一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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再び、陸(ディアナ)の恐ろしさの一端が…


第16話 パーティ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千棘の家は、先程までいた小咲の秘密の場所から少し遠い場所に位置している。

 

そこから千棘の家に行くためには、電車に乗らなければならない。

最寄りの駅に着くまでの間、二人は隣に並んで座って談笑する。

 

周りに迷惑がかからない様に、小さな声で話していたはずなのだが他のお客から睨まれた時は小さく縮こまってしまった。

ちなみに、睨んでいたお客が男性だったという事は二人とも深く考えなかった。

 

目的の駅で電車を降り、歩いて十分ほど。

千棘の家が見えてきた。

 

 

「ここが千棘ちゃんのお家?」

 

 

すでに、陸と小咲以外のメンバーは揃っていた。

鶫にるり、楽、そして何故か集が到着し、千棘の家を見上げていた。

 

 

「…すっごく大きいね~」

 

 

「大きいっていうか…、城じゃん」

 

 

るり、集、楽と同じように呆然と千棘の家を見上げる陸と小咲。

正直、見た感想は、家というよりも城としか言いようがなかった。

 

うちを囲む豪華な塀に、門の横にはオブジェが飾られている。

城だ。城としか言いようがない。西洋風の城だ。千棘は王族だったのか(錯乱)

 

 

「ところで…、何故貴様がここにいる?」

 

 

「あはは!水臭いな~、誠士郎ちゃん」

 

 

「帰れ」

 

 

今までツッコまなかったのだろうか、鶫が集に冷たく帰れと言い放つ。

 

そんな中、門の向こうで歩く人影が現れる。

その人影は、門の前に立つこちらの存在に気が付くとこちらに歩み寄ってくる。

 

 

「…」

 

 

唖然、と目を見開いてこちらを見つめるのはこの家に住む少女、千棘である。

 

陸たちも、現れた人影が千棘だと判別すると笑顔を浮かべて手を上げる。

 

 

「あ、千棘ちゃん。お誕生日おめでとー」

 

 

「な、な、なーーーーー!?」

 

 

鶫の計画は全くばれていなかったのだろう。

陸たちがなぜこの場にいるのかわからない千棘は、頭が混乱して言いたい言葉を上手く口に出すことができない。

 

 

「な、何で皆がここに…?」

 

 

「本日はお嬢のお誕生日という事で。恐れながら私、お嬢に内緒で皆さんをご招待したのです」

 

 

ようやく、おどおどと自分の聞きたいこと、何故皆がここにいるのかを問いかける千棘。

その問いには、鶫が笑みを浮かべながら答える。

 

 

「…」

 

 

千棘は、唇の端をひくひくと震わせながら、門を開けると、集の隣に立っていた楽の腕を掴んで敷地の中へと引っ張っていく。

 

 

「お、おい!何だよ急に…」

 

 

いきなり引っ張り込まれた楽は、千棘に抗議の声を出す。

だが千棘は楽の腕を離さず、少し皆から距離を置いたところで楽の腕を離して小声で話しかける。

 

 

「ど、どうしよう…。私、まだ皆に家がギャングだってこと話してないよ…!」

 

 

「え?お前、まだ話してなかったのかよ…」

 

 

楽は内心、というより外面でも全体で千棘に呆れてますよ感を醸し出す。

何と、まだ千棘は家庭の事情を友人に話していなかったのだ。

 

 

(いや、まあ…、気持ちはわかるけど…。俺の家に来たことある集とか小野寺とか宮本には話したとばかり…)

 

 

やくざの家に入ったことのある小咲たち三人には話していると思っていた楽。

だが千棘はあの三人にさえ話していなかった。

 

楽はため息を吐く。

このまま放っておいても千棘は何も言わないだろう。

なら、自分が背中を押せばいい。…いや、自分が代わりになればいいじゃないか。

 

 

「おーい皆ー。こいつんちってさー」

 

 

「わーーー!!ち、ちょっとーーーー!!」

 

 

千棘がぶつぶつと何かをつぶやきながらどうするか悩んでいる中、すたすたと楽が門の方へと歩いていきながら皆を呼びかける。

瞬間、楽が何をしでかそうとしているのか悟った千棘は、慌てて楽を止めるべく走り出す。

 

 

「…へぇ~!」

 

 

「…」

 

 

なお、間に合わなかった模様。

楽の話を聞いて、小咲は感嘆の声を漏らし、るりはいつもの無表情のまま。

 

