一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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第25話 ウソツキ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外では、ギラギラと太陽の日差しが降り注ぎ、喧しい蝉の声が響き渡る。

そんな七月下旬、陸が小咲の家でお泊まりをしてから三日後のこと。

 

 

「「「「こんにちは~~!!」」」」

 

 

陸と楽の家に、五人の人物が上がり込んでいた。

 

小咲、千棘、鶫、るり、集の五人がそれぞれの靴を抜いて陸と楽の家の廊下へと入っていく。

 

 

「いや~、楽んちで勉強会すんのも二回目か~。でも、何でこのタイミング?」

 

 

「知らねえよ。何か、鶫の発案らしいけど…」

 

 

おじゃましまーす、と小咲たちが入っていく中、集と楽が言葉を交わす。

 

 

「へぇ~、誠士郎ちゃんが…。こりゃ珍しい」

 

 

「ふん…。夏休みの宿題など、早めに済ませておくのに越したことはないだろう?」

 

 

ちらっ、と横目で鶫を見ながら集が言うと、鶫は淡々と返事を返す。

 

そんな鶫に集は「真面目だねぇ~」と、どこか悪戯っぽい笑みを浮かべながら返す。

 

楽たちが、陸の部屋に向けて歩き出そうとする。

その時、楽の視界の端から飛び込んでくる者があった。

 

 

「楽様ぁ~!お会いしたかったですわぁ~!!」

 

 

その人物は楽の腰に両腕を巻き付け、楽の胸に自身の顔を擦りつけながら楽様楽様と言い続ける。

楽は、その人物を見下ろしながら頬を紅潮させる。

 

 

「た、橘!離せよ!」

 

 

「えぇ~?良いではありませんか、楽様ぁ~」

 

 

楽は抱き付いてきた人物、万里花の肩を掴んで引き離そうとするがこの細い体のどこからこんな力が生み出されるのか。

男の楽の力をもってしても万里花を引き離すことができない。

それどころか、万里花との密着面がさらに大きくなっていく。

 

万里花の女の子らしい良いにおいと体の柔らかさが、楽の体を包み込む。

 

年頃の男子にとっては堪ったものではない。

 

 

「ちょっと万里花!だ、ダーリンから離れなさい!!」

 

 

「あぁん…、楽様ぁ!」

 

 

と、そこで千棘が万里花の両腋から腕を通して楽から引きはがす。

名残惜しさから万里花が悲しげな声を漏らすが、楽としては助かった。

 

あのまま続けられていたら…、どうなっていたかわからない。

 

 

「…私はあいつを呼んではいないのだがな」

 

 

「ま、橘さんなら楽のいる所に飛んでくるだろうからなー」

 

 

「…私は貴様のことも呼んではいないのだが」

 

 

楽と万里花、千棘のやり取りを眺めていた集と鶫が言葉を交わす。

「つれないな~、誠士郎ちゃんは~」と、くねくねしながら言う集を無視して先を行っている小咲とるりの後を追う鶫。

 

 

「お嬢、それに貴様ら。早く行きましょう」

 

 

今回の勉強会も陸の部屋を借りて行われる。

すでに、陸は部屋で楽たちを待っている。

 

楽たちは陸の部屋へと足を急がせる。

 

 

「…ところで、さっきから気になってたんだけど。その機械は何なの、鶫?」

 

 

陸の部屋に到着し、人数分のお茶という陸の歓迎を受けた楽以外の六人はそれぞれの場所に腰を下ろしてべ恭道具を鞄から取り出そうとする。

だがその過程の中で、千棘が鶫の眼前にある機会に目を向けた。

 

その機械から伸びる線の端に付いている二つの取っ手を鶫がそれぞれを両手で掴んでいる。

 

家を出た時から気にはなっていたのだ。

勉強会に行くにしては、やけに鶫の荷物が大きいと。

 

 

「ああ、これは勉強会の合間のレクリエーションにでもと思いまして」

 

 

「…何企んでんのよ」

 

 

