一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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主人公が全く出ない場面を描くのがこんなに難しいと思わなかった…。
ということで、陸君は今回ほとんど出てきません。


2年生
第51話 フタゴト


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春。それは始まりの季節。暖かな風が桜の枝を揺らし、髪をくすぐる。

そんな四月──────私は今日から高校一年生です!

 

念願叶って家の近くの高校に合格…、今まさにこれから始まる高校生活に胸を膨らませている所です!

 

高校生ってどんな感じなのかな?

取りあえず、初日は空も真っ青で桜も咲いて…、何だか素敵な恋とか始まっちゃいそうです!

 

 

 

 

 

 

 

 

(なんて、思ってたのに…)

 

 

ルンルン気分で通学路を歩いていた少女の目の前には、下卑た笑みを浮かべたガラの悪い男たちが立っていた。

 

 

(なんだか初日から、大ピンチだよぉ~!)

 

 

顔を青くして、ぶるぶる震えることしかできない少女に男たちは話しかけていた。

 

 

「ねぇねぇお嬢ちゃん、高校生?可愛いねぇ~」

 

 

「学校なんかサボって俺らと遊ぼうぜ~?」

 

 

(あわわわわ…、どうしよぉ~…!)

 

 

さらに距離を詰めてくる男たちを見て、思わず少女は目を瞑ってしまう。

そんな少女に、怖がっているのを知ってか知らずか男の一人が少女の肩に触れた。

 

 

「ひぇっ…」

 

 

実はこの少女、中学時代は女子校に在学していたのだ。

確かに女子にとって恐怖を抱く状況とはいえ、ここまで過敏に反応してしまうのにはこういう理由があったのである。

 

 

(あっ…、だめだ…。いしきが…)

 

 

遂に、恐怖のあまりに少女はくらくら頭を揺らしながら意識を手放していく。

そして、目が真っ暗になる…その寸前だった。

 

 

「なぁ、女の子一人を囲んで楽しい?」

 

 

「あ?んだよてめぇ…」

 

 

ふらりと地面にしりもちをついて…、その衝撃のおかげか僅かに意識がはっきりした。

自分の前に立つのは、制服を着た少年。自分と同い年か、それとも少し上か。

 

 

「おいてめぇ、盾突くと容赦しねえぞコラ」

 

 

「お、おい待て…。こいつは…」

 

 

「あのさ、朝っぱらから何やってんだよ。こんな下らねえことしてねえで仕事しろよ仕事」

 

 

「あぁ!?んだよてめぇ!」

 

 

「や、やめろって!」

 

 

(だれ…?このひと、たすけて…)

 

 

何か男たちが少年を見て騒いでいるが、再び薄くなっていく意識のせいでよく聞き取れない。

 

 

「こいつ、あの集英の若頭だよ…。関わらねえ方が良いって…!」

 

 

「っ、ま、マジかよ…」

 

 

「お、おい。もう行こうぜ…」

 

 

もう、どうなったのかはわからなかった。

 

次に目が覚めた時、少女は──────

 

 

「え…、ここは…?」

 

 

白いカーテンに囲まれたベッドの上だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?王子様?」

 

 

目の前の、赤みがかった茶髪の少女が目を丸くして聞き返してきた。

 

 

「そーなの!私が絡まれてるときに颯爽と現れて、『女の子一人を囲んで楽しい?』て!すっごくかっこよかったんだよ!?」

 

 

「…それが待ち合わせをすっぽかした理由?私ずっと待ってたのに…」

 

 

「はうっ…、ゴメンね風ちゃん!まさかあんなことがあるなんて…」

 

 

他人からは全身からハートマークが出ているように見える少女に、風、彩風涼が苦笑を浮かべながら言う。

その言葉を聞いたもう一人の少女が、少しだけ涙目になって謝罪した。

 

この少女、当初は風ちゃんと共に登校する約束をしていたのだが、今朝のあの件のせいでその約束を守ることができなかったのだ。

さらに風ちゃんはいつまで経っても来ない少女を待っていて…、少女の心は先程と打って変わって罪悪感で一杯になってしまった。

 

