一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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書いちゃいました新作小説ww
ぜひ読んでやってください


1年生
第1話 ソウグウ


 

 

 

 

 

 

 

『zyjacya in love』

 

 

変わった形をしたペンダントを手渡しながら、女の子がつぶやく。

女の子は、目に涙を浮かべながらも笑みを浮かべて、口を開く。

 

 

『あなたは<錠>を。私は<鍵>を。肌身離さず、ずっと大切に持っていよう』

 

 

女の子から受け取ったペンダントを握りしめた俺もまた、悲しい気持ちを抑えることができず目に涙を浮かべてしまう。

女の子も、胸元で何かを握りしめながら言葉を続ける。

 

 

『いつか私たちが大きくなって、再会したら…。この<鍵>でその中の物を取り出すから。そしたら━━━━』

 

 

『━━━━うん!』

 

 

俺と女の子は、同時に頷いて、同時に口を開く。

 

 

『『結婚しよう…!』』

 

 

 

 

 

 

 

 

「…久しぶりだな。あの時の夢見るの」

 

 

窓から日差しを受けて、目を開けた少年は上半身を起こす。

 

少年は、大きく口を開け欠伸をしながら両手を上げて体を伸ばす。

そして一気に力を抜くと、眠そうにしぱしぱする目をこすりながら立ち上がる。

 

 

「…ふう。今日はあいつが炊事当番の日だし、寝起きが良い…!」

 

 

もう一度体を伸ばしながら襖を開けて部屋を出る少年。

 

おっと、この少年の紹介が遅れた。

 

彼の名前は一条楽。この春から高校に通うごく普通の男子高校生だ。

 

━━━━ある一点を除けば。

 

 

「「「「「「坊ちゃん!おはようございやす!」」」」」」

 

 

「あぁ、おはよう…」

 

 

顔を洗い、着替えを済ませて広い部屋に出ると、途端大勢の野太く低い男の声が楽を迎える。

楽も、こんなどこか異常に感じられる状況にも怯まず、馴れたかのように手を上げての対応を見せる。

 

今、この場にいる楽以外の男は全て、腕や足に刺青が入っており、明らかに万人受けのしなさそうないかつい顔の持ち主だ。

大体予想がつくだろう。そう、楽の家はここらでは有名なやくざの総元締めである集英組と呼ばれている。

楽はそこの息子なのだ。

 

 

「ん、飯はまだなのか?」

 

 

「へい。いい匂いがしてきたんで、そろそろだと思いやすが…」

 

 

楽は、テーブルに何も置かれていない所を見て近くにいる男に問いかける。

男の答えを聞いて、楽は辺りに立ち込めるおいしそうな匂いに気づく。

 

 

「おーい。朝飯できたぞー。全員、自分の分とってけー」

 

 

すると、暖簾をくぐって出てくる一人の、楽と同い年くらいの少年が現れる。

少年が身に着けているのは、楽が着ている制服と同じもの。そしてその上には黒いエプロン。

 

少年はエプロンを脱いで、椅子の背もたれにかけるとエプロンをかけた椅子に腰を下ろし、持っていた料理を乗せたお盆をテーブルに乗せる。

 

 

「おぉおおおおおお!待ってやした!」

 

 

「今日は陸坊ちゃんの料理でやすか!ということは和食!」

 

 

「待ってろ、鮭の塩焼きぃいいいいいいいい!!」

 

 

「はいはい。朝からテンションの高い事…」

 

 

次々にキッチンへと我が先我が先と入っていく男たちを呆れたような目で眺めながらお味噌汁を啜る陸と呼ばれた少年。

 

この陸という少年が、この物語の主人公である。

楽とは同い年、というか双子の弟だ。

 

 

「ん?楽、お前も早く取りに行けよ。遅刻すっぞ」

 

 

「あ、あぁ。わかってるよ」

 

 

楽が料理を取りに行くのを眺めながら陸は味噌汁の入ったお椀からご飯が入ったお椀に持ち替える。

綺麗に骨を取り除いた鮭の塩焼きを食べながらご飯も食べ進める。

 

そうしている内に、キッチンから料理を持って男たちが戻ってくる。

そして、戻ってくるや否やテーブルに料理を置いて物凄い勢いで口に入れ始めていく。

 

 

「あぁ…、うめぇ…!さすが陸坊ちゃんだぜ!」

 

 

