今回は7月11日、睦月型駆逐艦の弥生の進水日なので書きました。
時系列は『如月の誕生日』から一ヶ月後の話になります。
時間の都合と5000文字も書けない3DSの性質上、こうなりましたが、どうか見ていってください。
明日は三日月かぁ・・・・・・
7月11日 雨
執務室
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
黙々と書類を裁く男性と少女。
「・・・・・・なぁ、弥生」
「・・・・・・・・・?」
弥生と呼ばれた少女が男性、提督に話しかけられ、仕事を中断して顔を上げる。
「何だか嬉しそうだな」
「・・・・・・そう、かな?」
「ああ」
弥生はあまり感情が表に出てこない艦娘と言われることが多い。
提督や姉妹からしたら弥生は感情が出やすいと思ってるが、それだけ長い付き合いなのだろう。
何故弥生が嬉しそうなのかは今日の日付を見れば分かる筈だ。
「あぁ、弥生」
「・・・・・・はい」
提督がふと思い出した様に話しかける。
「今日何だが・・・・・・少し遠出をしてくる」
「・・・・・・え?」
弥生が驚いた様に気の抜けた声が出る。
「知り合いから重要な案件だと呼ばれてな、これから横須賀まで行かなければ行かないんだ。帰りは明日になるかもしれん」
「・・・・・・・・・そう・・・・・・」
弥生がションボリとする。
「すまないな」
提督が弥生の頭にポンと手を置き撫でる。
「・・・・・・・・・ううん」
少しだけ立ち直ったのか微笑みを浮かべて首を軽く振るう。
「それじゃあ、行って来る」
「・・・・・・行ってらっしゃい」
「ああ」
書類を終わらせ荷物を纏めると、弥生に見送られながら執務室を出ていく。
一人となり、静かになった執務室。
「・・・・・・はぁ・・・」
弥生は秘書艦用の机に突っ伏してため息を吐く。
「・・・・・・楽しみだったのに・・・・・・司令のバカ・・・」
弥生が机に突っ伏していると、扉がノックされる。
「・・・・・・?・・・どうぞ」
入って来たのは弥生の姉である如月だった。
「あら?司令官は居ないのかしら?」
「・・・・・・横須賀に遠出・・・」
「あらあら。今日に限ってねぇ」
如月が残念そうに手を頬に当てて呟くと弥生がまた机に突っ伏した。
「仕方ないわねぇ。全く、司令官ったら」
そう呟いた如月は執務室を後にした。
「・・・・・・?」
弥生は疑問に思ったが、すぐに考える事を止めて仮眠を取り出した。
鎮守府 正面門
「司・令・官?」
「ん?」
鎮守府の門を潜り抜ける所で声を掛けられた。
誰かと思い振り向くと、少し走ったのか汗をかいた如月がいた。
「どうした如月。そんなに急いで」
「司令官?今日が何の日か分かってるわよね?」
「ああ、そんな事か。今日は・・・・・・・・・」
「弥生の進水日・・・・・・つまり、誕生日だろ?」
如月が安心したようにため息を吐く。
「それを聞けて安心したわ。ちゃんと今日中に帰って来てくださいね?」
「そのつもりだ。下らん話だったら一度しばいてからになるがな・・・・・・」
「相変わらずねぇ」
「当たり前だ。貴重な時間を割いているのだからな」
全く・・・・・・と腕を組ながら呟く。
「話はそれだけか?」
「ええ。行ってらっしゃい。司令官♪」
「ああ、行って来る」
手を振って如月に見送られながら提督は門を潜り、外へと出ていく。
しばらく提督を見送ると
「全く、司令官も罪な男何だから♪」
そう呟いて鎮守府へと戻っていった。
執務室 室内
「・・・・・・・・・ちゃ・・・・・・!」
「・・・・・・・・・・・・?」
「・・・お・・・ちゃ・・・!」
「・・・・・・誰・・・?」
「弥生お姉ちゃん!」
「!」
突然起き上がる弥生。
辺りを見渡すと見慣れた執務室だと確認でき安心する。
それから前を向くと自分の妹の三日月が心配そうに見ていた。
「・・・・・・三日月・・・?」
「弥生お姉ちゃん大丈夫ですか?いくら揺すっても起きないから心配しましたよ?」
そう言われて窓を見ると夕日が出ていた。
どうやら仮眠の筈が昼寝になってしまったようだ。
「・・・・・・大丈夫・・・心配してくれて、ありがとう」
三日月を安心させる為に微笑みながらお礼をする。
「いえ、なら良いんですけど・・・・・・」
「・・・・・・司令官は・・・?」
「司令ですか?まだ帰ってきてませんけど」
「・・・・・・・・・そう」
忘れてしまったのかとシュンっとなる弥生。
それを見て三日月が慌てて慰める。
「だ、大丈夫だよ!すぐに帰ってきますよ!」
「・・・・・・うん・・・」
三日月に相づちを打ちながら窓を見る。
「(・・・・・・早く帰ってこないかな・・・)」
横須賀鎮守府 正面門
「はあ・・・・・・やっと着いたか」
疲れた様にため息を吐く提督。
「ここまで来るのにこれだけ掛かるとなると帰りはくたくただろうなぁ・・・ははは・・・」
苦笑いを浮かべながら提督は門を潜り抜け、執務室の隣の応接間へと歩き出す。
応接間の前に着くと、ノックを三回する。
どうぞ、と言う声が聞こえたため、ドアノブを捻り、中に入る。