 

「ううん、春が無事でよかった…。でも春?顔も見てないし、名前もわからないんでしょ?また会えるかな?」

 

 

「会えるよきっと…!ここの制服着てたし、この学校にいるのは間違いないもん!それに、手掛かりもあるし…」

 

 

春と呼ばれた少女が、意識を失う直前に記憶できた少年の姿を思い出しながら言う。

確かに、あの少年が来ていたのは凡矢理高校の学生服だった。つまり、この学校の生徒なのは間違いないはず。

 

 

「あ…、もう少しお話聞きたかったけど、もうすぐチャイムが鳴るね…」

 

 

「え?もうそんな時間…、じゃあ私、席に戻るね」

 

 

いつの間にそんな時間になっていたのか、春は急いで自分のカバンを置いた席に着く。

そして、この教室に入った時にはいなかった銀髪の少女が隣に座っていることに気付く。

 

 

「こんにちは!私この席なんだけど、お隣さんですよね?どうぞよろしく…」

 

 

春がいる方とは逆の方に目を向けていた銀髪の少女だったが、自分に声をかけているのだと気づき、振り返る。

そこで、春は少女の金の目を見て悟った。

 

この少女、外人である。

 

 

「あ、あの…。お名前は…?」

 

 

「ポーラ。ポーラ・マッコイ」

 

 

ポーラ…マッコイ。

 

何故かはわからないけど、マッコイとは呼ばない方が良い気がする春。

少し失礼かもしれないが、名前で呼ぶことを決意した。(その決意、正解である)

 

 

「よろしくね、ポーラさん!私は…」

 

 

「名乗らなくていいわ。別に覚える気ないから」

 

 

「…え?」

 

 

そして、春も自分の名を名乗ろうとしたのだがその前にポーラに制止されてしまう。

 

 

(え…、今の態度はちょっと冷たすぎるんじゃ…。何か他人と関わりたくない理由でもあるのかな…?)

 

 

ポーラの態度に一瞬、気を悪くしかけた春だったがすぐに何か理由があるのではと疑問を持つ。

 

 

「あ」

 

 

「…え?」

 

 

だがその直後、ポーラの気の抜けた声と同時に床にごとりと落ちる二つの丸いもの。

春は、目をまん丸くしてその落ちた丸いものを見つめ、ポーラは「失礼」と声をかけてから何の動揺も無くその丸いものを拾う。

 

 

(あ、あれ?さっき落ちたのって手榴弾だよね?しかも偽物とは思えない重量感だったけど…え!?)

 

 

このポーラという少女、実はすごく怖い人なのでは?と思ったところで春はハッと我に返る。

 

 

(そうだ…。怖い人といえば、私、大事なことを忘れる所だった!私、朝に助けてくれた人の他にも必ず探し出さなきゃいけない人がいるんだった!)

 

 

膝の上に置いた両手をギュッと握りしめて春は改めて決意する。

 

 

(必ず、見つけ出さなきゃ…!)

 

 

と、波乱の朝を乗り越えた春は初めての高校の放課後を迎えた。

春は、担任の先生に言われ、あるプリントを運んでいたのだが…。

 

 

「きゃっ!」

 

 

「あ、悪ぃ」

 

 

その途中、廊下を歩いてた男子とぶつかり持っていたプリントを落としてしまった。

 

 

(も、もー!何よ今の男子…)

 

 

謝罪を一言くれたことはまだいいが、まず前を見て歩いてほしい。というより、プリント拾うのも手伝ってくれないとは。

春はため息を吐きたい気持ちを抑え、散らばってしまったプリントを拾い集める。

 

 

「大丈夫か?」

 

 

「え?」

 

 

すると、プリントを集める春の背後から男子の声が聞こえてきた。

 

 

「す、すみません。何か手伝ってもらっちゃって…」

 

 