「ホント!陸坊ちゃんも楽坊ちゃんも、いつも朝食の準備してもらってすいません」

 

 

男たちが料理を食べ進めていく中、申し訳なさそうにぺこぺこ頭を下げてくる強面の男。

 

 

「いーよ。お前たちに任せたら大変なことになるし」

 

 

「あぁ。俺にとっちゃ、一人暮らしの予行演習にもなるしな」

 

 

男の謝罪の言葉に、陸はご飯を口に入れながら、楽は味噌汁を啜りながら答える。

 

すると直後、男たちが目を見開いて声を上げる。

 

 

「えぇえええええええ!?坊ちゃんどっか行っちゃうんすか!?」

 

 

「そんなの嫌っす!行かねぇでくだせぇ二代目!」

 

 

「誰が二代目だ!それに、俺よりも陸の方が二代目に向いてるだろうが!」

 

 

楽の言葉通りである。やれやれ、と目を瞑りながらいかにも呆れてますよという空気を醸し出している陸は、所々で楽と本当に双子なのかという一面を見せる。

 

まず、怒ったときの怖さだ。確かに、楽もやくざの一家で育てられてきたため、怒りを見せればそこらの一般人よりも迫力はある。

だが陸は別格だ。一般人やチンピラはもちろん、そういう所を本職としている今この場にいる男たちさえもびびらせる。

 

そして、特にそれが顕著なのは喧嘩の強さだ。

当然、やくざの一家に生まれたのだから陸も楽もそういう訓練を受けている。

 

しかし楽はからっきしだったにもかかわらず、陸は今でもその訓練を続け、なおも強くなっていると楽は聞いている。

話に聞くと、一度集英組の土地を荒らしていたやくざのグループを一人で壊滅させたこともあるとか…。

 

 

「良いかお前ら!俺はな、一流大学を卒業して堅実な公務員になって、お天道さんに顔向けできる真っ当な生き方をしていきてぇんだよ!」

 

 

「おぉー!よくわかんねえけどさすが坊ちゃんだ!」

 

 

「…ぷふっ」

 

 

必死に自分の目標を高々と叫んだ楽だったが、返って来た答えはよくわかんねぇ。

楽は悲しくなり、ほろりと一筋の涙を流し、陸は抑えきれてないが口を手で覆い、笑いを抑えようとしている。

 

 

「…ん゛ん゛。まあ楽。何回も言うけど、それはかなり難しいからな?」

 

 

「あぁわかってる。覚悟はしてるよ」

 

 

陸の言う通りだ。楽の言う目標は正直実現するにはかなり難しい。

楽は、やくざの長の息子だ。当然、その情報は他の所にも出回っているだろうし、顔も割れている可能性だって否定できない。

そんな楽が普通の生活ができるかどうか、聞かれれば無情だが答えはノーなのだ。

 

楽も、本気で目標を実現させたいのなら、覚悟して臨まなければならないのだ。

 

 

「おーおー。相変わらずてめーらは毎日せわしねーなー」

 

 

「ん…」

 

 

「親父」

 

 

朝食が進み、初めに料理を持ち込んだ陸が食べ終わったとき、食堂に一人の老年の男が入って来た。

 

陸と楽以外の男たちは、その人物を見た途端立ち上がり、頭を下げて挨拶をする。

そう、この男こそ、陸と楽の父親であり集英組の長だ。

 

父は、陸と楽の姿を見つけると、笑みを浮かべながら声をかけてくる。

 

 

「おぉ、楽と陸。近ぇうち、てめーらに大事な話があっから覚えときな」

 

 

「大事な話…?」

 

 

「おい楽。お前、このままじゃ遅刻するぞ」

 

 

父が言う大事な話という言葉が気になった楽は、詳しく話を聞こうとするがそれを陸が止める。

楽は腕時計を見て、ホントだとつぶやくと傍にいた男が目をカッ、と光らせる。

 

 

「そ、そりゃぁいけねえ!すぐにリムジンを用意させろ!ばかやろー!15m級のをだ!」

 

 

「や、やめろーーーーーーーーーー!!」

 

 

暴走する男たち。止めようとする楽。

 

鞄を手に、ため息を吐く陸に、はっはっはと笑い声を上げる父親。

 

これが、集英組の朝の風景である。

 

 

 

 

 

 

