一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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連投です


第2話 ソウサク

 

 

 

 

 

 

ぼ…?

 

う…?

 

りょ…

 

く…?

 

クラスに戸惑いの沈黙が流れる中、楽と千棘の口論、そして陸の笑い声が教室中に響き渡る。

 

 

「ちょ…!何よ暴力女って!」

 

 

「さっき校庭で俺に飛び膝蹴り喰らわせただろ!」

 

 

千棘にとって、あれは過失だ。事故だ。だから、暴力女と言われて良い気などなるはずがない。

だが楽だって、千棘の膝蹴りの被害者だ。何か言わなければ気が済まない。

 

 

「ちゃんと謝ったじゃない!」

 

 

「はぁ!?あれが謝っただぁ!?あれのどこがだよ!」

 

 

「謝ったわよ!もう、ちょっとぶつかったくらいで被害妄想やめてよね!?」

 

 

「ははっ!ははははっ、はぁ…はははっ!」

 

 

陸の爆笑が収まらない。その間でも、楽と千棘の口論は収まるどころかさらにエスカレートしていく。

 

 

「どこがちょっとだよ!こっちは気絶しかけたんだよ!」

 

 

「へー!?あんた血圧低いんじゃないの!?こっちは謝ってるんだから許してくれてもいいでしょ!?女々しい人ね!!」

 

 

「女々…!?それが謝ってる奴の態度かよ!この…」

 

 

クラスメイト達もぽかんとしている中、ついに楽が言ってはならない一言を口にする。

 

 

「猿女!!」

 

 

ピキッ

 

楽の声が響き渡った直後、教室の中にいる全員の耳に何かがひび割れるような音が届いた。

 

 

「誰が…」

 

 

すると、千棘が腕を大きく後ろに振りかぶる。

体勢を低く取り、鋭い眼光は楽を捉える。

 

 

「はぁ…、は?」

 

 

ようやく、陸が笑いを抑え始めたその時だった。

千棘の左足が大きく踏み込まれ、振りかぶっていた腕がぶれる。

 

 

「猿女よ!!!」

 

 

振るわれた拳は、楽の頬にクリーンヒット。

本当に生身で殴ったのかと疑いたくなるほど大きな音が響き渡り、楽の体が宙へ浮く。

 

楽は教室の扉を通り抜け廊下の壁に背中が打ち付けられる。

 

 

「あ」

 

 

千棘は、我に返って自分が何をしたのか自覚する。

クラスメイト達は、動くこともできず呆然と千棘を眺める。

 

そして、陸は殴られた楽を見て声を漏らして…

 

 

「ぶふぅっ!っははははははははははは!!な、な、なぐっ、殴って飛んだぁっ!?ははははは!!」

 

 

再び笑い始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

「どうしてくれんのよ。恥かいちゃったじゃない!」

 

 

「何で俺が怒られる側なんだよ!?」

 

 

ホームルームが終わると、廊下で再び口論を始める楽と千棘。

そんな二人を教室の扉付近で眺める陸、小咲に集。

 

 

「なあ陸。あの娘が膝蹴りの主?」

 

 

「ああ。だから言っただろ?ホントだって」

 

 

集が千棘が女通り魔なのかを陸に問い、陸もすぐに頷いて返す。

へぇ~、と口にしながら集は楽と千棘の口論にもう一度目を向けてから、体を捻って回り始める。

 

 

「でも俺!あんな可愛い子だったら膝蹴りされても~…!」

 

 

「…やっぱり、あいつって女の子に関することになると猛烈バカになるよな」

 

 

「ははは…」

 

 

かなりの速さで回転する集を、陸と小咲が苦笑しながら眺める。

 

すると、楽と千棘側の方にも動きが訪れる。

 

 

「おぉ、一条に桐崎さん。丁度よかった」

 

 

「「え?」」

 

 

「「?」」

 

 

口論を繰り広げる楽と千棘に、キョーコ先生が声をかける。

キョーコ先生に顔を向ける楽と千棘に、未だに回り続ける集から視線を向ける陸と小咲。

 

 

「あんたら知り合いだったんだろ?だからさ…」

 

 

「「…えええええええええっ!?」」

 

 

教室中に楽と千棘の叫び声が響き渡る。

 

原因は、二人の席の位置だ。二人は今、席が隣同士で座っている。

 

キョーコ先生に抗議する楽と千棘。そんな二人を眺める陸と小咲。

え?集?まだ回り続けています。

 

 

「あーあ…。ま、何だかんだで相性良さそうだし何とかなりそうなもんだけど」

 

 

