孤高の白髪鬼~銀狼と鮮血嬢、魔女を添えて~   作:鎌鼬

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第12話

 

 

ヴィルヘルムがロートス・ライヒハートと出会ってから一年が経った。その後、ヴィルヘルムとロートスは交流を重ねて親交を深めていった。

 

 

「「乾杯!!」」

 

 

並々とビールの注がれたグラスをぶつけ合って口に運び一気に飲み干す。現代ならば急性アルコール中毒が心配されるような飲み方をしているが二人とも酒には強い方なので問題無いようだ。

 

 

「くぅっ〜!!仕事終わってからの酒はマジ美味いよな!!」

「まったくだ!!仕事終わりのビールほど美味いものは無いなぁ!!あ、姉貴とアンナの料理の方が美味かったわ」

「お前ホント家族好きだよな」

 

 

口の周りに付いた泡を拭いながらロートスはケラケラと笑う。ヴィルヘルムと出会った時に比べるとロートスの性格はかなり変わっていた。礼儀の正しい良い所の育ちを思わせていた彼はもうおらず、憲兵たちと遺産管理局の芸風に染められてしまったのだ。

 

 

『どもっ!!ロートス・ライヒハートでぇす!!特技は首切り!!趣味は死体蹴り!!最近ハマってることは憲兵の隊長さんに腹パンすることでぇす!!』

 

 

などとダブルピースしながら笑顔で自己紹介するロートスの姿を見たらきっと彼のことを知ってる人間は白目を向いて気絶してしまうのだろう……いや、既に気絶している。なんでも彼の家に繋がりのある人間がロートスのことを尋ねて来た時にそうロートスが自己紹介したら白目を向いた上に泡を吹いて気絶した。だがそれはロートスのせいではなくダブルピースをしているロートスの背後でダブルピースをして残像を残しながら反復横とびをしていたヴィルヘルムかあまりのウザさにガチギレした副隊長が隊長を魔女狩りよろしく火炙りにしていたからなのかもしれない。

 

 

「で、そっちどうよ?」

「あ〜一年やってみたけどやっぱ遺産管理局って根暗な奴が多いわ。いや、役職自体のことじゃなくて勤めてる人間の空気が暗いのよ」

「ふーん、又聞きした程度だけどやっぱりそんな感じかよ、呪われてるんじゃねぇか?」

「呪いか……この間整理をしていた先輩がさ、突然『関節技こそが王者の技よ!!』とか言って近くにいた奴手当たり次第に関節技かけてきた」

「ガチで呪われてるじゃねえか」

「あーあ、俺も憲兵の方に行きたいねぇ。隊長さんの腹にパンチしたい」

「あ、そう言えばこの間隊長が『見よ!!この鍛え上げられた腹筋を!!』とか言って腹見せてきてさ、俺らに腹パンさせて弾き返してたぞ」

「マジか」

「マジマジ。『フッハハハ!!これで俺に腹パンなど効かぬぅ!!』とかドヤ顔してて、ウザかったから捻り式の腹パンかまして沈めてやった」

「俺も腹パンを磨かなければ……!!」

 

 

そんな風に互いの職場であった出来事を語りながらビールを飲み進める。それからしばらく経ち、腹が満たされてきたのかヴィルヘルムとロートスはビールを飲むのを控えてタバコを吹かしているとある人物が二人に話しかけてきた。

 

 

「やぁヴィルヘルム、久しぶりだね」

「ん?あぁなんだ、メルクリウスじゃねえか」

 

 

黒いローブに身を包んだどこか胡散臭い雰囲気を漂わせている男性、メルクリウスである。メルクリウスの顔を見たヴィルヘルムはタバコを持っていない方の手を挙げることでメルクリウスに挨拶をする。実は彼ら、そこそこに交流がある。メルクリウスが占い屋をしているところをヴィルヘルムが話しかけるという程度の物だが一年近くそうしているのでヴィルヘルムは個人的には友人だと思っている。

 

 

「ヴィルヘルム、この胡散臭いお方はどちら様?」

「ロートスゥ!!メルクリウスのことを胡散臭いと言うのは止めて差し上げろよぉ!!」

「紹介代わりに罵倒されるとは」

 

