一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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最近のペースと比べると間が空いてしまいました。
理由は、他の小説を投稿していたのと、試験があったことです。

まぁ、試験は比較的楽でどちらかというと前者の方が大まかの理由なのですが…。








第66話 オネガイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春が巻き込まれた事件から、三週間。特に事件も起きず、陸はいつも通りの生活を送っていた。

それでも、強いて上げるならば…、万里花から楽が預かったオウムだろう。

何でもそのオウムは楽様という名前を付けられており、エサをあげるのにも色々やらなければいけないことがあったり、次の日の朝、気づけば逃げ出していたり。

逃げたオウムを探すのに陸も駆り出されることとなり、大変だった。

 

まぁ…、結局、陸の手は必要なくなって、その上、楽がとんでもなく恥ずかしい目に遭うことになって。

それを見ていた陸はとんでもなく大爆笑していた。

 

さて、そんなごくごく普通(?)の日々が過ぎ、今日。

 

 

「ほぉ~。七夕大会なんてもんがあんのか」

 

 

顎から伸びる髭を撫でながら、一征が呟く。

 

 

「あぁ。まぁ大会っつっても勝負事はやらないで、ただでっけぇ笹に自分の願いを書いた短冊をぶら下げるだけなんだけどよ」

 

 

一征の呟きに、楽が返す。

 

今、楽と一征が話していたことは、明日に凡矢理高校で行われる七夕大会についてだ。

だが、楽が言った通り、大会といっても別に勝負事が行われるわけではない。

笹に自分の願いを書いた短冊をかける。まぁ、幼稚園でやる七夕のイベントを盛大に行うだけだ。

 

 

「…ん?そういやぁ、高校の笹の納品は確か…」

 

 

すると、一征が目を斜め上にやりながらふと口を開く。

 

 

「あの神主が用意してたはずだなぁ」

 

 

「誰だよ、あの神主って?」

 

 

一征の口から出てきた、あの神主というものに疑問を持った陸が問いかける。

 

 

「おぅ、あの時陸は俺と一緒に新年の挨拶に来る奴らを相手してたんだっけな。楽は覚えてるだろ?正月に世話になった神主」

 

 

「…あぁ!え、笹を用意してくれるのってあの神主さんなのか?」

 

 

一征に聞かれ、楽は思い出したようだ。

だが、その神主と会ったことがない陸は二人の話についていくことができない。

 

 

「だから、誰なんだよ。その神主って」

 

 

「あぁ。正月に神社の掃除を手伝いに行ってさ。そこの神主さんをやってるお婆さんが、凄腕の霊媒師なんだよ」

 

 

「霊媒師ぃ?」

 

 

「いや、信じられないかもしんねえけどよ。マジであの人の能力凄かったんだぜ?」

 

 

元々、幽霊や超能力を全く信じていない陸。さらに、実際にあったことがないというのも相まって、不信感を抱いた陸はじと目で楽を睨む。

 

 

「まっ、信じらんねえのも無理はねえわな。仕方ねえよ」

 

 

じと目で見る陸と、神主について説明を続ける楽を眺めながら一征はふっ、と笑みを浮かべながら言う。

 

 

「さ、てめぇらはさっさと寝な。特に楽は、明日は早ぇんだろ?」

 

 

「あっ!そういや明日は、朝のエサやり頼まれてんだ!」

 

 

「俺は手伝わんぞ」

 

 

一征に指摘された楽が、明日の朝にやらなければいけないことを思い出す。

 

そして陸は、そんな楽が次に何かを言おうとする前に先回りして言い放つ。

 

 

「ぐっ…、し、しょうがねぇ…。明日は俺一人でやるか…」

 

 

「しょうがねえじゃねえだろ。大体、俺は飼育係じゃねえんだぞ。元々手伝う義理はないんだよ」

 

 

陸と楽が言い合いしながら、障子の方へと足を向ける。

 

 

「じゃあ親父、俺達はもう寝るわ」

 

 

「いや、俺はまだ寝る気はないけど…。まぁおやすみ」

 

 

「おう、おやすみ」

 

 

楽が障子を開け、陸が部屋から出て、その次に楽が出て障子を閉める。

 

すぐに陸と楽は部屋へと戻り、楽は寝て、陸はテレビの電源を付け、そしてコードが繋がったゲーム機の電源を入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。前日話した通り、凡矢理高校では七夕大会の準備が進められていた。