「一条君もそう思う?今は喧嘩してるけど」

 

 

先程と違って、苦いものではなく本当の笑みを浮かべて楽と千棘を眺める。

そんな陸だったが、ふとあることに気づいて小咲に声をかける。

 

 

「そうだ小野寺。いい加減、名字呼び何とかならないか?」

 

 

「え?」

 

 

表情の動きが固まる小咲。そんな小咲を余所に言葉を続ける陸。

 

 

「ほら、俺と楽。二人とも一条だろ?中学もそうだったけど、一条って呼ばれたら二人が振り向くんだよ。だからさ」

 

 

「え…え?」

 

 

固まった表情のまま、頬を染めていく小咲。

 

 

「ほら、呼んでみて。名前で」

 

 

「え…え…えぇ!?」

 

 

名前で呼んでという陸に、さらに顔を真っ赤に染める小咲。

小咲の唇が、ぱくぱくと開閉する。何かを言おうとしているのだろうが、その言葉を出すことができない。

 

 

「ほら、陸」

 

 

「え…、り…?り…り…」

 

 

きっと、陸と言おうとしているのだろう。だが、り、から先を言うことができない。

りとくの二文字を言えばいいだけなのに、どうしてこんなに難しいのだろう。

 

頬の熱が止まらない。自分でも、顔が赤くなってることがよくわかる。

 

 

「り…りり…り…りりりり…」

 

 

顔が赤くなるのを通り越して、頭から湯気が出てくる小咲。

 

そして、ついに━━━━

 

 

「え…、小野寺?おい!?」

 

 

「ご、ごめんなさぃいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

 

急に駆け出す小咲。陸の制止も振り切って、小咲は廊下に出てそのままどこかへ走り去っていく。

 

 

「もうすぐ授業始まるのに、どこ行くんだ小野寺~…」

 

 

ただ今の時間、8時38分。授業開始時間、8時40分。

 

さて、小咲はどこに行ったのだろうか…。

 

 

 

 

 

結局、授業開始のチャイムが鳴る直前に小咲は教室の中に入って来た。

小咲の席は、一人を挟んで陸の斜め後ろなのだが、小咲とすれ違う時に陸と視線が合った。

 

だがそれは一瞬で、陸は視線を逸らされてしまったのだが。

 

 

(何か…、中3くらいから良く視線合っても逸らされる気がするんだが…、避けられてる?)

 

 

The 鈍感キング 一条陸

 

誕生は中学3年の時だったそうだ。

 

さて、楽の叫び声が響き渡ったのは一時間目が終わった休み時間の時だった。

 

 

「ど、どうした楽?急に叫び出して」

 

 

「あぁ陸!ない!ないんだ!」

 

 

楽の肩を軽くたたいて声をかけた陸につかみかかる楽。

 

 

「な、ない?ないって何が…?」

 

 

「ペンダントだよ!気づいたら首にかかってなかったんだ!」

 

 

ペンダント、とは楽が小さい時からずっと肌身離さず大切に持っている宝物だ。

何でも、十年前に出会った女の子にもらったと陸は聞いている。

 

 

「どこかに落としたんじゃないか?学校の落し物届を見てみたら?」

 

 

「…いや、きっとあの時だ」

 

 

混乱する楽に助言を送る陸だったが、それよりも有効な考えが浮かんだのか楽が言う。

すると、楽はきっ、と隣に座る千棘を睨んで指をさす。

 

 

「お前が俺に膝蹴りを喰らわせたあの時!あの時以外あり得ねえ!」

 

 

「はぁ!?」

 

 

楽に指をさされた千棘は素っ頓狂な声を上げた後、楽に言い返す。

 

 

「そんなの一人で探しなさいよ」

 

 

「何言ってんだ!さっきも言ったけど、お前の膝蹴りを喰らった時以外あり得ねえ!てめーにも責任あんだろ!」

 

 

三度口論を始める楽と千棘。

二度目までは微笑ましく見守っていた陸だったが、さすがに三度目は飽きたのか、目を瞑って、無表情で眺めるだけ。

 

 

(…トイレ行って来よう)

 

 

スルーすることに決めた。陸は教室から出てトイレへと向かう。

 

トイレの前にたどり着いても、楽と千棘の口論の声が聞こえてきたのにはさすがに驚いた陸だった。

 

 

 

 

楽と千棘がペンダントを探し始めたことを陸が聞いたのは、その日の夕食の時だった。

 

楽と千棘、たまに陸や小咲も手伝ってペンダントを探すのだが、一週間経っても見つけることができない。

落し物置き場にもないことを考えると、間違いなく楽と千棘が最初に遭遇した校庭に落ちていることはほぼ間違いないだろう。

 