「嫌ですよお嬢。何も企んでなどおりませんよ」

 

 

持ってきた機械を、レクリエーションに使うと言う鶫を千棘は疑わしげに目を細めて見つめる。

千棘の疑いの言葉を、鶫はさらっ、と否定するのだが…、その瞬間。

 

 

ビーーーーーーーーー

 

 

甲高い警告音が鳴り響く。

 

流れる沈黙。表情を固まらせる鶫。

初めに硬直から解かれたのは、陸だった。

 

 

「なあ鶫…。それって、嘘発見器じゃ…?」

 

 

「そ、そうなんですよ!偶然ネットで見つけまして!」

 

 

どこか見覚えのあるフォルム。

頭の中から、ここ一条家の蔵にも似たようなものがあることを絞り出した陸が鶫に恐る恐る問いかける。

 

そして、その問いの鶫の答えは、YES。

さらにネットで偶然見つけたという苦しい言い訳も付いてきた。

陸は思わず苦笑してしまう。

 

 

「へー、面白そうじゃん!さっそく試してみよーぜー!」

 

 

「それもそうだな。俺は嫌だけど」

 

 

鶫のネット云々が嘘だと気づいているのかいないのか、少なくとも楽は気づいていないだろう。

集と楽が面白そうだと感じ、早速試そうと言い出す。

 

だがその時、楽の隣に腰を下ろしていた千棘がギョッ、と体を震わせると楽の耳元で何か囁いている。

そしてその直後、楽も千棘と同じように体を震わせる。

 

 

(…あ?これってちょっとやばくね?もしかして、鶫はこれが狙いなのか?)

 

 

それを眺めていた陸が、ある結論へと辿り着く。

 

鶫が持ってきた嘘発見器。万が一にもネットで偶然見つけたということはあり得ないだろう。

恐らく。ビーハイブの技術部が開発したそれなりの性能を持っている機器に違いない。

この機械が示した事実は、九分九厘本当のことになるだろう。

 

では、この機械を楽に試されたら?

たとえば、本当に楽は千棘のことを愛しているのか?と質問されたら?

 

この嘘発見器は、見逃さないだろう。

 

 

「では早速だが一条楽!貴様からやってみないか!?」

 

 

「え!?ちょっ、何で俺が!」

 

 

陸の予想通りだ。

鶫がいきなり嘘発見器の取っ手を楽に押し付け始める。

 

 

(あ、やばい。どうしようかこれ…)

 

 

「まっ、まあまあ!鶫が持ってきたんだし、鶫がやったら?言いだしっぺなんだし!

 

 

「お、お嬢!?」

 

 

陸がどうしようかと悩んでいると、千棘が鶫を宥め始める。

そして鶫も、千棘の言う通りだと感じたのか、それとも仕える人物の命には逆らえないと考えたのかはわからないが、素直に両手に機器を握って質問を待ち始める。

 

 

「あ、じゃあ私が質問していいかな?」

 

 

「小野寺さま?」

 

 

すると、小咲が手を上げて鶫に問いかける。

 

 

「鶫さんは今、好きな人は居ますか?」

 

 

「っ!!!?」

 

 

無垢な笑顔を浮かべながら小咲が質問を口にした途端、鶫は目を見開き顔を真っ赤にさせる。

 

 

「い、いえ…。そんな人は私にはいませんよ…」

 

 

小咲の問いをNOで答える鶫。

やっぱりか、と辺りが息を吐こうとしたその時。

 

 

ビーーーーー!ビーーーーー!

 

 

嘘発見器は、芯をガリガリガリと揺らしながら音を発する。

つまり、鶫の答えは…。

 

 

「やっぱり!」

 

 

「違います!!」

 

 

必死に否定する鶫。ついにはこんなことを言い出す始末。

 

 

「まあ嘘発見器なんて、元々当てになるものではありませんしね…。質問が悪かったのかもしれませんが…」

 

 

「んー…、そっか…」

 

 

難を逃れた。鶫はそう思っただろう。

だが、本人には自覚はないものの、小咲は鶫を逃がさない。

 

 

「じゃあ鶫さんは今、恋をしていますか?」

 

 

「してません!」

 

 

ビーーーーー!

