一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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四文字縛りが大変だ…。

それと、勘違いしてほしくないのでサブタイトルについて補足を…。

正確には、<ジコマンゾク>です。
四文字縛りなので、後半の四文字だけを取っていますが…。


第56話 マンゾク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前は、何だか一人だけ大人だなぁ』

 

 

高校に入ってすぐの事だった。

 

いつもの通り、下校しようとしていた時。背後から声をかけられた。

 

振り返れば、そこにいたのは自分の担任になった女性の先生。

確か、日原先生…だっただろうか。本人は、キョーコ先生と呼んでくれと言っていたはず。

 

 

『ちゃんと青春しろよ?』

 

 

いつも、他の人よりも一歩後ろにいた。

周り全体が見れるように。誰か困っている人を、すぐに見つけられるように。

 

そのおかげで、ある兄弟を助けられた。その兄弟との、大切な絆ができた。

不満はない。ただ…、どこか物足りなさを持っていたのかもしれない。

 

その事を、目の前の先生はすぐに見抜いたのだ。自分でも気が付かなかったことを。

 

この瞬間から、自分は先生のことを目で追うようになっていた。

 

最初はただ少しに気になった程度だったのが、だんだん変わっていく。

目で追うだけだったのが、いつしか自分から積極的に先生に話しかけるようになり…。

遂には、先生の仕事を自分から手伝いに行くようになっていた。

 

先生といることがとても心地よくて、とても楽しくて。

 

それは、舞子集が日原教子へ恋に落ちた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

陸と楽は、屋上で立っている集の後ろで、彼の後姿を眺めていた。

キョーコ先生の結婚の件について聞いてから、毎日屋上に来ている集。

 

 

「…明日だな。先生が退職すんの」

 

 

「…そうだな」

 

 

楽が話しかけるも、返ってくる返事にいつもの陽気さはない。

先日、二人が集の恋について知った時から、この三人でいる時だけ集は少しだけ仮面を外す。

 

 

「…お前は、いつも俺の恋を応援してくれてたよな」

 

 

そんな時、ぽつりと楽が呟いた。

 

 

「小三時に告白しようとした時や、振られた時。小六ん時にまた好きな人ができた時に相談したのもお前だった。…まぁ、あんまり応援とは言えない行動も多々あったが」

 

 

「まぁまぁ」

 

 

今、楽に本気で好きになっている人はいない。だが過去にそういう人はいた。

そんな時、集は必ず応援してくれていたのだ。

 

 

「だから俺も、お前を応援するよ」

 

 

「…」

 

 

ちらりとだが、集が振り返った。

 

楽は自分がクサい事を言っている自覚はあるのか、恥ずかし気に少しだけ頬を染め、集から視線を外して続ける。

 

 

「お前が何も言わずに先生を見送るなら、何も言わねえことを応援する。俺にできることはそれしかねえからな…。だからよ…、先生が行っちまったら…飯奢ってやる」

 

 

集に歩み寄って、隣で柵に寄りかかって言い切った楽を、ぽかんとした様子で見る集。

だがすぐに穏やかな笑みを浮かべた集は、ぽつりと言う。

 

 

「…サンキューな、楽」

 

 

この時、二人のやり取りを眺めていた陸。

心の中で、あれ?俺空気になってね?と、呟いたがそこは陸。しっかりと空気は読む。

 

 

「あれ~?陸君は俺の事応援してくれないのかなぁ~?」

 

 

読もうと、したのだが。振り返った集が、屋上を出ようとした陸に悪戯気な声をかける。

 

ぴたっ、と動きを止めた陸は直後すぐに振り返り、集へと駆け寄るとその背中に張り手を入れる。

 

 

「いっ…!」

 

 

「応援するに決まってんだろうが!お前がどんな行動を取ろうとしても、俺は応援するぞ!?」

 

 

張り手を受け、涙目になった集に陸は自分の気持ちを言う。

 

集は気づいただろうか?陸の言ったこの言葉の意味を。

 

どんな行動を取ろうとしても、俺は応援すると言った、陸の言葉の本当の意味を。

 

 

 

 

 

 

 

翌日。迎えた、キョーコ先生の最後の登校日。

それでも、生徒たちはいつも通りの生活を強いられる。

 

授業を受けて、休み時間を過ごして、また授業を受けて。

 

放課後、陸はC組の生徒たちと一緒に職員玄関へ行っていた。

キョーコ先生の見送りをするためである。

 

 

「おー、一条弟も来てくれたのかー。嬉しいぞー。なんせ、お前の薄情な兄は来てくれなかったからなー」

 

 

「今までお世話になりました。…兄にはしっかり言い聞かせておきます」

 

 

