一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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前回のおまけ

ペンダントが見つかり、千棘の書いた手紙を見たシーン

「何書いてるかわかんないけど、バカにされてるのはわかるぞ…」

「…あれ?一条君、まだ何か書いてあるよ?」

「え?」

<あんたがペンダントをどれだけ大事にしてるかあんたの弟から聞いた。前は、言いすぎてゴメン…。それと、弟にもちゃんとお礼言いなさいよね!>

「…陸の奴」










第3話 カケダス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お前…。ギャングの娘だったのか…!?」

 

 

「あ、あんた達こそ…、やくざの二代目候補だったの…!?」

 

 

カーテンが開かれ、遭遇した三人。

楽と千棘は、目を見開き唇を引きつらせながら声を絞り出す。

 

 

「おう。何だお前ら、面識あったのか?なら話は早い。改めて紹介だ、楽、陸」

 

 

陸と楽、千棘の顔を交互に見ながら話す親父。

 

 

「こいつがギャング組織“ビーハイブ”のボス、アーデルト・桐崎・ウォグナーと桐崎千棘お嬢ちゃんだ」

 

 

紹介された千棘とその父、アーデルト

千棘は呆然と立ち尽くしているが、アーデルトは陸と楽に頭を下げてから口を開く。

 

 

「君たちのことは聞いているよ。よろしくね、楽君、陸君」

 

 

「あ、どーも…じゃなくて!」

 

 

アーデルトの挨拶に、陸は頭を下げて返す。

楽も言葉で返そうとするが、いきなり大声を上げた。

 

 

「ムリムリムリムリ!こんな奴と恋人の振りぃ!?」

 

 

「そうよ!パパは知らないでしょうけど、私とこいつすっごく仲悪いのよ!?それに、誰がこんなもやし男と!」

 

 

「なっ!?俺だって御免だ!親父、こんな奴と上手くいくわけないって!」

 

 

(あー…、また始まった)

 

 

陸も千棘にまだしていなかった挨拶をしようとしたのだが、その前に楽と千棘が口論を始めてしまった。

陸は一歩、二歩と下がって親父とアーデルトがいる方へと移動する。

 

 

「なあ親父。これ、俺はいらないだろ」

 

 

「あぁ、そうだな…。ずいぶんと仲良いじゃねえか」

 

 

「「良くない!!」」

 

 

ぎゃーぎゃーと大声で罵声を浴びせ合っていたくせに、何故こちらの話し声が聞こえているのだろうか。

 

 

「しかしなあ…、このままじゃ大変なことになるぜ?」

 

 

「…へ?」

 

 

「…おい親父、まさか」

 

 

親父がどこか悪戯気な笑みを浮かべて言う。

それを聞いて楽は呆けた声を漏らし、陸は何が起こるか想像がついて親父を問い詰めようとする。

 

その時だった。突然、壁が轟音と共に破壊される。

 

 

「な、何だぁ!?」

 

 

楽が驚愕の声を出す中、煙が薄くなり穴の向こう側から人影が現れる。

 

 

「見つけましたよお嬢…。どうやら、集英組のクソ共がお嬢を攫ったというのは本当だったそうですね…」

 

 

眼鏡をかけ、髪をバックに整えた若い男を先頭にスーツを着た強面の男集団が乗り込んでくる。

 

 

「く、クロード!」

 

 

「ご安心ください、お嬢。お嬢を守るのがビーハイブの幹部としての私の役目。不肖このクロードめがお迎えに上がりました」

 

 

右手を体の前で振いながら頭を下げるクロード。

そんな中、他のビーハイブの男たちはアーデルトを心配して駆け寄っていく。

 

 

(あー…、これはやばい…)

 

 

その光景を見ながら陸は心の中でつぶやく。

 

先程の轟音。あいつらが気が付かないはずがない。

 

 

「おうおう、ビーハイブの大幹部さん…。こいつぁちょいとお痛が過ぎやしやせんか…?」

 

 

陸の予想通り、集英組の男たちがこの場にやって来た。

 

 

「今までは手加減してやって来たけんどのぅ…、今度という今度は許さへんぞ…」

 

 

