん、時間という狂気に苛まれて私はいつかまたどうかしてしまうのかもしれません。こんなことを言うのは烏滸がましいのですが、私がまた道を踏み外した時には再び私を導いていただけませんか」

 

 

まさか狂三から今、そんな言葉が飛び出るとは思わなかった。なら、俺は宣言した通り狂三を支えよう。狂三の望む世界にたどり着くまで。

 

 

「ああ、勿論だ」

 

 

「それならば、私の誠意を見せなくてはいけませんわね」

 

 

「…どういうことだ?」

 

 

「一護さん、少ししゃがんで下さいまし」

 

 

「これでいいか?」

 

 

俺は狂三に頼まれた通り、膝を曲げて自分の顔が丁度狂三の顔と同じぐらいの高さに来るように合わせた。この狂三の穏やかな雰囲気…四糸乃の霊力を封印したときと似ている。

 

 

「ええ、それで完璧ですわ」

 

 

「では」という言葉に続いて、唇を近づける。その唇は四糸乃の淡いピンクの健康的なそれと比較して口紅の赤みと艶がある。その2つが醸す大人の艶めかしさ。大人っぽい狂三の魅力が最大限に感じられて、そのまま狂三に吸い込まれそうになる。だけど…

 

 

「ッ!?」

 

 

「おいおい、それはまだやるべきじゃないと思うぜ」

 

 

「何でですの? せっかくそれっぽい雰囲気を出しましたのに」

 

 

「雰囲気って…まあ、それはそれとしてだ。俺のこれまでの行動を観察していたんならわかるだろ。折角、過去を変えられる力を手に入れたのに、それを俺の中に封印する気かよ」

 

 

「あっ!」

 

 

「『あっ!』って、今気づいたのか」

 

 

「致し方ないではありませんの。今まで、私の思いをここまで慮ってくれた方がいませんでしたから…嬉しくて…」

 

 

「…」

 

 

真正面からこんな美少女から嬉しいと言われると、少し恥ずかしい。それと少し照れる。でも、狂三の思いを汲み取るのだったら、ここで受け入れてはいけない。

 

 

「俺はお前の願いが叶ってくれることを願って力を渡したんだ。だったら、その願いを叶えるまでは力が必要なんだろ。それまではお預けだ」

 

 

「…なら、全部終わったらいいですの?」

 

 

「…ああ、俺で良ければな」

 

 

「わかりましたわ。それなら、私は我慢します、その時がくるまで。一護さん、忘れないでくださいませ。私の初めての大事な人」

 

 

狂三はその言葉を最後に掻き消えるようにその場から姿を消した。その途端、俺は高ぶっていた気持ちが冷や水を掛けられたかのように一気に気持ちを落ち着けることができた。正直、口づけを交わすのを避けた理由は狂三に言ったのが主なものだったけど、気のせいかもしれないけど誰かに見られている気がして気が進まなかった。

 

 

あの琴里の状態だから今のを見てるというのは無いだろうけど、どうやって琴里達に説明しようか。




精霊図鑑ゴールデン

七罪「…」


一護「あのー、七罪さん?」


七罪「何で私だけ出れないのよおおおおおおおおッ!」


一護「うおっ!?」


四糸乃「七罪さん、落ち着いて…ください」


七罪「四糸乃ぉ、四糸乃ぉ」


一護「まあ、しょうがないじゃねぇか。今回のディバゲとのコラボはアニメ2期までの登場キャラだったし」


二亜「私も、出てないぜ(キリッ」


一護「お前はどこからでも出てくるなぁ。あと六喰だって出てないし」


七罪「それは、勝者の理論よ。だってあなた達もコラボされて、ディバゲに登場できたじゃないの」


一護「あ、ああ…」


七罪「特に一護。あなたねぇ、一番の当たり枠でステータスとか諸々がゲームオリジナルキャラのフェス限レベルってどういうことよ。エエ(威嚇」


一護「四糸乃…」


四糸乃「七罪さん、もっと…いってやってください」


一護「orz」


二亜「ちなみに、作者は一護を引き当てることが出来たみたいよ」

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