「いいって、ただのついでだし」

 

 

そして今、春は先程声をかけた男子と並んで歩いている。

二人の手元にはプリントがある。先程、隣の男子はプリントを拾うのを手伝ってくれ、さらに一緒に職員室へ運んでくれているのだ。

 

春は改めてその男子の顔を見る。

俗に言うイケメンではないが、顔立ちは整っていると思う。ちょっとはねた癖っ毛に、こめかみ辺りには十字の髪飾りが着けられていた。

 

 

(…今朝の人と似てるかな?でも…、まさかね)

 

 

朝、助けてくれた人と似ているような気がするが、まさかこんな簡単に出会えるとは思えない。

春は浮かんだ考えを振り切って、それよりも優先するべき、少年へのお礼を言おうと口を開いた。

 

 

「おーい一条!キョーコ先生が探してたぞー!」

 

 

「おう、サンキュー!すぐ行くわ!」

 

 

「!?」

 

 

一…条?

 

今、廊下を歩いた男子生徒は隣の男子生徒を一条と呼んだ?

そして、隣の男子生徒はそれに返事をした?

 

 

「…あの、つかぬことをお聞きしますが。この学校に一条という苗字の方は他にも?」

 

 

「え?いや、俺の他にもう一人いるけど…」

 

 

「え…、あ、そうですか…」

 

 

その返答を聞いて、春はふぅと息を吐いた。

もし、この人が…、あの人だったら…。お礼を言うどころの騒ぎじゃなくなっていた。

 

 

「そういえば先輩、二年生とおっしゃいましたよね?それにさっき一条という人は二人いるって…」

 

 

「ん?それがどうかしたのか?」

 

 

「実は私、二年生にいるある人を探してまして…」

 

 

そこで春は思い出した。プリントを拾う途中で、この男子生徒は二年生だと言っていたことを。

そして、この男子生徒は一条という人は自分の他にもう一人いると。

 

 

「私、一条楽という人を探してるんです。それで、先輩にその人が誰なのか教えてほしくて…」

 

 

「え?一条楽は俺だけど…」

 

 

「え───────」

 

 

春のまわりだけ、空気が凍りついた。

 

 

「あ、あなたが一条楽先輩?」

 

 

「あぁ」

 

 

「あのヤクザ集英組の息子の?」

 

 

「お、おう」

 

 

「超絶美人の彼女がいるにも関わらず、多数の美人を侍らせているという噂のあの?」

 

 

「待て待て待て!何だよその噂!」

 

 

「ひぃっ!近寄らないでください!」

 

 

男子生徒…一条楽が詰め寄ってくる。春は思わずプリントを投げ出して勢いよく後ずさる。

 

 

「はっ…!じゃあまさかさっきのも…、さっき私に優しくしてくれたのも、女の子に取り入る手口の1つだったんですね!」

 

 

「い、いや…、あの…」

 

 

「ひどい!優しい人だと思ってたのに!」

 

 

「話を…聞いて…」

 

 

再び、一条楽がこちらに歩み寄ろうとするのを春は睨んで止める。

 

 

「私、あなたに一つ言っておくことがあるんです!」

 

 

そう、この一条楽に会ったら必ず言おうとしていたこと。

 

 

「これ以上、私のお姉ちゃんに…」

 

 

その言葉を、言おうとした。

 

だが、直後窓から流れてきた強い風によってそれは遮られてしまった。

 

その風は、ピンポイントに春に当たり、周りのプリントと共に春のスカートを巻き上げてしまったのだ。

 

慌ててスカートを押さえる春。顔を赤くして、視線をそっぽに向ける楽。

 

 

「…見ました?」

 

 

「…高校生になってクマさんはないかと」

 

 

頭が沸騰した。

 

 

「サイッッッッテー!!ホントサイテーです!この女の敵ー!!」

 

 

正直、自分でも何をしたのか覚えていない春。

だが楽の頬に赤い手形が付いているのを見る限り、自分は楽に力一杯ビンタをしたのだろう。

 