最後に、互いにニヤリと笑みを向け合って、陸は挨拶を終えた。

 

キョーコ先生は他の生徒たちとも挨拶を交わし、最後に一人、生徒たちを代表した女子から花束を受け取って校舎を去っていった。

 

キョーコ先生の姿が見えなくなるまで、手を振り続けた陸たちは今、それぞれの用事がある場所、または教室へと散り散りに戻っていた。

 

 

「行っちゃったね…、先生…」

 

 

「そうだなー」

 

 

そんな陸の隣には、小咲がいた。

キョーコ先生がいなくなるということが寂しいのだろう。その声にいつもの明るさはない。

 

 

「でも…、先生も言ってたけど一条君どこに行ったんだろうね?舞子君もいなかったし…」

 

 

「…」

 

 

楽がどこにいるのかはわからないが、集のいる場所なら簡単に思いつく。

きっと今頃、屋上でキョーコ先生の歩く姿を眺めているのだろう。

 

あそこなら、玄関からよりも長くキョーコ先生の姿を見ることができる。

そこで、気持ちの整理を付けようとしているのだ。

 

 

(…本当にそれでいいのかよ)

 

 

昨日、陸は言った。どんな行動を取ろうとしても、応援すると。

しかし、陸としては集に自分の思いをキョーコ先生に打ち明けてほしかった。

 

そういう気持ちを乗せて、あの言葉を言ったのだが…、やっぱりわかりづらかっただろうか。

それとも、分かった上でそれを選択したのだろうか。

どちらにしても、陸が集にしてほしいことを強制する権利などない。

 

心がモヤモヤとして、納得はできないが…。集がそれを選んだのならただそれを応援するだけだ。

 

 

「あれ…、舞子君?」

 

 

だから

 

それを見た時は本当に驚いた。

 

小咲の声にはっ、と顔を上げて見ればそこにはこちらに全力で疾走してくる集の姿。

額に浮かぶ汗などお構いなし。歯を食い縛って、必死に力を込める。

 

 

「集!」

 

 

「…」

 

 

二人が目を見合わせた瞬間、同時に笑みを浮かべ合う。

そして陸は、右腕をそっと挙げた。

 

すれ違う瞬間、集が思い切り陸の掌をぶっ叩いた。

 

ハイタッチとは言いづらい、だが確かに陸のエールは集に届いた。

 

 

「いってぇぇ…。ちょっとは手加減しろよな…」

 

 

「だ、大丈夫?」

 

 

しかしいくら何でも力を込めすぎだ。

集に叩かれた掌がジンジンと疼き、痛いのか痒いのかよくわからない感覚が襲う。

 

目の前の光景に、戸惑いながらも手を押さえる陸を気遣う小咲。

 

 

「あぁ。…小咲、急用ができた。ちょっと行ってくるな」

 

 

「え…。あ、陸君!?」

 

 

小咲の声が背後から聞こえてくるが、今はそれ所ではない。

 

 

(悪いな小咲。でもさ…、ここは行ってやらなきゃダメだろ!)

 

 

生徒玄関で靴を履き替えて、外で雨が降っているのを見た。

天気予報を聞いて、念のために持ってきておいた傘を傘立てから取り出したところで、陸はもう一人、外に出ようとしている人物を見た。

 

 

「楽…」

 

 

「陸、お前もか?」

 

 

傘を差して、外に踏み出そうとした楽が振り返って問いかけてきた。

 

その楽の問いかけに、陸は頷いて答える。

 

 

「…行こうぜ」

 

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

結論から言えば、集は振られた。

それも当然だろう。何せ相手はこれから結婚しようとしている女性だ。ここで告白を受ける方が逆に驚きだ。

 

キョーコ先生を乗せたタクシーは行ってしまい、しばらくの間ずっと集はその場で立ち尽していた。

 

激しく降りしきる雨は、少しずつ弱くなっていって…、遂には雲の切れ間から陽の光が射しこむようになっていた。

 

 

「…お節介が過ぎたか?」

 

 

「…いや」

 

 

雨が止み、傘を閉じた陸と楽。

そして楽がぼうっと立ち続ける集にそっと問いかける。

 

短く、小さな声で返した集。その集の声は、先程よりもどこか吹っ切れているような感じを受けたのは気のせいではないだろう。

 

 

「…なぁ楽。約束…、たこ焼き奢ってくれよ」

 

 

陸たちはそのまま学校にも戻らず、近くにあった屋台でたこ焼きの入ったパックを二つ買って食べていた。

 

 

「…何で陸の分まで金を払わなきゃいけないんだ」

 

 

「気にすんなよ、小せえ男だな」

 

 

「気にするに決まってんだろーが!」

 

 