「ふん、猿どもが…。お嬢に手を出したらどうなるか教えてやる」

 

 

まさに、一触即発。というより、何もしなくても自然に爆発しそうな空気だ。

 

 

(あー…、楽と桐崎さんは避難させた方が良いかもな…)

 

 

集英組の大幹部、竜とビーハイブの幹部、クロードが睨み合う中、陸は震える楽と桐崎を眺める。

そして、陸が歩き出そうとした時、親父が口を開いた。

 

 

「あー君君、ちぃと誤解してるんじゃねえか?」

 

 

「ん…、なっ、ボス!?何故ここに…!?」

 

 

クロードは千棘の姿しか見えていなかったのだろうか。

親父の隣に立っているアーデルトの姿を見て目を見開く。

 

 

「嬢ちゃんを攫ったなんざとんでもねえ誤解だぜ?なんたって…」

 

 

「っ…」

 

 

クロードの驚愕の中、話を進めていく親父。

その過程を聞いて、次に親父が言うことが考え付いた陸はさっ、と親父から離れていく。

 

次の瞬間、親父とアーデルトが、それぞれ楽と千棘の肩を掴んでぐっ、と二人を密着させる。

 

 

「こいつら、超ラブラブの恋人同士なんだからな」

 

 

流れる沈黙。楽と千棘も何が起こったのか一瞬、わからなかった。

 

 

「「…なっ!?」」

 

 

「「「「「「なぁあにぃいーーーーーっ!!!!?」」」」」」

 

 

楽と千棘がそれぞれの父親を睨みつける。

集英組、ビーハイブの男たちは揃って驚愕の叫びを上げる。

 

陸は…、笑っている。

 

 

「ボス…、本当ですか…?」

 

 

「あぁ。僕らが認めた仲だよ」

 

 

クロードはアーデルトに事の真偽を問う。

楽と千棘としては、嘘だと言ってほしかったのだが、アーデルトは躊躇いなく真と答える。

 

 

「そ、そりゃすげええーーーーっ!」

 

 

「坊ちゃん、ついに彼女ができたんすか!?」

 

 

不意に湧き上がる集英組一同。男たちは楽に詰め寄って歓喜の叫びを上げる。

 

 

「お嬢…。いつの間に大人になって…、気づかぬ間に…。このクロード、感激です…」

 

 

一方の千棘も、クロードに感激の言葉を浴びせられる。

 

楽も千棘も、唖然とした表情を浮かべていたが、ようやく我に返って口を開く、

 

 

「待て待て待て!誰が恋人だって!?誰がこんなゴリラ女と!」

 

 

「そっ、そうよ!誰がこんなもやし男と!」

 

 

二人が互いを指さしながら言い合う。

その直後、鳴り響く発砲音。

 

楽の髪を掠り、傍の壁に命中した弾丸。楽に向けて銃口を向けるクロード。

 

 

「おい小僧…。今のは聞き間違いか…?事もあろうにお嬢に向かってゴリラだと…!?尻に鉛玉ぶち込まれてえのか!?」

 

 

ものすごい形相で楽を睨みつけながら言うクロード。

そんな中、動き出す集英組の男たち。

 

 

「てめぇ!坊ちゃんに何してんじゃごらぁ!!」

 

 

振るわれる刀。クロードはひょいとかわす。

すると刀は千棘の傍らを横切り壁に刺さる。

 

 

(あー…、もうどうすんだろ二人とも)

 

 

ついに、ドンパチやり始める集英組とビーハイブ。

陸は部屋の隅でその光景を眺めながら楽と千棘の様子を窺う。

 

もう、彼らを止めることができるのは二人だけだ。

 

 

「…ねぇ坊ちゃん。本当にお二人は、恋人同士なんすか?」

 

 

遂に、怪訝な視線を向け出す始末。

だがこれはチャンスだ。ここで、二人が本当に恋人の振りをすれば状況を良くすることができるかもしれない。

 

 

(いけ、いくんだ二人とも。勇気を出せ!)