外では教師や職員たちが笹を運んでおり、校舎の中では生徒たちが配られた短冊にそれぞれの願いを書いていた。

 

 

「しかし、願いっつってもなぁ~…」

 

 

「何だよ一条、まだ悩んでたのか?こんなの適当に浮かんだのを書いときゃいいんだよ」

 

 

「その適当が全く浮かばねえんだよ」

 

 

短冊を机に置き、右手でくるくるとペンを回しながら悩む陸に、とっくに願いを書き終えて冷やかしに来た上原。

 

 

「ていうか、お前は何て書いたんだよ?」

 

 

「俺か?俺はな…」

 

 

どんな願いを書いたのか。陸が問いかけると、上原は短冊を見せてくれる。

 

 

<奇跡の杖がドロップしますように>

 

 

「…なるほど」

 

 

「もう何体ミラクルリッチを倒したと思ってんだよぉ!全くドロップしねえんだよぉ!」

 

 

「まぁ、ドロップ率1/8192だからな…。俺はドロップしたけど」

 

 

「お前のリアルラック少しでいいから俺に分けてくれよぉおおおおおおお!!!」

 

 

両目から涙を流しながら、陸の両肩を掴んで揺さぶってくる上原。

 

上原が短冊に書いた願い。先程の陸と上原の会話を聞いていればわかると思うのだが、<奇跡の杖>とはあるゲーム、それもオンラインのレアアイテムである。

そのアイテムを手に入れるためには、ミラクルリッチというMobからドロップさせなければならないのだが、そのドロップ率がかなり低い。

 

陸はミラクルリッチの乱獲を始めて二日で手に入れることができたのだが、上原はそこから一週間、未だに手に入れることができていないのだ。

 

 

「あぁ、うっとうしい。離れろ」

 

 

「うぅ…」

 

 

まだ涙を流している上原を引き剥がして、陸は改めて短冊に書く願いを考える。

 

 

<別にゲームで願いたいことなんて特段ないしな…。…ま、これでいいか>

 

 

短冊を笹に飾りに行く時間まで、残り三分となった所で、陸はペンを走らせる。

 

少し下らない事で、書こうかずっと悩んでいたのだが、この際もうこれで良いだろう。

 

 

「じゃぁ、短冊飾りに行くぞー。もう書き終わってるよな?」

 

 

陸が短冊に願いを書き終えた直後、教室に担任教師が入ってくる。

 

そして教師に言われ、陸たちは笹が置かれている生徒玄関前へと向かう。

 

 

「で?一条は結局なんて書いたんだよ?」

 

 

「…」

 

 

廊下を歩いていると、隣を歩く上原に問われる。

問われた陸は、一瞬上原を見遣ってからすぐに視線を外し、口を開く。

 

 

「別に。下らない事だよ」

 

 

「下らない事なら教えてくれたっていいじゃんか。なぁなぁなぁ」

 

 

軽く受け流してさっさと歩く陸だったが、上原は往生際が悪く、まるでぶら下がるかの如くしつこく陸に問いかける。

 

玄関に着くまでの間、陸は上原を無視し続けていたのだがそれでもまだ聞き続けてくる上原に嫌気が差し、ふとこう口にする。

 

 

「男の願いにそこまで興味があるのか。なるほどお前にはそんな趣味があったのか。おーい、上原が…」

 

 

「うわぁああああああぁあああああああ!!!待て待て待て待て!そんな趣味ない!お前の願いにも興味ないっ!」

 

 

上原の追撃を軽くあしらい、逆に大きなダメージを与えた陸はにやりと笑みを浮かべながら靴を履き替え、外へ出る。

 

玄関前には大きな笹が…、一瞬で分かるほど不自然に曲がった状態で立っていた。

 

 

「え」

 

 

「な、何だ?」

 

 

呆然と立ち尽くす陸と、目を丸くして驚きの声を上げる上原。

 

しっかり見ると、かなり大量の短冊が笹に掛けられている。

その重みで笹の幹が曲がってしまっているのだ。

 

 

(三学年全員分の短冊でもあそこまでの数にならないぞ…)

 

 

謎の光景に疑問を持ちながら、陸は笹に近づいてその短冊に何が書かれているのか。小隊を確かめる。

 