その日、陸は掃除当番、小咲は委員の活動でペンダントを探しに行くのが遅れていた。

 

 

「…あ」

 

 

「…え?」

 

 

掃除を終わらせた陸は、さっそく楽のペンダント探しを手伝うために校庭に向かっていた。

その途中で小咲と鉢合わせる。

 

 

「小野寺。また楽のペンダント探すの手伝ってくれるのか?」

 

 

「あ…、うん…。一条君も?」

 

 

「あぁ。俺、楽がペンダント大事にしてるのずっと見てきたからさ?やっぱり弟の俺が探すの手伝ってやらないと」

 

 

陸と小咲は、楽と千棘が今、探しているだろう校庭の場所へと歩く。

 

 

「ごめんな小野寺?楽のペンダント探し、手伝ってくれて」

 

 

「え…。ううん!大丈夫だよ?」

 

 

「いや、楽には見つけた後で絶対お礼言わせる。そして、何か飲み物買わせてやるから、楽しみにしてろよ」

 

 

「い、いいのに…」

 

 

小咲が、両手を振って弱弱しく断るが、陸の勢いは収まらない。

楽にお礼を言わせる。小咲に飲み物を奢らせると言って聞かない。

 

小咲も、もし楽が了承したら甘んじて受けようか、と思った時だった。

 

 

「うるっせぇな!!だったらもう探さなくていいからどっか行けよ!!!」

 

 

楽の怒鳴り声が二人の耳に響く。

今まで、というより最近はよく聞いていた楽の怒鳴りだったが、これはそのどれとも違う、ドスの効いたものだった。

 

陸が何も言わずに駆け出し、小咲も慌てて陸についていく。

 

雲からごろごろと音が鳴り、ぽつぽつと雨が降り出す。

それにも関わらず陸は走り続け、楽と千棘の姿を見つける。

 

 

「楽。お前…」

 

 

楽に声をかけようとした陸だったが、楽と千棘の間に流れるただならない空気に言葉を止める。

 

 

「…わかった」

 

 

少しの間、睨み合っていた二人だったが千棘が去っていく。

 

千棘の姿が見えなくなっても、立ちすくす楽。

 

 

「…小野寺。風邪引くから学校の中に戻ろう」

 

 

「え…、でも…」

 

 

「良い。今回は多分、こいつが悪いから」

 

 

小咲の手を引いて学校の中へと戻る陸。

小咲が楽の様子が気になるのか、度々楽の方に視線を向けるが陸は小咲と違い、楽には目も向けずに校舎の中へと入っていった。

 

 

「小野寺、今日は帰っていい。というか帰ろう。この雨じゃどうせ探すに探せない」

 

 

「…うん」

 

 

気になるのだろう。楽と千棘の様子が。

陸だって、気にならないと言ったら嘘になる。だから…

 

 

「じゃあ、俺は用事思い出したから。また明日な」

 

 

「あ、うん。また明日…」

 

 

小咲に手を振ってその場から去る陸。向かう先は…

 

 

「あ、いた。桐崎さん」

 

 

「…あんた」

 

 

 

 

 

 

 

 

千棘が転校してきてから11日目。陸はあの日からペンダント探しを手伝っていなかった。

窓からペンダントを探し続ける楽と小咲の様子を見ることはあっても、手伝うことはしなかった。

 

…そして、あいつが探している時も。

 

 

「あ、一条君」

 

 

「小野寺?」

 

 

靴を履き替え、校舎を出ようとした陸は小咲から声を掛けられる。

振り返ると、小咲も帰る所なのか、カバンを持ってこちらに駆け寄ってくる。

 

小咲も靴を履き替えると、陸の隣に寄る。

 

 

「どうした?」

 

 

「…ううん。やっぱり、一条君は優しいなって」

 

 

「…は?」

 

 

少しの間を空けて、呆けた声を出す陸。

 

小咲から視線を逸らして歩き出す。

 

 

「何のことやら」

 

 

「惚けたって駄目っ。もうわかってるんだから」

 

 

微笑みながら陸の顔を覗き込んで言ってくる小咲。

 

何やら照れくさく感じてくる。のぞき込んできた小咲からさらに視線を逸らす陸。

 

 

「う、うるさいな。わからないったらわからないんだ」

 

 

「わかるって言ったらわかるの。素直じゃないな~?」

 

 

隣で並んで歩く二人。

こんなやり取りの繰り返しは、それぞれの家の方向に道が分かれるまで続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「お、帰ったか陸。楽はどうした?」