…グッジョブ、私。

 

 

「一条君、どうしたの?」

 

 

「お、小野寺?」

 

 

すると、楽の背後から聞こえてくる聞き馴染みのある声。

楽の背後を覗き込めば、そこには自分にとって馴染み深く、大切な家族の姿が。

 

 

「お姉ちゃん!」

 

 

「あれ、春!?どうしてこんなとこに…」

 

 

「お姉ちゃん安心して!私が来たからにはもう大丈夫だから!!ね!?」

 

 

「お、お姉ちゃん…?」

 

 

現れた姉、小咲に駆け寄り、両手を握って言い聞かせる春。

そして、背後で呆然としている楽に振り返り、両手を広げて春は言い放った。

 

 

「私は小野寺春。小野寺小咲の妹です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい一条弟ー」

 

 

「あれ?キョーコ先生、どうしたんですか?」

 

 

「いやー、一条兄が中々来なくてよー。悪いけど、ちょいと頼まれごとしてくんないかな?」

 

 

「…楽の尻拭いですか」

 

 

「兄を恨むんだな」

 

 

キョーコ先生に声をかけられた陸は、はぁ、と大きいため息を吐く。

 

 

「わかりました。で、頼まれ事って何ですか?」

 

 

「おう。実はウサギのエサがいつもより早く少なくなってたんで、補充に行ってほしいんだわ」

 

 

うわ、飼育係じゃない俺が何でそんなことしなきゃいけないんだ。

 

キョーコ先生の頼まれ事を聞いた陸の、率直な感想である。

楽の手伝いで飼育小屋に行ったことは何度かあるが、一人で飼育係の仕事をするのは初めてである。

 

 

「…わかりました。で、そのエサはどこにあるんですか?」

 

 

「エサは飼育小屋の近くにある倉庫の中だ。いやぁ、悪いな、クラスは別になったってのに」

 

 

「別にいいですよ。先生にはお世話になりましたし」

 

 

「お、嬉しいこと言ってくれるねぇ。じゃ、頼んだぞー」

 

 

去っていくキョーコ先生の後姿を見るのは一瞬。

すぐに陸は飼育小屋に行くために玄関へと向かう。

 

 

(…しかし、他の皆は同じクラスだってのに俺だけ違うクラスか。ちょっと凹むな…)

 

 

先程の会話でもあった通り、陸のクラスの担任はキョーコ先生ではない。

さらにそれだけではなく、キョーコ先生の担任から外れたのがいつもの面子の中では陸だけなのだ。

 

クラス分けというイベントがある中、いつかはそういう事はあると覚悟していたことなのだが…、自分以外は皆同じクラスというのは少しグサッとくるものがある。

 

 

(しかし、あの小咲の様子はどうかと思うけどな…。まぁ、何だかんだ皆ずっと一緒だったからな。ショックを受けるのも無理ないか)

 

 

楽、小咲、千棘、万里花、鶫、集、るりの名前はあって、陸の名前だけがないと知った時のあの小咲の真っ白な顔を思い出しながら陸は飼育小屋の倉庫へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(はぁ…、もう最悪。朝はあんなに楽しみだったのに、どうしてこうなっちゃったんだろ…)

 

 

あれから、小咲の他にも超絶美人の彼女にもう一人、楽が従わせていると思われる美人さんが現れさらに騒動は混沌化した。

 

まぁ、スカートの中を見られたことをカミングアウトし、直後に彼女に殴り飛ばされる楽を見て少しだけスカッとしたが。

 

 

(もう…。お姉ちゃんはどうしてあんな人のことを好きになったんだろ…?…何とか思い止まらせなくちゃ)

 

 

正直、ただ一条楽という人物がいるだけならば春は接触を取る気はなかった。

だが、その一条楽に小咲が惚れているというのなら話は別だ。

 

 

『うん、それでね?一条君がね?』

 

 

あの時の姉の恥ずかしげな笑顔を春は簡単に思い出せる。

 