千棘は皆の反応を見るのが怖く、頭を抱えてしゃがんでいる。

 

 

「千棘ちゃんって、すっごいお嬢様だったんだ~~~~」

 

 

「…え?」

 

 

思いもよらぬ小咲の言葉に、千棘は思わずはっ、と顔を上げる。

小咲は無邪気に笑みを千棘に向けながら続ける。

 

 

「すごいね~!だって、陸君たちと同じってことでしょ?…あれ?どうしたの?」

 

 

無邪気の小咲の言葉。その最後の問いかけには、二重の意味が込められていた。

 

まず、呆然と千棘がこちらを見ていることに対して。

そしてもう一つは、陸君、といった瞬間に物凄い勢いで振り向いてきたるり、楽、集に対して。

 

 

「こ、小咲…。あんた、一条弟君をいつから下の名前で…」

 

 

「………っ!」

 

 

恐る恐るといった感じでるりが問いかける。

瞬間、小咲は皆の前で陸を下の名前で呼んだのだと自覚し、急な恥ずかしさに襲われる。

 

陸に下の名前で呼んでいいと言われ、気が緩んでいた面もあったのだろう。

特にまずいということはまったくないのだが…、恥ずかしいという感情は小咲の羞恥心を擽る。

 

 

「ああ。今日、小咲とプレゼント選びに行ったときにな。名前で呼び合おうってなったんだ」

 

 

「なっ!?陸、お前も小野寺を名前で、しかも呼び捨てで呼んでるのか!!」

 

 

声を上げている楽ではない。るりも集も、先程まで唖然としていた千棘も、陸と小咲を見て目を口を大きく開いている。

 

 

「何の話だ?小野寺さまと一条陸が何なのだ?」

 

 

分からないのは首を傾げる鶫と陸だけ。

 

結局、楽たち四人は、陸が四人の頬を叩くまで立ちすくし続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ハッピーバースデ~~~!お嬢~~~~!!!」

 

 

「お誕生日、おめでとうございま~~~~す!!!」

 

 

楽たちが復活し、早速鶫を先頭にして屋敷の中に入った陸たち。

そして、三分ほど歩いたところにあった大きな扉を潜ると、突如、ぱん、ぱぱん、とクラッカーが鳴り響く。

 

すでにパーティ会場に集まっていた男たちが、千棘の誕生日を祝い始める。

 

 

「これはこれは…。お嬢のご学友の方たちもいらして下さったのですか。ようこそ、歓迎いたします」

 

 

「あ…、はい!本日はお招きいただき、ありがとうございます!」

 

 

千棘が男たちに囲まれて祝われていると、その男たちの集団の中から白いスーツに、サングラスをかけた若い男が陸たちに歩み寄ってくる。

 

若い男、クロードは陸たちに笑みを浮かべながら挨拶を交わす。

 

 

「…おぉ。これはこれは、一条家の楽お坊ちゃんではございませんか。あなたもいらっしゃっていたのですね?」

 

 

すると、楽の姿を見とめたクロードが、楽に顔を近づけて、影のある笑みを浮かべながら話しかける。

 

 

「これは困りましたな~…。楽お坊ちゃんはさぞ素晴らしいプレゼントをご用意されているでしょうし…。私、プレゼントを渡すのが少々恥ずかしくなってきてしまいましたよ…」

 

 

(こいつ、だんだん態度が露骨になってきたな…)

 

 

苦笑を浮かべる楽の前で、明らかな挑発をするクロードを見て心の中でつぶやく陸。

 

とそこで、クロードの目が陸の姿を捉える。

 

 

「こ、これは!陸お坊ちゃんもいらっしゃっていたのですか!?」

 

 

「え?あ、はい」

 

 

しゅばっ、と俊敏な動作で陸の前に跪くクロード。

陸は、少しだけ体を引いて戸惑いを見せながらクロードに答える。

 

 

「今まで挨拶もせずに、申し訳ございませんでした!ディアナのご活躍はお耳に入っております!不肖クロード、あなたのご活躍の数々に、勝手ながら尊敬の念を…」

 

 

「おい、ちょっとこっちこい」

 

 

このまま放っておいたらまずい事態になると感じ取った陸は、クロードの腕を掴んで会場の外へと直行する。

 

後ろから、小咲が陸を呼び止める声が聞こえてきたが、立ち止まっている暇はない。

陸はクロードを会場の外へと連れ出した。

 