 

強いとはいえどアルコールが回っているのかほとんど暴言に近い言葉を吐くヴィルヘルムの姿を見てメルクリウスはクスクスと笑うだけで大して気にしていない様子だった。一年も付き合いがあれば悪意があってそれを言っているのか何となく察することができる。メルクリウスはヴィルヘルムに悪意がないと分かっていたので笑うだけで済ましたのだ。

 

 

ロートスと二人で飲んでいたところにメルクリウスが加わって三人で再び飲み始める。メルクリウスはアルコールに弱いらしくヴィルヘルムとロートスのペースに比べればビールを飲む速度は遅かったもののそこそこに飲んでいた。

 

 

「なぁヴィルヘルム、ロートス。最近この界隈に『夢を見られる薬』が出回っているらしいが聞いたことがあるか?」

 

 

初対面だったはずなのに酒の席だからなのか肩を組んでビールをロートスと飲んでいたメルクリウスが新しくきたジョッキを四分の三程開けたところで唐突にそう告げた。

 

 

「夢を見られる薬?俺は知らないな……ヴィルヘルムは?」

「あー……確か最近無気力な風になってる人間を裏路地で見かけることがあるな……もしかしてそいつらが使ってたのかもしれん」

 

 

ロートスは知らなかったようだがヴィルヘルムには心当たりがあったようだ。見回りで裏路地を歩いていると目を虚ろにしながら壁に寄りかかっている人間を見かけることがある。何かあったのかと思い声をかけるがその人物は目を虚ろにしたままどこかに立ち去ってしまうのだ。

 

 

「商売柄そういう噂話には目敏くてね、このまま沈静化するならばそれに越した事はないがもしかすると大事になるやもしれん。一応軍属の二人に伝えておいた方がいいと考えてね」

「気になるな……明日少し詰所の方で聞いとくわ」

「俺もそれとなく注意しておくか」

 

 

ヴィルヘルムとロートスの反応を見てメルクリウスは満足げに頷くと机の上に硬貨を置いて立ち上がった。

 

 

「さて、済まないが私はそろそろお暇させてもらうとするよ。明日も朝が早いのでね」

「おぅ、気ぃ付けてな〜」

「楽しかったぜ、また飲もうな〜」

 

 

まだ飲むつもりなのか新しいビールを注文しながら手を振っている二人にメルクリウスは一礼して店から出て行った。そして二人がようやく店から出たのはメルクリウスが出てから一時間後のことだった。

 

 

「あ゛〜飲んだ飲んだ」

「明日二日酔いになりそうだ」

 

 

ロートスは二日酔いを心配しているが顔には僅かに朱がかかった程度で二日酔いになるほどに飲んでいるとは思えない。ヴィルヘルムに至っては素面のままだ。しかし二人がさっきまで座っていたテーブルに積み上げられた空のジョッキの山が二人がどれだけ飲んでいたのかを教えていた。

 

 

「おっ?」

 

 

酔いを覚まそうと深呼吸をしているロートスに腹パンをする隙を窺っていたヴィルヘルムだっだが司会の端に見たことのある色が通り過ぎるのを見てそちらに注意が向かれる。その色とは桃色、ヴィルヘルムの姉であるヘルガと同じ髪の色。しかしヘルガの髪は短髪なのに対して通り過ぎて行った人物の髪は長髪、しかもロートスと同じ遺産管理局の所属である腕章を付けて何かから逃げるように走っていた。そしてその後ろには息を荒くしながら追いかける男の姿がある。

 

 

「……ロートス、悪りぃけどちょっと付き合ってくれや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……!!ハァ……!!ハァ……!!」

 

 

走る。ただ走る。壁に掛けられたランプの仄かな灯りだけを頼りに街の夜道を彼女は全力で走る。

 

 

「本当に、なんなのよ……!!」

 

 

悪態を吐くもののそれからは覇気が感じられない。

 

 

いつも通りの日々のはずだった。半年前に所属することになった遺産管理局、いつも通りに定時で事務仕事を終わらせて帰る予定だったのだが上司から急用が入ったなどと言われて仕事を押し付けられ、後日食事を奢ってもらうことを約束してこれを引き受けた。そしてその仕事が終わったのがついさっき。家に帰って早く寝たいと思いながら遺産管理局を出たところであれに出会ったのだ。