 

 

再び質問を投げかける小咲に、鶫はすぐさまNOと答える。

そして直後、音を発する嘘発見器。

 

 

「…こ、壊れてるのかな?この機械は?」

 

 

バンッ!と機械に手を張り当てながら鶫は機械の中は外面に視線を巡らせる。

必死にこの機械の出した結果は嘘なのだと弁明し続ける鶫は、ターゲットの楽に視線を移す。

 

 

「私のことはいいんですよ!ほら一条楽、貴様の番だ!」

 

 

「えっ」

 

 

鶫がぽいっ、と機器を楽の手に放る。

思わず受け取ってしまった楽、そんな楽に詰め寄りながら鶫は質問をする。

 

 

「貴様はお嬢のことを本気で愛しているのか?YESかNOか…?」

 

 

本気だ。本気の目だ。

これで、悪い結果が出ればすぐに鶫は楽の排除にかかるだろう。

 

結果は見えている。YESと答えれば嘘と、NOと答えれば本当だと機械は示すだろう。

 

陸は何時でも動けるように備える。

鶫が動いたその瞬間、陸も迎撃に動けるようにする。

 

 

「そ、そんなもんYESに決まってるじゃねーか…」

 

 

楽が、答える。沈黙が、流れる。

 

…音が、出ない。芯も、揺れない。

 

 

(…あれ?)

 

 

「くっ!どうやら本当のようだな…」

 

 

何処か悔しげに鶫がつぶやく中、陸は、そして楽もまた戸惑いの表情を浮かべていた。

陸も楽も、こんな結果が出るとは思っていなかった。

 

 

(まさか、不良品?いや、そんなはずは…)

 

 

陸は考える中、ふと楽の隣に座る千棘が視界の中に映る。

千棘は、目を見開いて頬を染めて…。この結果に驚いているように見える。

 

 

(まあ当然だろうな…。でも、そこまで顔赤くしなくても…)

 

 

思わぬ千棘の反応に、陸はまさか、とある結論に着きかけるがすぐに首を振って否定する。

 

そんな中、次は万里花が質問を受ける側になっていた。

万里花に質問をするのは、あることが気になっていた千棘。

 

 

「ダーリンとキスしたって言うのは本当?」

 

 

「っ!?」

 

 

千棘の口から出た質問に、陸は大きく目を見開いて驚愕する。

 

 

「それはもちろん…、本当ですわ」

 

 

「…っ!!?」

 

 

そして満面の笑みを浮かべた万里花の答え、嘘発見器が何も反応を見せないことにさらに大きく陸は驚愕する。

 

 

「え…、ちょっ…」

 

 

何が、一体何があったんだ。

 

後で楽を問い詰めてやると心に決める陸を余所に、次に質問を受けるのは小咲になる。

 

 

「ずばり、小野寺のバストはC以上?それとも以下?」

 

 

小咲に質問をしたのは集。そしてその問いを言い切った直後、集は横合いから飛び込んできた拳を受け、吹っ飛んでいく。

吹っ飛んだ集を追ってるりが駆け抜け、そして倒れ込んだ集にさらなる追撃を加えていく。

 

 

「い…いじ…い…」

 

 

るりの容赦ない攻撃を受けている集の悲鳴が響き渡る中、小咲が顔を真っ赤にさせて必死に答えようとする。

 

 

「こ、小咲!?良い!良いんだ!頑張らなくていい!!」

 

 

そんな小咲を見た陸が小咲の背後から手で口を塞いで、肩をトントンと叩いて落ち着かせようとする。

 

小咲を落ち着かせようとしながら、陸は小咲の手から機器を奪い取ると千棘へと投げ渡す。

 

 

「ほら!次は千棘だ!」

 

 

「えっ、えぇ!?」

 

 

「なら、次は私は質問を」

 

 