 

 

「親父?楽なら多分もうすぐ帰ってくると思うけど?」

 

 

陸が家に入り、玄関から出て居間に出るとそこには親父が立っていた。

親父は陸を見つけるとすぐに声をかけて楽の居場所を尋ねてくる。

 

 

「そうか。楽が帰ったら、二人で俺の部屋に来い。確かに伝えたぞ」

 

 

「…?わかった」

 

 

そう言って去っていく親父。

何故呼び出されたのかわからず、首を傾げる陸だったが了承を返す。

 

楽が帰ってきたのは、親父と話し終えてから十五分後の事だった。

楽に親父に呼ばれたことを伝えて部屋へと向かう。

 

その途中、楽にお礼を言われたが惚ける陸。

そんな陸を笑みを浮かべながら眺める楽。小咲の時と同じだ。

 

またまたどこか照れくさくなり視線を逸らした。

 

 

「何だよ親父。いきなり呼び出して」

 

 

親父の部屋へと入った二人。待っていた親父が二人を出迎える。

 

 

「今度大事な話をするっつったろ?思いのほか早く事が動き出してな」

 

 

陸は、親父の声の質が先程とは違うことに気づく。

先程の世間話をするときの調子と違い、何か真剣みを帯びた声だという事を感じ取る。

 

 

「陸、お前は知ってるだろ。最近のギャングとの抗争を。それがいよいよ、全面戦争になりそうなのよ」

 

 

全面戦争。

楽だけでなく、さすがの陸もその言葉に衝撃を受ける。

 

 

「展開が予想より早いな…」

 

 

「せ…!?おい、大丈夫なのかよ!?」

 

 

ここの思いを口に出す二人。そんな二人に対して、冷静に答える親父。

 

 

「まぁもしそうなりゃ、お互いタダじゃ済まんわな…。そこでだ!」

 

 

何か対策を考えているのか。親父は振り返って二人に向かって指を向ける。

 

 

「この戦争を回避する方法が一つだけある。それも、てめえら二人のどちらかしかできない方法がだ」

 

 

「俺達二人の…」

 

 

「どちらかしか?」

 

 

「実ぁ向こうのボスとは古い仲でな。奴にも同い年の娘がいるらしいんだが…。そこで楽、陸」

 

 

陸か楽しかできない方法。その説明を始める親父。

次の瞬間、二人は呆けて開いた口がふさがらなくなった。

 

 

「おめえら。どっちかその子と恋人同士になってくんねえか?」

 

 

「「…は?」」

 

 

戦争を回避する方法が、恋人になる?

ははっ、そんな簡単なこt

 

 

「いやいやいやいや!はぁ!?」

 

 

「なーに、振りをするだけでいいんだ。互いの組の二代目が恋人となりゃ、水差すわけにゃいかんだろ。まさか、おめえら恋人できたか?」

 

 

「俺も楽もいない」

 

 

「陸!?」

 

 

ここでいる、と言えば逃げられたかもしれない。

だが、陸のせいで楽も、陸も逃げ道がなくなってしまった。

 

 

「悪ぃが、こっちも命がかかってっからな。泣き言言っても、どっちかにはやってもらうぜ?」

 

 

どうやら最初から逃げ道などなかったようだ。

さらに、親父は襖に向かって入ってくれ、と口にする。もう、その恋人の振りをする相手の子はここに来ているようだ。

 

…後に、楽は陸に笑いながら語った。

この時、何故ちりばめられたヒントに気が付かなかったのだろう、と。

この最悪の事態を回避すべきだったと後悔した、と。

 

 

「さぁ、この子がお前らどちらかの恋人となる━━━━」

 

 

親父がカーテンを開け、向こう側を見せる。

 

現れたのは、金髪の男女二人。

一人は相当背が高く、壮年の男。

もう一人は、あれ?見覚えがあるような…。

 

 

「なっ!?」

 

 

「へぇっ!?」

 

 

「おうふ」

 

 

視線が交わり、三人に衝撃が奔る。

口を開くこともできず、親父が何を話しているのかもよく聞こえてこない。

 

だが、辛うじて聞き取れたのは、楽にとって絶望の名前だった。

 

 

「━━━━桐崎千棘ちゃんだ━━━━」

 

 

それと同時に、陸は心の中で決意した。

 

 

(何としても俺は回避する。そして、この二人に恋人の振りをさせてやろう)

 

 

内心、ニヤニヤと笑いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで投稿した二話を見てわかる様に、陸は相当性格悪いですww
集と良い勝負ですwwですが、女好きではないです…ww
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