結論。陸と楽は結局15m級のリムジンに乗せられ、陸と楽の通う凡矢理高校の敷地前に来ていた。

いかつい男たちの、陸と楽を送り出す言葉を背に受けながら、二人はまわりの好奇の視線にも耐えていた。

 

 

(あぁ、辛い…。高校こそは家のことをばらさずに静かに学校生活を送りたかったのに…)

 

 

(とか考えてんだろうな、楽は。もう諦めた方が良いって、これについては…)

 

 

「あ、そうだ楽坊ちゃん。実ぁ最近、見慣れねえギャングどもがうちの土地を荒らしてまして。気ぃ付けてくだせえ」

 

 

「はぁ?ギャングゥ?」

 

 

つい最近も、変なグループとドンパチやってなかったかお前ら、と心の中で言葉を付け加える楽。

そして、陸は━━━━

 

 

「あ、もしかしてあいつらか?昨日、蹴散らしてやったけど」

 

 

「おぉ、聞きましたぜ陸坊ちゃん!あいつらも助かったって礼を言ってやした!」

 

 

(あぁもうやだこんな血なまぐさい生活!)

 

 

弟まで血生臭い世界に足を突っ込んでいることを改めて実感した楽はくらくらと力なく歩き出す。

歩き出した楽に気が付いた陸も、楽について歩き出した。

 

とまあ、見ての通り楽の苦労は分かるだろう。

まわりは全て血生臭い世界の住人。片割れと言える双子の弟である陸も、家を継ぐ気はないと言いながらもその世界の住人であることには違いない。

 

基本は心休まる兄弟話も、少しでもやくざ系統の話になれば一転。楽の入り込む隙などなくなってしまう。

 

 

(…ギャング、か。ちょっと規模大きそうだったし、厄介かな)

 

 

楽がぐったりとした様子で歩く中、陸は心の中でうちの男たちが言っていたギャングのことを考えていた。

 

先程も言ったが、昨日陸は、ドンパチしていた集英組の男たちを助けるために戦いに参入した。

集英組側は五人、ギャング側は七人と数の上では不利だったため陸が来たときは押されていた。

 

だが、まず陸が傍にあった小石を投擲し、当たった男が気を失い一人。

撃ってくる銃弾を掻い潜り、木刀で殴られた男が気を失い一人。

そして、銃を向けてきた男の腕を掴み、逆に男の持っていた銃を男に向けて発砲。

 

これはただの威嚇だったのだが、撃たれたと思ったのか相手は気を失いまた一人。

 

といった感じで陸が暴れたおかげで一気に形勢逆転。ギャング側は撤退していったのだ。

 

しかしギャング側が使っていた武器はどれもが新品の光り方をしていた。

かなり裏に精通していなければああはいかない。

 

 

(…まあ大丈夫でしょ。親父に任せときゃ気にすることないだろ)

 

 

陸が親父に任せるという結論に至ったその時だった。

二人の頭上から影が差したのは。

 

 

「え」

 

 

「お」

 

 

「げ」

 

 

直後、上から降りてきた影は楽の顔面に直撃。陸はそれをただ眺めることしかできなかった。

 

楽はあえなく地面とキスする羽目になり、上から降りてきた影は楽の背中の上でいたた、とつぶやきながら頭を押さえている。

 

 

「あっ…!ごめん!急いでたから!」

 

 

楽の上から立ち上がった人物は、藍色の瞳を二人に向けると、金色に輝く髪を靡かせながら走り去っていった。

 

 

「…おい楽。大丈夫か?」

 

 

「な、何だったんだ一体…」

 

 

被害者の楽には、正直何が起きたのか捉えきれなかっただろう。

楽はゆっくりと立ちあがり、再び歩き出す。

 

 

「…ぶふぅっ!」

 

 

「な、何だ!?どうした陸!?」

 

 

「い、いや…、何でもない…」

 

 

 

 

 

 

 

 

出かけた時間は遅刻寸前だったが、学校に着いたときには時間に余裕があった。

楽が扉を開け、二人の属するクラスである1-Cの教室に入る陸と楽。

 

 

「おーす、楽、陸…って楽!?」

 

 

「一条君!?どうしたのその怪我!?鼻血出てるよ!?」

 

 

「え?鼻血!?」

 

 

「ぶふーっ!?もうダメ!ぶわっははははははははははは!!!」

 

 

「て、てめぇー陸!黙ってたんだなこの事!通りでまわりの人たちが訝しげな眼で俺を見てたわけだコノヤロー!」

 

