一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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サブタイトル通り、文化祭の打ち上げの話です。


第37話 ウチアゲ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え~…、皆さん。月並みな言葉になりますが、文化祭、お疲れさまでしたー!」

 

 

「「「「「おおおおおおおおおおぉ!!!」」」」」

 

 

「色々言葉にしたいことはあるけど、待ちきれない奴もいるみたいだしな…。じゃあ皆、コップを持てよー!?」

 

 

クラス全員の視線の先に、立ち上がって皆を見回しながら挨拶をしている集。

集はテーブルに置いてあるコーラの入ったコップを持ち上げ、掲げながら言った。

 

集の言葉に従って、クラス全員が自分が頼んだ飲み物が入ったコップを持つ。

 

 

「じゃあ、さっきも言ったけど…。文化祭、お疲れさん!乾杯!」

 

 

「「「「「かんぱああああああああい!!!」」」」」

 

 

さて、これまでのやり取りで分かるとは思うが…。現在、陸たち一年C組は打ち上げパーティを行っていた。

文化祭終了した翌日、劇で使った資材を片づけてその夜に集が予約した店に集まってわいわい騒いでいた。

 

 

「おい一条!お前の演技マジで凄かったぞ!ホントに主役初めてやったのか!?」

 

 

「ゴリ沢…、それ昨日も言ったよな。初めてだよ」

 

 

当然、打ち上げには陸も参加していた。

陸の正面に座る強面男ゴリ沢が身を乗り出しながら聞いてくるが、どれだけ他の人には信じられなかったとしてもそれが真実である。

 

 

「けどよ、ゴリ沢の気持ちもわかるぜ…。同じクラスの俺達もマジで感動したもんな」

 

 

「あぁ。観客にも泣いてる人いたほどだぞ?」

 

 

「へぇ…。それは…、俺としても嬉しいな」

 

 

陸たちの劇の評判はものすごい勢いで学校全体に伝わった。

劇を見に来ていなかった生徒が、『あ、ロミオだ!』と廊下を歩く陸に言ってきた時は驚いたものだ。

 

陸は手に持っていたコップをテーブルに置いてから笑みを浮かべた。

 

劇に出演、それも主役をやった身としてはやはり良い評判を聞くと嬉しくなってしまう。

先程陸が浮かべた笑みも、自分から意識的に浮かべたものではなく思わずといったものだ。

 

 

「けどよ、一条も凄かったけど小野寺もやばかったよな?」

 

 

「あぁ…。どっちかっていうと目立つことを苦手にしてるイメージがあったけど…」

 

 

今度は陸から小咲についての話題に移る。

 

 

「小咲はやる時はやるからな。できて当然とは言わないけど…、それくらいできるんだよ」

 

 

ゴリ沢、そしてもう一人隣に座っていた佐藤が話している間に口の中に入れていた餅のベーコン巻を飲み込んでから陸が言う。

すると、ゴリ沢と佐藤が陸の方を見てにんまりと笑みを浮かべた。

 

 

「…何だよ」

 

 

いきなりニマニマし始めた二人に、陸は戸惑いを見せながら問いかける。

何かおかしい事でも言っただろうか?思い返すが、心当たりは考え付かない。

 

 

「お前さ…、小野寺と付き合ってんの?」

 

 

「…は?」

 

 

聞いてきたのは、正面のゴリ沢だ。陸は目を丸くして呆けた声を漏らす。

 

 

「あ、それ!俺も気になってた!」

 

 

さらに隣に座っていた男子。

 

 

「おい一条!お前ら兄弟そろって美人に手を出しやがって…!」

 

 

もう一方の隣の男子も。

 

 

「兄弟そろってっておいお前ら!」

 

 

さらに少し離れた所で女子に囲まれた楽が声を張り上げる。

 

 

「「「「「手を出してないとでも言う気か!?」」」」」

 

 

「い、言え…。…」

 

 

男子たちの問いかけに楽は口を噤んでしまう。

 

何故なら…、今、女子に囲まれて座っている楽に否定などできるはずもないのだから。

それも、いつもの面子(千棘たち)にである。

 

 

「やれやれ…」

 

 