 

<楽様とデートに行きたいですわ♡>

 

 

<楽様と(今度は二人で)遊園地に行きたいですわ♡>

 

 

<楽様と水族館に行きたいですわ♡>

 

 

<楽様と二人きりで─────

 

 

表せばキリがない程の数の短冊。そして書かれている同じような内容。

 

陸の両目は点となり、そしてその願いを書いた人物の正体もすぐに察する。

 

 

「コラァーーーーー!誰だ、こんなに短冊をぶら下げたのは!!」

 

 

「短冊は一人一枚!!」

 

 

「えぇ!?まだこんなにありますのに!」

 

 

(…まだぶら下げる気だったのか、橘)

 

 

呆れすらをも通り越し、尊敬の域にまで達する。

というか、デートに行きたいと書いた短冊、今度は楽と二人でとはどういうことだ。

楽と遊園地に行ったのか。楽は教えてくれなかったぞ。

 

心の隅で、帰ったら問い詰めると決意しながら、一枚の短冊を除いた万里花の全ての短冊を教師たちが外したのを見て、陸は列に並んで短冊を飾る順番を待つ。

 

 

「やれやれ…。とんだアクシデントがあったな…」

 

 

「…あぁ」

 

 

陸と上原は無事に自身の願いを書いた短冊を飾り終え、教室へと戻っていった。

万里花によって起こったアクシデントのせいで、余裕を持って教室を出たはずなのだがもう授業開始ギリギリの時間になってしまった。

 

 

「あっ、やべぇ!次の数学の宿題、まだ途中だった!」

 

 

「あら大変。でも見せんぞ」

 

 

前にもこんなことがあったような、とデジャブを感じながら上原の次の行動を読んで彼の思惑を阻む陸。

 

「せ、殺生なぁ…」と、悲しい声で言ってくる上原だが、陸は無情である。

というか、たとえ陸がノートを見せるという選択をしても時間的に間に合わないため完全に詰みなのだが。

 

 

「起立!礼!着席!」

 

 

教室に戻り、席に着いた上原の無駄な努力を眺めていると、授業開始のチャイムが鳴る。

本日の日直が号令をし、席に着くと早速教師が教科書を開き、チョークを持って黒板と向き合った。

 

 

「…あ、いけね。そういえば、あの笹移動しなきゃいけないんだっけ」

 

 

すると、すっ、と席に着く生徒たちの方に体の向きを戻した教師がそんなことを言い始めた。

 

 

「じゃあ…、七月七日…。七割る七は一ってことで、出席番号一番の一条。今からあの笹、移動させといてくれないか?」

 

 

「な、割り算だと!?」

 

 

正直、教師が今日の日付を口にした瞬間、笹を運ぶ役目は自分には来ないだろうと確信した陸。

普通、足し算だろうそこは。まさか割り算で来るとは思わなかった。

 

 

「ていうか俺一人ですか!?」

 

 

「大丈夫大丈夫。あれ、思ってたよりも軽いから」

 

 

どうやらあの先公は笹を陸一人に運ばせるつもりらしい。

 

何か自分はあの教師にしただろうか…。特に嫌われるようなことはしてないと思うが…。

 

結局、陸の反論も叶わず一人すごすごと教室を出ることとなった。

 

 

「一条ー!言い忘れてたけど、中庭に笹を置いといてくれー!」

 

 

「へーい」

 

 

教室の扉を開け、顔だけ出して伝えてくる教師に陸は背を向けたまま返事を返す。

 

そして陸は、廊下を通り抜け、玄関を出て笹の前に立つ。

 

 

「…これを一人で運べってのかあの先公。たぶんいけるとは思うけど、持ちづらそうだなおい」

 

 

自分がこれを一人で持つという視点で笹を見ると、すごく重そうに見える。

まぁぶっちゃけいけるとは思うが、これを運ぶには土を入れてある竹でできた箱を掴まなければならない。

 

その体勢で運ぶと考えると、相当めんどくさそうである。

 

 

「り、陸君!」

 

 

「え…、小咲?」

 

 

箱の底を持つため、しゃがもうとしたその時、背後から陸を呼ぶ声が聞こえた。

振り返ると、激しく息切れをしながらなおこちらに駆けてくる小咲の姿が。

 

 

「私も…手伝いに…」

 

 