 

先程、陸が噴き出したのは楽の鼻の両穴から垂れる鼻血を見たからだった。

普通片方の穴から出る鼻血が両穴から出ている。それを見て陸は盛大に噴き出したのだ。

 

 

「はあ?女通り魔にやられたぁ?」

 

 

事情を説明した楽を、信じられないような目で見る眼鏡の少年、舞子集。

集は、陸と楽とは幼稚園からの腐れ縁であり、小学中学高校と全ての年度でクラスが同じという偉業も達成している。

 

 

「バカ言え。うちの学校の塀、2m以上あるだろ。それ飛び越えて膝蹴りってどんな女の子だよ」

 

 

「いや集。信じられないけど事実なんだ。俺も見てた」

 

 

「…マジかよ」

 

 

苦笑を浮かべながら陸に視線をやる集に、陸は頷き返す。

 

 

「ちょっと待って、今バンソーコ…」

 

 

「え?いーよ小野寺。こんなのティッシュ詰めてほっときゃ…」

 

 

「言っとくけど楽。お前、鼻すりむいてるぞ」

 

 

「…まじか」

 

 

陸、楽、集の三人で会話を広げる中、カバンの中から絆創膏を取り出す女の子は小野寺小咲。

一言で言えば、可憐としか言いようがない容姿の持ち主である。

綺麗な黒髪を肩まで伸ばし、右側のもみあげを耳にかけ、左側は前に垂らすという髪形をしている。

 

 

「ほら、ばい菌入ったら大変だから!」

 

 

「おう、サンキューな」

 

 

楽の鼻に絆創膏を貼った小咲。

そんな小咲に、陸が声をかけた。

 

 

「へぇ、小野寺って絆創膏持ち歩いてるんだ」

 

 

「え!?う、うん。自分や他の人が怪我した時に、大丈夫なように…」

 

 

「ふ~ん。偉いんだな」

 

 

「そ、そんなことないよ…」

 

 

陸に声をかけられた小咲は、顔を赤く染めて俯いてしまう。

何故、俯いてしまったのかわからない陸は、小咲に様子を問いかけるが小咲は言葉に詰まって碌に答えることができない。

 

 

「…やれやれ。相変わらず小野寺は陸にべた惚れだな」

 

 

「だな。微笑ましいったらありゃしないぜ」

 

 

陸と小咲のやり取りを、微笑ましく…、いや、ニヤニヤしながら見守る楽と集。

そんな光景が五分ほど続くとチャイムが鳴り、それぞれが席についていく。

 

チャイムが鳴り終わって少しすると、陸たちの担任であるキョーコ先生が入ってくる。

キョーコは教室に入るなり、口を開いた。

 

 

「早速だが、今日は転校生を紹介するぞー。入って、桐崎さん」

 

 

「はい」

 

 

桐崎と呼ばれた人物は、返事を返すと教室に入ってくる。

 

 

(…ん?んん!?)

 

 

入ってきた人物を見て、陸は目を見開く。

 

 

「初めまして!アメリカから転校してきた桐崎千棘です!」

 

 

(あの娘は確か…)

 

 

長く伸びた金色の髪。きれいな藍色の瞳。あの時は気が付かなかったが、かわいらしい赤いリボンを頭に着けている。

 

 

「母が日本人で父がアメリカ人のハーフですが、日本語はこの通りばっちりなので、気さくに接してくださいね!」

 

 

見事な自己紹介を展開した少女は、最後に綺麗な笑顔を見せる。

途端、教室中で湧き上がる歓声。やってきた転校生の容姿の高さに沸く男子に、そのスタイルの良さに沸く女子。

 

そんな中、まわりとは全く違う空気を出す二人の男子。

 

 

「じゃー、ひとまずテキトーに後ろに空いてる席に…」

 

 

キョーコ先生が、転校生の千棘に空いてる席に着くように言うと、二人の視線が交わる。

 

 

「あなた、さっきの…」

 

 

「お前!さっきの暴力女!!」

 

 

「ぶっはははははははは!ぼ、ぼうりょくおん…ははははははははは!!」

 

 

楽に、呆然と話しかける千棘に、立ち上がって怒鳴る楽。

そして、このやり取りを聞いて爆笑する陸。

 

そんな三人を中心として、他のクラスメイト達は唖然とこのやり取りを眺めるしかないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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