 

「ど、どうされたのでしょうか…?」

 

 

クロードが戸惑い気味に陸に問いかける。

陸は、荒くなった息を整えてからクロードの問いかけに答える。

 

 

「クロードさん…。あの、皆の前でディアナと呼ばないでほしいのですが…」

 

 

「そんな!クロードさんなどと!クロードと呼び捨てでお願いします!」

 

 

「あ、あぁ。じゃあクロード。あの、皆の前でディアナと呼ばないでくれ」

 

 

改めて言った陸に、クロードは首を傾げる。

 

 

「し、しかし…」

 

 

「呼ぶな」

 

 

「しょ、承知いたしましたーーーー!!」

 

 

ぎろっ、と鋭い視線をクロードに向けると、クロードは先程まで渋っていた態度はどこに行ったのやら、地面に膝をつき、頭を下げるという土下座の体勢で陸に返事を返す。

 

これで大丈夫だろう。自分のことを知っているクロードだ。自分との約束を破ろうと思わないはずだ。

陸はため息をつきながら扉の取っ手に手をかける。

 

 

「俺に対する尊敬のうちの少しだけでも、楽に向けてあげれば…」

 

 

「それは不可能です」

 

 

即答だった。

 

陸とクロードが会場の中に入ると、すでにビーハイブメンバーと小咲にるり、集のプレゼントは私終わっていた。

 

 

「おいおい、どこに行ってたんだよ陸」

 

 

「ちょっとそこのグラサンとお話を」

 

 

集の頭の上に疑問符が浮かぶ。

それを無視して、陸は自分が買ってきたプレゼントが入った袋を千棘に手渡す。

 

 

「はいこれ。誕生日、おめでと」

 

 

ありがとう、と口にしてから千棘は受け取った袋の中を見る。

 

 

「うわぁ!リボンだ、可愛い~!」

 

 

「千棘は毎日リボン着けてるから。たまにでも良いから着けてほしいな」

 

 

「うん!必ず着けるよ!」

 

 

喜んでくれている千棘を見て、自然と笑顔になる陸。

 

 

「良かったね、喜んでくれて」

 

 

「ああ。小咲のおかげだよ、ありがとな」

 

 

陸が千棘に渡したプレゼントのリボン。あれは、小咲がアドバイスをくれて選んだものなのだ。

 

 

『千棘ちゃんが良く使うものを上げればどうかな?』

 

 

この言葉を聞いて、即思いついたのがリボンである。

毎日千棘は頭にリボンをつけている。だから、リボンを上げたら喜んでくれるのではないか。

 

そこから、陸は小咲と話し合いながらデザインを選んで…。そして、千棘に渡したのだ。

 

 

「ふふ…。では、次は私から。楽坊ちゃんのプレゼントに比べれば粗品かもしれませんが…」

 

 

さて、次はクロードが千棘にプレゼントを渡す番になる。

クロードは、何か布をかぶせられた大きなものに近づいて、両手を広げる。

 

 

「お受け取り下さい、お嬢!超高級車、マイバッハのオーダーメイドモデルです!」

 

 

クロードの言葉と共に、布が取られると中から輝く黒いボディーを持った車が姿を現す。

これは凄い。超豪華。一億円以上の価値だ。

 

だが…

 

 

「いや、免許とか持ってないし、いらないわ」

 

 

クロードが凍り付く。

 

まだ千棘は免許を持っていないし、取れる年齢でもない。

車を渡されても困るだけである。

 

クロードの動きが固まっている中、最後のプレゼント。楽のプレゼントが千棘に渡される番である。

楽は男たちに背中を押され、千棘の眼前に押し出される。

 

 

「がーんばれ!」

 

 

「がーんばれ!」

 

 

「「がーんばれ!」」

 

 

「うるさいぞ陸、集!」

 

 

男たち&陸と集にプレッシャーがかけられる中、楽は千棘に袋を手渡す。

 

千棘が、袋の中の物を取り出して…、空気が凍りついた。

 

楽が千棘に渡したのは、頭に千棘が着けている同じタイプのリボンを着けたゴリラのぬいぐるみだった。

会場の中の様々な所から、ぷつんと何かが切れる音が響く。

 

 

「小僧、どういうつもりだ…?」

 

 

「こりゃあれか…?お嬢がゴリラとでも言いてぇってのか…?」

 

 