「え、マジ?」

 

 

何という幸運。小咲の手が加われば、相当この笹運びが楽になる。

 

 

「むしろ私一人で運んでもいいんだけど」

 

 

「いやそれは無理だろ、ていうかさせられないって。どうしたんだそんな鬼気迫って…」

 

 

手伝いの手が来たことを素直に喜んでいた陸だったが、小咲の鬼気迫る表情に思わず引いてしまう。

いやさすがに、汗を掻きながら光のない瞳を向けて話してくる人が眼前にいて、正直この反応は当然だと陸自身思う。

 

 

「じゃあ、そっちの方持ってくれ」

 

 

「う、うん」

 

 

陸と小咲は向かい合う形で立ち、せえのと合図をかけて同時に箱の底を持ち上げる。

 

ゆっくりと中庭の方へと笹を運ぶ二人。

不意に、陸が小咲の方を見ながら口を開いた。

 

 

「そういえばさ、小咲は短冊に何て書いたんだ?」

 

 

「えっ、私!?わ、私は…戦争が無くなるようにって…」

 

 

「そ、壮大だな…」

 

 

小咲は何とも壮大な願いを短冊に託したものだ。

…小咲には悪いが、その願いは多分叶うことはないと思う。

 

 

「り、陸君はどんな事を書いたの?」

 

 

「俺?俺は…、戦争が無くなるようにって」

 

 

「むー…。陸君、からかってるでしょ!」

 

 

「ははは、ばれたか」

 

 

今度は小咲が陸に問いかけてくるが、陸は悪戯っぽい笑みを浮かべて先程の小咲の返事と同じ言葉を返す。

頬を膨らませ、不満げな表情を浮かべる小咲を陸は笑みを浮かべながら眺める。

 

 

「ゆっくりだぞ、ゆっくり…。よし、これで移動完了だな」

 

 

笹を地面に降ろし、中庭への移動を終えた陸と小咲。

 

 

「やれやれ…。このまま授業サボっちまおうかな…」

 

 

「だ、駄目だよそれは…」

 

 

こんなめんどくさい事をさせられる羽目になった原因、今教室で授業を行っている教師の顔を思い浮かべたらイライラしてきた。

陸はこのまま授業をサボろうかと本気で考えて口にしたのだが、それを聞いた小咲が苦笑を浮かべながら止める。

 

そんな調子で、二人はそれぞれの教室へ戻ろうと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?この笹、設置場所間違ってるじゃないか」

 

 

「移動させないとな」

 

 

 

 

 

 

 

小咲は今、ご機嫌だった。

陸が笹を移動させると廊下から聞こえてきた会話で分かった時はどうなる事かと思ったが、これでもう陸に自分が短冊に書いた願いを知られることはない。

 

まさか、知られるわけにはいかないだろう。

<陸君の彼女になれますように。>という願いを、陸だけには知られるわけにはいかない。

 

 

(でも、本当に願いが叶っちゃったらどうしよう…。彼女…、彼女かぁ…)

 

 

何はともあれ、陸に知られることなく願いを短冊に、笹に託せた小咲はホクホク顔で教室へと戻る。

 

 

「…あれ?あの笹、移動してね?」

 

 

だが、この陸の言葉でその上々気分はどん底に落とされることとなる。

 

見れば、中庭の真ん中に置いていたはずの笹が窓際まで移動していたのだ。

しかも、今いる場所は二階。笹の頂が良く見える場所である。

 

そして、その笹の頂は小咲の短冊が飾られている場所。

 

 

「まっ、いいか。さっさと教室戻ろうぜ」

 

 

「う、うん」

 

 

思わぬ不幸だったが、願いが書かれている方は幸い向こうを向いている。

ここはさっさとこの場から離れて…、と思ったその時、小咲は目にする。

 

突然吹いた風が、小咲の短冊を揺らしている所を。

小咲の願いが、風によって見え隠れしている所を。

 

 

(ヒョワァア~~~~~~~~~!!!)

 

 

まずい、これはまずい。

ここで陸に短冊が見られずに済んだとしても、後々他の人に見られてしまう。

 

 

(こ、これはもう回収するしか…!)