 

 

心の中でフレーフレー、とエールを送る陸。完全に傍観者の立場に居座ることに陸は決めているようだ。

 

楽と千棘が顔を寄せ、何かを話しあっている。

陸が、男たちがじっ、と二人を見つめる中、ようやく二人が動き出す。

 

 

「はは…。ラブラブに決まってんじゃねえか~!さっきはゴリラみたいに力強くて優しいって言いたかったんだよなぁ~!!」

 

 

(ぶふぅっ!ゴリラみたいに力強くて優しいって…、何だよそりゃ!!)

 

 

楽の出した言葉に、陸は顔を背け、口を手で覆って吹き出しそうになるのを必死に抑える。

 

 

「モーダーリンったらぁ!紛らわしい言い方しちゃダメじゃないの~!そんな所も大好きだけど!もやしみたいなダーリンの白い肌!」

 

 

(もやしみたいな白い肌ぁ!?や、やめろ…、こらえられなくなる…!)

 

 

そのままの体勢のまま小刻みに震えだす陸。我慢も限界に近付いている。

 

 

「お…、おぉ!?やっぱりお二人は恋人同士だったんすね!?」

 

 

寄り添う楽と千棘を見て、あっけらかんと信用を戻す男たち。だが…

 

 

「…?」

 

 

陸はその男だけ、疑わしげな雰囲気を出していることに気づく。

それは、ビーハイブ幹部、クロードだった。

 

眼鏡の位置を戻しながら、楽と千棘…というより楽を睨んでいる。

 

 

「…」

 

 

その後、楽と千棘の二人は男たちの質問攻めを乗り越える。

だがそれでも、クロードの雰囲気は変わるどころか濃くなっているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の朝。学校が休日のため、陸が起きた時間はいつもよりも遅い時間帯だった。

陸は自室を出て居間に行く。今日の当番は楽のため、すでに朝食は出来ているはずだ。

 

 

「ん?誰もいない…?」

 

 

陸が今に入ると、いつもなら多くの男たちが寛いでいるのだが、何故か今日は誰もいない。

陸は頭を掻きながらまわりを見渡す。

 

 

「…何で?」

 

 

「お、陸。ようやく起きたのか」

 

 

首を傾げる陸に、続いて居間に入って来た親父が声をかけた。

 

 

「あ、親父。皆、どこに行ったんだ?」

 

 

「あぁ。あいつらならな…」

 

 

入って来た親父に、男たちがどこへ行ったのかを問いかける。

そして、その問いの親父の答えを聞いて、陸は大きく目を見開いた。

 

 

「な…、マジ…?」

 

 

陸はすぐに部屋へと戻り、身支度を整える。

そして、すぐさま外へと駆け出して行った。

 

 

(マジで…?くそっ、あのクロードとかいう奴、行動が早すぎる…!)

 

 

親父の答えは、楽と千棘のデートの様子を見守るためにほぼ全員が出て行った、だった。

 

そのデート、楽と千棘が進んで行くわけはない。

ならば簡単に想像がつく。クロードだ。クロードがセッティングしたのだ。

 

二人の本当の仲を確かめるため、クロードが罠を仕掛けたのだ。

 

 

(やばい…。そんなのすぐにばれるに決まってるじゃねえか!)

 

 

クロードもギャング組織の幹部。観察眼は相当のもののはずだ。

二人のあんな大根役者にも劣る演技力では騙せるはずもない。

 

特に、何をすればいいかはわからない。だが、陸は走る。

楽と千棘がどこにいるかだって皆目見当がつかない。それでも、何かしなければ…

 

 

(…待てよ?もしかしたら…)

 

 

ふと、陸は楽たちがいる場所の思い当りが浮かぶ。

 

いつだったか、楽と話したことがあるのだ。

もし女の子とデートするならどこへ行くのか、という話を。

 

楽は言った。

まず、おしゃれなカフェに行ってゆっくりと過ごし、お腹がすいたらレストランで食事。

その後映画を見に行って、後は…。

 

 

(公園…!)

 

 

そこからの陸の行動は早かった。

駆け出した陸は信号無視ギリギリを繰り返しながら、公園へと辿り着く。

 

恐らく、楽と千棘はここに来るはずだ。

ここで待っていれば、きっと…。

 

 

(て、もういる!?)