「久しぶりだな○○」
「ああ、久しぶりだな。そしてさっさと用件を言え」
提督は横須賀の提督に挨拶をそこそこに話を切り出す。
「ははは、酷いなぁ」
「此方は大切な日に限ってこんな所まで呼ばれたんだ。さっさと帰りたい」
「ん?あぁ。そう言えば今日だったか、これは失礼した」
横須賀の提督はそう言うと紙の束を差し出して来た。
「なになに、『大規模作戦司令書』?これって・・・・・・」
「ああ、近々、と言うか八月上旬頃に大規模作戦を展開するらしい。まだ詳しい事は分かっていないがな」
「そうか、もうそんな時期か・・・・・・」
「ああ、そっちは前線にかなり近いからな、早めに教えようと思ったんだ」
「そうか・・・・・・」
提督は司令書を流し読みをする。
「ああ、その司令書は持って行っていいぞ?コピーだし」
「ん?良いのか?それなら有り難く頂こう」
「ああ、それじゃあ」
横須賀の提督は立ち上がり手を出す。
提督も立ち上がり手を握る。
「じゃあな」
「ああ、今度は酒でも飲もう」
「ああ」
提督は別れの挨拶もそこそこに応接間を出ていく。
「うーん、罪な男だねぇ・・・」
横須賀の提督は笑顔を浮かべながら提督を見送る。
鎮守府 執務室
時間的にはもう24時になるかどうかと言った所だろう。
他の部屋はもう明かりも無くなり、明かりがあるのはこの執務室のみとなった。
「・・・・・・帰って来ない」
やっぱり忘れちゃったのかな?っと思いながらふと窓の外を見ると、一つの光が移動していた。
「!」
その光を見た途端に弥生は執務室を飛び出した。
鎮守府近辺 湖
「・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・っ・・・ここら辺の、筈・・・」
弥生は光の動く速度を計算し、ここを通る筈だと当たりをつける。
だが、周りを見ても光はなく、星と月の明かりに照らされた湖だけだった。
「・・・・・・っ」
弥生はだんだん不安になってきた。
場所を間違えてしまったのか。
もう行ってしまったのではないか・・・と。
「弥生・・・・・・?」
「・・・・・・・・・っ!」
弥生が不安になっていると、後ろから名前を呼ばれた。
後ろを振り向くと提督が汗だくになりながら立っていた。
「司令官!」
「うぉっ!?」
弥生が勢い良く提督に抱きつく。
提督は一瞬体制を崩すが、すぐに立て直す。
「・・・・・・司令、官・・・」
「弥生・・・・・・遅れてすまない」
弥生は首を振り、顔をあげる。
「・・・・・・司令官が、忘れ無かっただけで・・・嬉しい・・・です」
「弥生・・・!」
提督は弥生を強く抱き締めた。
「し、司令官。くる、しぃ・・・」
「うぉっ!?すまん!」
慌てて弥生から離れる提督。
提督は息を整え、真っ直ぐに弥生を見る。
「弥生」
「・・・・・・はい」
「誕生日おめでとう。それと・・・」
提督はポケットから小さな箱を取り出す。
「・・・・・・・・・?」
「如月と相談をした結果何だがな」
「・・・・・・まさか・・・」
箱が開かれると青い宝石の装飾が入った指輪が入っていた。
「好きだ、弥生。こんな優柔不断男で悪いと思うけど・・・」
「・・・・・・そんなこと、無い・・・です」
「弥生・・・・・・・・・」
弥生は左手を差し出す。
提督は指輪を箱から取り出し、薬指にはめる。
「・・・・・・嬉しい・・・です。とって、も・・・・・・嬉しい、です・・・!」
嬉しさの余りに涙を流す弥生。
その愛らしさに提督は弥生を抱きしめた。
「弥生・・・・・・」
「司令かn・・・・・・!」
抱きしめた弥生に提督はそのまま口づけをする。
提督のキスと、共に湖の水が噴水の様に噴き出す。
この湖は潜水艦の艦娘達の手により、24時ピッタリに水が噴き出す様になっている。
噴き出した水は星々や月に多い被るように水のカーテンを掛ける。
二人はしばらくその光景を眺めていた。
十分位経ったのだろうか、水のカーテンが溶けて消えていった。
「なぁ、弥生・・・」
「・・・・・・・・・・・・?」
「良かったら一緒に寝ないか?」
「え」
突然の発言に弥生が顔を赤くする。
「い、いや!別に変な意味じゃなくてだな!ほら、もう時間的に如月達を起こしちゃ悪いだろ?だから、良かったら、俺の部屋で寝ないかって意味で・・・・・・」
「・・・・・・司令官、ありがとう、ございます」
「・・・・・・・・・ええっと」
弥生は提督から離れてから手を取り、歩き出す。
「ちょっ・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・♪」
提督は突然の事に驚くが、弥生の嬉しそうな顔を見て、ため息を吐きながら微笑む。
こうして、二人は微笑ましく並んで鎮守府まで歩き出す。
駆逐艦寮
「・・・・・・・・・クスッ」
弥生と提督のやり取りを一人眺めて笑みを溢す艦娘。
弥生の姉である如月だった。
「良かったわ。ちゃんと間に合って♪」
如月は望遠鏡から手を放し、微笑み、祝福の言葉を紡ぐ。
「ハッピーバースデー、弥生ちゃん♪」