陸から機器を投げ渡された千棘は、慌てて他の人に渡そうとするがその前に万里花が質問を口にしてしまう。

 

 

「桐崎さんは楽様と、キスはもう済ませたのかしら?」

 

 

「「ぬなっ!?」」

 

 

「り、陸君、もう大丈夫…」

 

 

「ん、そうか」

 

 

万里花が質問し、楽と千棘が驚愕する中。陸はようやく落ち着きを見せた小咲を離す。

…まだ顔が赤い気がするが、先程よりも収まっているため大丈夫だろうと判断する陸。

 

そんな中、千棘が万里花の質問に答えるべく口を開く。

 

 

「いや、それはまだ…。私たちはピュアなお付き合いを…」

 

 

質問に答えた千棘は直後、はっ、と何かを思い出したのか目を瞠る。

そして、それと同時に嘘発見器も反応を見せていた。

 

 

「「「「え!!?」」」」

 

 

「マジで!?楽、お前いつの間に!!?」

 

 

「「してないしてない!断じてしてない!!」」

 

 

集たちが驚愕し、陸が楽に問いかける。

楽と千棘が必死に否定するが、機器が示した現実は変わらない。

 

陸は、いつの間に…、ともう一度つぶやく。

 

 

「じゃあほら!次はあんたよ!」

 

 

「え?」

 

 

兄の成長を喜んでいた弟陸に、千棘からのプレゼント。

陸の両手には、嘘発見器。

 

 

「え?え!?」

 

 

「ほら!誰か質問しなさいよ!」

 

 

「あ、じゃあ俺が!」

 

 

これまでのやり取りを見てきた陸。

この発見器を受け取り、質問されたものに訪れる末路を見てきた陸。

 

嫌な予感が、陸の胸に奔る。

さらに質問を受け持ったのは何と集。

 

これは、まずい気がする。

 

 

「ち、ちょっとまっ…」

 

 

「陸、三日前お前は小野寺の家にバイトをしに行ったそうだが…、その時、この町は台風が通過していたな…」

 

 

質問の前に前置きをする集に、陸と小咲以外の面々がぽかんとした視線を送る。

だが陸と小咲の二人は、まさかと目を瞠る。

 

 

「陸!俺の質問はこれだ!お前は、小野寺の家にお泊まりをしたのか!!?」

 

 

来てしまった。この質問が、来てしまった。

 

どうするか…、とりあえずまずは答えるしかない。

 

 

「い、イエス…」

 

 

結局事実なのだから、こう答えるしかない。

嘘を吐こうかとも考えたが、すでに楽は事実を知っている。

イエスと答えても問題ないと陸は考えたうえで答えた。

 

機器は…、何も反応を示さない。つまり、陸の答えは真実。

 

 

「「「「おーーー…」」」」

 

 

「「…」」

 

 

これは恥ずかしい。

感嘆の声を漏らす面々に対し、陸と小咲は頬を染めて俯いてしまう。

 

だが、二人にはまだ集の追撃が待っていたのだ。

 

 

「じゃあ陸!小野寺の家で何かいかがわしいことはあったかぁ!?」

 

 

「っ!?そ、そんなことあるわけないだろ…っ!

 

 

更なる集の質問に、すぐさま否定で答えようとする陸。

だが、答えを言い切ったその直前、陸の脳裏にある光景が過る。

 

お風呂から上がった直後の小咲の姿。可愛らしいパジャマ、いつもと比べて開いている胸元。漂うシャンプーの良いにおい。

これを思い出してしまった陸の末路は、決まってしまった。

 

 

「「「「な、何ーーーーーーーーーーーーー!!?」」」」

 

 

「ち、違う!断じて違う!!」

 

 

「え…?え?」

 

 

今度は、楽も集たちに交じって叫び声を上げる。

 

陸は必死に否定し、小咲は陸を見つめて戸惑いの声を漏らす。

 

違う。違うと言っても、現実は何も変わらない。

 

だが、陸にできることはたった一つだけなのだ。

 

 

「違うんだぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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