基本、男子全員と仲が良い楽だが話題にほんの少しでも女子という項目が入ってくると一気に楽に向けられる態度は冷たくなる。

 

そして陸もまた、クラスの紅一点である小咲と親しい所為か、楽程ではないもののたまに冷たい態度を向けられることがある。

 

とはいえ、冷たい態度を向けてくるのは一部であり、ほとんどはゴリ沢や左藤の様にニヤついた笑みを向けてくるか暖かい目で見てくるかのどちらかなのだが。

 

今、顔を真っ赤にしている小咲を女子たちが微笑まし気に見守っているように。

 

 

「で、どうなんだよ一条。付き合ってんの?」

 

 

「付き合ってない」

 

 

ほとんどの男子が楽に憤怒の視線を送っている中、佐藤が結局小咲と付き合っているのかどうか聞いてくる。

陸はすぐに否定する。

 

決して、仲が良い事を否定するわけではないが断じて恋人関係ではないという事は断言する。

 

 

「え、マジかよ?」

 

 

「何でそんなに驚いてんだよ…」

 

 

陸が否定すると、佐藤が目を見開いて驚愕する。

 

 

「いや、だって…。え?お前、嘘ついてねえよな」

 

 

佐藤が信じられないと言わんばかりに問いかけてくる。

だが、何回聞かれても、問いかけられても事実は変わらないもの。

 

 

「ついてない。付き合ってないぞ」

 

 

嘘などついてはいない。表情を全く変えずに答える陸に、納得し切れてはいないように見えるものの佐藤は引き下がる。

 

 

「…ま、お前はそんな嘘つく奴じゃねえよな。あまり納得いかないけど」

 

 

「何でだよ…」

 

 

最後に納得いかないと口にして、そしてその言葉のままの感情を表情に浮かべながらからあげを齧って口に入れる。

 

陸は事実を言っただけなのに何で納得してくれないのか、と不満に思う。

それと同時に、付き合っていると思われるほど仲睦まじくしているだろうか?

 

 

「してる」

 

 

「心を読むなよ」

 

 

佐藤は読心術を使えるというのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

打ち上げが始まってから約二時間、もう少しで二時間が経つという所。

打ち上げもそろそろお開きという時間になった。

 

パーティが始まったのは六時半、現在八時二十五分。

打ち上げもそうだが、学生の身である以上そろそろ帰らなければいけない時刻である。

 

 

「じゃあそろそろラストオーダーにしますか!食べ物は時間的に難しいから、飲み物を頼みたい人は言ってくれー」

 

 

集が立ち上がり、皆から最後の注文を集計する。

陸も、打ち上げでの四杯目、さすがに四杯コーラを飲みたくはないためウーロン茶を頼んだ。

 

クラスメートたちも、飲み物を頼みたい人は集に言って、注文を聞き終えた集はスイッチを押して店員を呼び、皆から聞いた飲み物を注文する。

 

注文してから少し経ってから、集が注文した通りの種類と数の飲み物が届けられる。

集と他二人が注文した人に飲み物を配っていく。

 

 

「おう、サンキュー。いやぁ~しかし、どうせなら酒の一杯でも飲めば良かったかな~?」

 

 

「あほ」

 

 

初め、少し離れた所に座っていた男子生徒はいつの間にか陸の隣にやってきて、飲み物を仰ぐ。

そして陸も、バカなことを言った男子生徒に一言軽口を放ってからウーロン茶を仰いだ。

 

残り三分もないため、少し急いで飲み物を飲み干した陸。

他のクラスメートたちが帰る準備をし始めたため、陸も続いてズボンの後ろのポケットに財布があることを確認して立ち上がる。

 

 

「ひっく」

 

 

打ち上げ終了の名残惜しさを含んだ話し声が聞こえてくる中、その声とは異なる音が響き渡った。

クラスメートたちは静まり、その音の発生源の方へと目を向ける。

 

 

「…小咲?」

 

 

音の発生源は、小咲が座っていた方…、というより小咲そのものだった。

顔を赤くさせ、頭がフラフラと揺れ、明らかに異常な様子に戸惑いながら隣のるりが声をかけた。

 

 

「…るり…ちゃん?」

 