 

 

考えるよりも前に、小咲は駆けだした。

 

 

「お、おい?」

 

 

背後から陸の戸惑いを含んだ声が聞こえてくるが、構っている暇はない。

早く短冊を回収し、無事を確保しなければ。

 

小咲は笹付近の窓を開け、体を乗り出して手を伸ばす。

 

 

「小咲!?危ねーぞ!」

 

 

(もう少し…!)

 

 

陸の警告の言葉も、今の小咲には聞こえない。

ただ目の前の爆弾(短冊)を処理するために動くのみ。

 

 

「取れた…!っ!?」

 

 

さらに体を乗り出すと、遂に小咲の手は短冊を掴む。

だがその直後、小咲の足は滑り、体が外へと吸い込まれていく。

 

 

「小咲!」

 

 

何が起こったのか読み取れず、ただ茫然と全身を包む浮遊感を味わっていた小咲の腰が何者かの両腕でがしりと掴まれる。

 

もちろん、その何者かとは陸であり、小咲も当然それはわかっている。

わかっているからこそ、今自分の身に迫る危機も忘れ、思い人に抱き付かれていると意識してしまう小咲の頬が真っ赤に染まる。

 

 

「ぐぐ…、あぁ!!」

 

 

次の瞬間、小咲の体はとんでもない力で引っ張り込まれ、校舎の中へ。

そして陸と一緒に倒れ込むこととなった。

 

 

(はわわわわわわ…)

 

 

倒れ込んでも未だ抱き付かれている小咲は頬を真っ赤にしたまま。

 

だが、小咲から陸が離れ、そして

 

 

「小咲、正座」

 

 

「え?」

 

 

「正座」

 

 

無表情で言われた時、羞恥は抜け、残ったのは大きな大きな罪悪感。

 

 

「…何やってんだバカヤロー!あぁ!?危険かどうかの見わけもつかねえのかてめえは!!」

 

 

「うぅ…、ごめんなさい…」

 

 

容赦なく陸の罵声が小咲に浴びせられる。

 

だが、言い返せない。

完全に自業自得であり、そして何より陸が自分を心配していっているのだとわかっているからこそ、ただ謝ることしかできない。

 

 

「…何であんな無茶したんだ」

 

 

「それは…。どうしても人に見られたくないお願いを書いちゃって…」

 

 

もう嘘を吐いて誤魔化すことは出来ない。

先程の行動の理由を聞かれた小咲は、正直に、内容までは言わなかったが理由を答える。

 

 

「やっぱり、戦争がなくなるようにってのは嘘だったか」

 

 

「う…」

 

 

やはり陸にはあのごまかしは効いていなかったようだ。

恐る恐る陸の顔を見ると、陸は大きくため息を吐いていた。

 

 

「ったく…。それでも俺に言えよ。短冊の中見ずに手伝えることくらいあるだろ」

 

 

俯いていた小咲の顔が上がる。

 

 

「小咲が落ちないように支えるとか、俺がそっぽ向きながら短冊を取るとか」

 

 

指を一つ一つ折りながら、短冊の中を見ずにできる手伝いを口にしていく陸。

 

 

「もうあんな危ねえことすんなよ。もしそういう事をしなきゃいけなくなったら、絶対に誰かに相談しろ」

 

 

「…うん」

 

 

 

 

 

 

 

(…やっぱり、神頼みは良くないよね。これは自分の力で叶えなきゃ)

 

 

陸からの説教を受け終え、授業が終わって昼休みに入ると小咲はすぐに新しい短冊を貰って笹の前までやって来た。

 

だが、短冊に書く願いが決まらない。

いっその事、本当に戦争が無くなるようにと書いてやろうか。

 

 

「…あ」

 

 

願いはどうしようかと考えていると、小咲はふとある短冊を目にした。

 

 

「…ぷっ、くすくす」

 

 

小咲はその短冊に書かれた内容を見て笑みを零しながら、ポケットに入れてあったペンを持ち、短冊に今この瞬間に決めた願いを書き記す。

 

 

「…叶うといいね、陸君」

 

 

 

 

 

 

<お寿司を死ぬほど食べたい。 一条陸>

 

 

<陸君の願いが叶いますように。 匿名希望>

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

「坊ちゃあん!今日の夕飯は寿司でっせー!」

 

 

「な、何だと!?」

 

 

一時間後、食べ過ぎで動けなくなった陸を多数の人物が発見する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




陸の大好物は寿司です。
特に好きなネタは、ブリです。
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