性格改変のタグをつけた方がいいのだろうか?
ヴィルヘルム・エーレンブルグ。彼の出自は異彩を放っている。
父が娘と交わったことによる近親相姦の結果に産まれたのが彼で、髪は色素がなく目の色が赤いという現代でいうところのアルビノ。昼には倦怠感がまとわりつくが夜になれば五感が研ぎ澄まされて敏感になる。そして自身の出自から自分の体に流れている血を憎悪し、動物を殺害してその血を啜ることで血を入れ換えようとしていた。
体質やその性癖から彼は吸血鬼に憧れを持ち、夜を歩く不死者になりたいと願いを抱いていた。
だが、この世界の彼は違う。
「はぁ…………何が一体どうしてこうなってんだが…………」
郊外を流れる川のほとりに植えられている木の影に隠れながらそう呟いたのは白髪の少年。照り輝いている太陽の光を鬱陶しそうにしながら彼は自身に起こったことを考えていた。
「何で俺がドイツにいるんだ?それも世界対戦時代のドイツに」
彼の名はヴィルヘルム・エーレンブルグ。上記に上げたヴィルヘルム・エーレンブルグと同姓同名であり、肉体や体質もヴィルヘルム・エーレンブルグと同じ少年であるが…………中身が違った。
ヴィルヘルム・エーレンブルグの中にいるのは日本で暮らしていたはずの男性の魂だった。自分の名前に始まり、自身に関係することを何一つ思い出すことが出来なかったが、日本で暮らしていた時の知識や経験を引き継いでおり、自分がどうしてドイツ、それも世界対戦時代にいるのか理解できていなかった。
いつからこうなったのか今となっては思い出すことは出来ない。映画のシーンが変わるように気がついたら彼は少年の体に変わっており、ヴィルヘルム・エーレンブルクと呼ばれていた。
「ネットで流行ってた転生とかいうやつか?でも神様にはあってねぇし、出来るほどに徳とやらを積んだ覚えも無いしな…………」
彼は唐突にヴィルヘルム・エーレンブルクとなった時には混乱していたものの、現状の把握することを最優先として今日まで生きてきた。幸いなことにわからないはずのドイツ語もヴィルヘルム・エーレンブルグの体だからなのか理解することが出来たために会話をするには不自由をしなかった。
そうしてここがドイツで、現在が世界対戦時代真っ只中ということを理解し、自分がどうしてここにいるのかをようやく考察することが出来るようになったのだ。
「つーか転生とかさせるんなら平和な時代にしてくれよな…………世界対戦真っ只中とか死亡の旗が乱立してるじゃねぇかよ」
どうしてこの時代なのかと、彼は真剣に悩んだ。それはそうだ。世界対戦中のドイツというのは色々と黒い噂が絶えない。ヒトラーが掲げたアーリア人至上主義に始まりユダヤ人を根絶やそうとする働き…………それに
「あーぁ!!止めだ止めだ!!答えの出ないことをいくらウダウダと考えたところで分かるはずもねぇ!!
」
沈んでいた気持ちを切り替えるように叫びながら彼は草の生えている地面に寝転がった。どうやらそこら辺の切り替えは早い質なようで、自分がどうしてここにいるのかは確かに覚えてはいるものの、気にならない程度に格下げされていた。
「どうしてここにいるかなんて知ったこっちゃねぇ。いつ何処にいようとも俺は俺だ。だったら俺のいる今で頑張らねぇと駄目だよなぁ」
体から倦怠感は無くならないものの、彼がそう呟いたことで彼の心は幾分か軽くなったような気がした。
態度からしたらそうは思えないかもしれないが、彼は不安だったのだ。気がついたら自分が知らない土地で子供になって存在している、それにストレスを感じない者はいないだろう。だから彼はどうしてここにいるかを考えて答えを出そうとして…………答えが出ないから諦めた。そしてこの状況を拒絶するのではなく受け入れることを選んだ。
どうしてこの時代にやって来たのかは理解することは出来ないが…………混乱するだけで困るという程ではない。自分のことが何一つ分からないものの、それには対して疑問に思っていない。もしかすると自分自身に関心が薄い質だったのかもしれない、だとするとこの時ばかりは感謝したくなった。
「ヴィル~?ヴィ~ル~?何処にいるの~?」
遠くから彼のことを愛称で呼ぶ声があった。寝転んだ体を起こして声がした方に顔を向ければそこには幼い風貌の桃色の髪をした少女がいた。
「こっちこっち、こっちだ姉ちゃん」
「あぁもう、こんなところにいたのね?探したわよ」
桃色の髪をした少女が彼の声を聞いて安心した声色で語りながら駆け寄ってくる。彼女の名はヘルガ・エーレンブルグ。姓と彼の呼び方でから分かると思うが彼女は彼の姉だ。彼にはヘルガ以外の家族はいない。どうしたのか聞いてみてもヘルガは悲しそうな顔をするだけで答えてくれなかった。
だからなのか…………ヘルガは彼のことを溺愛していた。幼い体だとは分かっているがヘルガは甲斐甲斐しく世話を焼こうとするし、彼が一人で出歩こう物なら過剰なまでに心配をしてみせる。行きすぎだと思われるかもしれないが、彼はたった一人の家族なのだからとヘルガの行動を許容していた。それは彼自身も家族や繋がりのある間柄の人間を大切にするという気質だったからでもある。
「お昼御飯が出来たわよ。さ、早く帰りましょ?」
「あいよっと」
ヘルガに返事を返しながら彼は立ち上がる。
「はい」
「ハイハイ」
そして差し出されたヘルガの左手を右手で握った。幼い右手にヘルガの柔らかで暖かい左手の感覚が伝わる。
「今日は何なの?」
「今日は蒸かし芋とトマトよ。お隣のおば様から頂いたの」
その様子は普通の仲の良い姉弟にしか見えなかった。
短いですけど第一話です。
この話でヒャッハー中尉の中にどこかの誰かさんが入っていると理解してもらえれば結構です。
それにしても戦争中のドイツはキチガイですね(誉め言葉)
あとヘルガ姉さんとの仲は良好。それはヘルガ姉さんが近親のことを隠していることと、どこかの誰かさんがヘルガ姉さんのことをあくまで姉としてしか見ていないからです。
にしてもヘルガ姉さんは何歳でヒャッハー中尉を産んだのだろうか…………初潮とかのことを考えるのなら十歳そこらかな?作者の中では現在ヘルガ姉さん十四歳、どこかの誰かさん四歳で考えています。分かる方がいるのなら教えていただけないでしょうか?
感想、評価をお待ちしています。