 

 

必死に走り回っている間に、かなり時間が経っていることに陸は気づいていなかった。

まあそれでも、楽がもうここにいることは予想がついていなかったのだが。

 

楽が言っていたのは、夕暮れ時の公園。今はまだ、日が高い。

何が起こったのかは知らないが、ベンチでぐったりとしている楽。千棘の姿が見当たらない。

 

 

(喧嘩でもしたのか…?だとしたら、まずくね?)

 

 

心の中でつぶやきながら、陸は辺りに視線を回す。

 

 

(…いる。そこの公衆トイレの影に三人。その木の影に四人。クロードは…、そこの草の影か)

 

 

どうやら、集英組だけでなくビーハイブの男たちもデートの様子を見に来ているようだ。

 

クロードはもちろん、他の男たちもどこか怪しげな視線を楽に向けている。

 

やはり、二人のデートは上手くいっていないようだ。

デート中にも関わらず喧嘩したのかは知らないが、上手くいっていないようだ。

 

 

(フォローしたいけど、ここで俺が出て行ったってな…。ん…?)

 

 

どうしようか陸が頭を悩ませていると、公園の道を歩く見覚えのある人影を見る。

 

 

(…嘘、だろ?何でこのタイミングで!?)

 

 

「あれ?一条君?」

 

 

陸が驚愕する中、その人物はベンチに座る楽に話しかける。

楽も話しかけてきた人物に目を向けて…、目を見開いた。

 

 

「お、小野寺!?何でここに!?」

 

 

「私は友達と買い物に来てその帰りなの」

 

 

驚愕する楽は、小咲がどうしてここにいるのか問いかける。

小咲は買い物から帰る途中だと言う。小咲の肩にかかったカバンの中は見えないが、それなりの量の物が入っているのがわかる。

 

 

(ど、どうする?楽がぼろを出すのは時間の問題だ。さすがにクラスメイトにばれるのはどうだ…?)

 

 

クラスメイトにばれるという事は、学校でも恋人同士の振りをしなければならなくなる。

それはさすがに二人が可哀想だ。

 

必死に頭を働かせる陸。

だが、陸の思考は次の瞬間、無駄になってしまうのだった。

 

 

「ダ~リ~ン!!お待たせ~~!!ゴメンね!?思ったより時間かかっちゃっ…て…えぇ~…」

 

 

千棘が、何を思ったのか迫真の演技を見せながら楽に近づいていく。

 

だが、状況がまずい。

 

 

「え…?え?」

 

 

「…」

 

 

「…」

 

 

小咲が戸惑いを見せる。楽と千棘は今の体勢のまま固まる。

 

 

(…止むを得ない。これは、もう行くしかないだろ)

 

 

陸はまわりの男たちに見られない様に草陰から道に出る。

そして、いかにもジョギングをしている風に駆けて楽たちに近づいていく。

 

 

「あれ?楽に桐崎さん。それに小野寺?こんなとこでどうしたんだよ」

 

 

ジョギングの演技を止めて楽たちの傍で立ち止まって話しかける。

 

 

「え…、一条君!?どうしてここに!?」

 

 

「ん、ジョギング。たまにここで運動したりしてるんだ、俺」

 

 

顔を赤く染め、驚きながら小咲が陸に聞いてくる。

本当はジョギングなどする気はないのだが、今この状況でこの嘘は仕方ないだろう。

 

そして、楽と千棘には悪いが…、嘘を続けさせてもらう。二人のためだ。

 

 

「おっと小野寺。この二人、今はデート中なんだ。邪魔しちゃ悪いから向こう行ってよう」

 

 

「え…え!?わぁっ」

 

 

陸はそう言うと、小咲の手を引いて走り出す。

 

小咲がついてこれるようにペースを落としてその場から走り去っていく。

 

背中に、恨めし気な楽と千棘の視線がビシビシぶつかる。

だが、気にしない。

 

 

(…二人のためだ。後で誤解は解いてやるから)

 

 

(手!手!私、一条君に手を引かれてる!)

 

 

それぞれ、まったく違うことを想いながら、陸と小咲は楽たちから離れていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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