 

 

「……っ!?」

 

 

足が止まる。それは体力が無くなったからではなく道が無くなったから。前にあるのは袋小路、しかも前と左右の壁は高く乗り越えられる様な物ではない。身を隠す場所はと見渡すが何も無い。ならば引き返さなくてはと考えて振り返るとーーーそこには自分を追いかけて来た存在が立っていた。

 

 

「うぅ……!!オン、ナ……」

 

 

ボロ切れに身を包んだ浮浪者、その目には理性が感じられず誰が見ても彼のことを異常だと近寄らないだろう。そして浮浪者が彼女を見る目には獣欲ーーー目の前の女を犯したいという性欲しか感じられない。何とか服としての役割を果たしているズボンの股間の部分を膨らませているそれを見れば浮浪者の目的など分かるだろう。

 

 

「ひぃ……!!来ないで!!」

 

 

彼女が後ずさりをするものの直ぐに袋小路に背中を預けることになる。それを見て更に獣欲を掻き立てられたのか浮浪者は口からヨダレをダラダラと垂らしながら彼女に近づいた。

 

 

彼女にはこの浮浪者と戦う術はあった。しかし自分の身体を穢そうとする浮浪者を前にしても彼女は戦う素振りを見せようとしない。何故ならその戦う術というのに彼女にとって汚点にも等しいからだ。使いたくないと誓ったから、こうして獣欲に支配された浮浪者を前にしても無力でいるしかない。

 

 

「オンナァァァァァァァ!!!!」

 

 

浮浪者が飛びかかる。彼女と浮浪者の間には然程距離は無くあっという間に詰められて彼女の身体は穢される事になるだろう。せめてもの抵抗が、それとも異常な浮浪者に恐怖したからか、彼女は身体を縮こまらせて目を固く閉じた。その時、

 

 

「ーーーお、るぅあぁ!!!!」

 

 

浮浪者の物ではない掛け声と共に重たい音が聞こえる。何事かと彼女が目を開けるとそこには白い髪の男性が足を振り上げて、浮浪者が壁に叩きつけられていた。この光景から判断するのなら白い髪の男性が浮浪者を蹴り飛ばしたのだろう。

 

 

「おぅ、大丈夫か?」

「え……あ、はい……」

 

 

白い髪の男性が声をかけるが状況の判断が追いつかないのか気の抜けた声しか彼女は出せなかった。それに白い髪の男性は仕方ないかと苦笑しながら上着を未だ立ち上がっていない彼女に向かって投げた。

 

 

「怖かったろ?それ着てて待ってな」

 

 

上着から感じるのは強い酒とタバコの匂いと微かに感じる白い髪の男性の物だと思われる匂い。

 

 

おおよそ人の物とは思えない白髪と闇夜に浮かぶ紅い目、どうしてかは知らないが普段ならば恐怖を感じてしまうようなそれを彼女ーーーアンナ・マリーア・シュヴェーゲリンは頼もしく感じた。

 

 






今回の白髪鬼はぁ!!
・ロートス、ドイツに染まる
・メルクリウスゥ!!
・ロリババアァ!!
の三本でございまぁす!!

ドイツはやはり業が深い(ウットリ)

メルクリウス再登場。未知なヴィルヘルムに興味があるのかちょくちょく顔を出してるみたいです。今回はヴィルヘルムとロートスの飲み会に途中参加、そして仲良くなってそれとなく不穏な事を言って逃げました。

ロリババアァァァァァァァ!!!(歓喜)
この作品のロリババアは原作とは色々違っています。
まずは遺産管理局には所属しているもののロートスとは部署が違うので然程深く知り合っては無いです。ロリババアが事務仕事メインならロートスは収集や管理など現場がメインみたいな。大体顔見知り位だと思ってもらえれば結構です。
あと魔導使うのに抵抗が見られます。まぁ自分が魔女になってしまったとこに対するトラウマだと思ってくだしゃい(震え声)

感想、評価をお待ちしてます。

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