 

『な、なに言ってるの春!?』

 

 

入学前に、姉に好きな人は一条という人なのかと問いかけた時の姉の真っ赤な顔もすぐに思い出せる。

 

だが、今日、あの一条楽と出会って改めて分かった。

姉からあの人を引き離さなければならない。そうでなければ、絶対に姉は後に悲しい思いをすることになる。

 

 

(でも…、お姉ちゃん信じてくれなかったしな…。どうしたらいいんだろ…)

 

 

どうやって、姉に一条楽の本性を教えてあげればいいのか悩んでいたその時、春の目に掲示板に張られた一枚のプリントが入る。

 

 

(飼育係…)

 

 

その掲示板には部活勧誘のポスターが張られていて、その中で春は飼育係の一枚に目が引かれた。

 

頭の中で想像する。可愛らしい動物たちに囲まれる自分の姿を。

 

 

(…良い)

 

 

春はその紙に書かれた地図の通りに歩き、飼育小屋へとやってきていた。

だが、そこで見たのは…

 

 

(何で…、あの人がここにいるの!?)

 

 

先程別れたはずの一条楽によく似た後姿だった。

 

 

(もうっ、何で今日はこうもあの人に振り回さなきゃならないの!?はぁ…、帰ろ)

 

 

「今日は小咲、来ないみたいだなぁ」

 

 

「っ」

 

 

心の中で絶叫し、飼育小屋に背を向けて帰ろうとした春の動きが止まる。

 

今、あの男は何と言った?

自分の姉を、何と呼んだ?

彼女がいる癖に…、他の女の子の下の名を平気で呼んだ?

 

 

「サイテーですね…」

 

 

「へ?」

 

 

気付けば春は、その男の背後まで来ていた。

そして吐き捨てた声に、目の前の男が振り返る。

 

 

「あんな美人の彼女がいながら、私のお姉ちゃんに手を出してたんですか?」

 

 

「彼女?あの、何か勘違いしてない?」

 

 

「何が勘違いですか!誤魔化そうとしたって無駄…です…よ?」

 

 

そこで、春はふと気づいた。

確かに目の前の男は一条楽によく似ているが…、どこか違う雰囲気がある。

それに、一条楽が着けていた十字の髪飾りをこの男は着けていない。

 

 

「…一条楽先輩、ですよね?」

 

 

「え、君、楽と知り合い?」

 

 

目の前の男が、目を丸くして問いかけてくる。

 

 

「あ、あの…」

 

 

「残念だけど、俺は楽じゃないよ。俺の名前は一条陸。楽の双子の弟だから」

 

 

笑みを浮かべて言う男を、まじまじと見つめる春。

確かによく似ているが…、どちらかというこっちの方がカッコいい。

それに、一条楽よりも髪の毛の癖がないように見える。

 

 

「ふ、双子!?」

 

 

だがそれよりも、あの一条楽に双子がいることに驚いた春。

そして直後、春の頭の中で色々な謎が氷解していく。

 

まず、プリントを運んでいた時に一条楽が言った一条はもう一人いるという言葉。

あのもう一人の一条とは、この一条陸の事なのだろう。

 

そして次は先程の一条楽を囲んでのやり取り。

自分のパンツが見られたとカミングアウトした時の小咲の反応である。

あの時、姉は一条楽に殴りかかろうとした彼女を苦笑を浮かべながら止めようとしていた。

 

…普通なら、思い人が他の女の子のパンツを見たと知ったら少しくらいショックを受けるものではないだろうか。

それなのに、姉はどこか微笑ましいものを見るような目であのやり取りを見ていて。

 

 

(もしかして、お姉ちゃんの好きな人って…)

 

 

目の前には先程の笑みを浮かべたまま、じっと見つめてくる春を見返して首を傾げる目の前の一条陸と名乗った男。

 

 

(こっち…?)

 

 

そして、察する。

 

色々と、自分は勘違いしていたのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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