 

ぼう、と声をかけたるりを見つめる小咲。

何も口にせず、ただるりを見つめる小咲。

 

だが不意に、小咲がるりから視線をずらすと、陸と目が合った。

 

 

「あ~…、りくくんだぁ~…」

 

 

「っ?」

 

 

何だろう、小咲の声がいつもより色っぽく聞こえる。

陸を見つけた小咲は、ハイハイして陸の方へと近づいていく。

 

 

「ど、どうした?」

 

 

いつもとは明らかに違う様子の小咲に戸惑いを見せる陸。

 

 

「ねぇ、りくくん…。だきついて、いい…?」

 

 

「ぶっ」

 

 

「「「「「っ!!!!!!?」」」」」

 

 

陸の前に女の子すわりの体勢で止まった小咲の口から飛び出した衝撃の一言に陸は噴き出し、他のクラスメート全員は息を呑み、言葉を失くす。

 

 

「お、おいちょっと待て。これ、小野寺の飲み物!お酒だぞ!」

 

 

「は?い、いや…。小野寺のウーロン茶はちゃんと注文したぞ?」

 

 

すると、小咲たちの近くで飲み食いしていた楽が、小咲の飲んでいた飲み物を見てそれがお酒だと気づく。

だが集は小咲からウーロン茶を頼まれ、そして確かにウーロン茶を注文したのだ。

 

それにもし、数を間違えたとしてもお酒を頼むなどあり得ない。

 

 

「…店員が間違えたな」

 

 

「ねえ、りくくん…。だめ、なの…?」

 

 

「ダメ」

 

 

小咲の飲み物は店員が間違えたのだと悟る陸に、小咲が詰め寄る。

 

抱き付かせてと頼む小咲に、その度にダメと答える陸。

 

どこからどう見ても、どう考えても小咲は酔っているとしか思えない。

 

 

(けど、俺達学生として予約したんだぞ?何で酒なんか…)

 

 

「あ、あの!このウーロン茶と間違えてウーロンウィスキーを…あぁ!」

 

 

陸が小咲の相手をしていると、店員が慌てた様子で駆けこんできた。

そして、陸に寄りかかろうとしている顔真っ赤の小咲を見て、もうすでに遅かったと悟った店員。

 

 

「も、申し訳ありません!あの、ウーロンウイスキーを頼んだお客様がいて、その…」

 

 

「あぁ、もういいですから…。それと、持ってきたウーロン茶ですけど申し訳ないのですがお下げしてもらっていいですか?」

 

 

何度も謝罪する店員に、ウーロン茶を下げてもらうように言って下げてもらう。

 

 

「あ~…、とりあえずもう時間だし、店から出ようか」

 

 

集も戸惑いを隠せないまま、しかしこれ以上店にいるわけにもいかないため出るように皆に言う。

 

 

「ほら、立て小咲」

 

 

「んー…、だっこ…」

 

 

「宮本、頼む」

 

 

「え、えぇ…」

 

 

「むー、けちー」

 

 

だっこを断り、小咲をるりに託した陸は振り返ることなく店の出口へと向かった。

 

外に出ると、駐車場で固まって最後の談笑をし始める。

時間も時間であり、家が近くにない人は車で迎えに来てもらう。

 

で、ここでも小咲がやらかす。

 

 

「いやっ。りくくんといっしょにかえるの!」

 

 

「あのね小咲…。ここからじゃあなたの家と一条君の家は逆方向なのよ?わがまま言わないで」

 

 

「いやっ!」

 

 

陸と一緒に帰りたいと駄々をこねる小咲。るりが何とか宥めようと努力しているが、効果はない。

 

 

「あぁ、良いよ宮本。小咲は俺が送ってく」

 

 

「いや、でも…」

 

 

「ここから小咲の家まで五分くらいだろ?そのくらい大丈夫だ」

 

 

陸と小咲の家はここから逆方向ではあるが、小咲の家はここから近い。

そのため、陸は別に小咲を送っていくことに抵抗はないとるりに伝える。

 

 

「なら…、頼めるかしら。この娘もあなたじゃないと嫌って聞かないし…」

 

 

「了解。じゃあ楽、先に帰っててくれ」

 