「えぇ!?いや、俺は真面目に考えて…!これを見た瞬間、びびっと来たって言うか…!」

 

 

男たちに詰め寄られる中、必死に弁明する楽。

そんな楽を見つめていた千棘が、不意に笑みを吹き出した。

 

 

「あはは、ありがと。嬉しいよ」

 

 

笑う千棘を、呆然と眺める一同。

特にクロードの表情は目を瞠る。

 

 

「え!?そ、そんなんでいいんですかお嬢!?」

 

 

「いや、お嬢が良いんなら別に俺たちも良いんですが…」

 

 

「な、何故!?何故ですかお嬢~~~~!!?」

 

 

ニコニコ満面の笑みを浮かべる千棘。

本当に、喜んでいるのか。それは、本人しかわからない。

 

 

 

 

 

 

 

プレゼントを渡し終えると、そこからはどんちゃん騒ぎである。

集は男たちと混ざって…、というより中心に立って笑いを取り、るりはひたすら食事に集中している。

 

そして、陸と小咲は窓際の壁の傍で立って談笑していた。

 

 

「すごいね。千棘ちゃんの誕生日は、いつもこんなに楽しそうなパーティするんだね」

 

 

「そうだな。…あいつは別だけど」

 

 

陸がそう言うと、二人は会場の隅っこで体育座りをする悲しい男の背中に目を向ける。

 

クロードである。

自分のプレゼントはいらないと言われるどころか、楽のあのプレゼントは嬉しいと言った千棘に相当ショックを受けたようだ。

あそこだけ、まるで別世界に見える。

 

 

「ははは…。陸君の誕生日もこんな感じなの?」

 

 

「あ~、そうだな。ここまで豪華な感じじゃないけど…、もっとひどい騒ぎになるな」

 

 

陸と楽の誕生日の日は、必ず二人以外の男たちは潰れる。酔いつぶれる。

そして次の日、部屋の中は酒の臭いで充満し、男たちは二日酔いで苦しむのである。

 

 

「へぇ~。二人の誕生パーティ、行ってみたいな~」

 

 

「止めた方が良い。ぜっっったい止めた方が良い」

 

 

というより止めてくれ、と付け加えた陸を疑問符を浮かべながら見る小咲。

何でここまで強く止めようとするのか。

 

 

「もしかして…、来てほしくない…?」

 

 

まさか、パーティに来てほしくないのではないだろうか。

小咲はその不安を持って、陸に問いかける。

 

 

「いや!そういうわけじゃないんだ!でも…、いや、本当に止めた方が良い。これは忠告」

 

 

「そ、そうなの…?」

 

 

「ああ。楽に聞いても俺と同じこと言うから。どうしても来たいんなら止めないけど…。まあまだ先だし、ゆっくり考えてくれ」

 

 

最後にそう締めくくって、その話を終わらせる陸。

まだ小咲は納得し切っていない表情だったが、これ以上陸に聞いても無駄だと悟って頷き返す。

 

 

「それにしても、千棘ちゃんと一条君、どこ行ったんだろ?」

 

 

「そういえば…。いないな」

 

 

そこで、二人は楽と千棘が会場内にいないことに気づく。

辺りを見渡してみるが、どこにもいないと思われた。

 

 

「小咲ちゃーん、楽しんでるー?」

 

 

二人の横から、手を振りながらこちらに走ってくる千棘の姿。

小咲は、寄りかかっていた壁から離れて千棘に駆け寄っていく。

 

 

「千棘ちゃん?もぉ~、どこ行ってたの~?」

 

 

「ごめーん。ちょっと散歩してて」

 

 

二人が話す中、陸も歩み寄って千棘に問いかける。

 

 

「なあ千棘。楽がどこにいるか知らないか?」

 

 

「え!?えっ、と…。どこかで迷子にでもなってるんじゃないかしら?あははは…」

 

 

「?」

 

 

何か誤魔化しているような態度をする千棘に、疑問符を浮かべる陸。

もう一度問いかけようとするが、再び千棘は小咲と楽しげに談笑し始める。

 

 

(…まあ大丈夫だろ。楽はほっといて俺も好きなだけ食うか!)

 

 

楽なら大丈夫だろうと結論付け、陸は皿とフォークを持って食事の乗ったテーブルへと向かう。

 

その間、楽は、陸と楽の二人が記憶の彼方に忘れ去っていた思い出について聴いていたなど、思いもせず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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