集と飯を奢る約束はしたが、陸とはそんな約束をした覚えはない。

なので楽は憤慨しているのだが、陸に言われたセリフを聞いてさらに憤慨した。

 

 

「いいじゃねえか楽。ちょっとくらい気にすんなよ」

 

 

「…くっ」

 

 

つい先程、傷心したばかりの集に言われてしまってはもう言い返すことは出来ない。

ここはぐっと耐えて、楽は自分が買ったタコ焼きに舌鼓を打つことにする。

 

 

「集、帰りはファミレス寄ろうぜ。当然、楽の奢りで」

 

 

「お、いいねー」

 

 

「良くねえ!」

 

 

我慢すると決めた楽だったが、さすがにこればかりは聞き流すことは出来なかった。

 

集は良い。集は良いのだ。だが陸、てめえは駄目だ。

 

楽は目だけで陸にそう伝える。陸はその意を受け取ったのか、表情を不満気に歪めた。

 

 

「んだよ、小せえ男だな」

 

 

「小さくてもいい。この際もうそんなことどうでもいい。ファミレスに行くんなら自分で金を出せ」

 

 

「最低だな楽。おい集、こいつお前との約束破ろうとしてるぜ」

 

 

「陸の話だよ!集はちゃんと奢るっての!」

 

 

陸と集が顔を近づけ、ショックを受けているような表情を向け合っているが、口が悪戯気に歪んでいることに楽は気づいていた。

 

 

「ちぇっ」

 

 

陸が舌打ちしているが、もう楽は構わない。

お前に買ってやるのはそのタコ焼きだけだ。

 

 

「…さて、こうして俺は告白して見事に振られたわけだが。お前らはどうなんだ?」

 

 

「?」

 

 

「どうなんだって…、何がだよ」

 

 

口の中でタコ焼きを咀嚼していた集が、口の中の物を飲み込んでからそう口にする。

陸は首を傾げ、楽は集に聞き返す。

 

 

「恋だよ恋。楽はずっと桐崎さんと恋人の振りをしているわけだが、何か心境に変化はあったりしないの?」

 

 

「…ねえよ、んなもん」

 

 

嘘だ。

 

瞬時に陸と集は察する。

少なからず、千棘と出会った当初に向け合っていた侮蔑は、今ではすっかり無くなっているはずだ。

それが恋とつながってるかどうかはまだ定かではないが、楽の千棘に対する気持ちは間違いなく変わっているはず。

 

 

「で、陸は?」

 

 

「俺は…、特にないよ」

 

 

「ホントに?」

 

 

次に集の照準は陸へと移った。

陸はすぐに無いと答えたのだが、集は笑みを浮かべてさらに問いかけてくる。

 

 

「…何だよ集。やけに喰い付いてくるじゃん」

 

 

「いや?ただ陸の恋模様に興味があっただけなんだけど…、そっかぁ、何もないのかぁ~」

 

 

こいつ…

 

心の中で集に悪態をつく陸。

間違いない、こいつは察している。

 

 

「…まぁ、俺もお前の選択を応援するよ。でも…、もしお前が後悔しそうなことをしようとしたら、楽が俺にしたようにケツを蹴飛ばしてやるから」

 

 

「っ…」

 

 

駄目だ。完全にばれている。

集の言った言葉を借りるが、幼なじみと言うのは本当に恐ろしいものだ。

 

…兄弟は全く気付いていないというのに。

 

 

「おい楽、ちょっと面貸せ」

 

 

「え?いや、何で?はい!?り、陸さん!?何でそんな般若のような表情をしていらっしゃるのでしょうか!?」

 

 

「黙れ。お前のせいで俺に厄介ごとが舞い込んできたんだ。お前のせいで」

 

 

「何で二回言ったの!?ていうか俺、何もしてないだろ!?」

 

 

陸と、襟を掴まれ引きずられていく楽を眺める集は、そっと空を見上げていた。

 

 

(やれやれ…。ま、俺の趣味じゃないやり方だったけど、すっきりはしたから結果オーライ、かな?)

 

 

心の中で呟き、集はいつの間にかすでに百メートル離れた所まで行っていた陸と楽を追いかける。

 

 

「おいおいチミ達、歩くのが速すぎだよー」

 

 

まだ、傷は残っている。

でも少なくとも普段と同じように振る舞えるくらいには楽になった。

 

だから集は、自分のではなく親友二人の恋模様に思いを馳せることにする。

特に片割れ…、弟の方は目を離したらすぐに後悔する方に行ってしまいそうだから大変だ。

 

 

(…次の恋は、当分先でいいや)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




集の心境、上手く書けているといいのですが…。
原作でも、いつもはバカなのでこういうシリアスの方では上手く動いてくれない…。
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