 

「おう、気を付けろよ」

 

 

るりから小咲を預かって、腕を掴んだ陸は楽に声をかけてから小咲の腕を自分の肩に回して歩き始める。

 

背後から楽が声をかけてくるが…、夜道に気を付けろとしか聞こえないはずの言葉に、何か含まれているような気がするのは気のせいだと思いたい。

 

店の駐車場から出た陸と小咲は、小咲の家への帰路を進む。

あの店から小咲の家まで歩いて五分ほどだが、このペースだと十分くらいかかるかもしれない。

 

 

「…りくくん、おこってる」

 

 

「?何だよ急に」

 

 

すると、急に小咲が口を開いた。

 

 

「怒ってないぞ」

 

 

「うそ、おこってる」

 

 

「いや、だから…」

 

 

「おこってる!」

 

 

完全に酔っぱらっている小咲。

いつものお淑やかさが完全に失われてしまっている。

 

 

「…はいはい、怒ってるよ。確かに小咲は酒を飲んだんだろうけど、ジョッキを見たらほんの少しだったじゃないか、何でそこまで酔っぱらえるんだよ」

 

 

「うぅ…」

 

 

自分で聞いて、自分の考え通りの言葉を返されてへこむ小咲。

少し陸も、相手をするのを面倒くさく感じてしまう。

 

 

「…りくくん」

 

 

「…どうした?」

 

 

「…げき、せいこうしてよかったね」

 

 

再び陸を呼んだ小咲は、急にそんなことを言い始めた。

まだ舌足らずは変わっていないが、少しは酔いが覚めてきたのだろうか?そう思いたいが。

 

 

「そうだな。小咲の演技、凄かったぞ」

 

 

「へへ…、そうかな?」

 

 

にへら、とした笑みを浮かべながら陸を見上げる小咲。

 

 

「りくくんもすごかった…。さいごのばめん、わたしどきどきしたよ」

 

 

「そっか。なら演じた俺としても嬉しいことこの上ないな」

 

 

最後の場面は愛を確かめ合う場面。

演技で人をドキドキさせたという事は、それだけ演技に身が入っていたという事。

陸としてはこれ以上ない褒め言葉である。

 

 

「ねえ、りくくん…。ひとつききたいんだけど…、いい…?」

 

 

「ん?」

 

 

小咲の声のトーンが先程とは変わった。

声に真剣味が帯び、先程のようなじゃれついている感じが無くなっている。

 

 

「もし、わたしのさいごのせりふ…」

 

 

「…」

 

 

「もし…」

 

 

小咲は何が聞きたいのか、耳を傾ける陸だが…、最後にもしと口にしてから小咲は何も言わなくなってしまった。

 

 

「小咲?」

 

 

それだけでなく、小咲から伝わってくる重さが増したような気がするのだ。

陸は小咲の方に視線を向けて問いかける。だが、小咲は何も応えない。

 

 

「…寝てるし」

 

 

少し顔を前に出して小咲の顔を覗き込むと、両目は閉じられ、規則正しい寝息が立てられていた。

 

眠ってしまった小咲、このままの体勢では少し辛いものがある。

陸は小咲の体が地面に落ちないように注意しながら背に背負い、持ち上げた。

 

小咲をおんぶして、再び歩き始める陸。

 

 

「…おい小咲、一体何を聞きたかったんだよ?」

 

 

小咲が眠る直前、聞きたいことがあると言った。

それは一体何なのか、問いかけるが当然眠っている小咲が応える訳はなく。

 

 

「…お疲れ、小咲」

 

 

昨日は劇の緊張、今日は資材の片づけで労働。疲れてないはずがない。

 

陸は優し気に笑みを浮かべながら背中の上で眠る小咲に声をかけ、視界に見えてきた小咲の家へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おまけ

「あら?一条の坊やじゃない…っ!?きゃぁああああああ!小咲ちゃん、大胆なことしてる!!」

「あ、あの…。小咲さん寝てるので、少し静かにした方が…」

「これはもう決定?決定よね!?早速式の準備しなくちゃ!」

「…」

陸が小咲の家に着いたときの、小咲母とのやり取りである
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